拒絶査定不服審判(121条・158〜161条)きょぜつさていふふくしんぱん
拒絶査定不服審判とは、拒絶をすべき旨の査定を受けた者が、その査定に不服があるときに、査定の謄本の送達があった日から3月以内に請求し、審判官の合議体に査定の当否を審理してもらう審判です。審査の続きとして行われ、特許をすべき旨の審決、請求は成り立たない旨の審決、又は査定を取り消してさらに審査に付すべき旨の審決で終わります。
審査官から「この出願は特許できません」という拒絶査定の謄本が届いたとき、出願人がもう一段上の合議体に判断をやり直してもらう手続が拒絶査定不服審判です。審査官一人の判断で出願が終わってしまうと、審査の見落としを正す機会がないので、3人又は5人の審判官が審査の続きとして審理します。審査でした手続はそのまま生きていて、請求と同時なら補正もできるので、出願人にとっては最後の立て直しの場面です。

請求できるのは拒絶をすべき旨の査定を受けた者で、期間は査定の謄本の送達があった日から3月です
121条1項は、拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、査定の謄本の送達があった日から3月以内に拒絶査定不服審判を請求することができると定めています。特許をすべき旨の査定に対する審判はありません。期間の起算点は謄本の送達の日なので、査定の後に特許を受ける権利を承継した人が請求するときも変わらず、「期間の起算日は、当該特定承継の日である」という枝は誤りです。4条により、特許庁長官は遠隔又は交通不便の地にある者のために請求により又は職権でこの期間を延長できます。そのため、「その責めに帰することができない理由がなくとも、その査定の謄本の送達があった日から3月経過後に拒絶査定不服審判を請求することができる場合がある」という枝は正しいです。請求する者がその責めに帰することができない理由で期間内に請求できなかったときは、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、期間の経過後6月以内に請求できます(121条2項)。救済の要件は責めに帰することができない理由であって天災地変に限られないので、「その理由が天災地変によるものであるときに限り」追完できるという枝は誤りです。期間を過ぎた請求は不適法で補正できないものとして、135条により審決で却下されるので、「審決をもってこれを却下することができる」という枝は正しいです。

- 請求人拒絶をすべき旨の査定を受けた者です。特許を受ける権利の承継人も含みますが、起算日は変わりません
- 期間査定の謄本の送達があった日から3月です。初日は算入しないので、午前10時の送達なら翌日が起算日です(3条1項)
- 延長遠隔又は交通不便の地にある者のため、特許庁長官が請求又は職権で延長できます(4条)
- 追完責めに帰することができない理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内、かつ期間の経過後6月以内です(121条2項)
- 期間後の請求不適法で補正できない請求として、審決で却下されます(135条)
共有者は全員で請求しなければならず、委任による代理人には特別の授権が要ります
特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければなりません(132条3項)。「共有者の全員が共同して請求しなければならない」という枝は正しいです。14条は、二人以上が共同して手続をしたときに各人が全員を代表する手続から拒絶査定不服審判の請求を除いているので、代表者を届け出ていても一人では請求できず、「代表者が審判の請求をすることができる」という枝は誤りです(審判で負ければ出願全体が拒絶で確定し、共有者全員の権利に関わるからです)。委任による代理人も、9条により特別の授権を得なければ拒絶査定不服審判の請求ができません。授権を欠く請求は9条違反なので、審判長は133条2項により相当の期間を指定して補正を命ずることができ、「補正をすべきことを命ずることができない」という枝は誤りです。
審査でした手続は審判でも効力を持ち、査定と異なる拒絶の理由は審判長が通知して意見書の機会を与えます
拒絶査定不服審判は審査の続きなので、158条により「審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有する」という枝は正しいです。すでに提出した意見書や引用文献をもう一度出し直す必要はありません。審判官は査定の理由に縛られず、査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときは、159条2項で準用する50条により拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければなりません。したがって、異なる理由で「審判の請求は成り立たない旨の審決をする場合、審判請求人に意見書を提出する機会を与えなくてもよい」という枝は誤りです。この通知をするのは審判長であって特許庁長官ではないので、「特許庁長官から拒絶の理由が通知される場合がある」という枝は誤りです。審査の段階で既に通知済みの理由で、その後に補正がされていないときは、改めて通知しなくても審決できる場合があります。

