弁理士試験AIブートラボ 弁理士AIブートラボ

特許出願の分割(44条)とっきょしゅつがんのぶんかつ

特許・実用新案 第3章 出願(明細書・分割・変更・優先権) 短答で32枝

特許出願の分割とは、特許出願人が、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる44条の仕組みです。新たな特許出願はもとの特許出願の時にしたものとみなされます。

一つの願書に発明イと発明ロを一緒に書いて出願したところ、審査官から発明イには拒絶理由があるが発明ロには無いと言われたとします。発明ロを早く特許にしたいなら、発明ロだけを新たな特許出願として切り出し、もとの出願には発明イを残して争うことができます。これが特許出願の分割です。切り出した発明ロはもとの出願の時から明細書に載っていたので、新たな出願はもとの出願の時にしたものとみなされ、先願の地位や新規性の判断でも不利になりません。ただし、いつでもできるわけではなく、44条1項が時期を三つに限っています。

特許庁の窓口の場面。先生が審査官役(札「審査官」)でカウンターの内側に座り、「特許出願A:特許請求の範囲 発明イ・発明ロ」と書かれた一冊の書類を手にしている。カウンターの外に出願人の男性(札「出願人」)が立ち、「新たな特許出願B:発明ロ」と

分割は特許出願人が、二以上の発明を包含する特許出願の一部を、補正をすることができる時又は期間内、特許査定の謄本の送達から30日以内、最初の拒絶査定の謄本の送達から3月以内に限りできます

44条1項は、特許出願人は次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができると定め、1号で願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内、2号で特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内、3号で拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月以内を挙げます。補正ができる間なら出願人はいつでも分割できるので、「補正をすることができる時又は期間内であればいつでも」分割できるという枝は正しいです。分割の目的は単一性違反の解消に限られず、二以上の発明が37条の単一性を満たす一群の発明であっても一部を切り出せるので、「発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当する場合であっても」分割できるという枝は正しいです。委任による代理人が特別の授権を要する行為は9条に列挙されていて、出願の変更や放棄・取下げ、国内優先権の主張、拒絶査定不服審判の請求は入っていますが、出願の分割は入っていません。したがって、特別の授権を得なければ「特許出願の分割をすることができない」という枝は誤りです。分割出願を外国語書面出願とすることを禁じる規定もないので、「当該新たな特許出願を外国語書面出願とすることができる」という枝は正しいです。

  • できる者特許出願人です。委任による代理人は特別の授権がなくてもできます(9条の列挙に無いためです)
  • 1号の時期願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内です
  • 2号の時期特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内です。前置審査(163条3項で準用する51条)と拒絶査定不服審判(160条1項の審査に付された出願)での特許査定は除かれます
  • 3号の時期拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月以内です
  • 対象二以上の発明を包含する特許出願の一部です。単一性を満たす一群の発明でも分割できます

特許査定後の30日は前置審査と拒絶査定不服審判での特許査定を除き、設定登録で出願が係属しなくなれば分割できなくなりますが、特許料の納付期間が延長されれば延びます

2号のかっこ書は、163条3項で準用する51条の規定による特許査定、つまり前置審査での特許査定と、160条1項の審査に付された出願についての特許査定、つまり拒絶査定不服審判の中でされた特許査定を除いています。審判の段階まで来た出願で分割を許すと、拒絶査定不服審判の請求時に分割できた機会に加えてもう一度分割を認めることになり、審査を引き延ばす手段になるからです。したがって、特許査定の謄本の送達から30日以内であれば「どのような場合でも2以上の発明を包含する特許出願の一部を分割して新たな特許出願とすることができる」という枝は誤りで、前置審査で特許査定がされた場合に「特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内であれば、その特許出願は、出願の分割をすることができる」という枝も誤りです。分割できるのは特許出願人で、出願が特許庁に係属していることが前提です。特許査定の後に特許料を納めて設定登録がされると出願は係属しなくなるので、一度も拒絶理由が通知されずに特許査定がされた出願でも、「当該査定の謄本の送達があった日から30日以内であっても、当該特許出願の一部を分割して新たな特許出願とすることができない場合がある」という枝は正しいです。反対に、特許料の納付が分割の前提になっているわけではないので、「特許料の納付と同時又は納付した後でなければ」分割できないという枝は誤りです。2号の30日は、4条又は108条3項で第1年から第3年までの特許料の納付期間が延長されたときは、その延長された期間を限り延長されたものとみなされます(44条5項)。したがって、30日を過ぎても「その延長された期間内であって特許権の設定の登録前であれば」分割できるという枝は正しいです。3号の3月も、4条で拒絶査定不服審判の請求期間が延長されたときは同じく延びます(44条6項)。責めに帰することができない理由で期間内に分割できなかったときの追完(理由がなくなった日から14日、在外者は2月以内で、期間の経過後6月以内)は、44条7項が2号と3号の期間に限って認めています。1号の期間、つまり「拒絶理由通知において指定された期間内に分割出願をしようとしたが」徒過した場合に7項で分割できるという枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「特許出願」「拒絶理由通知」「特許査定の謄本の送達」「30日」が立ち、「特許出願」から「拒絶理由通知」の指定期間までの区間に帯

