審査の流れ(審査請求・拒絶理由通知・査定 48条の2〜52条)しんさのながれ
審査の流れとは、特許出願が出願審査の請求を待って審査官の審査に付され、拒絶の理由があれば拒絶理由通知と意見書のやり取りを経て、特許をすべき旨の査定か拒絶をすべき旨の査定で終わるまでの48条の2から52条までの手続です。
特許出願をしても、それだけでは審査は始まりません。出願人や第三者が出願審査の請求をして初めて審査官が中身を見ます。出願の中には、とりあえず出しておいて後で要るかどうか決めたいものも多く、全部を審査すると特許庁の手が回らないからです。審査官は、特許できない理由を見つけたら、いきなり拒絶せずに拒絶の理由を通知して意見書を出す機会を与え、それでも理由が残れば拒絶をすべき旨の査定を、理由が見つからなければ特許をすべき旨の査定をします。この一連の流れが48条の2から52条までに書かれています。

審査は出願審査の請求を待って始まり、何人も出願の日から3年以内に請求でき、請求は取り下げられません
48条の2は、特許出願の審査はその出願についての出願審査の請求をまって行うと定めます。48条の3第1項により、請求は何人もでき、期間は特許出願の日から3年以内です。外国語書面出願でも翻訳文の提出は請求の前提になっていないので、「翻訳文の提出をしなければ、当該外国語書面出願について出願審査の請求をすることはできない」という枝は誤りです。分割出願、変更出願、実用新案登録に基づく特許出願は、もとの出願の時にしたものとみなされて3年を数えるため、3年が過ぎてからされることがあります。そこで2項は、3年の経過後であっても、その分割、変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から30日以内に限り請求できるとしています。30日の特則は3年の経過後にだけ働くので、分割の日から30日を過ぎると「出願審査の請求をすることができる場合はない」という枝は誤りです。出願の日から3年の経過後に分割し、分割の日から30日も過ぎたときでも、7項で準用する5項の回復の余地があるので、「特許出願Bについて出願審査の請求をすることができる場合はない」という枝も誤りです(令和元年度の枝で、当時は「正当な理由」が回復の要件でした)。請求は3項で取り下げることができません。195条9項の手数料の返還は、39条6項の協議の命令、48条の7の通知、拒絶理由通知、査定の謄本の送達のいずれかがあるまでに出願が放棄又は取り下げられたときに認められるもので、請求の取下げによるものではないので、返還のためには「出願審査の請求を取り下げなければならない」という枝は誤りです。

期間内に請求がなければ出願は取り下げたものとみなされ、故意でなければ回復できますが、先願の地位は条文ごとに扱いが違います
48条の3第4項は、期間内に出願審査の請求がなかったときはその特許出願を取り下げたものとみなします。5項は、取り下げられたものとみなされた出願人が経済産業省令で定める期間内に限り請求できるとし、故意に請求しなかったと認められる場合を除きます。以前は「正当な理由」があることが要件でしたが、令和3年改正で「故意によるものでないこと」に変わりました。出願審査の請求は不要と判断して故意にしなかった出願人は、期間の経過後に救われません。回復後に設定登録されたときは、8項により、取下げ擬制の旨の特許公報の発行後、請求があった旨の特許公報の発行前に善意に日本国内でその発明の実施である事業をしている者又は準備をしている者に通常実施権が与えられるので、「善意に日本国内において当該発明の実施である事業を開始した者は」通常実施権を有するという枝は正しいです(この枝は令和2年度の出題で「正当な理由」を前提にしていますが、通常実施権の結論は現行法でも同じです)。取り下げたものとみなされた出願は、39条5項により先願の規定の適用については初めからなかったものとみなされますが、出願公開された後であれば29条の2の他の特許出願としての地位は残ります。国内優先権の主張の基礎とされた先の出願は、42条1項で出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなされるまで特許庁に係属しているので、「国内優先権の主張の基礎とされた先の出願について、出願審査の請求をすることができる場合がある」という枝は正しいです。
出願人でない者が請求したときは特許庁長官が出願人に通知し、補正で増えた請求項の手数料は出願人が納めます