請求と同時の補正は53条の準用で却下され、その決定に独立の不服はありませんが、審査でされた補正の却下の決定は審判で争えます
出願人は審判の請求と同時に明細書、特許請求の範囲又は図面を補正できます(17条の2第1項4号)。159条1項は53条を準用し、この補正が17条の2第3項から6項までに違反するときは審判官が決定で却下します。53条3項により却下の決定には不服を申し立てることができないので、「東京高等裁判所に、補正の却下の決定に対する訴えを提起することができる」という枝は誤りです(却下の当否は審決取消訴訟の中で争います)。反対に、審査の段階で補正の却下の決定とともに拒絶査定がされた場合は、53条3項ただし書により拒絶査定不服審判の中でその却下の当否を争えるので、「補正の却下の決定の可否についても争うことができる」という枝は正しいです。請求と同時に明細書等の補正があったときは、162条により特許庁長官が審査官にその請求を審査させる前置審査に回ります。
審決は特許をすべき旨の審決か請求不成立の審決か差戻しの審決で、裁判所は特許をすべき旨の判決ができません
請求に理由があり他に拒絶の理由を発見しないときは、159条3項で準用する51条により特許をすべき旨の審決をします。理由がないときは請求は成り立たない旨の審決をします。160条1項により、査定を取り消すときはさらに審査に付すべき旨の審決をすることもできますが、これは「できる」であって義務ではないので、審査の手続に重大な欠陥がある場合に差戻しの審決を「しなければならない」という枝は誤りです。差戻しの審決があった場合の判断は審査官を拘束しますが(160条2項)、拘束されるのは審決で示された判断だけなので、審査官が別の拒絶の理由を通知した上で再び拒絶査定をすることは妨げられず、「拒絶の理由aと異なる拒絶の理由bに基づいて再度拒絶をすべき旨の査定をすることはできない」という枝は誤りです。請求不成立の審決に不服があれば東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起しますが、裁判所は181条1項により審決を取り消すだけで、「特許をすべき旨の判決をすることができる」という枝は誤りです(特許するかどうかの判断は特許庁の権限であり、取消判決の確定後に審判官が更に審理して審決するからです)。意匠法46条・商標法44条にも同じ審判があり、意匠法と商標法では請求期間は同じ3月ですが、前置審査は特許法だけにあり、意匠法と商標法にはありません。

特許法121条拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。
拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。
特許法158条審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有する。
特許法160条1項・2項拒絶査定不服審判において査定を取り消すときは、さらに審査に付すべき旨の審決をすることができる。
前項の審決があつた場合における判断は、その事件について審査官を拘束する。
試験ではこう問われる
- 期間は査定の謄本の送達があった日から3月。承継人が請求しても起算日は変わらず、「当該特定承継の日である」という枝は誤り
- 4条で遠隔地の者のため延長できるので、責めに帰することができない理由がなくても3月経過後に請求できる場合がある
- 追完は責めに帰することができない理由がなくなった日から14日(在外者2月)かつ6月以内。「天災地変によるものであるときに限り」は誤り
- 共有者は全員で請求(132条3項・14条)。代表者の届出があっても代表者一人では請求できない。委任代理人は特別の授権が要り、欠けていれば審判長が補正を命ずる
- 審査でした手続は審判でも効力を持つ(158条)。査定と異なる拒絶の理由は審判長が通知して意見書の機会を与える(特許庁長官ではない)
- 請求と同時の補正の却下の決定に独立の不服なし。審査段階の補正却下決定は審判で争える(53条3項ただし書)
- 差戻しの審決は「できる」で義務ではない。差戻審決の判断は審査官を拘束するが、別の理由で再度拒絶査定はできる
- 裁判所は審決を取り消すだけで、特許をすべき旨の判決はできない(181条)
この用語が問われた枝
甲が特許出願について拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達を受けた後に、乙が甲から当該特許出願に係る特許を受ける権利を特定承継した。その場合において、乙が当該特許出願の拒絶査定不服審判を請求するとき、拒絶査定不服審判を請求することができる期間の起算日は、当該特定承継の日である。
拒絶をすべき旨の査定を受けた者が、特許法第 121 条第1項に規定する期間内に拒絶査定不服審判を請求することができないときは、その理由が天災地変によるものであるときに限り、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)以内でその期間の経過後6月以内にその請求をすることができる。
拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定の謄本の送達があった日から3月以内に拒絶査定不服審判を請求することができないことにつき、その責めに帰することができない理由がなくとも、その査定の謄本の送達があった日から3月経過後に拒絶査定不服審判を請求することができる場合がある。
拒絶査定不服審判の審判請求期間経過後の請求は、不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものとして、審決をもってこれを却下することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。