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補正の時期と範囲(17条の2)ほせいのじきとはんい

特許・実用新案 第4章 審査・補正・出願公開 短答で29枝

補正の時期と範囲とは、特許出願人が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を直せるのはいつまでか、どこまで直せるかを定めた17条の2の決まりです。時期は特許をすべき旨の査定の謄本の送達前で、拒絶理由通知を受けた後は四つの場合に限られ、範囲は新規事項の追加の禁止に加えて段階ごとに制限が重なります。

出願した後に、請求項の書き方を直したい、図面の誤りを正したいという場面は普通にあります。けれども、出願した時に無かった内容を後から足せるなら、先に出願した意味が薄れますし、審査官が一度判断した発明を別の発明にすり替えられると審査がやり直しになります。そこで17条の2は、補正ができる時期を特許をすべき旨の査定の謄本の送達前と定め、拒絶理由通知を受けた後は四つの場合に絞ったうえで、どの段階でも願書に最初に添付した明細書等の範囲を超えないこと、段階が進むほど直せる範囲を狭めることにしています。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「特許出願:明細書・特許請求の範囲・図面」と書かれた書類の束を前に置いている。向かいに出願人の男性(札「出願人」)が「手続補正書」と書かれた紙を差し出し、吹き出し「請求項を直し

補正は特許をすべき旨の査定の謄本の送達前ならできますが、拒絶理由通知を受けた後は四つの場合に限られます

17条の2第1項本文は、特許出願人は特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができると定めます。基準は査定がされた日ではなく謄本の送達なので、5月6日に特許査定がされ13日に謄本が送達された出願について9日に出した手続補正書を「特許をすべき旨の査定の後に行われた不適法なものであってその補正をすることができない」という枝は誤りです。ただし書で、50条の拒絶理由通知を受けた後は、最初の拒絶理由通知の指定期間内、拒絶理由通知の後に48条の7の通知を受けたときのその指定期間内、最後の拒絶理由通知の指定期間内、拒絶査定不服審判の請求と同時の四つの場合に限られます。最初の拒絶理由通知を受けるまでは制限が始まらないので、「いつでも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる」という枝は正しく、拒絶理由通知を受ける前に48条の7の通知を受けた場合に「同条の規定により指定された期間内に限り、明細書、特許請求の範囲又は図面の補正をすることができる」という枝は誤りです。反対に、拒絶理由通知の指定期間が過ぎた後に48条の7の通知を受けた場合はその指定期間内に限られるので、同じ言い回しの枝が正しくなります。審判請求のときは請求と同時にする場合だけなので、審判が係属中で査定の謄本の送達から3月以内なら「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について、いつでも補正をすることができる」という枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「出願」「最初の拒絶理由通知」「最後の拒絶理由通知」「拒絶査定の謄本の送達」「審判の請求と同時」が立つ。「出願」から「最初の拒
  • 拒絶理由通知を受ける前特許をすべき旨の査定の謄本の送達前なら、いつでも補正できます(1項本文)
  • 最初の拒絶理由通知の後50条で指定された期間内に限ります(1項1号)
  • 拒絶理由通知の後に48条の7の通知を受けたとき48条の7で指定された期間内に限ります(1項2号)
  • 最後の拒絶理由通知の後最後に受けた拒絶理由通知の指定期間内に限ります(1項3号)
  • 拒絶査定不服審判を請求するときその審判の請求と同時にするときに限ります(1項4号)

どの段階でも願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならず、外国語書面出願では翻訳文が基準になります

17条の2第3項は、1項の補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないと定めます。出願時に開示していなかった事項を後から足すと、先願主義のもとで出願日の利益を不当に広げることになるからです。外国語書面出願では、外国語書面そのものは17条2項で補正できず、36条の2第8項で明細書等とみなされた翻訳文が基準になります。誤訳の訂正を目的とするときは理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならず(2項)、誤訳訂正書による補正は3項の制限から外れて外国語書面の範囲で直せます。誤訳訂正書で補正した後の手続補正書による補正は、翻訳文又は当該補正後の明細書等のどちらかに記載した事項の範囲内であればよいので、「誤訳訂正書により補正された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする場合に限られる」という枝は誤りです。誤訳訂正書は時期の制限とは別の話なので、最後の拒絶理由通知の指定期間内に「誤訳訂正書により誤訳の訂正を目的として、特許請求の範囲の補正をすることができるときがある」という枝は正しいです。