分割出願はもとの出願の時にしたものとみなされますが、もとの出願の明細書等に記載された事項の範囲内であることが要り、29条の2の他の特許出願となるときと30条3項の書面には遡及の例外があります

44条2項本文により、新たな特許出願はもとの特許出願の時にしたものとみなされます。分割は、もとの出願に含まれていた発明を別の出願に移すだけで、新しい内容を持ち込む手続ではないからです。裏返せば、分割出願の明細書等に記載された事項がもとの出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された事項の範囲内に無ければ、適法な分割ではなく、出願日は遡及しません。出願Aの明細書に発明イ・ロ・ハがあっても、Aから分割した出願Bに発明ハの記載が無ければ、Bをさらに分割して発明ハを切り出した出願Cは、直接のもとの出願であるBの範囲を超えるので、「特許出願Cは、特許出願Aの時にしたものとみなされる」という枝は誤りです。2項ただし書は二つの例外を置きます。一つは、分割出願が29条の2の他の特許出願(実用新案法3条の2の特許出願)として後願を拒絶する側に立つ場面で、このときは遡及せず現実の出願日で見ます。先願の地位はもとの出願に負わせれば足りるからです。分割出願自身が29条の2で判断される側に立つときは本文どおり遡及するので、分割出願Bが39条ではもとの出願の日にされたものとみなされ、29条の2では「出願Bの出願の日になされたものとみなされる」という枝は誤りです。もう一つは30条3項の書面で、新規性喪失の例外の適用を受けたい旨の書面は分割出願の現実の出願時に出すものとして扱われます。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、机の上に左から「特許出願A:明細書 発明イ・ロ・ハ」「出願Aから分割した出願B:明細書 発明イ・ロ」「出願Bから分割した出願C:特許請求の範囲 発明ハ」の三冊の書類を並べている

もとの出願で提出した書面は分割出願と同時に提出されたものとみなされ、仮専用実施権も分割出願に設定されたものとみなされます

44条4項は、新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について30条3項、41条4項又は43条1項・2項により提出しなければならないものは、新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなすと定めます。新規性喪失の例外、国内優先権、パリ条約の優先権の主張に要る書面を、分割のたびに出し直させる必要がないからです。もとの出願Aで30条2項の適用を受けたい旨の書面と証明する書面を出していれば、分割出願Bで「願書の提出と同時にその旨を記載した書面を新たに提出する必要はない」という枝は正しいです。もとの出願で手続を失念していても、44条2項ただし書で30条3項は遡及しないので、分割出願の出願と同時に改めて書面を出せば例外の適用を受けられます。43条2項の優先権証明書の提出期限は、44条3項により最先の日から1年4月又は新たな特許出願の日から3月のいずれか遅い日までになります。実施権についても、仮専用実施権に係る特許出願について分割があったときは、設定行為に別段の定めがある場合を除き、設定行為で定めた範囲内で分割出願に仮専用実施権が設定されたものとみなされ(34条の2第5項)、仮通常実施権も同様に許諾されたものとみなされます(34条の3第6項)。「仮専用実施権が設定されたものとみなす規定がある」という枝は正しいです。分割に仮専用実施権者の承諾は要りませんが、特許出願を実用新案登録出願に変更するには承諾が要ります(実用新案法10条9項)。

特許庁の窓口の場面。先生が審査官役(札「審査官」)でカウンターの内側に座り、「特許出願A」の書類の脇に「新規性喪失の例外の適用を受けたい旨の書面(30条3項)」「証明する書面」の二枚の紙を置いている。カウンターの外に出願人の男性(札「出願人

分割の後の審査では、出願審査の請求は3年の経過後なら分割の日から30日以内にでき、兄弟出願の同じ拒絶理由には50条の2の通知が付き、もとの出願の審判が終わるまで職権で審査を中止できます

