著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
この条文が問われた枝 9問
正しい。複製は写真その他の方法により有形的に再製することであり(2条1項15号)、絵画の一部でもその創作的表現が再現されていれば複製権の侵害となることがある。
2条1項15号は、複製を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することと定義し、21条は著作者がその著作物を複製する権利を専有すると定める。複製は著作物の全部を再製する場合に限られず、著作物の創作的な表現が再現されていれば一部の再製でも複製に当たる。絵画は構図や筆致や色彩の全体に創作性があるが、その一部分にも画家の個性が表れていることが多く、拡大して撮影した画像にその部分の創作的表現が再現されていれば、写真という方法による有形的な再製である。拡大という大きさの変更は表現の同一性を失わせるものではなく、複製であることを妨げない。したがって絵画の原作品の一部を拡大して撮影する行為は複製権の侵害となることがあり、枝の記述は正しい。撮影した部分が創作的表現を含まないときは複製にならないが、それは枝の「侵害となることがある」という結論を左右しない。

複製印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
正しい。19条1項の著作物の公衆への提供若しくは提示は21条から27条までの権利に係る利用によることを要しないから、著作権侵害になり得る利用行為を伴わなくても氏名表示権の侵害は生じ得る。
19条1項は、著作者がその著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有すると定める。氏名表示権は著作物と著作者の結び付きを守る人格権であり、条文も提供若しくは提示に際しとだけ述べて利用行為の種類を限定していない。最高裁は令和2年7月21日のリツイート事件判決で、19条1項の著作物の公衆への提供若しくは提示は21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要しないと判示し、リンク表示によって著作者名の表示されない画像が閲覧者の端末に表示された行為について、著作権侵害となる利用行為がなくても氏名表示権の侵害が成立するとした。したがって枝の記述は正しい。原作品への表示については公衆への提供や提示すら要件でなく、自宅に飾る原作品の落款を書き換えても侵害になる。

著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
誤り。違うのは「たとえ判決とは無関係に利用する場合であっても、著作権法上の問題を生じない」の部分である。13条3号で権利の目的から外れるのは判決そのものであり、判決に掲載された詩は独立の著作物として保護され続ける。
13条3号は、裁判所の判決、決定、命令及び審判を権利の目的となることができない著作物として掲げる。判決は国民に公開され自由に引用・批評されるべき公的な文書であるから、判決文を複製・配布する行為に裁判官や裁判所の著作権が及ばないようにしたものである。この規定が外しているのは判決という文書についての権利であって、判決の中に証拠や事実として引用された第三者の著作物の権利まで消滅させるものではない。詩は作者の創作的表現であり、判決に掲載されたからといって著作物でなくなるわけではないから、判決とは無関係にその詩だけを取り出して複製すれば、21条の複製権などの侵害が成立し得る。判決の全文を判決として利用する場面では詩の部分も含めて自由に利用できるが、枝のように判決と切り離して詩を利用する場面では通常の著作物と同じ扱いになる。

裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
正しい。データベースの著作物の保護は情報の選択又は体系的な構成という創作的な部分に及ぶもので、データを1つ複製するだけではその部分を再製したことにならない。
著作権法12条の2第1項は、データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものを著作物として保護すると定め、21条は著作者がその著作物を複製する権利を専有すると定める。データベースの著作物で保護されるのは、どの情報を収録するかという選択と、情報をどう整理して検索できるようにするかという体系的な構成に表れた創作性であって、収録された個々のデータそのものではない。複製権の侵害になるのは、著作物の創作的な表現が再製される場合であるから、データベースから1つのデータだけを取り出して複製しても、情報の選択や体系的な構成は再製されておらず、データベースの著作物の複製には当たらない。したがって枝は正しい。取り出したデータ自体が別の著作物であればそのデータの著作者の権利が問題になるが、それは12条の2第2項の定めるとおりデータベースの著作物の保護とは別の問題である。

データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
誤り。違うのは「当該漫画についての著作権の侵害となる」の部分である。キャラクターの名称だけを表示しても漫画の具体的表現を再製したことにならず、複製に当たらない。
21条は著作者がその著作物を複製する権利を専有すると定め、複製とは印刷、写真、複写その他の方法により有形的に再製することをいう(2条1項15号)。著作物は思想又は感情を創作的に表現したものであるから、再製されたのが漫画の絵や文章という具体的表現であって初めて複製になる。ポパイネクタイ事件の最判は、漫画の具体的表現を離れたキャラクターそのものは著作物ではないとした。登場人物の名称はその人物を指す言葉にすぎず、それ自体に創作性はなく、Tシャツにゴシック体で大書しても漫画のどの場面の表現も再製していない。したがって複製権の侵害は成立せず、名称の使用が問題になるとすれば商標法や不正競争防止法の領域である。当該漫画についての著作権の侵害となるとする点がずれている。

