レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。
この条文が問われた枝 3問
誤り。違うのは「乙の著作隣接権の侵害となる」の部分である。レコード製作者の権利は複製権、送信可能化権、譲渡権、貸与権に限られ、市販レコードを再生して公衆に聴かせる行為に及ぶ権利はない。
著作権法がレコード製作者に認める著作隣接権は、レコードを複製する権利(96条)、送信可能化する権利(96条の2)、複製物の譲渡により公衆に提供する権利(97条の2)、商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利(97条の3)であり、ほかに商業用レコードを用いた放送・有線放送についての二次使用料請求権(97条)と期間経過商業用レコードの貸与についての報酬請求権があるにとどまる。レコード製作者は音を最初に固定した者であって、著作者の演奏権(22条)に相当する、レコードを再生して公に聴かせることを許諾する権利は与えられていない。レコードを用いた演奏は著作者の演奏権で捉えられており、レコード製作者には固定物の複製や流通に関わる権利を与えれば足りるという設計である。したがって喫茶店が市販の音楽レコードを再生して不特定多数の顧客に鑑賞させても、乙の著作隣接権を侵害するものではなく、枝は誤りである。音楽の著作者との関係では演奏権の問題になる。

レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。
- 複製権(96条):そのレコードを複製する権利である
- 送信可能化権(96条の2):そのレコードを送信可能化する権利である
- 譲渡権(97条の2):複製物の譲渡により公衆に提供する権利で、一度適法に譲渡された複製物には及ばない
- 貸与権(97条の3):商業用レコードの貸与に限られ、期間経過商業用レコードは報酬請求権になる
- 二次使用料(97条):商業用レコードを用いた放送・有線放送について受ける権利で、指定団体があればそれを通じて行使する
- 持たない権利:演奏権に当たる権利、放送・有線放送の許諾権、人格権はない
正しい。レコード製作者が享有するのは複製権、送信可能化権、譲渡権、貸与権と二次使用料等を受ける権利に限られ(89条2項)、レコードの再生による公の演奏を対象とする権利はない。
89条2項は、レコード製作者は96条の複製権、96条の2の送信可能化権、97条の2第1項の譲渡権、97条の3第1項の貸与権並びに97条1項の二次使用料及び97条の3第3項の報酬を受ける権利を享有すると定める。レコード製作者の権利は複製物の作成と流通、送信の場面に限って列挙されており、レコードを再生することによる公の演奏はこの列挙に入っていない。著作者には、著作物を公衆に直接聞かせることを目的として演奏する権利があり(22条)、録音された演奏の再生も演奏に含まれる(2条7項)ので、楽曲の著作権者はレコードの再生による公の演奏を止められるが、レコード製作者にはその権利がない。商業用レコードの放送についてもレコード製作者が受けるのは二次使用料であって許諾権ではない。枝は、レコード製作者はレコードの再生による公の演奏について著作隣接権を有しないとしており、89条2項の列挙に沿っている。

レコード製作者は、第九十六条、第九十六条の二、第九十七条の二第一項及び第九十七条の三第一項に規定する権利並びに第九十七条第一項に規定する二次使用料及び第九十七条の三第三項に規定する報酬を受ける権利を享有する。
| 権利 | 条文 | 性質 |
|---|---|---|
| 複製権 | 96条 | 許諾権 |
| 送信可能化権 | 96条の2 | 許諾権 |
| 譲渡権 | 97条の2第1項 | 許諾権 |
| 貸与権(商業用レコードの発売後1年) | 97条の3第1項 | 許諾権。期間経過後は報酬請求権(3項) |
| 商業用レコードの放送・有線放送 | 97条1項 | 二次使用料(報酬請求権) |
| レコードの再生による公の演奏 | なし | 権利なし。著作者の演奏権(22条)だけが及ぶ |
誤り。違うのは「乙の許諾を得ることなく、当該音源を収録した映画のサウンドトラック盤 CDを作成し、販売することができる」の部分である。サウンドトラック盤 CD の作成は乙のレコードの新たな複製であり、96条の複製権が及ぶ。
96条は、レコード製作者はそのレコードを複製する権利を専有すると定める。乙が最初に固定した音源はレコードであり(2条1項5号・6号)、それを映画に収録することも、その映画から音を取り出して CD に収めることも、いずれもレコードの複製に当たる。乙の許諾は映画への収録についてのものであり、許諾の範囲を超える別の複製には改めて許諾が要る。実演家については、91条2項が、許諾を得て映画の著作物に録音・録画された実演にはその後の利用に録音権・録画権が及ばないと定めるが、同項でも録音物に録音する場合は除かれており、サウンドトラック盤はまさにこの除外に当たる。レコード製作者にはそもそも91条2項に相当する規定がなく、映画に収録された後も複製権は丸ごと残る。販売についても97条の2第1項の譲渡権が及ぶ。したがって甲は乙の許諾なくサウンドトラック盤 CD を作成し販売することはできない。

レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。

