1著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時に始まる。
1 実演に関しては、その実演を行つた時
2 レコードに関しては、その音を最初に固定した時
3 放送に関しては、その放送を行つた時
4 有線放送に関しては、その有線放送を行つた時
2著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時をもつて満了する。
1 実演に関しては、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して七十年を経過した時
2 レコードに関しては、その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して七十年(その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して七十年を経過する時までの間に発行されなかつたときは、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して七十年)を経過した時
3 放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
4 有線放送に関しては、その有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
この条文が問われた枝 6問
誤り。違うのは「そのレコードを発行した時に始まる」の部分である。レコードに係る著作隣接権の存続期間は、その音を最初に固定した時に始まり、発行は満了を数える基準にすぎない。
101条1項2号は、著作隣接権の存続期間はレコードに関してはその音を最初に固定した時に始まると定める。レコード製作者とは2条1項6号によりレコードに固定されている音を最初に固定した者をいい、権利は最初の固定という行為によって生じるのであるから、始期もその固定の時に置かれている。一方で101条2項2号は、満了について、その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時とし、音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して70年を経過する時までの間に発行されなかったときは、固定の日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時とする。発行はこの満了の計算で基準となる事実であり、発行前のレコードにも固定の時から権利が及んでいる。本枝は満了の基準である発行を始期に置き換えており、最初の固定の時を始期とする1項2号の文言と食い違う。

レコードに関しては、その音を最初に固定した時
誤り。違うのは「その実演を最初に固定した時に始まる」の部分である。実演に係る著作隣接権の存続期間は、その実演を行った時に始まる。
101条1項1号は、著作隣接権の存続期間は実演に関してはその実演を行った時に始まると定める。実演家の権利は、実演を物に固定することを前提にしておらず、生で行われた実演についても、その実演を無断で録音・録画したり放送したりする行為を止める権利として、実演が行われた瞬間から生じるものである。そのため始期も固定の時ではなく実演を行った時とされている。これに対しレコードについては、レコード製作者の権利が音を最初に固定した者に与えられる性質上、101条1項2号がその音を最初に固定した時を始期としている。本枝は、レコードの始期にあたる最初の固定の時を実演に当てはめており、実演を行った時とする1号の文言と食い違う。なお存続期間の満了は、101条2項1号により、実演が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時である。

実演に関しては、その実演を行つた時
正しい。放送に係る著作隣接権の存続期間は、101条1項3号により、その放送を行った時に始まる。
101条1項3号は、著作隣接権の存続期間は放送に関してはその放送を行った時に始まると定め、4号は有線放送についても同様にその有線放送を行った時とする。放送事業者の権利は、放送という伝達行為そのものに与えられるものであり、放送を物に固定するかどうかとは無関係であるから、始期は放送が行われた時に置かれている。満了は101条2項3号により、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時である。実演とレコードの存続期間が平成30年改正で70年に延びたのに対し、放送と有線放送は50年のままである点も、始期とあわせて条文で確かめておくべき違いである。本枝は、放送に係る著作隣接権の始期を放送を行った時としており、3号の文言どおりである。

放送に関しては、その放送を行つた時
| 対象 | 始期(1項) | 満了(2項) |
|---|---|---|
| 実演 | 実演を行った時 | 実演が行われた日の属する年の翌年から起算して70年 |
| レコード | 音を最初に固定した時 | 発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年(固定の翌年から70年の間に発行されなければ固定の翌年から70年) |
| 放送 | 放送を行った時 | 放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年 |
| 有線放送 | 有線放送を行った時 | 有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年 |
誤り。違うのは「翌年から起算して 70 年を経過した時に存続期間が満了する」の部分である。101条2項3号により、放送に関する著作隣接権は放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時に満了する。
101条2項は著作隣接権の存続期間の満了時を定め、1号で実演について実演が行われた日の属する年の翌年から起算して70年、2号でレコードについて発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時とする一方、3号で放送については放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年、4号で有線放送についても同じく50年を経過した時とする。実演とレコードが70年になったのは、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う平成28年改正により、著作権の保護期間と合わせて延長されたためである。放送と有線放送はこの延長の対象に含まれておらず、50年のまま据え置かれている。枝は実演・レコードの70年を放送にも当てはめているが、条文は放送を区別しており、放送事業者の著作隣接権は50年で満了する。