48条の5第2項により、特許出願人でない者から出願審査の請求があったときは、特許庁長官がその旨を特許出願人に通知しなければなりません。通知するのは審査官ではないので、「審査官は」出願人でない者からの請求があったときに「その旨を特許出願人に通知しなければならない」という枝は誤りです。出願人でない者が請求した後に、出願人の補正で請求項の数が増えたときは、195条3項により増加分の手数料は特許出願人が納付します。納付しないときは17条3項3号で特許庁長官が補正を命じ、指定期間内に納付がなければ18条2項でその特許出願を却下することができます。条文は「却下することができる」なので、「指定された期間内にこの手数料を納付しなかったとき、当該特許出願は却下される」という枝は正しいとされています。48条の6の優先審査は、出願公開後に出願人でない者が業として発明を実施していると認める場合に、特許庁長官が審査官に他の出願に優先して審査させることができる仕組みです。
出願審査の請求の要点
- 請求できる者何人もできます(48条の3第1項)
- 期間特許出願の日から3年以内です。分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願は、3年の経過後でもその出願の日から30日以内に限り請求できます(2項)
- 取下げ請求は取り下げることができません(3項)
- 請求がないとき出願は取り下げたものとみなされます(4項)。故意でなければ省令で定める期間内に請求でき、期間満了の時にされたものとみなされます(5項・6項)
- 回復後の第三者取下げ擬制の公報発行後、請求の公報発行前に善意で実施している者は通常実施権を有します(8項)
- 出願人でない者の請求特許庁長官が出願人に通知します(48条の5第2項)。増えた請求項の手数料は出願人が納めます(195条3項)
拒絶をすべき旨の査定の前には拒絶の理由を通知して意見書の機会を与えなければならず、48条の7の通知はその前段階です
50条は、審査官が拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと定めます。出願人に反論と補正の機会を与えずに権利を否定しないためです。ただし書で、最後の拒絶理由通知の後などの補正を53条1項で却下する決定をするときは通知を要しません。48条の7は、明細書に文献公知発明の情報が記載されていない(36条4項2号)と認めるときに、審査官がその旨を通知して意見書の機会を与えることができるという規定で、通知するかどうかは審査官の裁量です。この通知は拒絶理由通知ではないので、通知の後に補正や意見書でもなお要件を満たさなければ49条5号の拒絶理由になりますが、その前に50条の拒絶理由通知が要ります。したがって、48条の7の通知を受けた後、「その後拒絶理由通知を受けることなく」拒絶査定がされる場合があるという枝は誤りです。審査官は拒絶の理由を発見しないときは特許をすべき旨の査定をしなければならず(51条)、査定は文書で理由を付して行い、特許庁長官が謄本を出願人に送達します(52条)。

分割の兄弟出願で既に通知した拒絶理由と同じ理由を通知するときは50条の2の通知を併せ、審判で査定と異なる理由を見つけたときは審判長が通知します
50条の2は、拒絶の理由を通知しようとする場合に、その理由が、当該出願と他の特許出願の少なくともいずれか一方に44条2項が適用されて同時にされたこととなっている他の出願について既に通知した拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならないと定めます。分割で同じ内容の出願を並べ、片方で受けた拒絶理由をもう片方で繰り返して審査を引き延ばすことを防ぐためで、この通知を受けた出願の補正は最初の拒絶理由通知でも17条の2第5項の目的制限を受けます。対象は「少なくともいずれか一方」なので、分割出願Bに通知した理由をもとの出願Aに通知するときも50条の2の通知をします。「特許出願Bは特許出願Aの一部を分割して新たな特許出願としたものである」場合にもとの出願Aについて50条の2の通知がされることはないという枝は誤りです。かっこ書で、当該出願の出願審査の請求前にその出願人が内容を知り得る状態になかった通知は除かれます。出願Aと出願Bについて同じ日に出願審査の請求をし、その後に出願Bへ通知された拒絶理由は、出願Aの審査請求前に知り得たものではないので、「特許出願Aの審査における拒絶理由の通知と併せて」50条の2の通知をしなければならないという枝は誤りです。拒絶査定不服審判で査定の理由と異なる拒絶の理由を見つけたときは、159条2項で50条と50条の2が準用され、通知するのは審判長です。「特許庁長官から拒絶の理由が通知される場合がある」という枝は誤りです。

審査官には139条の除斥が準用されますが忌避の制度はなく、必要があれば審査を中止できます
