この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
1この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
1 著作物思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
2 著作者著作物を創作する者をいう。
3 実演著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
4 実演家俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
5 レコード蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
6 レコード製作者レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。
7 商業用レコード市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。
7 公衆送信公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
8 放送公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
9 放送事業者放送を業として行う者をいう。
9 有線放送公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。
9 有線放送事業者有線放送を業として行う者をいう。
9 自動公衆送信公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
9 送信可能化次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
ア 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ィ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
9 特定入力型自動公衆送信放送を受信して同時に、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。)をいう。
9 放送同時配信等放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。以下この号において同じ。)のうち、次のイからハまでに掲げる要件を備えるもの(著作権者、出版権者若しくは著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして文化庁長官が総務大臣と協議して定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。
ア 放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(当該放送番組又は有線放送番組が同一の名称の下に一定の間隔で連続して放送され、又は有線放送されるものであつてその間隔が一週間を超えるものである場合には、一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われるもの(当該放送又は有線放送が行われるより前に行われるものを除く。)であること。
ィ 放送番組又は有線放送番組の内容を変更しないで行われるもの(著作権者等から当該自動公衆送信に係る許諾が得られていない部分を表示しないことその他のやむを得ない事情により変更されたものを除く。)であること。
イ 当該自動公衆送信を受信して行う放送番組又は有線放送番組のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定めるものが講じられているものであること。
9 放送同時配信等事業者人的関係又は資本関係において文化庁長官が定める密接な関係(以下単に「密接な関係」という。)を有する放送事業者又は有線放送事業者から放送番組又は有線放送番組の供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者をいう。
10 映画製作者映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
10 プログラム電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
10 データベース論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。
11 二次的著作物著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
12 共同著作物二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
13 録音音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
14 録画影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
15 複製印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
ア 脚本その他これに類する演劇用の著作物当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ィ 建築の著作物建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
16 上演演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。
17 上映著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。
18 口述朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。
19 頒布有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
20 技術的保護手段電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号、第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第四号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
21 技術的利用制限手段電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第六項において同じ。)を制限する手段(著作権者等の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
22 権利管理情報第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項から第四項までの権利(以下この号において「著作権等」という。)に関する情報であつて、イからハまでのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの(著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る。)に用いられていないものを除く。)をいう。
ア 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報
ィ 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報
イ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報
23 著作権等管理事業者著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第三項に規定する著作権等管理事業者をいう。
24 国内この法律の施行地をいう。
25 国外この法律の施行地外の地域をいう。
2この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
3この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
4この法律にいう「写真の著作物」には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含むものとする。
5この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。
6この法律にいう「法人」には、法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含むものとする。
7この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。
8この法律にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする。
9この法律において、第一項第七号の二、第八号、第九号の二、第九号の四、第九号の五、第九号の七若しくは第十三号から第十九号まで又は前二項に掲げる用語については、それぞれこれらを動詞の語幹として用いる場合を含むものとする。
この条文が問われた枝 64問
正しい。二次的著作物は既存の著作物を翻案等することにより創作した著作物であり、翻案は既存の著作物に依拠することを要するから、依拠を欠くものは二次的著作物にならない。
2条1項11号は、二次的著作物を、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物と定義する。翻訳・編曲・翻案は、いずれも既存の著作物の表現上の本質的な特徴を維持しつつ、これに新たな創作的表現を加えて別の著作物を創作する行為であるから、既存の著作物を知らずに独自に創作した結果として似たものができても、それは既存の著作物を翻案したものではない。最判平13.6.28(江差追分事件)も、翻案とは既存の著作物に依拠し、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ新たな表現を加えて別の著作物を創作する行為をいうと述べている。したがって、二次的著作物に該当するには既存の著作物に依拠していることが前提であり、本枝はそのとおりである。依拠があって二次的著作物となれば、その利用には28条により原著作者の権利も及ぶ。

二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
誤り。違うのは「プログラムの著作物には該当しない」の部分である。プログラムの定義は電子計算機に対する指令の組合せとしての表現であり、機器に組み込まれているかどうかは要件になっていない。
2条1項10号の2は、プログラムを、電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものと定義し、10条1項9号はプログラムの著作物を著作物の例として掲げる。この定義が見ているのは、指令の組合せという表現の形であって、そのプログラムがどのような機器で動くか、独立した製品として流通するか、ほかの装置に組み込まれているかは問うていない。自動車のナビゲーション用プログラムも、地図情報を処理して経路を示すという一の結果を得るために電子計算機への指令を組み合わせたものであるから、プログラムの定義に当たり、指令の組合せに作成者の個性が表れていれば2条1項1号の創作性も満たしてプログラムの著作物となる。本枝は自動車に組み込まれていることを理由に該当性を否定しており、定義の要件にない事情で結論を変えている点がずれている。

プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。
誤り。違うのは「甲と乙の共同著作物となる」の部分である。音声をそのまま文字に起こす行為には創作的な寄与がなく、乙は著作者にならないから、文章が著作物であればそれは甲の著作物である。
2条1項12号は、共同著作物を、二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものと定義し、2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定める。共同著作物となるには、各人がその著作物の創作的表現に寄与していなければならず、創作に当たらない作業を分担した者は共同著作者にならない。動画の音声の文字起こしは、甲が動画の中で話した言葉という既存の表現を、文字という別の媒体にそのまま置き換える作業であって、文章の表現を決めているのは発話した甲である。乙は新たな創作的表現を加えていないから、乙は2条1項2号の著作者に当たらない。したがって文字起こしされた文章が著作物に該当するなら、それはその表現を創作した甲の著作物であり、甲と乙の共同著作物とする本枝は、創作的寄与のない乙を共同著作者に数えている点がずれている。

共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
誤り。違うのは「自然物を用いているので、美術の著作物には該当しない」の部分である。著作物性は思想又は感情を創作的に表現したものかどうかで決まり、素材が自然物であることは否定の理由にならない。
2条1項1号は、著作物を、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定義し、10条1項4号は絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物を例示する。著作物の要件は表現に作成者の個性が表れているかどうかであり、表現に用いる素材の種類は条文のどこにも要件とされていない。花材や枝葉そのものは自然物であって誰の思想も表現していないが、生け花はその花材を選び、組み合わせ、配置して一つの造形を作り出すものであり、その選択・組合せ・配置に作成者の個性が表れていれば、思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物となり得る。本枝は自然物を用いていることだけを理由に美術の著作物への該当を一律に否定しており、創作性の有無で判断する条文の構造と食い違う。

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
- 思想又は感情:人の考えや気持ちが元になっていることである。単なる事実やデータそのものは当たらない
- 創作的に:作成者の個性が何らかの形で表れていることである。ありふれた表現、機械的な再現は当たらない
- 表現したもの:外に表された具体的な表現が対象で、アイデアや着想そのものは対象にならない
- 文芸、学術、美術又は音楽の範囲:知的・文化的な精神活動の所産であることを広く言う要件で、素材や用途で直ちに外す趣旨ではない
正しい。実演には、著作物を演ずる行為のほか、これに類する行為で著作物を演じないが芸能的な性質を有するものが含まれるから、手品も実演に該当し得る。
2条1項3号は、実演を、著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずることと定義したうえで、かっこ書で、これらに類する行為で著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含むとする。著作隣接権が実演家に与えられるのは、著作物を公衆に伝達する行為に準じて、人前で演じる芸能にも独自の価値を認める趣旨であるから、演じる対象が著作物であるかどうかで線を引かず、芸能的な性質があるかどうかで実演に当たるかを決めている。手品は特定の著作物を演じるものではないが、観客に見せる芸能として行われる行為であるから、かっこ書の、著作物を演じないが芸能的な性質を有する行為に当たり、実演に該当し得る。これに対し、記録や勝敗を争う競技は芸能的な性質を欠くため実演にならない。本枝は、著作物を演じないことを認めたうえで実演に該当し得るとしており、条文の構造に沿っている。

実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
正しい。実演家はその実演を録画する権利を専有し、録画とは影像を連続して物に固定することをいうから、画質の良否にかかわらず無断の録画は録画権の侵害となり得る。
91条1項は、実演家はその実演を録音し、又は録画する権利を専有すると定め、2条1項14号は、録画を、影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することと定義する。録画権が実演家に与えられているのは、実演は本来その場限りのものであり、物に固定されると実演家の関与なしに繰り返し利用できるようになるため、固定の段階で実演家が関与できるようにする趣旨である。この趣旨からすれば、固定された影像の出来栄えは関係がなく、定義も影像を連続して物に固定したという事実だけを要件としている。甲が舞踊を演じる様子は舞踊の著作物を舞う行為として実演に当たり、甲は実演家として録画権を持つ。その様子を無断で録画すれば、画質が悪くても影像を連続して物に固定したことに変わりはないから、甲の著作隣接権である録画権の侵害となり得る。本枝はそのとおりである。

実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。
- 録音権・録画権(91条1項):実演を録音し、又は録画する権利である。許諾を得て映画に録音録画された実演には、録音物に録音する場合を除いて及ばない(2項)
- 放送権・有線放送権(92条1項):実演を放送し、又は有線放送する権利である
- 送信可能化権(92条の2第1項):実演を送信可能化する権利である
- 譲渡権(95条の2)・貸与権(95条の3):録音物・録画物の公衆への譲渡、商業用レコードの貸与に及ぶ
- 上演権・演奏権に当たる権利はなく、市販のレコードを再生して聴かせても実演家の権利は働かない
正しい。実演家は実演を行う者及び実演を指揮し又は演出する者をいい、実演には職務著作に当たる規定がないから、法人の業務として演奏しても実演家は演奏した甲であり、法人乙にはならない。
2条1項4号は、実演家を、俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者と定義する。著作物については15条1項が、法人等の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成し、法人等の名義で公表する著作物の著作者を法人等とする職務著作を定めているが、この規定は著作者についてのものであり、実演家について同様の規定はなく、著作隣接権の章にも準用はない。実演は演じる者の身体によって行われる行為であるから、権利は実際に演じた者に原始的に生じるという考え方が貫かれている。したがって、甲が自らを雇用する法人乙の業務として、乙の名義で公表される楽曲を演奏した場合でも、楽曲の著作者がどうなるかとは別に、演奏という実演の実演家は演奏した甲であり、法人乙が実演家となることはない。本枝はそのとおりである。乙が甲の実演に係る権利を持ちたいのであれば、契約で甲から譲り受けるほかない。

