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国内優先権(41条・42条)こくないゆうせんけん

特許・実用新案 第3章 出願(明細書・分割・変更・優先権) 短答で32枝

国内優先権とは、特許を受けようとする者が、自分の先の特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明に基づいて、先の出願の日から1年以内の特許出願について主張できる優先権です(41条)。主張の基礎とされた先の出願は、その日から経済産業省令で定める期間(1年4月)を経過した時に取り下げたものとみなされます(42条)。

発明イを出願した後で、改良した発明ロや、イを広くまとめた発明ができることはよくあります。別々に出願すると権利がばらばらになり、イの出願を補正してロを足すことは新規事項の追加で許されません。そこで41条は、先の出願の日から1年以内なら、先の出願に記載された発明について先の出願の時に出願したものと扱う後の出願を認めます。パリ条約の優先権を自国の出願どうしで使えるようにした仕組みで、一つの出願にまとめ直す代わりに、先の出願は1年4月で取り下げたものとみなされます(42条)。

特許庁の窓口の場面。先生が受付担当役(札「特許庁」)でカウンターの内側に座り、左に「先の出願A:発明イ(出願の日から1年以内)」と書かれた願書、右に「後の出願B:発明イ+発明ロ 国内優先権の主張」と書かれた願書を並べて受け取っている。カウン

先の出願の日から1年以内に、自分が特許を受ける権利を持つ先の出願に基づいて主張しますが、先の出願が分割・変更出願や査定確定済みなどのときは主張できません

主張できるのは、その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する先の特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(外国語書面出願なら外国語書面)に記載された発明に基づく場合です(41条1項)。後の出願は先の出願の日から1年以内にしなければなりません(同項1号)が、令和3年改正で、故意に1年以内にしなかったものでないと認められる場合には省令で定める期間内の出願でも認められるようになりました。先の出願が分割出願、変更出願、実用新案登録に基づく特許出願であるとき(2号)、後の出願の際に先の出願が放棄・取下げ・却下されているとき(3号)、査定又は審決が確定しているとき(4号)、実用新案の設定登録がされているとき(5号)は主張できません。3号から5号までは「その特許出願の際に」で判断するので、「特許をすべき旨の査定が確定していても」出願Aを基礎に主張できるという枝は誤りで、反対に、後の出願Bをした後で先の出願Aに特許査定の謄本が送達されても「出願Aに基づく国内優先権の主張の効果が認められない」という枝は誤りです。先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、後の出願の際にその承諾を得ている場合に限ります(同項ただし書)。「その承諾を得ている場合に限り」出願Bをすることができるという枝は正しく、「当該仮通常実施権を有する者の承諾を得なければならない」という枝は誤りです。仮通常実施権者には34条の3第5項で後の出願にも仮通常実施権が許諾されたものとみなす保護があるからです。特許を受ける権利を承継して届け出た者は先の出願の出願人になるので、乙が出願Aに基づいて「国内優先権の主張を伴う特許出願Bをすることができる」という枝は正しいです。

  • 1号後の出願が先の出願の日から1年以内でないときです。故意でなく省令期間内にした出願は除かれます(令和3年改正)
  • 2号先の出願が分割に係る新たな出願、変更に係る出願、実用新案登録に基づく特許出願であるときです
  • 3号後の出願の際に先の出願が放棄され、取り下げられ、又は却下されているときです
  • 4号後の出願の際に先の出願について査定又は審決が確定しているときです
  • 5号後の出願の際に先の出願について実用新案登録の設定の登録がされているときです
  • ただし書先の出願に仮専用実施権者があるときは、後の出願の際にその承諾を得ている場合に限ります。仮通常実施権者の承諾は要りません

効果は先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明について先の出願の時にされたものとみなすことで、先の出願がさらに基礎とした出願の発明には及びません

