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パリ条約による優先権の主張の手続(43条〜43条の3)ぱりじょうやくによるゆうせんけんのしゅちょうのてつづき

特許・実用新案 第3章 出願(明細書・分割・変更・優先権) 短答で14枝

パリ条約による優先権の主張の手続とは、パリ条約4条D(1)により日本の特許出願について優先権を主張する者が、その旨と最初の出願の国名・年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に提出し、優先権証明書類等を最先の日から1年4月以内に特許庁長官に提出する43条の手続です。優先期間を過ぎた出願の救済が43条の2に、世界貿易機関の加盟国や特定国の出願に基づく優先権が43条の3にあります。

外国で最初に出願した発明を日本にも出願するとき、パリ条約4条の優先権を主張すれば、最初の出願から1年以内の日本の出願は新規性や先願の判断で最初の出願の日にされたものとして扱われます。ただ、日本の特許庁は外国の出願を自分では確かめられないので、どの国でいつ出願したかを書いた書面と、その国の政府が認証した出願書類の写しを出してもらう必要があります。43条はこの書面と書類をいつまでに出すか、出さなかったらどうなるかを定めた条文で、出し忘れてもすぐに失効はせず、通知を受けてから出す道が残されています。

特許庁の窓口の場面。先生が受付担当役(札「特許庁長官」)でカウンターの内側に座り、受け取った書類を二つに分けて置いている。左の書類には「優先権主張書面:X国・最初の出願の年月日」、右の書類には「優先権証明書類等:X国政府の認証つき」と書かれ

優先権を主張する旨と最初の出願の国名・年月日を記載した書面は経済産業省令で定める期間内に提出し、その書面の補正で主張を削ることはできません

パリ条約4条D(1)により優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面(優先権主張書面)を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければなりません(43条1項)。この期間は優先権証明書類等と同じく最先の日から1年4月で、以前は出願と同時に提出する必要がありましたが、平成26年改正で緩められました。平成25年度以前の枝には出願と同時と書かれたものがあります。優先権主張書面は17条の4により省令期間内に補正できますが、補正で直せるのは記載の誤りで、方式に不備のない主張を削除する補正はできず、パリ優先権の主張を取り下げる規定もありません。出願Aと出願Bに基づく主張のうち「出願Bについての優先権主張の記載を削除する補正をすることができる」という枝は誤りです。分割出願では、もとの出願について提出された43条1項・2項の書面と書類は新たな出願と同時に提出されたものとみなされます(44条4項)。分割出願Cで「優先権主張書面については提出しなければならない」という枝は誤りです。

優先権証明書類等は、複数の優先権を主張していても、基礎とした出願の日のうち最先の日から1年4月以内に提出します

優先権の主張をした者は、最初の出願をした同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、出願の際の書類で明細書・特許請求の範囲・図面に相当するものの謄本などの優先権証明書類等を、最先の日から1年4月以内に特許庁長官に提出しなければなりません(43条2項)。最先の日は、最初の出願の日、国内優先権の基礎とした出願の日、他のパリ優先権の基礎とした出願の日のうち最も早い日です。期限を「出願Aの出願の日から1年6月以内に特許庁長官に提出しなければならない」という枝は誤りで、X国の出願AとY国の出願Bの両方を基礎にした場合に「出願Bについての優先権書類はY国における出願Bの出願日から1年4月以内である」という枝も誤りです。出願の番号を記載した書面も併せて提出します(同条3項)。同盟国の政府や工業所有権に関する国際機関との間で電磁的方法により書類の内容を交換できる場合には、出願の番号など省令で定める事項を記載した書面を期間内に提出すれば優先権証明書類等を提出したものとみなされます(同条5項)。「優先権証明書類等を提出したものとみなされる場合がある」という枝は正しく、国Xと直接「電磁的方法により交換することができる国でなくとも」国際機関を通じて提供を受けられる場合があるので、提出したものとみなされることがあるという枝も正しいです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で一本目の札を示している。横軸の左から順に札「X国の出願A(最先の日)」「Y国の出願B」「日本の出願C(AとBに基づく優先権の主張)」「出願Aの日から1年4月:優