実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
誤り。違うのは「甲及び乙それぞれの氏名表示権の侵害となる」の部分である。氏名表示権は著作者の権利であり、漫画を創作していない乙は著作者でないから、乙の氏名表示権の侵害は成立しない。
19条1項は、著作者はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有すると定め、2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定義する。氏名表示権は、著作物とその創作者との結びつきを守る著作者人格権であるから、権利を持つのは当該著作物を創作した者に限られる。甲が単独で創作した漫画の著作者は甲だけであり、乙は有名作家であっても漫画の創作に関与していない以上、この漫画について氏名表示権を持たない。したがって乙の氏名が作者名として表示されても、乙について氏名表示権の侵害が成立する余地はない。一方、甲については、単独の著作者であるのに乙と並べて作者名を表示されたことで、著作者名の表示のあり方が甲の意思と異なるものになっており、甲の氏名表示権の侵害が問題となる。本枝は著作者でない乙にも氏名表示権があるとしている点がずれている。

著作者 著作物を創作する者をいう。
正しい。10条1項3号は著作物の例示として舞踊又は無言劇の著作物を挙げており、身体的動作から構成される舞踊も2条1項1号の要件を満たせば著作物として保護される。
2条1項1号は、著作物を思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定義し、10条1項はその例示としておおむね次のとおりと述べて、3号に舞踊又は無言劇の著作物を掲げる。表現の媒体は言葉や音や絵に限られず、人の身体の動きそのものによる表現も、振付に作者の個性が表れていれば創作的な表現である。舞踊が例示に明記されているのは、身体的動作による表現が文芸や音楽と同じく文化的所産として保護に値するからである。したがって舞踊は著作物として保護されることがあり、枝の記述は正しい。物への固定が要件とされるのは2条3項の映画の著作物だけであり、紙や映像に記録されていない即興の舞踊であっても、創作性があれば著作物になる。

著作物思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
- 一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
- 二 音楽の著作物
- 三 舞踊又は無言劇の著作物
- 四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
- 五 建築の著作物
- 六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
- 七 映画の著作物
- 八 写真の著作物
- 九 プログラムの著作物
- 例示であるから、九つに当てはまらない表現物も2条1項1号を満たせば著作物になる
正しい。波の音を固定したものもレコードであり固定した個人がレコード製作者になるが、97条1項の二次使用料は商業用レコードを用いた放送等に限られる。
2条1項5号はレコードを蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したものと定義し、固定される音が著作物であることを要件としていないから、波の音を録音したものもレコードであり、6号により音を最初に固定した個人がレコード製作者として89条2項の権利を享有する。一方、97条1項は放送事業者等が商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行った場合に、そのレコードに係るレコード製作者に二次使用料を支払わなければならないと定め、7号は商業用レコードを市販の目的をもって製作されるレコードの複製物と定義する。二次使用料は市販されたレコードが放送で広く利用されることによる利益をレコード製作者に還元する仕組みであるから、市販の目的で製作されたものでない複製物を用いた放送には97条1項が働かず、レコード製作者はその放送事業者に二次使用料を請求することができない。したがって枝の記述は正しい。

放送事業者等は、商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行つた場合(営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、レコードに係る音の提示につき受ける対価をいう。)を受けずに、当該放送を受信して同時に有線放送を行つた場合を除く。)には、そのレコード(第八条第一号から第四号までに掲げるレコードで著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係るレコード製作者に二次使用料を支払わなければならない。
正しい。2条3項の映画の著作物は物に固定されていることを要するから、生放送のままでは当たらないが、放送と同時に録画されていれば固定の要件を満たして映画の著作物に当たる。
2条3項は、この法律にいう映画の著作物には映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むと定める。著作物は一般に固定を要件としないが、映画の著作物は29条の著作権の帰属や26条の頒布権など独自の扱いを受けるため、物に固定されて同一内容を再現できる状態にあることが求められている。テレビで生放送された音楽番組はカメラの切替えや構成に映画の効果に類似する視聴覚的効果があっても、放送されるだけでは物に固定されていないから映画の著作物に当たらない。しかし放送を行った放送局が放送と同時に録画していれば、その映像は物に固定されており、固定の要件を満たして映画の著作物に当たる。生放送の映像が映画の著作物になるかどうかは固定の有無で決まるという枝の記述は正しい。

この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
誤り。違うのは「実演として著作隣接権により保護される」の部分である。棒高跳びの跳躍は著作物を演ずるものでも芸能的な性質を有する行為でもなく、2条1項3号の実演に当たらない。
2条1項3号は、実演を著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずることと定義し、かっこ書でこれらに類する行為で著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含めている。著作隣接権は著作物を公衆に伝達する行為に与えられる権利であり、実演家が保護されるのは著作物を演じて伝える、あるいはそれに準ずる芸能を見せるという行為に文化的な価値があるからである。手品や曲芸のように著作物を演じなくても芸能的な性質があれば実演に含まれるが、棒高跳びの跳躍は記録や勝敗を争う競技であって、著作物を演ずるものでも芸能を見せるものでもない。したがって跳躍は実演に当たらず、選手は実演家として89条1項の権利を享有しない。枝は競技の跳躍を実演として著作隣接権で保護される行為に含めている点で誤っている。

実演著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
- 実演(3号):著作物を演ずること、又は著作物を演じないが芸能的な性質を有する類似の行為である
- 実演家(4号):俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者と、実演を指揮し、又は演出する者である
- レコード(5号):物に音を固定したもので、音を専ら影像とともに再生することを目的とするものは除く
- レコード製作者(6号):レコードに固定されている音を最初に固定した者である
- 放送・有線放送(8号・9号の2):公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的とする無線通信・有線電気通信の送信である
正しい。複製は写真その他の方法により有形的に再製することであり(2条1項15号)、絵画の一部でもその創作的表現が再現されていれば複製権の侵害となることがある。
2条1項15号は、複製を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することと定義し、21条は著作者がその著作物を複製する権利を専有すると定める。複製は著作物の全部を再製する場合に限られず、著作物の創作的な表現が再現されていれば一部の再製でも複製に当たる。絵画は構図や筆致や色彩の全体に創作性があるが、その一部分にも画家の個性が表れていることが多く、拡大して撮影した画像にその部分の創作的表現が再現されていれば、写真という方法による有形的な再製である。拡大という大きさの変更は表現の同一性を失わせるものではなく、複製であることを妨げない。したがって絵画の原作品の一部を拡大して撮影する行為は複製権の侵害となることがあり、枝の記述は正しい。撮影した部分が創作的表現を含まないときは複製にならないが、それは枝の「侵害となることがある」という結論を左右しない。

複製印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
正しい。上映は著作物を映写幕その他の物に映写することであり(2条1項17号)、タブレットの画面に絵画の画像を表示して店内の客に見せる行為は公の上映として上映権の侵害となることがある。
2条1項17号は、上映を著作物(公衆送信されるものを除く)を映写幕その他の物に映写することと定義し、22条の2は著作者がその著作物を公に上映する権利を専有すると定める。上映権は平成11年改正で映画の著作物以外の著作物にも広げられ、映写の対象も映写幕に限らずその他の物を含むから、ディスプレイの画面に静止画像を表示することも上映に当たる。タブレット型端末で原作品を撮影して画像データを保存する段階は複製であり、その画像を画面に表示して来店者に見せる段階は公衆に直接見せる目的の映写であって、公の上映となる。原作品そのものを飾るのではないから25条の展示権の問題ではなく、45条1項の所有者による展示の例外も働かない。したがって画像を表示して喫茶店内に飾る行為は上映権の侵害となることがあり、枝の記述は正しい。

上映著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。
正しい。実演家の権利は実演の録音と録画を対象とし(91条1項)、録画は影像を連続して物に固定することであるから(2条1項14号)、静止画である写真の撮影は著作隣接権の侵害に当たらない。
91条1項は、実演家がその実演を録音し又は録画する権利を専有すると定め、2条1項13号は録音を音を物に固定し又はその固定物を増製すること、14号は録画を影像を連続して物に固定し又はその固定物を増製することと定義する。実演家の財産権はこのほか放送権・有線放送権、送信可能化権、譲渡権、貸与権であり、いずれも実演を固定し又は送信して伝達する行為を対象としている。著作者の複製権が写真その他の方法による有形的な再製を広く含むのと違って、実演家の権利は録音と録画に限られ、連続しない一瞬の影像を固定する写真の撮影は録画の定義に当たらない。歌手が舞台で歌唱しているところを無許諾で写真撮影しても、その写真は歌唱の音も連続する影像も固定しておらず、他に写真撮影を対象とする著作隣接権もないから、歌手の著作隣接権の侵害には当たらない。したがって枝の記述は正しい。

録画影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。
誤り。違うのは「著作権法において保護される著作物であると推定される」の部分である。実名の登録の効果は著作者の推定(75条3項)に限られ、著作物性を推定する規定はない。
75条3項は、実名の登録がされている者を当該登録に係る著作物の著作者と推定すると定めるだけで、推定の対象は誰が著作者かという点に限られる。著作物は思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(2条1項1号)であり、登録に係る作品がこれに当たるかどうかは、創作性の有無を個別に判断して決まる事柄である。文化庁長官の登録は申請に基づいて原簿に記載する手続であり、作品の創作性を実体的に審査するものではないから、登録を根拠に著作物性まで推定させる仕組みにはなっていない。著作物性が争われれば、登録の有無にかかわらず、著作物であると主張する側がこれを立証することになる。登録の効果は、著作者の推定(75条3項)、最初の発行又は公表の日の推定(76条2項)、創作の日の推定(76条の2第2項)のように条文で個別に定められたものに限られる。

実名の登録がされている者は、当該登録に係る著作物の著作者と推定する。
誤り。違うのは「例示規定に列挙された著作物に該当しない表現物は、著作物として保護し得ない」の部分である。10条1項は例示であり、列挙に当たらなくても2条1項1号を満たせば著作物となる。
10条1項は、この法律にいう著作物を「例示すると、おおむね次のとおりである」と定めて言語、音楽、舞踊又は無言劇、美術、建築、図形、映画、写真、プログラムの九つを挙げる。文言のとおりこれは例示であって、著作物の範囲を画するのは2条1項1号の定義であり、思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであれば著作物となる。表現の形式は技術や文化の変化とともに増えるから、法は定義で枠を決め、典型例を列挙して理解の手がかりにする構造をとっている。したがって、九つの列挙のいずれにも当たらない表現物でも、定義を満たす限り著作物として保護される。本枝は例示を限定列挙と読み替えており、ここが条文とずれている。なお、これとは逆に、13条は法令や判決のように定義を満たしても権利の目的とならない著作物を個別に定めている。