優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明については、29条、29条の2本文、30条1項・2項、39条1項から4項まで、69条2項2号、72条、79条などの適用について、後の出願は先の出願の時にされたものとみなされます(41条2項)。基準は最初の明細書等なので、先の出願で後から「発明ロに係る事項を削除する補正」をしていても、出願Bで「当該特許出願Aに係る発明ロに基づいて国内優先権を主張することができる」という枝は正しいです。一方、先の出願自体が優先権の主張を伴う出願であるときは、その先の出願が基礎とした出願の際の書類に記載された発明は除かれます(同項かっこ書)。優先権を積み重ねて出願日を際限なく遡らせることを防ぐためです。出願Aを基礎に出願Bをし、出願Bのみを基礎に出願Cをした場合、発明イは出願Bが基礎とした出願Aに記載されていた発明なので、出願Cが出願Aの日から1年以内でも「特許出願Cに係る発明イについても国内優先権の主張の効果が認められる」という枝は誤りです(出願Aも併せて基礎にすれば効果があります)。30条については1項・2項だけが列挙され、3項の書面の提出は含まれないので、先の出願で30条2項の適用を受けていても後の出願で「書面を改めて提出することなく」適用を受けられるという枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「出願A:発明イ」「出願B:発明イ+ロ(Aを基礎)」「出願C:発明イ+ロ+ハ(Bのみを基礎)」が立つ。出願Bから出願Aへ戻る実

後の出願について出願公開又は特許掲載公報の発行がされた時に先の出願が出願公開されたものとみなして29条の2を適用します

先の出願は42条1項で取り下げたものとみなされ、出願公開されません。そのままでは先の出願に記載された発明が29条の2の先願の地位を持たなくなるので、41条3項は、後の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明のうち先の出願の最初の明細書等にも記載されていた発明について、後の出願の出願公開又は特許掲載公報の発行の時に先の出願が出願公開されたものとみなして29条の2本文を適用します。この場合に29条の2の他の特許出願として引かれるのは先の出願であって後の出願ではありません。出願Aの後で出願Bの前にされた乙の出願Cは、出願Aに記載された発明イと同一であることを理由に拒絶されるので、「特許出願Bの明細書に記載された発明と同一であることを理由として」拒絶理由を有するという枝は誤りです。後の出願で初めて加わった発明は先の出願に無いので、後の出願の現実の出願日を基準に29条の2の他の特許出願になります。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立つ。横軸の左から順に札「出願A(甲):明細書に発明イ」「出願C(乙):発明イ」「出願B(甲):発明イ+ロ Aを基礎とする国内優先権」「出願Bの出願公開」が立ち、出願Aの札の

先の出願は出願の日から1年4月を経過した時に取り下げたものとみなされ、優先権の主張はその期間内なら取下書で取り下げられます

優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間(1年4月)を経過した時に取り下げたものとみなされます(42条1項本文)。ただし、先の出願が放棄・取下げ・却下されている場合、査定若しくは審決が確定している場合、実用新案の設定登録がされている場合、先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合は、この限りではありません(同項ただし書)。「全ての優先権の主張が取り下げられている場合には、取り下げられたものとはみなされない」という枝は正しいです。1年4月までは先の出願は特許庁に係属しているので、その間に「出願審査の請求をすることができる場合がある」という枝は正しいです。後の出願の出願人は、先の出願の日から1年4月を経過した後は優先権の主張を取り下げることができません(同条2項)。期間内に主張を取り下げれば先の出願の取下げ擬制は生じないので、出願Aの日から1年以内に主張を取り下げた場合に「特許出願Aは出願公開される」という枝は正しいです。主張の取下げは取下書による独立の手続で、41条4項の書面の補正によるものではないので、主張の取下げは「その書面の補正をすることにより行うことができる」という枝は誤りです。後の出願が先の出願の日から1年4月以内に取り下げられたときは、同時に優先権の主張も取り下げられたものとみなされます(同条3項)。そのため、出願Bを取り下げた上でさらに「国内優先権の主張も取り下げなければ」出願Aが取り下げられたものとみなされるという枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「出願A」「出願B(Aを基礎とする国内優先権)」「1年4月:出願Aは取り下げたものとみなす(42条1項)」が立ち、最後の札の少