著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
- 複製の方法:印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法である。手段を限定しない例示である
- 複製の要件:有形的に再製することである。一部の再製や拡大縮小も含む
- 複製に当たらない行為:既存の著作物に依拠しない独立の創作と、創作的表現を再製していない行為(名称だけの表示、思想の利用)である
正しい。インターネット上で適法に公開されている地図でもガイドブックへの掲載は有形的な再製で複製権を侵害するが、ウェブサイトのアドレスを掲載するだけでは著作物を自ら公衆送信しておらず、公衆送信権の侵害とならない。
21条は著作物を複製する権利を著作者に専有させ、複製は2条1項15号により有形的に再製することをいう。観光地図が適法にインターネット上に掲載されていることは、閲覧を許す趣旨にとどまり、紙の旅行ガイドブックに印刷して再製することまで許す理由にはならないから、無断で掲載すれば複製権の侵害となる。一方、23条1項の公衆送信権は、公衆によって直接受信されることを目的として送信を行う権利であり、自動公衆送信の場合は送信可能化を含む。観光地図を送信しているのは、それを自分のサーバーに置いている掲載元のウェブサイトであって、旅行会社はそのアドレスを示して閲覧者をそこへ導いているにすぎず、地図を自分で送信してもいなければ送信可能化してもいない。したがってアドレスを旅行会社のホームページに掲載する行為は公衆送信権の侵害とならない。なお、侵害コンテンツへ導くリーチサイトは113条2項以下で別に規律される。

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
正しい。拡大コピーは有形的な再製として複製に当たり、多数の者への配布は複製物の譲渡による公衆への提供に当たるが、大きさを変えただけでは著作物の表現に変更、切除その他の改変がなく、同一性保持権の侵害にはならない。
21条は著作者がその著作物を複製する権利を専有すると定め、2条1項15号は複製を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することという。拡大コピーは文章をそのまま紙に再製する行為であるから、大きさが違っても複製に当たる。26条の2第1項は、著作物をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利を著作者に専有させるので、無断で作った複製物を多数の者に配布する行為は譲渡権の侵害となる。一方、20条1項の同一性保持権は、著作物及びその題号について、著作者の意に反する変更、切除その他の改変を受けない権利であり、改変とは著作物の表現そのものに手を加えることをいう。拡大コピーは文章の一字一句も構成も変えておらず、表現の同一性は保たれているから、著作者の意に反していても改変には当たらない。したがって枝の行為は複製権と譲渡権を侵害するが、同一性保持権の侵害とはならない。

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
誤り。違うのは「設計図の著作物の複製権の両方の侵害となる」の部分である。図面に従って建築物を完成することは2条1項15号ロにより建築の著作物の複製に当たるが、図面そのものを有形的に再製してはいないから、設計図の著作物の複製にはならない。
2条1項15号は、複製を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することと定めた上で、同号ロで、建築の著作物については建築に関する図面に従って建築物を完成することを複製に含めている。建築の著作物は、図面の段階ですでに建築物としての創作的な表現が定まっており、図面どおりに建てる行為は、まだ建っていない建築の著作物を有形的に再製する行為にほかならないから、21条の建築の著作物の複製権が及ぶ。一方、設計図は10条1項6号の図形の著作物として、線や記号による図面上の表現が保護される。その複製とは図面を複写するなど図面上の表現を再製することであり、図面に従って建物を建てても、図面という表現が紙やデータの上に再製されるわけではない。したがって設計図に従って建築の著作物を完成する行為は、建築の著作物の複製権の侵害にはなるが、設計図の著作物の複製権の侵害にはならない。

建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
正しい。工夫を凝らして撮影した写真は乙の写真の著作物であり、その中に美術の著作物である絵皿の表現が再製されているから、カレンダーへの利用には甲と乙の両者の許諾が要る。
2条2項はこの法律にいう美術の著作物に美術工芸品を含むと定め、陶芸家甲の創作した絵皿は美術の著作物として甲の著作権の対象になる。写真家乙がレンズの選択やシャッター速度等に工夫を凝らして撮影した写真は、被写体の選び方や光の捉え方に乙の個性が表れた写真の著作物(10条1項8号)であり、乙が著作権を持つ。ただし、その写真には絵皿の創作的表現がそのまま写し取られているので、写真を複製すれば絵皿を複製したことにもなる。21条の複製権は著作物を有形的に再製する行為に及び、他人の著作物を素材として新たな著作物が作られても、素材の著作者の権利が消えるわけではないという理屈である。出版社丙が写真をカレンダーに印刷する行為は、写真の著作物の複製であると同時に絵皿の複製でもあるから、甲と乙の双方から許諾を得なければならない。

この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。





