この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
- 一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
- 二 音楽の著作物 三 舞踊又は無言劇の著作物
- 四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 五 建築の著作物
- 六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
- 七 映画の著作物 八 写真の著作物 九 プログラムの著作物
- これらは例示であり、列挙に当たらない表現物も2条1項1号の定義を満たせば著作物となる
正しい。著作権法が保護するのは創作的な表現であって学術的思想そのものではないから、先行論文の思想に依拠した論文でも、その文章表現に創作性があれば著作物として保護される。
2条1項1号は、著作物を思想又は感情を「創作的に表現したもの」と定義する。保護の対象は外に表された表現であり、その元になった思想や着想そのものは、誰でも自由に利用できる領域に置かれている。学術的思想を特定の者に独占させれば、後に続く研究や議論が妨げられ、文化の発展に寄与するという著作権法の目的(1条)に反するからである。したがって、ある先行論文の学術的思想に依拠して別の論文を書いても、その論文が自らの文章で論旨を組み立て、創作性のある表現になっていれば、それ自体が独立の言語の著作物として保護される。先行論文との関係でも、利用したのが思想だけであって文章表現を再製していなければ、複製にも翻案にも当たらず、先行論文の著作権を侵害することにはならない。本枝は思想への依拠と表現の創作性を正しく切り分けており、条文のとおりである。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
誤り。違うのは「その獲得に相当の労力、費用が費やされている場合、著作物として保護し得る」の部分である。個々のデータは事実であって思想又は感情の創作的表現ではなく、収集の労力や費用は著作物性の根拠にならない。
2条1項1号の著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものである。会社名、納入先別の調達量、納入量、シェア割合といった各データは、客観的に存在する事実をそのまま記したものであり、誰が記録しても同じ内容になるから、そこに人の思想又は感情も、作成者の個性も表れない。著作権法は表現に表れた個性を保護する法であって、情報を集めるのに要した労力や費用に報いる法ではないから、獲得に相当の労力、費用が費やされていても、事実そのものが著作物に変わることはない。本枝はこの労力や費用を保護の根拠にしている点で定義とずれている。なお、事実やデータの集合でも、12条の編集著作物や12条の2のデータベースの著作物として、素材の選択又は配列、情報の選択又は体系的な構成に創作性があればその構成の部分が保護されるが、本枝が問うのは各データそれ自体であり、これとは別である。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
誤り。違うのは「作品として完成していない場合、著作物として保護し得ない」の部分である。著作物の要件に完成は含まれず、下書きでも創作的な表現が現れていれば著作物となる。
2条1項1号は、著作物の要件を、思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属することと定めるだけで、作品として完成していることを求めていない。著作権は創作と同時に、何らの方式の履行も要せずに発生する(17条2項、51条1項)から、保護の始まりは創作的な表現が外に表れた時点であり、作者が完成と考えるかどうかという主観や、公表や発表の有無に左右されない。絵画の下書きであっても、構図や線に描き手の個性が表れていれば、その段階で美術の著作物として保護される。完成していないことを理由に保護を否定すると、制作途中の作品を他人が自由に複製できることになり、創作者を保護する法の趣旨に反する。本枝は完成を著作物の要件に加えている点で条文とずれている。なお、固定を要件とするのは2条3項の映画の著作物だけであり、絵画の下書きの保護には固定の有無も完成の有無も関係しない。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
誤り。違うのは「自然の貝殻そのものであっても、それが鑑賞の対象となる場合、著作物として保護し得る」の部分である。自然物は人の思想又は感情を表現したものではなく、鑑賞の対象になっても著作物にならない。
2条1項1号は、著作物を思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定義する。この定義の出発点は、人の精神活動の所産であることである。著作権法が保護を与えるのは、人が自らの考えや気持ちを外に表した成果に対して、その創作を促すためであるから、人の関与なしに自然が生み出した物は、どれほど美しく鑑賞に値しても、思想又は感情の表現には当たらない。砂浜にある自然の貝殻そのものは、形も模様も自然の作用で決まったものであり、誰の個性も表れていないから、著作物の定義を満たさない。本枝は鑑賞の対象となることを保護の根拠にするが、美術の範囲に属するかどうかは定義の一要素にすぎず、思想又は感情の創作的表現であるという要件を代わりに満たすものではない。貝殻を素材にして人が配置や加工に創作性を加えた作品であれば、その人の創作的表現の部分が著作物となる。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
- 思想又は感情:人の考えや気持ちが元になっていること。自然物や単なる事実、データそのものは当たらない
- 創作的に:作成者の個性が何らかの形で表れていること。ありふれた表現や機械的な再現は当たらない
- 表現したもの:外に表された具体的な表現が対象であり、アイデアや着想そのものは対象にならない
- 文芸、学術、美術又は音楽の範囲:知的・文化的な精神活動の所産であることを広く言う要件である
誤り。違うのは「職務とは無関係に作成する著作物についても、あらかじめ定めた勤務規則等で甲をその著作者とすることができる」の部分である。15条1項が法人等を著作者とするのは業務に従事する者が職務上作成する著作物に限られ、勤務規則でその範囲を広げることはできない。
著作者は著作物を創作する者であり(2条1項2号)、創作していない者が著作者になるのは15条の職務著作の場合だけである。15条1項は、法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、法人等の名義で公表するものについて、作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り法人等を著作者とする。ここで契約や勤務規則が働くのは、要件を満たす著作物について従業者を著作者とする方向、すなわち法人等が著作者となるのを外す方向だけである。職務と無関係に作成する著作物は「職務上作成する」の要件を満たさないため、そもそも15条の適用がなく、勤務規則にどう定めても創作者である乙が著作者になる。著作者の地位は人格権と結びついており契約で移すことができないから、勤務規則で甲を著作者と定めても、著作権の譲渡の約束と読める余地があるにとどまり、著作者そのものを甲にすることはできない。

著作者 著作物を創作する者をいう。
誤り。違うのは「ここでいう映画の著作物は、その趣旨から、劇場用映画に限られる」の部分である。29条1項の対象は映画の著作物一般であり、2条3項により映画の効果に類似する方法で表現され物に固定された著作物も含まれる。
29条1項は、映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは当該映画製作者に帰属すると定める。映画は多数の寄与者が関わり多額の製作費を要するため、円滑な利用のために著作権を製作に発意と責任を有する映画製作者(2条1項10号)に集める趣旨である。そして2条3項は、映画の著作物に、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ物に固定されている著作物を含むとする。テレビ番組やゲームソフトの映像もこれに当たり、29条1項に劇場用映画に限る文言はない。多数の寄与者と製作者の投資という事情は劇場用映画に特有のものではないから、趣旨から限定する根拠もない。29条2項・3項が放送事業者等の製作する映画の著作物について別の扱いを置いているのも、劇場用以外の映画の著作物が同条の対象であることを前提にしている。

この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
| 公表の形 | 著作者 | 著作権 | 著作者人格権 |
|---|---|---|---|
| 会社の発意・従業者が職務上作成・会社名義で公表 | 映画会社(15条1項) | 映画会社 | 映画会社 |
| 「監督乙」と表示して公表(会社名義でない) | 監督乙(16条) | 製作参加の約束があれば映画製作者(29条1項) | 監督乙に残る |
正しい。2条1項5号のレコードは蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したものをいい、オルゴールもこれに当たるから、その音を最初に固定した者は6号のレコード製作者である。
2条1項5号は、レコードを蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したものと定義し、音を専ら影像とともに再生することを目的とするものだけを除く。6号はレコード製作者をレコードに固定されている音を最初に固定した者と定める。レコードの定義は固定の媒体や方式を限定しておらず、音盤やテープは例示にすぎないから、円筒やディスクのピンで音を固定するオルゴールも、物に音を固定したものとしてレコードに当たる。レコード製作者に著作隣接権を与えるのは、音を最初に固定するという行為に投資と労力を認めるためであり、固定の技術が電気的か機械的かで区別する理由はない。したがってオルゴールに音を最初に固定した者はレコード製作者として複製権や送信可能化権などを享有する。除かれるのは映画のサウンドトラックのように専ら影像とともに再生することを目的とする固定物だけであり、オルゴールはこれに当たらない。

レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
- 実演(3号):著作物を演ずること、又は著作物を演じないが芸能的な性質を有する類似の行為
- 実演家(4号):俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者と、実演を指揮し、又は演出する者
- レコード(5号):物に音を固定したもの。音を専ら影像とともに再生することを目的とするものは除く
- レコード製作者(6号):レコードに固定されている音を最初に固定した者
- 商業用レコード(7号):市販の目的をもって製作されるレコードの複製物
- 放送・有線放送(8号・9号の2):公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的とする無線通信・有線電気通信の送信
正しい。共同著作物に当たるには、二人以上が共同して創作したことに加え、各人の寄与を分離して個別的に利用することができないことが要るから、一枚のキャンバスに描いたという事実だけでは決まらない。
2条1項12号は、共同著作物を、二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものと定義する。要件は二つあり、創作の過程で共同して創作する意思と行為があったこと、そして出来上がった表現の各人の部分を切り離して別々に使えないことである。共同著作物になると著作者人格権の行使は著作者全員の合意(64条1項)、著作権の行使は共有者全員の合意(65条2項)によらなければならず、保護期間も最終に死亡した著作者を基準に数えるから(51条2項)、一体として扱う必要がある場合に限る趣旨である。一枚のキャンバスであっても、各画家が打合せなく別個に自分の区画を描いた場合は共同して創作したとはいえず、また各人の絵を切り分けて個別に利用できる場合は結合著作物にとどまる。したがって共同著作物になるとは限らないとする枝は正しい。

共同著作物二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
- 二人以上の者が共同して創作したこと。共同の意思のない寄せ集めは当たらない
- 各人の寄与を分離して個別的に利用することができないこと。小説と挿絵のように切り離して使えるものは結合著作物である
- 共同著作物になると、著作者人格権は著作者全員の合意(64条1項)、著作権は共有者全員の合意(65条2項)で行使する
正しい。口述には口述を録音したものを再生することが含まれ(2条7項)、営利目的の教室で不特定多数の生徒に朗読CDを聞かせる行為は言語の著作物の公の口述であるから、口述権者の許諾が要る。
24条は、著作者はその言語の著作物を公に口述する権利を専有すると定め、口述とは朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(2条1項18号)をいう。さらに2条7項は、口述には、著作物の口述で録音されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)を含むと定めるから、人が目の前で朗読する場合だけでなく、朗読を録音したCDを再生して聞かせる行為も口述に当たる。公にとは公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることであり(22条1項)、不特定多数の生徒に聞かせる再生はこれに当たる。38条1項は営利を目的とせず、かつ聴衆から料金を受けない場合に限って許諾なく公に口述できると定めるが、営利目的の英会話教室はこの要件を満たさない。したがって英語の小説の口述権を有する者の許諾を得る必要があるとする枝は正しい。