拒絶理由通知の後は特別な技術的特徴を変える補正ができず、最後の拒絶理由通知の後と審判請求時は目的が四つに限られます

17条の2第4項は、1項各号の場合に特許請求の範囲を補正するときは、補正前に受けた拒絶理由通知で判断が示された発明と補正後の発明とが37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明になるようにしなければならないと定めます。審査官が調べた発明と技術的特徴の異なる別の発明に乗り換えられると、審査が最初からやり直しになるからです。4項が及ぶのは拒絶理由通知を受けた後の補正だけなので、最初の拒絶理由通知の指定期間内の補正の要件を「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないという要件のみである」という枝は誤りです。出願審査の請求と同時にした補正には4項は及ばず、削除した請求項を最初の拒絶理由通知の後に戻すことも、当初明細書等に記載があり単一性を満たすなら「発明ロに係る請求項を削除して、発明イに係る請求項を加える補正をすることができる」という枝のとおり正しいです。5項は、最後の拒絶理由通知の指定期間内、審判請求と同時、そして最初の拒絶理由通知でも50条の2の通知を併せて受けた場合に、特許請求の範囲の補正の目的を請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の四つに限ります。減縮は請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定し、産業上の利用分野と解決しようとする課題が同一のものに限られます。2回目の拒絶理由通知が最後の拒絶理由通知でなければ5項は及ばないので、「第2回目の拒絶理由通知を受けた場合において指定された期間内にした特許請求の範囲の補正」が5項各号の目的でなくても「そのことを理由として却下されないことがある」という枝は正しいです。最後の拒絶理由通知の後に発明特定事項を削除して特許請求の範囲を広げる補正は四つの目的に当たらないので、「発明特定事項イを削除する補正は却下されることはない」という枝は誤りです。分割出願について最初の拒絶理由通知と併せて50条の2の通知を受けた場合は最初の通知でも5項が及ぶので、分割出願の補正は「その目的が制限されることがある」という枝は正しいです。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「最後の拒絶理由通知」と書かれた書類を手にしている。向かいに出願人の男性(札「出願人」)が「手続補正書:特許請求の範囲」と書かれた紙を差し出し、吹き出し「請求項から発明特定事項

段階ごとに重なる補正の制限

  • 拒絶理由通知を受ける前(審査請求と同時を含む)3項の新規事項の追加の禁止だけです
  • 最初の拒絶理由通知の後(1項1号)3項と4項です。50条の2の通知を併せて受けたときは5項と6項も加わります
  • 48条の7の通知の後(1項2号)3項と4項です
  • 最後の拒絶理由通知の後(1項3号)3項・4項・5項で、減縮のときは6項の独立特許要件も課されます
  • 審判請求と同時(1項4号)3項・4項・5項で、減縮のときは6項の独立特許要件も課されます

独立特許要件は特許請求の範囲の減縮にだけ課され、違反の扱いは補正の却下・拒絶理由・無効理由で分かれます

17条の2第6項は126条7項を5項2号の場合に準用し、減縮後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとします。減縮して特許になるなら審査を終えられ、ならないなら却下して元の請求項で査定するのが早いからです。準用先は2号だけなので、誤記の訂正のみを目的とする補正に「独立して特許を受けることができるものでなければ当該補正をすることができない」という枝は誤りです。違反の扱いは条文ごとに分かれます。最後の拒絶理由通知の後、50条の2の通知を併せて受けた最初の拒絶理由通知の後、審判請求と同時の補正が3項から6項に違反すると、決定をもって補正が却下されます(53条1項。審判請求と同時の補正については、前置審査では163条1項、審判では159条1項が53条を準用します)。5項・6項違反は49条の拒絶理由に挙がっていないので、減縮補正が利用分野と課題の同一を欠くときに「その補正後の特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない」という枝は誤りです。3項・4項違反は49条1号の拒絶理由で、53条の対象にならない最初の拒絶理由通知の後の補正はこちらで扱います。無効理由になるのは123条1項1号の3項違反だけで、外国語書面出願は除かれ、翻訳文の範囲を超えた補正ではなく外国語書面の範囲を超えたことが同項5号の無効理由になります。4項違反は無効理由ではないので、3項と4項の要件を満たさない補正が「いずれも特許の無効理由となる」という枝は誤りです。