パリ条約による優先権と併せて主張でき、先の出願が外国語書面出願なら外国語書面に記載された発明が基礎になります

国内優先権とパリ条約による優先権は別の制度なので、X国の出願Aに基づくパリ優先権と日本の出願Bに基づく国内優先権を一つの出願で併せて主張できます。それぞれの先の出願の日から1年以内であれば、「パリ優先権と、特許出願Bを基礎とする国内優先権とを主張した特許出願Cを日本国にすることができる」という枝は正しいです。先の出願が外国語書面出願であるときは、翻訳文ではなく外国語書面に記載された発明が基礎になります(41条1項かっこ書)。翻訳文にしか無い発明は外国語書面に記載された発明ではないので基礎にできません。後の出願が外国語書面出願であるときは、翻訳文の提出期間は先の出願の日から1年4月で計算します(36条の2第2項)。実用新案登録出願を後の出願とする優先権は実用新案法8条・9条に同じ仕組みがあります。意匠法には国内優先権に当たる制度はありません。

特許法41条1項

特許を受けようとする者は、次に掲げる場合を除き、その特許出願に係る発明について、その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用新案登録出願であつて先にされたもの(以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる。ただし、先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その特許出願の際に、その承諾を得ている場合に限る。

特許法42条1項

前条第一項の規定による優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなす。ただし、当該先の出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されている場合、当該先の出願について査定若しくは審決が確定している場合、当該先の出願について実用新案法第十四条第二項に規定する設定の登録がされている場合又は当該先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合には、この限りでない。

特許法42条2項

前条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願の出願人は、先の出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した後は、その主張を取り下げることができない。

特許法42条3項

前条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願が先の出願の日から経済産業省令で定める期間内に取り下げられたときは、同時に当該優先権の主張が取り下げられたものとみなす。

試験ではこう問われる

  1. 基礎にできない先の出願は、分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願、放棄・取下げ・却下済み、査定・審決確定済み、実用新案の設定登録済み。「査定が確定していても」主張できるという枝は誤り。判断は後の出願の際で、後から特許査定が送達されても効果は失われない
  2. 先の出願に仮専用実施権者があればその承諾が要る。仮通常実施権者の承諾は要らない。特許を受ける権利を承継して届け出た者は先の出願に基づいて主張できる
  3. 効果の範囲は先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明。補正で削除した発明も基礎にできる。先の出願がさらに基礎とした出願の発明には及ばない(累積的な主張の排除)
  4. 41条2項に30条3項は無いので、新規性喪失の例外の書面は後の出願で改めて提出する
  5. 後の出願の出願公開等の時に先の出願が出願公開されたものとみなして29条の2を適用する(41条3項)。引かれる先願は先の出願であって後の出願ではない
  6. 先の出願は出願の日から1年4月で取り下げたものとみなす。放棄・取下げ・却下済み、査定・審決確定済み、設定登録済み、全ての主張が取り下げられている場合は除く。1年4月までは出願審査の請求ができる
  7. 優先権の主張の取下げは先の出願の日から1年4月以内に取下書で行い、書面の補正ではできない。期間内に主張を取り下げれば先の出願は公開される。後の出願を期間内に取り下げれば主張も取り下げられたものとみなす
  8. パリ優先権との併用ができる。先の出願が外国語書面出願なら外国語書面に記載された発明が基礎

この用語が問われた枝

令和6年度 問20 枝ロ誤り

特許出願Aの出願日から1年以内であれば、特許出願Aについて特許をすべき旨の査定が確定していても、特許出願Aを基礎とする国内優先権を主張した特許出願Bをすることができる。

令和7年度 問8 枝イ誤り

甲は、特許出願Aをした後に、出願Aを優先権主張の基礎とした国内優先権の主張を伴った特許出願Bをした。その後、甲は、出願Aについて、出願審査の請求を行い、出願Aの出願日から1年経過前に、出願Aについて特許をすべき旨の査定の謄本が送達された。この場合、出願Bについて、出願Aに基づく国内優先権の主張の効果が認められない。

令和6年度 問20 枝ホ正しい

特許出願Aに仮専用実施権を有する者があるときは、その承諾を得ている場合に限り、特許出願Aを基礎とした国内優先権を主張する特許出願Bをすることができる。

令和元年度 問15 枝イ誤り

特許法第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願をする場合において、先の出願について仮通常実施権を有する者があるときには、当該特許出願の際に、当該仮通常実施権を有する者の承諾を得なければならない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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