この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。
- 公に:公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすること(22条)。公衆には特定かつ多数の者を含む(2条5項)
- 上映:著作物(公衆送信されるものを除く)を映写幕その他の物に映写すること。映画の著作物の音の再生を含む(2条1項17号)
- 口述:朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること。実演に当たるものは除く(2条1項18号)
- 再生・伝達:録音・録画された上演・演奏・口述の再生(公衆送信・上映を除く)と、電気通信設備を用いた伝達(公衆送信を除く)を含む(2条7項)
正しい。貸与権は複製物の貸与により公衆に提供する権利であり(26条の3)、自分の家族は特定かつ少数の者で公衆に当たらないから、有償でも貸与権は及ばない。
26条の3は、著作者はその著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有すると定める。貸与権は、レンタル業のように複製物を公衆に貸して利用させる行為が著作物の売上を奪うことから設けられた権利であり、公衆への提供であることが要件になっている。公衆とは不特定の者をいい、特定かつ多数の者を含む(2条5項)が、特定かつ少数の者は含まれない。自分の家族は顔の見える特定の少数の者であるから、家族に市販の音楽CDを貸す行為は公衆への提供ではなく、お金を取って貸したとしても貸与権の対象にならない。有償であることは貸与権の成否を左右せず、問題は貸す相手が公衆かどうかである。したがって当該音楽の著作物の貸与権を有する者の許諾を得る必要はないとする枝は正しい。38条4項の非営利・無料の貸与の例外を持ち出すまでもなく、そもそも権利が及ばない場面である。

著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
正しい。家庭用ゲームソフトも映画の著作物に当たり、そのプレイ画面を店舗のモニターに映して不特定多数の客に見せる行為は公の上映(22条の2)であるから、上映権者の許諾が要る。
22条の2は、著作者はその著作物を公に上映する権利を専有すると定め、上映とは著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、映画の著作物において固定されている音の再生を含む(2条1項17号)。映画の著作物には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ物に固定されている著作物を含む(2条3項)から、枝が前提とするとおり家庭用ゲーム機用のゲームソフトも映画の著作物となり得る。スクリーンに限らずテレビやモニターの画面に表示することも「その他の物に映写する」に当たり、飲食店の店舗で不特定多数の客に見せる目的で映すことは公の上映である。38条1項の非営利・無料の例外は、飲食店の営業の一環として客に見せる場合には営利を目的としないとはいえず、当てはまらない。したがって上映権を有する者の許諾を得る必要があるとする枝は正しい。

著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
誤り。違うのは「当該美術の著作物の著作権は消滅する」の部分である。著作権の消滅事由は保護期間の満了と62条1項の場合に限られ、原作品の滅失は含まれない。
著作権法2条1項1号は著作物を思想又は感情を創作的に表現したものと定め、著作権はこの無体の表現を対象とする権利であって、絵画や書という有体物の原作品の所有権とは別の権利である。著作権が消滅するのは、51条2項以下の保護期間が満了したときと、62条1項が定める著作権者の死亡で相続人がなく国庫に帰属すべきこととなる場合、著作権者である法人の解散で国庫に帰属すべきこととなる場合である。原作品が焼失や破損で消滅しても、表現そのものは複製物や記憶の中に残り得るから、消滅事由に挙げられていない。したがって存続期間が満了していないのに原作品の消滅で著作権が消滅するとする枝は、消滅事由を定めた条文に根拠がない。所有権の対象である原作品と、著作権の対象である著作物を分けて考える点が、45条や47条の原作品の所有者に関する定めの前提でもある。

著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。
一 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条(残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
二 著作権者である法人が解散した場合において、その著作権が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第二百三十九条第三項(残余財産の国庫への帰属)その他これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
- 存続期間の満了:51条から54条までの期間が満了したときに消滅する(57条で翌年から起算する)
- 相続人の不存在(62条1項1号):著作権者が死亡し、民法959条で国庫に帰属すべきこととなるときに消滅する
- 法人の解散(62条1項2号):著作権者である法人が解散し、残余財産として国庫に帰属すべきこととなるときに消滅する
- 消滅しない場合:原作品の滅失、著作者人格権の消滅、質権の設定では著作権は消滅しない
正しい。東京タワーの高さという事実をありふれた言い回しで述べただけの文章は、思想又は感情を創作的に表現したものに当たらず、著作物ではない。
著作権法2条1項1号は、著作物を思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定め、10条2項は事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道が言語の著作物に該当しないと確認している。著作権法が保護するのは表現であって、事実やデータそのものは誰の創作でもなく、独占させれば情報の流通を妨げるからである。東京タワーが333メートルであるという事実を「東京タワーは333メートルである。」と述べる文章は、事実をそのまま伝えるもので、誰が書いても同じになる言い回しに作成者の個性は表れない。したがって創作性がなく、著作物ではないとする枝は正しい。同じ事実を題材にしても、表現の選択や構成に個性が表れた解説文であれば言語の著作物となり得るが、保護はその表現に及ぶだけで、高さという事実自体は誰でも自由に利用できる。

事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
- 思想又は感情:人の考えや気持ちが元になっていることである。単なる事実やデータそのものは当たらない
- 創作的に:作成者の個性が何らかの形で表れていることである。ありふれた表現、機械的な再現、技術的基準どおりの処理は当たらない
- 表現したもの:外に表された具体的な表現が対象で、アイデアや着想そのものは対象にならない
- 文芸、学術、美術又は音楽の範囲:知的・文化的な精神活動の所産であることを広く言う要件で、実用品や技術文書を直ちに外す趣旨ではない
誤り。違うのは「撮影された人物が著作権者となる」の部分である。著作権は著作物を創作した著作者が享有するから、契約がなければ撮影したカメラマンが著作者であると同時に著作権者である。
著作権法2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定め、17条1項は著作者が著作者人格権と著作権を享有すると定める。著作権は創作という事実によって創作者のもとに生じる権利であり、方式も契約も要らず、契約で動かせるのは生じた後の著作権の譲渡だけである。人物を撮影した写真の著作物で創作をしたのは、被写体の選択や構図、シャッターチャンスに個性を表した撮影者のカメラマンであって、撮影された人物は表現の対象になったにすぎず、創作をしていない。したがって特段の契約がなければ、著作者も著作権者もカメラマンであり、被写体の人物が著作権者になることはない。枝は著作者と著作権者を別人に分けているが、分かれるのは譲渡や29条のような特別の定めがある場合だけである。撮影された人物に残るのは、肖像に関する人格的な利益であって著作権ではない。

著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
誤り。違うのは「当該用語辞典の編集著作物とは別個独立に、レイアウト・フォーマット用紙自体が著作物となる」の部分である。レイアウト・フォーマット用紙は編集の割付け方針を示すにとどまり、それ自体は著作物とならない。
2条1項1号は、著作物を思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定める。用語辞典の紙面は素材の選択又は配列によって創作性を有する編集著作物として12条1項で保護されるが、保護の対象はできあがった紙面の選択・配列であり、その作業のために用意した割付け用のレイアウト・フォーマット用紙は、どの位置に何を置くかという編集の方針を示す道具にすぎない。方針や着想は表現ではなく、紙面の割付けが工夫されていてもその工夫は編集著作物の中で評価されるから、編集過程を離れた独自の創作的表現と認めるべき特段の事情がない限り、用紙自体に独立の著作物性は認められない。知恵蔵事件の東京高判もこの理で判断している。編集著作物とは別個独立に用紙自体が著作物となるとする点がずれている。

著作物思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
- 思想又は感情:人の考えや気持ちが元になっていることである。単なる事実やデータそのものは当たらない
- 創作的に:作成者の個性が何らかの形で表れていることである。ありふれた表現、機械的な再現は当たらない
- 表現したもの:外に表された具体的な表現が対象で、アイデアや着想そのものは対象にならない
- 文芸、学術、美術又は音楽の範囲:知的・文化的な精神活動の所産であることを広く言う要件である
誤り。違うのは「歌曲ハは、詩イを原著作物とする二次的著作物である」の部分である。詩に旋律を付けた歌曲は詩を翻案したものではなく、詩と旋律が結合しただけで二次的著作物ではない。
2条1項11号は、二次的著作物を著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物と定める。二次的著作物になるのは、既存の著作物の表現に手を加えて新たな創作性を付け加えたものであり、原著作物の表現がその中に取り込まれて一体になっていることが前提である。詩イに旋律ロを付けた歌曲ハは、詩イの言葉をそのまま歌詞として使い、そこに別の著作物である旋律ロを添えたものである。詩イは翻案されておらず、歌詞と旋律はそれぞれ分離して個別に利用できるから、歌曲ハは言語の著作物と音楽の著作物の結合であって、詩イを原著作物とする二次的著作物ではない。詩イの利用に甲の許諾が要ることは変わらないが、その根拠は原著作物としての28条ではなく詩イ自体の著作権である。

二次的著作物著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
誤り。違うのは「当該漫画についての著作権の侵害となる」の部分である。キャラクターの名称だけを表示しても漫画の具体的表現を再製したことにならず、複製に当たらない。
21条は著作者がその著作物を複製する権利を専有すると定め、複製とは印刷、写真、複写その他の方法により有形的に再製することをいう(2条1項15号)。著作物は思想又は感情を創作的に表現したものであるから、再製されたのが漫画の絵や文章という具体的表現であって初めて複製になる。ポパイネクタイ事件の最判は、漫画の具体的表現を離れたキャラクターそのものは著作物ではないとした。登場人物の名称はその人物を指す言葉にすぎず、それ自体に創作性はなく、Tシャツにゴシック体で大書しても漫画のどの場面の表現も再製していない。したがって複製権の侵害は成立せず、名称の使用が問題になるとすれば商標法や不正競争防止法の領域である。当該漫画についての著作権の侵害となるとする点がずれている。

