1実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有する。
2実演を利用する者は、その実演家の別段の意思表示がない限り、その実演につき既に実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示することができる。
3実演家名の表示は、実演の利用の目的及び態様に照らし実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき又は公正な慣行に反しないと認められるときは、省略することができる。
4第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
1 行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該実演につき既にその実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示するとき。
2 行政機関情報公開法第六条第二項の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人が実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該実演の実演家名の表示を省略することとなるとき。
3 公文書管理法第十六条第一項の規定又は公文書管理条例の規定(同項の規定に相当する規定に限る。)により国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該実演につき既にその実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示するとき。
この条文が問われた枝 3問
誤り。違うのは「甲の実演家人格権としての公表権の侵害となり得る」の部分である。実演家人格権は氏名表示権と同一性保持権の二つだけで、公表権は定められていない。
89条1項は、実演家は90条の2第1項及び90条の3第1項に規定する権利を実演家人格権として享有すると定め、90条の2第1項は実演家名を表示し又は表示しないこととする氏名表示権を、90条の3第1項は自己の名誉又は声望を害する実演の改変を受けない同一性保持権を定める。著作者人格権には18条の公表権があるが、実演家人格権はこの二つに限られており、未公表の実演を公衆に提示するかどうかを実演家が決める権利は規定されていない。非公開の練習での舞踊を無断で録画してSNSで公開する行為は、91条1項の録画権や92条の2第1項の送信可能化権の侵害となり得るものの、存在しない公表権の侵害にはならない。本枝は著作者人格権にしかない公表権を実演家人格権に含めている点がずれている。

実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
| 著作者人格権 | 実演家人格権 | |
|---|---|---|
| 公表権 | ある(18条) | ない |
| 氏名表示権 | ある(19条) | ある(90条の2) |
| 同一性保持権 | 意に反する改変を受けない(20条) | 名誉又は声望を害する改変を受けない(90条の3) |
正しい。実演家は実演家名の表示を求める権利を有し(90条の2第1項)、実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき又は公正な慣行に反しないと認められるときは省略できる(同条3項)。
90条の2第1項は、実演家がその実演の公衆への提供又は提示に際し、氏名若しくは芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は表示しないこととする権利を有すると定める。映画のエンディングロールへの氏名の表示を求めることはこの権利の行使である。同条3項は、実演家名の表示は、実演の利用の目的及び態様に照らし実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき又は公正な慣行に反しないと認められるときは省略することができると定める。著作者の氏名表示権の省略を定める19条3項が、利益を害するおそれがないと認められるときに公正な慣行に反しない限りと両方を要求するのに対し、実演は多数の実演家が関わりすべての氏名を表示することが実際上困難な場面が多いため、いずれか一方を満たせば省略できる緩やかな要件になっている。枝はこの又はの関係を正確に述べており正しい。

実演家名の表示は、実演の利用の目的及び態様に照らし実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき又は公正な慣行に反しないと認められるときは、省略することができる。
| 著作者(19条3項) | 実演家(90条の2第3項) | |
|---|---|---|
| 要件 | 創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められ、かつ、公正な慣行に反しないこと | 実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められること、又は公正な慣行に反しないと認められること |
| 関係 | 両方を満たす必要がある | いずれか一方で足りる |
誤り。違うのは「歌手の公表権を侵害する」の部分である。実演家人格権は氏名表示権と同一性保持権の二つであり、実演家に公表権はない。
89条1項は、実演家が享有する権利として、90条の2第1項の氏名表示権と90条の3第1項の同一性保持権を実演家人格権と定義し、これに録音権・録画権、放送権・有線放送権、送信可能化権、譲渡権、貸与権などの財産権を加える。著作者には18条の公表権があるが、実演は多くの場合その場で公衆に見せることを前提に行われ、未公表の実演を公衆に提供するかどうかを実演家に決めさせる必要が著作物ほど大きくないため、平成14年改正で実演家人格権を設けた際も公表権は置かれなかった。未公表の歌唱を無断でインターネット上にアップロードする行為は、歌唱を固定する録音権(91条1項)や、送信可能化権(92条の2第1項)の侵害になり得るほか、歌手名を表示しなければ氏名表示権の問題にもなるが、存在しない公表権を侵害することはない。歌手の公表権を侵害するとする点がずれている。

実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
| 著作者人格権 | 実演家人格権 | |
|---|---|---|
| 公表権 | ある(18条) | ない |
| 氏名表示権 | ある(19条) | ある(90条の2) |
| 同一性保持権 | 意に反する改変を受けない(20条) | 名誉又は声望を害する改変を受けない(90条の3) |