期間内に提出しないと優先権の主張は効力を失いますが、長官の通知を受けてから省令で定める期間内に提出すれば失効しません

1年4月以内に優先権証明書類等を提出しないときは、その優先権の主張は効力を失います(43条4項)。失うのは主張の効力であって出願そのものではないので、「当該特許出願は効力を失う」という枝は誤りです。期間内に優先権証明書類等又は5項の書面の提出が無かったときは、長官はその旨を通知しなければならず(同条6項)、通知を受けた者は経済産業省令で定める期間内に限り提出できます(同条7項)。責めに帰することができない理由でその期間内に提出できないときは、さらに省令で定める期間内に提出できます(同条8項)。7項又は8項で提出があったときは4項は適用されません(同条9項)。したがって、期間を過ぎれば「直ちに当該パリ優先権の主張はその効力を失う」という枝は誤りで、通知の日から2月を過ぎた後は提出「することができる場合はない」という枝も誤りです。なお、優先権証明書類等と5項の書面が提出されていない間は出願公開の請求ができません(64条の2第1項2号)。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立つ。横軸の左から順に札「最先の日から1年4月(43条2項の期限)」「長官の通知(6項)」「省令で定める期間内に提出(7項)」が立ち、最後の札の横に「責めに帰することができな

優先期間を過ぎた出願でも、故意でなければ省令で定める期間内の出願について43条の2で優先権を主張できます

パリ条約4条C(1)の優先期間(特許は12月)内に優先権の主張を伴う出願をすることができなかった者は、故意に優先期間内に出願しなかったと認められる場合を除き、経済産業省令で定める期間内に省令で定めるところにより出願すれば、優先期間の経過後でもパリ条約4条の例により優先権を主張できます(43条の2第1項)。以前は「正当な理由」が要件でしたが、令和3年改正で「故意でない」ことに緩められ、代わりにこの手続には手数料が必要になりました。責めに帰することができない理由で手続をすることとなった者は納付を免れるので、「この手続に関する手数料を納付する必要がある」という枝は正しいです。43条の2による主張にも43条の手続が準用されます(同条2項)。平成26年改正の前は43条の2が世界貿易機関の加盟国に関する規定だったので、古い枝では条番号が一つずれています。

世界貿易機関の加盟国や特許庁長官が指定する特定国の出願に基づく優先権も、パリ条約4条の例により主張できます

43条の3第1項は、日本国民又はパリ条約の同盟国の国民が世界貿易機関の加盟国でした出願に基づく優先権と、世界貿易機関の加盟国の国民がパリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国でした出願に基づく優先権を、パリ条約4条の例により主張できるとします。加盟国の国民も主張できるので、日本国民又は同盟国の国民「のみが主張することができる」という枝は誤りです。同条2項は、同盟国にも加盟国にも当たらない国でも、日本国民に日本と同一の条件で優先権の主張を認めていて長官が指定する国(特定国)については、その国民がその国でした出願に基づく優先権と、日本国民・同盟国の国民・加盟国の国民がその国でした出願に基づく優先権を認めます。特定国の国民の出願に基づく優先権を「日本国における特許出願について、これを主張することができる場合はない」という枝は誤りです。これらの主張にも43条・43条の2が準用されます(同条3項)。

同じ最初の出願に基づいて複数の日本出願で優先権を主張でき、存続期間や審査請求の期間は優先日ではなく現実の出願日から数えます

パリ条約4条Aの正規の国内出願は結果のいかんを問わないので、取り下げられた出願Aも優先権の基礎になり、出願Aを分割した出願Bも正規の国内出願です。出願Aの日から1年以内なら「出願A及びBの両方を当該優先権の主張の基礎とすることができる」という枝は正しいです。同じ出願Aを基礎に日本で出願Bをした後でも、出願Aの日から1年以内なら「さらに特許出願Cをすることができる」という枝は正しく、同じ基礎から同じ国に複数回主張することを禁じる規定はありません。優先権の効果は29条・29条の2・39条などの判断の基準日を最初の出願の日にすることで、出願日そのものが動くわけではないので、特許権の存続期間は特許出願の日から20年(67条1項)、出願審査の請求は出願の日から3年以内(48条の3第1項)のまま現実の出願日から数えます。優先権の効果の中身(複合優先・部分優先)は条約の章で扱います。

特許法43条1項

パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。

特許法43条4項

第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に優先権証明書類等を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。