著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
- 複製の方法:印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法である。手段を限定しない例示である
- 複製の要件:有形的に再製することである。一部の再製や拡大縮小も含む
- 複製に当たらない行為:既存の著作物に依拠しない独立の創作と、創作的表現を再製していない行為(名称だけの表示、思想の利用)である
誤り。違うのは「たとえその表現に創作者の個性が現れていても、著作物には当たらない」の部分である。契約書案であっても、表現に作成者の個性が現れていれば2条1項1号の創作性を満たし、言語の著作物に当たる。
2条1項1号は、著作物を思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定め、10条1項1号は小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物を例示する。著作物性を決めるのは表現に作成者の個性が現れているかどうかであり、文書の用途が契約という実務上のものであることは要件に関係しない。契約書案も条項の選択や配列、文言の組み立てに作成者の工夫が入り得るから、創作性が認められれば言語の著作物となる。文芸、学術、美術又は音楽の範囲という要件も、知的・文化的な精神活動の所産を広く含む趣旨であり、実務文書を直ちに外すものではない。枝は、個性が現れていることを認めながら契約書案という理由だけで著作物性を否定しており、2条1項1号に定めのない除外を持ち込んでいる点がずれている。13条が権利の目的とならないとする法令や判決とも異なり、私人が作る契約書案を外す規定はない。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
- 思想又は感情:人の考えや気持ちが元になっていること。単なる事実やデータそのものは当たらない
- 創作的に:作成者の個性が何らかの形で表れていること。ありふれた表現、機械的な再現は当たらない
- 表現したもの:外に表された具体的な表現が対象で、アイデアや着想そのものは対象にならない
- 文芸、学術、美術又は音楽の範囲:知的・文化的な精神活動の所産を広く言う要件で、実用文書や技術文書を直ちに外す趣旨ではない
誤り。違うのは「美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなくても、独創性を備えていれば、著作物に当たる」の部分である。印刷用書体が著作物に当たるには、独創性に加えて、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えることを要する。
2条1項1号は著作物を思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定める。印刷用書体は文字を読ませるという実用目的のための記号の形であり、文字の形そのものを独占させると文書の作成や印刷に広く支障が出る。そこで最判平12.9.7(ゴナ書体事件)は、印刷用書体が著作物に当たるためには、従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることに加え、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならないとした。独創性と美的特性の両方を要求することで、文字としての実用品である書体と美術の著作物との線を引いたものである。枝は、美的特性を欠いても独創性があれば足りるとしており、二つの要件を重ねて求める判例の枠組みとずれている。書体の保護が否定されても、書体を実装したフォントのプログラムが別に保護され得ることとは区別する。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
正しい。固定式の防犯カメラは設置された位置から機械的に撮影し続けるだけであり、被写体の選択や構図に撮影者の個性が現れないから、その写真は2条1項1号の創作性を欠き著作物に当たらない。
2条1項1号は著作物を思想又は感情を創作的に表現したものと定め、10条1項8号は写真の著作物を例示する。写真が著作物となるのは、カメラという機械で撮ったからではなく、被写体の選択、構図、光線、シャッターチャンスの捉え方などに撮影者の個性が現れているからである。固定式の防犯カメラは、あらかじめ据え付けられた位置と画角で、人の判断を介さずに連続して撮影し続けるものであり、個々の写真に撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているとはいえない。したがって、そこに写った映像は事実の機械的な記録にすぎず、著作物には当たらない。枝は、固定式の防犯カメラで撮影した写真は著作物に当たらないとしており、創作性を要件とする2条1項1号に沿っている。ポスターを忠実に複写しただけの写真が著作物とならないのと同じ理屈であり、撮影者が構図を選んだ写真との違いは個性の現れる余地にある。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
誤り。違うのは「ありふれたものでも、著作物に当たる」の部分である。ありふれた題号は作成者の個性が現れた創作的表現とはいえず、2条1項1号の著作物に当たらない。
2条1項1号は著作物を思想又は感情を創作的に表現したものと定め、創作性すなわち作成者の個性が表現に現れていることを要件とする。書籍の題号は通常ごく短く、誰が付けても同じような表現になるものが多いから、ありふれた題号には個性が現れる余地がなく、それ自体を著作物として独占させると他人の表現の自由を不当に狭めることになる。題号が保護を受けるのは、著作者が著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有すると定める20条1項の同一性保持権の場面であり、これは著作物の一部として題号の改変を止める権利であって、題号そのものに著作物性を認めたものではない。枝は、ありふれた題号であっても著作物に当たるとしており、創作性を要件とする2条1項1号とずれている。題号が長く独創的な表現である場合に言語の著作物となり得ることと、ありふれた題号が著作物とならないこととは別の話である。

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
正しい。著作者は著作物を創作する者であり(2条1項2号)、執筆を激励しただけの友人は小説の表現を作り出していないから著作者とはならない。
2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定める。創作とは思想又は感情を具体的な表現として作り出すことであり、著作者であるかどうかは、その表現の形成に実質的に関与したかという事実で決まる。小説家を激励することは執筆の動機や意欲に働きかけるにすぎず、小説の文章という表現そのものを生み出す行為ではない。同じ理屈で、資金を出した者、題材や着想を提供しただけの者、助言や助手として補助的に関わった者も著作者にはならない。共同著作物となるには二人以上の者が共同して創作することが要るから(2条1項12号)、表現に関与していない友人は共同著作者にもならない。枝は、友人が激励した場合であっても著作者とはならないとしており、創作という事実で著作者を決める2条1項2号に沿っている。著作者は著作者人格権と著作権を方式なしに享有する(17条)ので、誰が創作したかの事実が権利の出発点になる。

著作物を創作する者をいう。
正しい。小説と挿絵はそれぞれ切り離して単独で利用できるから、挿絵付き小説は各人の寄与を分離して個別的に利用することができない共同著作物(2条1項12号)には当たらない。
2条1項12号は、共同著作物を二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものと定める。共同著作物とされると、権利の行使に全員の合意が要り(64条・65条)、保護期間も最終に死亡した著作者の死後70年で数える(51条2項)など、一体として扱う規律が働く。この規律を正当化するのは、各人の寄与が溶け合って切り分けられないという事実であるから、寄与を分離して個別に利用できるものはこの定義から外される。小説家が創作した小説の文章と、イラストレーターが創作した挿絵とは、小説だけを出版することも挿絵だけを展示することもできる別個の著作物であり、挿絵付き小説はこれらが結合したものにすぎない。枝は、挿絵付き小説は共同著作物とはならないとしており、分離利用の可否で線を引く2条1項12号に沿っている。二人で議論しながら書いた論文のように切り分けられないものが共同著作物の典型である。

二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
正しい。ストーリーを創作したのは小説家であり、依頼した企業は創作者ではなく、外部の小説家への依頼は15条1項の職務著作にも当たらないから、企業は著作者とはならない。
2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定めるから、映像広告のストーリーの著作者は、その表現を作り出した小説家である。企業が著作者となる道は職務著作に限られ、15条1項は、法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、法人等が自己の著作の名義の下に公表するものについて、別段の定めがない限り法人等を著作者とする。業務に従事する者とは、法人等の指揮監督の下でその業務に従事し、その対価として給与等を受ける関係にある者をいい、依頼を受けて自らの裁量で創作する外部の小説家はこれに当たらない。依頼と報酬の支払は対価の関係を作るにすぎず、企業が表現を作ったことにはならない。枝は、企業はストーリーの著作者とはならないとしており、2条1項2号と15条1項に沿っている。企業がストーリーを広告に使うには、小説家から著作権の譲渡か利用の許諾を受けることになる。

法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
- 発意:法人等の発意に基づくこと。業務の指示や企画に基づいていれば足りる
- 主体:法人等の業務に従事する者が作成すること。雇用関係のある従業者が典型で、外部の小説家への依頼は当たらない
- 職務上:職務として作成すること
- 公表名義:法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであること。プログラムには要らない(15条2項)
- 別段の定め:作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと
正しい。著作者は創作という事実によって定まり、契約で創作していない友人を著作者と定めても、その友人は著作者とはならない。
2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定め、誰が著作者であるかは創作したという事実で決まる。著作者は著作者人格権と著作権を享有する(17条1項)が、このうち著作者人格権は著作者の一身に専属し譲渡できないから(59条)、契約で著作者の地位そのものを動かすことを認めると、人格権の帰属まで合意で変えられることになり、制度の前提が崩れる。創作者以外の者が著作者となるのは、法人等の発意に基づき業務に従事する者が職務上作成する著作物について法人等を著作者とする15条1項のように法が定めた場合に限られる。したがって、小説家と友人とが友人を著作者にすると契約で定めても、その友人は著作者にはならず、契約で移せるのは著作権の帰属にとどまる。枝は、契約で定めたとしても友人は著作者とはならないとしており、2条1項2号の仕組みに沿っている。14条・75条3項の推定も反証を許す推定であって、創作していない者を著作者にする効力はない。

著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
- 原則(2条1項2号):著作物を創作する者が著作者である。創作という事実で決まり、契約や報酬では動かない
- 例外(15条):職務著作の要件を満たすと法人等が著作者となる。法が定めた場合に限る
- 推定(14条・75条3項):実名又は周知の変名の表示、実名の登録で著作者と推定する。反証で覆る
- 契約で動かせるもの:著作権の帰属(譲渡)である。著作者人格権は一身専属で譲渡できない(59条)
誤り。違うのは「その会社が実演家となり、原始的に著作隣接権を取得する」の部分である。実演家は実演を行う者であり(2条1項4号)、実演には職務著作(15条)に当たる規定がないから、職務上の実演でも実演家はピアニスト本人である。
2条1項4号は実演家を俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者等と定め、89条1項は実演家が録音権・録画権等の権利と実演家人格権を享有すると定める。著作物については15条1項が、法人等の発意に基づき業務に従事する者が職務上作成する著作物で法人等の名義で公表するものの著作者を法人等とする職務著作を定めるが、実演家について同じ内容を定めた規定はなく、15条を著作隣接権に準用する規定もない。実演は演奏者の身体を通じて表れる行為であり、法人が実演を行うことは観念できないから、職務上の実演であっても実演家は実際に演奏した者である。音楽教室を運営する会社に雇用されているピアニストが職務上行う実演についても、実演家はピアニスト本人であり、会社は譲渡によって財産権としての著作隣接権を承継的に取得できるにとどまる。枝は、会社が実演家となり原始的に著作隣接権を取得するとしており、職務著作に当たる規定を持たない実演の仕組みとずれている。

実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
誤り。違うのは「実演家に当たらず、著作隣接権を有しない」の部分である。実演家には実演を指揮し、又は演出する者が含まれ(2条1項4号)、アマチュアかどうかで区別されない。
2条1項4号は、実演家を俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者と定める。指揮者は自ら楽器を演奏しないが、解釈やテンポを決めて演奏全体を作り上げ、実演の表現を形づくるから、実演を指揮する者として明文で実演家に含められている。同号には職業として実演を行うことや報酬を得ることといった限定はなく、89条1項により実演家が享有する録音権・録画権等の権利と実演家人格権は、アマチュアであっても実演を行えば生じる。オーケストラがアマチュアであることは、演奏が実演であることにも、指揮者が実演を指揮する者であることにも影響しない。枝は、アマチュアオーケストラの指揮者は実演家に当たらないとしており、実演を指揮する者を実演家に含め職業性を問わない2条1項4号とずれている。演出家が実演家に含まれるのも同じ条文の定めによる。

俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
誤り。違うのは「電車の走行音を録音したレコードについては、著作隣接権は発生しない」の部分である。レコードは物に音を固定したものをいい(2条1項5号)、固定される音が著作物であることは要件でないから、走行音を最初に固定した者にレコード製作者の権利が生じる。
2条1項5号は、レコードを蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)と定め、同項6号はレコード製作者をレコードに固定されている音を最初に固定した者と定める。どちらの定義も固定される音の内容を問わず、音楽の著作物であることや、音に創作性があることを要件にしていない。レコード製作者の保護は音を固定する行為と投資を守るものであって、著作物の創作に対する保護ではないからである。電車の走行音を録音したものも物に音を固定したものとしてレコードに当たり、その音を最初に固定した者はレコード製作者として、89条2項により複製権、送信可能化権、譲渡権、貸与権と二次使用料等を受ける権利を享有する。枝は、走行音のレコードには著作隣接権が発生しないとしており、音の内容を問わない2条1項5号・6号の定義とずれている。鳥の鳴き声や波の音を固定したものも同じくレコードである。

蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
- 実演(3号):著作物を演ずること、又は著作物を演じないが芸能的な性質を有する類似の行為
- 実演家(4号):俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者と、実演を指揮し、又は演出する者
- レコード(5号):物に音を固定したもの。音を専ら影像とともに再生することを目的とするものは除く。音が著作物であることは要らない
- レコード製作者(6号):レコードに固定されている音を最初に固定した者
- 放送・有線放送(8号・9号の2):公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的とする無線通信・有線電気通信の送信
正しい。著作物は思想又は感情を創作的に表現したものであり、誰が作っても同じようになるありふれた交通標語には作成者の個性が表れておらず、創作性を欠くから著作物として保護されない。
2条1項1号は、著作物を、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定義する。創作的にとは、高い芸術性や新規性を求める趣旨ではなく、作成者の個性が何らかの形で表れていれば足りるが、裏返せば、ありふれた表現や、誰が作っても同じようになる表現には個性が表れる余地がなく、創作性が認められない。交通標語は短い語句で注意を促すものであり、表現の選択の幅が狭く、ありふれた言い回しのものは思想又は感情を創作的に表現したものとはいえない。著作権法が創作性を要件とするのは、ありふれた短い表現に独占を認めると、同じ内容を伝えようとする他人の表現の自由が不当に狭まるからである。したがってありふれた交通標語は著作物として保護されず、標語の全体が同じ表現にならない限り、他人が似た標語を作っても侵害にならない。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
- 思想又は感情:人の考えや気持ちが元になっていることである。単なる事実やデータそのものは当たらない
- 創作的に:作成者の個性が何らかの形で表れていることである。ありふれた表現、機械的な再現、技術的基準どおりの処理は当たらない
- 表現したもの:外に表された具体的な表現が対象で、アイデアや着想そのものは対象にならない
- 文芸、学術、美術又は音楽の範囲:知的・文化的な精神活動の所産であることを広く言う要件で、実用品や技術文書を直ちに外す趣旨ではない
正しい。四字熟語自体はありふれた言葉で言語の著作物にならなくても、書道家が書として表現したものは、文字の形、墨の濃淡、筆の運びなどに思想又は感情が創作的に表現された美術の著作物として保護される。
2条1項1号は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものを著作物とし、10条1項4号は絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物を例示する。ありふれた四字熟語は、言葉としては誰が使っても同じで創作性を欠くから、言語の著作物にはならない。しかし書は、文字という素材を用いながら、文字の形や大きさ、線の太さと勢い、墨の濃淡とかすれ、字と字の間隔や全体の構成に書き手の個性を表すものであり、言葉の意味とは別に、視覚的な表現として美術の著作物となり得る。保護されるのは言葉そのものではなく、その書道家がその筆で表した具体的な表現であるから、同じ四字熟語を他人が自分の筆で書くことは自由であり、その書を複製したり、忠実に模写したりする行為が侵害になる。したがってありふれた四字熟語を書道家が書として表現したものは著作物として保護される。

絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
正しい。写真が著作物となるには被写体の選択、構図、光量、シャッターチャンス等に撮影者の個性が表れている必要があり、平面のポスターを忠実に撮影しただけの写真は原物を再現したにすぎず、写真の著作物として保護されない。
10条1項8号は写真の著作物を著作物の例示に掲げるが、例示に当たる類型であっても、2条1項1号の思想又は感情を創作的に表現したものでなければ著作物にはならない。写真の創作性は、被写体の選択や組合せ、構図、カメラアングル、光量と陰影、シャッターチャンス、現像や加工の手法などに撮影者の個性が表れることによって認められる。ポスターのような平面の原物を、ゆがみや色の変化がないように忠実に撮影する場合は、原物を正確に再現することが目的であり、撮影者が選択できる要素はほとんどなく、誰が撮っても同じ結果になるから、撮影者の個性が表れる余地がない。したがって交通標語が記載されたポスターを忠実に撮影したにすぎない写真は、機械的な複製に近く、写真の著作物として保護されない。ポスターそのものに創作性があれば、その著作権が及ぶだけである。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
誤り。違うのは「乙は、当該記事の共同著作者となる」の部分である。共同著作物は二人以上の者が共同して創作した著作物であり、誤字を指摘しただけの乙は表現の創作に関与していないから著作者にならない。
2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定め、12号は共同著作物を、二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものと定める。著作者であるかどうかは、思想又は感情の創作的な表現を自ら行ったかという事実で決まるので、共同著作者となるにも、表現の創作に実質的に関与していることが要る。助言や資料の提供、校正、誤字の指摘は、表現の選択を作成者に委ねたまま周辺で手伝う行為であり、それによって記事の表現に指摘者の個性が加わるわけではない。乙は原稿の誤字を指摘しただけで、記事の表現を生み出したのは修正を含めて甲であるから、記事の著作者は甲のみである。上司であることも創作への関与を意味しないので、乙が共同著作者となることはない。

二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。
正しい。著作者は著作物を創作する者であり、銅像の作成を委ねて資金を提供した甲は表現の創作に関与していないから、多額の資金を提供していても著作者とならない。
2条1項2号は、著作者を著作物を創作する者と定める。著作者であるかどうかは、思想又は感情を創作的に表現する行為を自ら行ったかという事実だけで決まり、創作のきっかけを与えた者、資金を提供した者、モデルになった者は、表現そのものを生み出していないから著作者にならない。甲は自らの立ち姿を模した銅像の作成を乙に委ね、その費用を出しているが、立ち姿をどう捉え、どのような形と質感で表すかという創作は乙が行っており、甲は依頼者でありモデルであるにすぎない。多額の資金を提供したことは契約上の対価の問題であって、創作への関与を意味しない。17条2項により著作者人格権と著作権は創作と同時に何の方式も要せず乙に生じるので、甲が銅像について権利を持ちたければ、乙から著作権の譲渡を受けるほかなく、それでも著作者人格権は乙に残る。したがって甲は銅像の著作者とならない。

著作物を創作する者をいう。
誤り。違うのは「甲社と乙社とがその著作物の共同著作者となることはない」の部分である。各従業者の創作についてそれぞれ15条1項の職務著作が成立すれば、著作者は甲社と乙社になり、両社が共同著作者となり得る。
15条1項は、法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者を、別段の定めがない限りその法人等とする。著作者は本来創作した自然人であるが、15条は、法人等の活動として作られる著作物について、創作した従業者ではなく法人等を初めから著作者とする特別な仕組みである。甲社の従業者と乙社の従業者が共同して一つの著作物を創作し、各人の寄与を分離して個別的に利用できない場合、各従業者の創作部分についてそれぞれの会社との関係で15条1項の要件が満たされれば、著作者は甲社と乙社になる。その結果、両社が2条1項12号の共同著作物の著作者、すなわち共同著作者となり、著作権は65条の共有として両社の合意で行使する。枝は、法人が著作者になる場面を見落として、法人どうしの共同著作を否定している。

法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
正しい。インターネット上で適法に公開されている地図でもガイドブックへの掲載は有形的な再製で複製権を侵害するが、ウェブサイトのアドレスを掲載するだけでは著作物を自ら公衆送信しておらず、公衆送信権の侵害とならない。
21条は著作物を複製する権利を著作者に専有させ、複製は2条1項15号により有形的に再製することをいう。観光地図が適法にインターネット上に掲載されていることは、閲覧を許す趣旨にとどまり、紙の旅行ガイドブックに印刷して再製することまで許す理由にはならないから、無断で掲載すれば複製権の侵害となる。一方、23条1項の公衆送信権は、公衆によって直接受信されることを目的として送信を行う権利であり、自動公衆送信の場合は送信可能化を含む。観光地図を送信しているのは、それを自分のサーバーに置いている掲載元のウェブサイトであって、旅行会社はそのアドレスを示して閲覧者をそこへ導いているにすぎず、地図を自分で送信してもいなければ送信可能化してもいない。したがってアドレスを旅行会社のホームページに掲載する行為は公衆送信権の侵害とならない。なお、侵害コンテンツへ導くリーチサイトは113条2項以下で別に規律される。

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
誤り。違うのは「設計図の著作物の複製権の両方の侵害となる」の部分である。図面に従って建築物を完成することは2条1項15号ロにより建築の著作物の複製に当たるが、図面そのものを有形的に再製してはいないから、設計図の著作物の複製にはならない。
2条1項15号は、複製を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することと定めた上で、同号ロで、建築の著作物については建築に関する図面に従って建築物を完成することを複製に含めている。建築の著作物は、図面の段階ですでに建築物としての創作的な表現が定まっており、図面どおりに建てる行為は、まだ建っていない建築の著作物を有形的に再製する行為にほかならないから、21条の建築の著作物の複製権が及ぶ。一方、設計図は10条1項6号の図形の著作物として、線や記号による図面上の表現が保護される。その複製とは図面を複写するなど図面上の表現を再製することであり、図面に従って建物を建てても、図面という表現が紙やデータの上に再製されるわけではない。したがって設計図に従って建築の著作物を完成する行為は、建築の著作物の複製権の侵害にはなるが、設計図の著作物の複製権の侵害にはならない。

建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
誤り。違うのは「ホール内のスクリーンに公演映像を送信する行為は、公衆送信権の侵害となる」の部分である。2条1項7号の2は、電気通信設備の一の部分の設置の場所が他の部分と同一の構内にあるものによる送信を公衆送信から除いており、同じホール内への送信は公衆送信に当たらない。
23条1項は著作者が公衆送信を行う権利を専有すると定め、2条1項7号の2は、公衆送信を、公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことと定義した上で、電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内にあるものによる送信を、プログラムの著作物の送信を除いて公衆送信から除外している。同一の構内で完結する送信は、舞台を見ている観客に同じ場所で見やすくする手段にすぎず、離れた場所の公衆に著作物を届ける公衆送信とは性質が違うからである。バレエの公演で、舞台のカメラからホール内のスクリーンへ公演映像を送る設備は、送信側も受信側も同じホールの構内に設置されているので、この除外に当たり公衆送信にならない。したがって振り付けの著作物の公衆送信権の侵害とはならない。もっとも、スクリーンに映す行為は公衆に直接見せる上演に当たり得るので、公演自体について上演の許諾を得ていることが前提になる。

公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
誤り。違うのは「映画は漫画の二次的著作物とはなるが、小説の二次的著作物とはならない」の部分である。漫画を介して小説のストーリーを受け継いだ映画は、小説を翻案したものでもあり、小説の二次的著作物にもなる。
2条1項11号は、二次的著作物を、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物と定義する。翻案とは、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できる別の著作物を創作することであり、原著作物に直接当たったか、それを翻案した二次的著作物を経由したかは問われない。小説をもとに漫画が作られ、その漫画をもとに映画が作られてストーリーが同じであれば、映画には小説の創作的表現が漫画を通じて受け継がれている。したがって映画は漫画の二次的著作物であると同時に、小説の二次的著作物でもあり、小説の著作者は28条により映画の利用について映画の著作者と同一の種類の権利を専有する。枝は小説との関係だけを切り離している点で誤っている。