特許庁の審査室の場面。先生が先生役(札「先生」)で黒板の前に立ち、黒板に三つの枠を描いている。左の枠に「補正の却下(53条):3項〜6項違反、最後の拒絶理由通知後・審判請求時」、中の枠に「拒絶理由(49条1号):3項・4項違反」、右の枠に「
特許法17条の2第1項

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

特許法17条の2第3項

第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)。第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。

特許法17条の2第5項

前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 第三十六条第五項に規定する請求項の削除
二 特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
三 誤記の訂正
四 明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)

試験ではこう問われる

  1. 時期の基準は特許をすべき旨の査定の謄本の送達。査定の日の後でも送達前の補正を「特許をすべき旨の査定の後に行われた不適法なものであってその補正をすることができない」という枝は誤り
  2. 最初の拒絶理由通知を受けるまでは「いつでも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる」。48条の7の通知があってもその期間に限られない。拒絶理由通知の後に48条の7の通知を受けたときは指定期間内に限る
  3. 審判請求のときは請求と同時だけ。審判係属中で謄本の送達から3月以内なら「いつでも補正をすることができる」という枝は誤り
  4. 新規事項の追加の禁止はどの段階でもかかる。外国語書面出願は翻訳文が基準で、誤訳訂正書による補正は外国語書面の範囲。誤訳訂正書の後の手続補正書は翻訳文又は補正後の明細書等のどちらでもよい
  5. 4項は拒絶理由通知を受けた後だけ。最初の拒絶理由通知の後の要件を「範囲内においてしなければならないという要件のみである」という枝は誤り。審査請求と同時に削除した請求項を最初の通知の後に戻す補正はできる
  6. 5項の目的制限は最後の拒絶理由通知の後、審判請求と同時、50条の2の通知を併せて受けた最初の通知の後。2回目の通知が最後でなければ及ばない。発明特定事項を削除して広げる補正は「却下されることはない」という枝は誤り
  7. 独立特許要件は特許請求の範囲の減縮にだけ課される。誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明には課されない
  8. 5項・6項違反は53条の補正の却下で、拒絶査定の理由にはならない。3項・4項違反は49条1号の拒絶理由。無効理由は3項違反だけで、4項違反が「いずれも特許の無効理由となる」という枝は誤り

この用語が問われた枝

令和4年度 問10 枝ホ正しい

特許をすべき旨の査定の謄本の送達前であるときは、特許出願人は、特許法第50条の規定による拒絶理由の通知を最初に受けるまでは、いつでも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。

令和4年度 問10 枝イ誤り

特許出願Aは、拒絶理由の通知を受けることなく、審査官により令和4年5月6日に特許をすべき旨の査定がされ、特許をすべき旨の査定の謄本は同月13日に特許出願人に送達された。一方、同月9日に特許出願人により願書に添付した特許請求の範囲について補正をする手続補正書が提出されていた。この場合、その手続補正書による手続の補正は、特許をすべき旨の査定の後に行われた不適法なものであってその補正をすることができない。したがって、特許庁長官は、特許出願人に弁明書を提出する機会を与えた上で、この手続の補正を却下することができる。

令和6年度 問12 枝イ誤り

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前であり、最初の拒絶理由通知を受ける前に、特許法第 48 条の7の規定による通知(文献公知発明に係る情報の記載についての通知)を受けた場合は、同条の規定により指定された期間内に限り、明細書、特許請求の範囲又は図面の補正をすることができる。

平成30年度 問1 枝イ正しい

特許出願について、拒絶理由通知を受け、指定された期間の経過後に特許法第48条の7の規定による通知(文献公知発明に係る情報の記載についての通知)を受けた場合には、同条の規定により指定された期間内に限り、明細書、特許請求の範囲又は図面の補正をすることができる。ただし、前記特許法第48条の7の規定による通知の後に拒絶理由通知を受けたり拒絶査定不服審判を請求することは考慮しないものとする。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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