分割出願はもとの出願の時にしたものとみなされるので、出願審査の請求の3年もその日から数えます。3年が過ぎてからの分割に備えて、48条の3第2項は分割の日から30日以内に限り請求できるとしています。分割の兄弟出願で既に通知した拒絶理由と同一の理由を通知するときは、50条の2により、その旨を併せて通知しなければならず、その通知を受けた出願の補正は最初の拒絶理由通知でも17条の2第5項の目的制限を受けます。もとの出願Aについて拒絶査定不服審判が請求されているとき、分割出願Bの審査で必要があると認めれば、54条1項により審決が確定するまでBの手続を中止することができます。これは審査官が職権でする中止なので、「特許出願Bの出願人からの申立てがなければ」中止されることはないという枝は誤りです。意匠法10条の2と商標法10条にも出願の分割があり、時期は特許のような三つの場合ではなく、意匠は出願が審査、審判又は再審に係属している場合、商標はそれに加えて拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合にも分割できる点が特許と違います。

特許法44条1項

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

特許法44条2項

前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。

特許法44条7項

第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

試験ではこう問われる

  1. 時期は補正できる時又は期間内・特許査定の謄本の送達から30日・最初の拒絶査定の謄本の送達から3月の三つ。「補正をすることができる時又は期間内であればいつでも」分割できるという枝は正しい
  2. 前置審査と拒絶査定不服審判での特許査定は2号から除かれる。特許査定後30日以内なら「どのような場合でも」分割できるという枝は誤り
  3. 設定登録で出願が係属しなくなれば分割できないので、特許査定から30日以内でも「できない場合がある」。特許料の納付は分割の前提ではない
  4. 30日は特許料納付期間の延長(108条3項)に合わせて延び、3月は審判請求期間の延長(4条)に合わせて延びる。7項の追完は2号・3号の期間だけで、拒絶理由通知の指定期間の徒過には使えない
  5. 単一性を満たす一群の発明でも分割できる。代理人の分割に特別の授権は要らない(9条の列挙に無い)。分割出願を外国語書面出願にできる
  6. 遡及はもとの出願の明細書等に記載された事項の範囲内に限る。直接のもとの出願に無い発明を分割の分割で切り出しても遡及しない
  7. 29条の2の他の特許出願となるときは現実の出願日(44条2項ただし書)。分割出願自身が判断される側なら29条の2でも遡及する
  8. もとの出願で出した30条3項・41条4項・43条の書面は分割出願と同時に提出されたものとみなす(44条4項)。仮専用実施権・仮通常実施権は分割出願にも設定・許諾されたものとみなす。審判中のもとの出願に係る分割出願の審査は職権で中止できる

この用語が問われた枝

令和5年度 問12 枝イ正しい

特許出願人は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内であればいつでも、2以上の発明を包含する特許出願の一部を分割して新たな特許出願とすることができる。

令和元年度 問6 枝イ正しい

2以上の発明を包含する特許出願において、2以上の発明が特許法第37条に規定する発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当する場合であっても、特許出願人は、当該特許出願の一部を分割して、1又は2以上の新たな特許出願にすることができる。

平成29年度 問14 枝ニ誤り

日本国内に住所又は居所を有する者であって手続をするものの委任による代理人は、特別の授権を得なければ、特許法第44条の規定による特許出願の分割をすることができない。

令和4年度 問6 枝ロ正しい

外国語書面出願の一部を分割して新たな特許出願とする場合には、当該新たな特許出願を外国語書面出願とすることができる。また、日本語でされた特許出願の一部を分割して新たな特許出願とする場合にも、当該新たな特許出願を外国語書面出願とすることは、特許法上、制限されていない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

関連する用語

審査・補正・出願公開

補正の時期と範囲(17条の2)

補正の時期と範囲とは、特許出願人が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を直せるのはいつまでか、どこまで直せ...
出願(明細書・分割・変更・優先権)

明細書・特許請求の範囲の記載要件と外国語書面出願(36条・36条の2・37条・17条の3)

明細書・特許請求の範囲の記載要件とは、36条4項が発明の詳細な説明に、同条6項が特許請求の範囲に求める記載の要件で...
特許要件

拡大先願(29条の2)

拡大先願とは、特許出願に係る発明が、その出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であって当該出願後に出願公開又...
審査・補正・出願公開

審査の流れ(審査請求・拒絶理由通知・査定 48条の2〜52条)

審査の流れとは、特許出願が出願審査の請求を待って審査官の審査に付され、拒絶の理由があれば拒絶理由通知と意見書のやり...
審査・補正・出願公開

補正の却下と前置審査(53条・162〜164条)

補正の却下とは、最後の拒絶理由通知の後などにした明細書等の補正が17条の2第3項から6項までに違反するときに、審査...
出願(明細書・分割・変更・優先権)

国内優先権(41条・42条)

国内優先権とは、特許を受けようとする者が、自分の先の特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書、特許...