二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
| 利用するもの | 要る許諾 |
|---|---|
| 二次的著作物(翻案した漫画・映画)の利用 | 二次的著作物の著作者の許諾と、28条により原著作者の許諾の両方が要る |
| 原著作物(小説)そのものの利用 | 原著作者の許諾だけで足り、二次的著作物の著作者の権利は及ばない |
誤り。違うのは「美術工芸品を除き、美術の著作物として保護されない」の部分である。2条2項は美術工芸品が美術の著作物に含まれることを明らかにするにとどまり、それ以外の応用美術を一律に除く規定ではない。
2条2項は、この法律にいう「美術の著作物」には美術工芸品を含むものとすると定める。これは、一品製作の美術工芸品が実用品であっても美術の著作物に当たることを確認した規定であり、裏から読んで美術工芸品以外の応用美術はすべて保護されないと定めたものではない。応用美術が美術の著作物になるかは、2条1項1号の著作物の要件に戻って判断され、裁判例は、量産される実用品であっても、美的鑑賞の対象となり得る創作性を備えるものは美術の著作物として保護され得るとしている。意匠法で保護される余地があることも、著作権法の保護を排除する理由にはならない。枝は2条2項を限定列挙と読み、美術工芸品以外の応用美術を一律に保護の外へ置いている点で誤っている。

この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
誤り。違うのは「通常加味される程度の美的創作性を備えていれば、建築の著作物として保護される」の部分である。一般住宅が建築の著作物となるには、建築芸術といえる美的創作性を要するとするのが裁判例である。
10条1項5号は建築の著作物を例示するが、例示に当たるだけでは足りず、2条1項1号の「思想又は感情を創作的に表現したもの」で「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」でなければ著作物にならない。建築物は居住や使用という実用目的を本質とし、設計に多少の美的工夫が加わるのは通常のことである。それを理由に著作物と認めると、同じ間取りや外観の住宅を建てることが複製権侵害になり、住宅の供給が広く妨げられる。そこで裁判例は、一般住宅が建築の著作物となるには、通常加味される程度の美的創作性では足りず、建築芸術といえるような造形芸術としての美的創作性を備えることを要するとした。枝は通常程度の美的創作性で足りるとしている点で誤っている。

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
正しい。頒布には複製物の公衆への貸与が含まれ(2条1項19号)、判例が消尽を認めたのは頒布権のうち譲渡する権利に限られるから、譲り受けたゲームソフトを顧客に貸与する行為には頒布権が及ぶ。
26条1項は、著作者はその映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有すると定め、2条1項19号は頒布を、有償無償を問わず複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することと定義する。家庭用テレビゲーム機用ゲームソフトは映画の著作物に当たり、その複製物を公衆に貸与する行為は頒布に含まれる。判例は、公衆に提示することを目的としない複製物について、頒布権のうち譲渡する権利は適法な第一譲渡によって消尽するとしたが、これは譲渡についてのみ述べたものであり、貸与する権利には及ばない。貸与は複製物の所有権を移さずに繰り返し行える利用であり、一本のソフトが多数の利用者に渡れば販売で得るはずの対価が失われるから、最初の譲渡で権利が尽きるとする理由がないためである。映画以外の著作物の貸与権(26条の3)に消尽の規定がないことと同じ考え方である。したがって業者が譲り受けたソフトを顧客に貸与することは頒布権の侵害になる。

頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
| 譲渡 | 貸与 | |
|---|---|---|
| 映画以外の著作物(漫画本・音楽 CD) | 譲渡権は消尽し、自由にできる(26条の2第2項1号) | 貸与権が及び、許諾が要る(26条の3) |
| 映画の著作物(ゲームソフト・DVD) | 頒布権のうち譲渡する権利は消尽する(判例) | 頒布権のうち貸与する権利は消尽しない |
誤り。違うのは「これらの権利が乙社に帰属する旨が明記されている場合には、乙社が有する」の部分である。著作権は譲渡できるが、著作者人格権は著作者の一身に専属し、合意があっても乙社に移らない。
2条1項2号は著作者を著作物を創作する者と定め、17条1項により著作者は創作と同時に著作者人格権と著作権を享有する。志望理由書を書いたのは甲であり、乙社は募集要項を出しただけで創作に関与していないから、著作者は甲である。そのうえで61条1項は著作権をその全部又は一部について譲渡できると定めるので、募集要項の記載を甲が応募によって受け入れたとみれば、著作権が乙社に移ることはあり得る。しかし59条は著作者人格権を著作者の一身に専属し譲渡することができないものとしており、人格的な利益は著作者本人から切り離せないという理屈で、契約や募集要項に明記しても乙社には帰属しない。著作権と著作者人格権の両方を乙社が有するとする点で枝はずれている。15条の職務著作であれば乙社が著作者となって人格権まで持つが、就職活動中の学生は乙社の業務に従事する者ではない。

著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
| 権利 | 譲渡 |
|---|---|
| 著作権(21条〜28条) | 61条1項により全部又は一部を譲渡できる。27条・28条の権利は特掲がなければ留保と推定される(61条2項) |
| 著作者人格権(18条〜20条) | 59条により一身専属で譲渡できない。契約で特掲しても無効で、死亡により消滅する |
正しい。28条は二次的著作物の利用に原著作者の権利を及ぼす規定であり、原著作物であるイラストそのものを利用するのに、ぬいぐるみを作った乙の権利は及ばない。
イラストを立体のぬいぐるみにする行為は2条1項11号の変形に当たり、ぬいぐるみは妖精のイラストを原著作物とする二次的著作物になる。28条は、二次的著作物の原著作物の著作者が、当該二次的著作物の利用に関し、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すると定める。原著作者の創作的表現が二次的著作物の中に引き継がれているから、二次的著作物を利用すれば原著作物も利用したことになるという理屈で、権利が及ぶ向きは原著作物から二次的著作物への一方向である。本枝で利用されるのは甲のイラストそのものであり、乙のぬいぐるみの表現は使われないから、ぬいぐるみの著作者である乙の権利が働く余地はない。アニメーションの創作はイラストの翻案に当たるので、27条の翻案権を持つ甲から許諾を得れば足りる。逆にぬいぐるみを利用するなら、乙の許諾に加えて28条により甲の許諾も要る。

二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
| 利用するもの | 要る許諾 |
|---|---|
| 二次的著作物(編曲した楽曲・ぬいぐるみ)の利用 | 二次的著作物の著作者の許諾と、28条により原著作者の許諾の両方が要る |
| 原著作物(楽曲・イラスト)そのものの利用 | 原著作者の許諾だけで足り、二次的著作物の著作者の権利は及ばない |
誤り。違うのは「乙はBの映画館での上映について甲の許諾を得なければならない」の部分である。キャストと登場人物が共通するだけでは映画Aの創作的表現を利用しておらず、甲の上映権は映画Bに及ばない。
2条1項1号は著作物を思想又は感情を創作的に表現したものと定め、著作権が保護するのは具体的な表現であって、アイデアや設定のような表現それ自体でない部分は保護の外に置かれる。最判平13.6.28(江差追分事件)も、既存の著作物に依拠し、その表現上の本質的な特徴を直接感得できる別の著作物を創作する行為が翻案であると述べ、思想や事実など表現でない部分又は表現上の創作性がない部分が同一にとどまるときは翻案に当たらないとした。映画Bは出演するキャストと登場人物の設定が映画Aと共通するにとどまり、映像や脚本の具体的な表現を再製しているわけではないから、Aの複製物でも二次的著作物でもない。したがってBは甲の著作物とは別の独立した著作物であり、22条の2の上映権は甲の映画Aを公に上映する場面にしか働かない。乙は自らの映画Bを映画館で上映するのに甲の許諾を要しない。

著作物思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
正しい。工夫を凝らして撮影した写真は乙の写真の著作物であり、その中に美術の著作物である絵皿の表現が再製されているから、カレンダーへの利用には甲と乙の両者の許諾が要る。
2条2項はこの法律にいう美術の著作物に美術工芸品を含むと定め、陶芸家甲の創作した絵皿は美術の著作物として甲の著作権の対象になる。写真家乙がレンズの選択やシャッター速度等に工夫を凝らして撮影した写真は、被写体の選び方や光の捉え方に乙の個性が表れた写真の著作物(10条1項8号)であり、乙が著作権を持つ。ただし、その写真には絵皿の創作的表現がそのまま写し取られているので、写真を複製すれば絵皿を複製したことにもなる。21条の複製権は著作物を有形的に再製する行為に及び、他人の著作物を素材として新たな著作物が作られても、素材の著作者の権利が消えるわけではないという理屈である。出版社丙が写真をカレンダーに印刷する行為は、写真の著作物の複製であると同時に絵皿の複製でもあるから、甲と乙の双方から許諾を得なければならない。

この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
正しい。無断の編曲でも楽曲Bは乙を著作者とする二次的著作物であり、乙の演奏権と、28条により甲が専有する同一の種類の権利の双方が及ぶから、丙は甲と乙の両方の許諾を要する。
2条1項11号は二次的著作物を著作物を翻訳し、編曲し、その他翻案することにより創作した著作物と定めており、原著作者の許諾を得たことを要件に含めていない。甲の許諾を得ない編曲は27条の翻案権の侵害になるが、編曲家乙が創作的な表現を加えた以上、楽曲Bは乙の二次的著作物として成立し、乙は22条の演奏権を持つ。一方、28条は二次的著作物の原著作物の著作者が、当該二次的著作物の利用に関し、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すると定める。楽曲Bの中には楽曲Aの表現が引き継がれており、Bを演奏すればAの表現も公衆に聞かせることになるという理屈で、甲はBの演奏について乙と同じ演奏権を専有する。したがってオーケストラ丙がコンサートで楽曲Bを公に演奏するには、乙の許諾だけでも甲の許諾だけでも足りず、両者から許諾を得なければならない。

二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
| 利用するもの | 要る許諾 |
|---|---|
| 二次的著作物(編曲した楽曲B・ぬいぐるみ)の利用 | 二次的著作物の著作者の許諾と、28条により原著作者の許諾の両方が要る |
| 原著作物(楽曲A・イラスト)そのものの利用 | 原著作者の許諾だけで足り、二次的著作物の著作者の権利は及ばない |
誤り。違うのは「美術工芸品である香水びんについて、展示権は付与されない」の部分である。美術の著作物には美術工芸品が含まれ、著作者はその原作品により公に展示する権利を専有する。
2条2項はこの法律にいう美術の著作物には美術工芸品を含むと定め、25条は著作者がその美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有すると定める。著作権法は実用に供される量産品を意匠法に委ねる一方、一品制作の工芸品のように鑑賞の対象として作られたものは美術の著作物として保護しており、香水びんであっても美術工芸品として創作されたものは美術の著作物に当たる。美術の著作物は原作品を公衆に見せること自体が著作者の経済的利益に直結するという理屈で、複製や上映とは別に展示権が置かれている。したがって美術工芸品である香水びんの原作品についても展示権は当然に生じ、著作者は25条の権利を享有する。なお、展示権が制限されるのは45条1項で原作品の所有者やその同意を得た者が展示する場合であって、権利そのものが生じないわけではない。