放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時
| 対象 | 始期(1項) | 満了(2項) |
|---|---|---|
| 実演 | 実演を行った時 | 実演の翌年から起算して70年 |
| レコード | 音を最初に固定した時 | 発行の翌年から起算して70年(発行されなければ固定の翌年から70年) |
| 放送 | 放送を行った時 | 放送の翌年から起算して50年 |
| 有線放送 | 有線放送を行った時 | 有線放送の翌年から起算して50年 |
誤り。違うのは「当該再度の放送については、著作隣接権は発生しない」の部分である。放送事業者の著作隣接権は個々の放送行為について生じ、101条1項3号によりその放送を行った時に始まるから、同一番組の再放送にも新たに発生する。
放送事業者は89条3項により98条から100条までの権利を享有し、101条1項3号は放送に関する著作隣接権の存続期間がその放送を行った時に始まると定める。9条が保護を受ける放送を日本国民である放送事業者の放送や国内にある放送設備から行われる放送として定めているように、著作隣接権の対象となるのは放送という送信行為そのものであって、放送される番組の内容ではない。番組の内容は映画の著作物などとして別に著作権で保護され、放送事業者の権利はそれを公衆に送信するという行為に対する投資を守るためのものである。同じ番組を再度放送すれば、それは新たな放送行為であるから、そこに新たな著作隣接権が生じ、存続期間もその放送を行った時から別に始まる。枝は権利の対象を番組の内容と捉えており、初回の放送で権利が尽きるとしている点が条文の仕組みとずれている。

放送に関しては、その放送を行つた時
| 実演家 | レコード製作者 | 放送事業者 | |
|---|---|---|---|
| 固定・複製 | 録音権・録画権(91条。写真は含まない) | 複製権(96条) | 複製権(98条。写真を含む) |
| 放送・有線放送 | 放送権・有線放送権(92条) | 許諾権はなく二次使用料(97条)だけ | 再放送権・有線放送権(99条) |
| 送信可能化 | 92条の2 | 96条の2 | 99条の2 |
| 譲渡・貸与 | 95条の2・95条の3(商業用レコードだけ) | 97条の2・97条の3(商業用レコードだけ) | ない |
| 公への伝達・演奏 | ない | ない | テレビジョン放送の伝達権(100条。特別の装置だけ) |
| 人格権 | 氏名表示権・同一性保持権 | ない | ない |
| 存続期間 | 実演時から、翌年起算70年 | 最初の固定時から、発行の翌年起算70年 | 放送時から、翌年起算50年 |
誤り。違うのは「実演家の著作隣接権の存続期間の満了とともに消滅する」の部分である。実演家人格権は実演家の一身に専属する権利であり、財産権である著作隣接権の存続期間とは連動しない。
101条の2は、実演家人格権は実演家の一身に専属し、譲渡することができないと定める。101条2項1号は著作隣接権の存続期間を実演が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時に満了するとするが、89条5項が示すとおり実演家人格権は著作隣接権に含まれず、この存続期間の規律を受けない。人格権は実演家という人と切り離せない権利であるから、実演家が生存する限り存続し、実演から70年が経っても失われない。逆に実演家が死亡すれば一身専属性により消滅するが、101条の3が実演家の死後においても実演家人格権の侵害となるべき行為を禁じ、116条の遺族の請求と120条の罰則で守られる。著作隣接権の存続期間の満了とともに消滅するとする点がずれている。著作者人格権が著作権の存続期間と連動せず、59条・60条で同じ仕組みになっているのと対応する。

実演家人格権は、実演家の一身に専属し、譲渡することができない。