特許法43条9項

第七項又は前項の規定により優先権証明書類等又は第五項に規定する書面の提出があつたときは、第四項の規定は、適用しない。

特許法43条の2第1項

パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとしたにもかかわらず、同条C(1)に規定する優先期間(以下この項において「優先期間」という。)内に優先権の主張を伴う特許出願をすることができなかつた者は、経済産業省令で定める期間内に経済産業省令で定めるところによりその特許出願をしたときは、優先期間の経過後であつても、同条の規定の例により、その特許出願について優先権を主張することができる。ただし、故意に、優先期間内にその特許出願をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。

試験ではこう問われる

  1. 優先権主張書面は省令期間(最先の日から1年4月)内に提出する。平成26年改正の前は出願と同時だった。書面の補正で主張を削除することはできず、分割出願ではもとの出願の書面が同時に提出されたものとみなされる(44条4項)
  2. 優先権証明書類等は最先の日から1年4月以内。複数の主張を伴っても最先の日が基準で、「出願Bの出願日から1年4月以内」という枝は誤り。1年6月ではない
  3. 電磁的方法で交換できる場合は省令事項を記載した書面の提出で優先権証明書類等を提出したものとみなす(5項)。国際機関を通じて提供を受けられる場合も含む
  4. 期間内に未提出なら優先権の主張の効力を失う(4項)。失うのは出願ではなく主張の効力。長官の通知後の省令期間内(不責事由ならさらに省令期間内)に提出すれば4項は適用されない。「直ちに効力を失う」という枝は誤り
  5. 優先期間の徒過は43条の2で救済される。故意でないことが要件(令和3年改正で正当な理由から緩和)で、手数料が要るが不責事由の者は免除
  6. 世界貿易機関の加盟国の出願に基づく優先権は加盟国の国民も主張できる。同盟国にも加盟国にも当たらない特定国の出願に基づく優先権も43条の3第2項で主張できる
  7. 同じ最初の出願に基づいて日本に複数の出願で優先権を主張できる。取り下げられた出願や分割出願も正規の国内出願なら基礎になる
  8. 存続期間(出願の日から20年)と出願審査の請求期間(出願の日から3年)は優先日ではなく現実の出願日から数える

この用語が問われた枝

令和8年度 問9 枝ホ誤り

パリ条約同盟国の国民である甲は、パリ条約同盟国Xにおいて出願された出願Aと出願Bに基づいて、日本国において優先権を主張する特許出願Cをした。この場合、優先権主張書面から、出願Bについての優先権主張の記載を削除する補正をすることができる。

令和2年度 問6 枝ニ誤り

パリ条約の同盟国の国民である甲は、パリ条約の同盟国である国Xにおいて最初の特許出願Aをした後、出願Aを基礎としてパリ優先権の主張を伴う特許出願Bを日本国にし、出願Bの手続において、特許法第43条第1項に規定する書面(以下「優先権主張書面」という。)及び同条第2項に規定する書類(以下「優先権証明書」という。)を特許庁長官に提出した。その後、甲が、この出願Bの一部を分割して新たな特許出願Cとするとともに、この出願Cに係る発明について、出願Aを基礎としたパリ優先権を主張するには、出願Cの手続において、特許庁長官に、優先権証明書を提出する必要はないが、優先権主張書面については提出しなければならない。

令和2年度 問9 枝ニ誤り

パリ条約の同盟国の国民である甲は、パリ条約の同盟国である国Xにおいて発明イについて最初の特許出願Aをした。出願Aの出願から9月後、出願Aを基礎とするパリ優先権の主張を伴って、日本国において発明イについて特許出願Bをした。甲は、出願Bの手続において、パリ優先権を証明する書類等(特許法第43条第2項に規定する書類又は同条第5項に規定する書面)を、出願Aの出願の日から1年6月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

平成29年度 問9 枝ハ誤り

パリ条約の同盟国の国民である甲は、発明イについてパリ条約の同盟国であるX国で特許出願Aをし、その後、世界貿易機関の加盟国であるY国で、発明ロについて特許出願Bをした。甲が、発明イ及びロについて、出願A及びBを基礎とするパリ条約による優先権の主張及びパリ条約の例による優先権の主張を伴って我が国に特許出願Cをする場合、甲が、特許法第 43 条第2項に規定する書類(優先権書類)を提出できる期間は、出願Aについての優先権書類はX国における出願Aの出願日から1年4月以内、出願Bについての優先権書類はY国における出願Bの出願日から1年4月以内である。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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