著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。
1著作物は、その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が、第二十一条に規定する権利を有する者若しくはその許諾(第六十三条第一項の規定による利用の許諾をいう。以下この項、次条第一項、第四条の二及び第六十三条を除き、以下この章及び次章において同じ。)を得た者又は第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾(第八十条第三項の規定による複製の許諾をいう。以下同じ。)を得た者によつて作成され、頒布された場合(第二十六条、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を有する者の権利を害しない場合に限る。)において、発行されたものとする。
2二次的著作物である翻訳物の前項に規定する部数の複製物が第二十八条の規定により第二十一条に規定する権利と同一の権利を有する者又はその許諾を得た者によつて作成され、頒布された場合(第二十八条の規定により第二十六条、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利と同一の権利を有する者の権利を害しない場合に限る。)には、その原著作物は、発行されたものとみなす。
3著作物がこの法律による保護を受けるとしたならば前二項の権利を有すべき者又はその者からその著作物の利用の承諾を得た者は、それぞれ前二項の権利を有する者又はその許諾を得た者とみなして、前二項の規定を適用する。
この条文が問われた枝 1問
誤り。違うのは「その詩の著作者の有する公表権の侵害となる」の部分である。翻訳物が原著作者の許諾を得た者によって公衆に提示され又は発行されていれば、4条3項・3条2項により原著作物である詩も公表されたものとみなされ、公表権の対象から外れる。
18条1項は、著作者がその著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利を有すると定める。公表権は著作物を世に出すかどうかを著作者自身が決める権利であるから、既に公表された著作物にはもはや働かない。そして4条3項は、二次的著作物である翻訳物が原著作者の権利を有する者又はその許諾を得た者によって上演、演奏、上映、公衆送信若しくは口述の方法で公衆に提示され、又は送信可能化された場合に、原著作物は公表されたものとみなすと定め、3条2項は許諾を得た者が翻訳物の相当部数の複製物を作成し頒布した場合に原著作物は発行されたものとみなすと定める。翻訳物が公衆に届けば原著作物の内容も世に出たといえ、著作者が自ら許諾している以上、公表するかどうかの決定は既にされているからである。枝の詩は許諾を得た翻訳物が広く公表された時点で公表済みとなるため、その後の無断公表は公表権の侵害にならない。

二次的著作物である翻訳物が、第二十八条の規定により第二十二条から第二十四条までに規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によつて上演、演奏、上映、公衆送信若しくは口述の方法で公衆に提示され、又は第二十八条の規定により第二十三条第一項に規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によつて送信可能化された場合には、その原著作物は、公表されたものとみなす。
- 公表されたものとする場合(4条1項):発行された場合と、22条から25条までの権利を有する者又はその許諾を得た者等によって上演・演奏・上映・公衆送信・口述・展示の方法で公衆に提示された場合
- 公表されたものとみなす場合(4条2項〜4項):権利者等による送信可能化、翻訳物の公衆への提示(原著作物が公表されたものとみなされる)、45条1項の者による原作品の展示
- 公表されたことにならない場合:著作者の同意を得ない公表(18条1項かっこ書)と、公衆に当たらない特定の少数の者への提供・提示
1著作物は、発行され、又は第二十二条から第二十五条までに規定する権利を有する者若しくはその許諾(第六十三条第一項の規定による利用の許諾をいう。)を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその公衆送信許諾(第八十条第三項の規定による公衆送信の許諾をいう。以下同じ。)を得た者によつて上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合(建築の著作物にあつては、第二十一条に規定する権利を有する者又はその許諾(第六十三条第一項の規定による利用の許諾をいう。)を得た者によつて建設された場合を含む。)において、公表されたものとする。
2著作物は、第二十三条第一項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその公衆送信許諾を得た者によつて送信可能化された場合には、公表されたものとみなす。
3二次的著作物である翻訳物が、第二十八条の規定により第二十二条から第二十四条までに規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によつて上演、演奏、上映、公衆送信若しくは口述の方法で公衆に提示され、又は第二十八条の規定により第二十三条第一項に規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によつて送信可能化された場合には、その原著作物は、公表されたものとみなす。
4美術の著作物又は写真の著作物は、第四十五条第一項に規定する者によつて同項の展示が行われた場合には、公表されたものとみなす。
5著作物がこの法律による保護を受けるとしたならば第一項から第三項までの権利を有すべき者又はその者からその著作物の利用の承諾を得た者は、それぞれ第一項から第三項までの権利を有する者又はその許諾を得た者とみなして、これらの規定を適用する。
この条文が問われた枝 4問
正しい。32条1項で引用して利用できるのは公表された著作物に限られ、名宛人しか読んだことのない私信は未公表であるから、公正な慣行に合致し正当な範囲内でも適法な引用に当たらない。
32条1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる」と定め、その上で引用が公正な慣行に合致し、かつ報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われることを求める。4条1項によれば、著作物は発行されるか、権利者又はその許諾を得た者によって上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合に公表されたものとなる。政治家が家族に宛てた私信で名宛人以外の者が読んだことのないものは、公衆に提供も提示もされておらず未公表である。未公表の著作物を公表するかどうかは著作者が公表権(18条1項)で決める事柄であり、引用の名で他人が先に公にすることを法は認めていない。したがって、報道の中での引用が公正な慣行に合致し目的上正当な範囲内であっても、32条1項の適法な引用には当たらず、本枝は正しい。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
- 対象は公表された著作物であること。未公表の私信や原稿は引用できない
- 引用が公正な慣行に合致すること
- 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われること
- 複製して引用するときは出所の明示が要る(48条1項1号)
誤り。違うのは「これにより当該楽曲は公表されたことになるから、このリポーターが当該楽曲をテレビ番組で放送することは、公表権侵害にあたらない」の部分である。1人に感想を聞くために渡しただけでは公衆への提供ではなく未公表のままである。
4条1項は、著作物が発行され、又は権利者若しくはその許諾を得た者によって上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合に公表されたものとすると定める。発行も公衆の要求を満たす相当程度の部数の複製物が公衆に頒布されることであり(3条1項)、いずれにせよ公表には公衆への提供又は提示が要る。公衆は不特定の者又は特定かつ多数の者であり(2条5項)、感想を聞くためその限りとして1人の芸能リポーターに録音データを提供する行為は、特定の少数の者への提供であって公衆への提供に当たらない。したがって楽曲は公表されていない。18条1項により、著作者はまだ公表されていない著作物を公衆に提供し又は提示する権利を有するから、リポーターが音楽家の同意なく当該楽曲をテレビ番組で放送することは、公衆送信の方法による公衆への提示であり、公表権の侵害となる。本枝は、少数の者への提供を公表と扱っている点で条文とずれている。

著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。
- 発行されたとき:公衆の要求を満たす相当程度の部数の複製物が権利者等により頒布されたとき(3条1項)
- 権利者又はその許諾を得た者等によって上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示されたとき
- 公衆は不特定の者又は特定かつ多数の者(2条5項)。特定の少数の者への提供・提示は公表にならない
- 同意を得ないで公表された著作物は、なお公表権の対象となる(18条1項括弧書き)
誤り。違うのは「その詩の著作者の有する公表権の侵害となる」の部分である。翻訳物が原著作者の許諾を得た者によって公衆に提示され又は発行されていれば、4条3項・3条2項により原著作物である詩も公表されたものとみなされ、公表権の対象から外れる。
18条1項は、著作者がその著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利を有すると定める。公表権は著作物を世に出すかどうかを著作者自身が決める権利であるから、既に公表された著作物にはもはや働かない。そして4条3項は、二次的著作物である翻訳物が原著作者の権利を有する者又はその許諾を得た者によって上演、演奏、上映、公衆送信若しくは口述の方法で公衆に提示され、又は送信可能化された場合に、原著作物は公表されたものとみなすと定め、3条2項は許諾を得た者が翻訳物の相当部数の複製物を作成し頒布した場合に原著作物は発行されたものとみなすと定める。翻訳物が公衆に届けば原著作物の内容も世に出たといえ、著作者が自ら許諾している以上、公表するかどうかの決定は既にされているからである。枝の詩は許諾を得た翻訳物が広く公表された時点で公表済みとなるため、その後の無断公表は公表権の侵害にならない。

二次的著作物である翻訳物が、第二十八条の規定により第二十二条から第二十四条までに規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によつて上演、演奏、上映、公衆送信若しくは口述の方法で公衆に提示され、又は第二十八条の規定により第二十三条第一項に規定する権利と同一の権利を有する者若しくはその許諾を得た者によつて送信可能化された場合には、その原著作物は、公表されたものとみなす。
- 公表されたものとする場合(4条1項):発行された場合と、22条から25条までの権利を有する者又はその許諾を得た者等によって上演・演奏・上映・公衆送信・口述・展示の方法で公衆に提示された場合
- 公表されたものとみなす場合(4条2項〜4項):権利者等による送信可能化、翻訳物の公衆への提示(原著作物が公表されたものとみなされる)、45条1項の者による原作品の展示
- 公表されたことにならない場合:著作者の同意を得ない公表(18条1項かっこ書)と、公衆に当たらない特定の少数の者への提供・提示
誤り。違うのは「その音楽が公に演奏されない限り、公表権の侵害とならない」の部分である。公表権は未公表の著作物を公衆に提供し又は提示する権利であり、譜面をインターネット上に掲載すれば公衆送信の方法で公衆に提示したことになるから、演奏の有無にかかわらず公表権を侵害する。
18条1項は、著作者は、その著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利を有すると定め、4条1項は、著作物が発行され、又は権利者若しくはその許諾を得た者によって上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合に公表されたものとする。公表権は、著作物を世に出すかどうか、いつどの方法で出すかを著作者だけが決められるようにした人格権であり、公衆に届く方法であれば演奏に限らず、公衆送信も提示の一つとして4条1項に掲げられている。未公表の音楽の著作物の譜面を無断でインターネット上に掲載する行為は、著作物を公衆送信して公衆に提示する行為であるから、23条1項の公衆送信権を侵害するとともに、著作者の同意なく未公表の著作物を公衆に提示するものとして18条1項の公表権も侵害する。音楽の著作物だからといって、公表の方法が演奏に限られるわけではない。

著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。
レコードは、その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が、第九十六条に規定する権利を有する者又はその許諾(第百三条において準用する第六十三条第一項の規定による利用の許諾をいう。第四章第二節及び第三節において同じ。)を得た者によつて作成され、頒布された場合(第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項に規定する権利を有する者の権利を害しない場合に限る。)において、発行されたものとする。
著作者の権利及びこれに隣接する権利に関し条約に別段の定めがあるときは、その規定による。