47条により、特許庁長官は審査官に特許出願を審査させなければなりません。48条は139条の審判官の除斥を6号と7号を除いて審査官に準用します。除斥の原因は、審査官やその配偶者が当事者であること、当事者の四親等内の血族・三親等内の姻族・同居の親族であること、後見人等であること、証人・鑑定人になったこと、代理人であること、直接の利害関係を有することに限られます。代理人の弁理士と親友であることは原因に当たらないので、審査官が「特許出願Aの審査の職務の執行から除斥される」という枝は誤りです。141条の忌避は48条で準用されていないので審査官の忌避はできず、審査官が配偶者の伯父と知った出願人が「出願人乙は審査官甲の忌避を申し立てることができる」という枝は誤りです。前置審査は審査官が行う審査なので除斥の規定が適用されます。54条1項は、審査において必要があると認めるときは、特許異議の申立てについての決定若しくは審決が確定し、又は訴訟手続が完結するまで手続を中止することができると定めます。
特許法48条の3第1項〜5項特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
3 出願審査の請求は、取り下げることができない。
4 第一項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。
特許法50条審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
特許法50条の2審査官は、前条の規定により特許出願について拒絶の理由を通知しようとする場合において、当該拒絶の理由が、他の特許出願(当該特許出願と当該他の特許出願の少なくともいずれか一方に第四十四条第二項の規定が適用されたことにより当該特許出願と同時にされたこととなつているものに限る。)についての前条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(当該特許出願についての出願審査の請求前に当該特許出願の出願人がその内容を知り得る状態になかつたものを除く。)に係る拒絶の理由と同一であるときは、その旨を併せて通知しなければならない。
試験ではこう問われる
- 出願審査の請求は何人も出願の日から3年以内。外国語書面出願で翻訳文の提出が前提という枝は誤り。遠隔地の者のための延長もない
- 分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願は、3年の経過後でもその出願の日から30日以内に限り請求できる。3年以内なら30日を過ぎても請求できるので「出願審査の請求をすることができる場合はない」という枝は誤り
- 請求は取り下げられない。手数料の返還は48条の7の通知・拒絶理由通知・査定謄本の送達までに出願を放棄・取下げした場合で、請求の取下げによるのではない
- 請求がなければ取り下げたものとみなされ、回復は故意でないことが要件。故意に請求しなかった出願人は期間の経過後に救われない。令和2年度以前の枝は「正当な理由」で出ている
- 回復後の設定登録では、取下げ擬制の公報発行後、請求の公報発行前に善意で実施している者に通常実施権がある
- 出願人でない者の請求は特許庁長官が出願人に通知する。「審査官は」通知するという枝は誤り。増えた請求項の手数料は出願人が納め、納めなければ出願を却下することができる
- 拒絶査定の前には必ず拒絶理由通知が要る。48条の7の通知は拒絶理由通知ではなく、「その後拒絶理由通知を受けることなく」拒絶査定される場合があるという枝は誤り
- 50条の2の通知は分割の兄弟出願の双方に働き、審査請求前に知り得なかった通知は除く。審判で査定と異なる理由を通知するのは審判長で、「特許庁長官から拒絶の理由が通知される場合がある」という枝は誤り
- 審査官には139条の除斥が準用され(6号・7号を除く)、忌避はない。親友は除斥の原因ではない
この用語が問われた枝
外国語書面出願において、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文の提出をしなければ、当該外国語書面出願について出願審査の請求をすることはできない。
特許出願の分割に係る新たな特許出願については、その特許出願の分割の日から 30日を経過した後には、出願審査の請求をすることができる場合はない。
出願人甲は、特許出願Aの出願日から3年経過後に、その出願の一部を分割して新たな特許出願Bとした。特許出願Bの出願の日から 30 日経過した後は、特許出願Bについて出願審査の請求をすることができる場合はない。
特許出願人が出願審査の請求をした後において、出願審査の請求の手数料(政令で定める額)の返還請求を行うためには、出願審査の請求を取り下げなければならない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。