設定登録・存続期間・延長登録(66条・67条〜67条の8・68条の2・185条)せっていとうろくそんぞくきかんえんちょうとうろく
設定登録とは、第1年から第3年までの特許料の納付等があったときに特許庁がする登録で、特許権はこの設定の登録により発生し(66条)、存続期間は特許出願の日から20年をもって終了します(67条1項)。延長登録とは、審査に時間がかかった分(67条2項)又は医薬品等の処分を受けるために実施できなかった期間(67条4項、5年を限度)について、延長登録の出願により存続期間を延ばす仕組みです。
特許をすべき旨の査定をもらっても、その時点ではまだ特許権はありません。第1年から第3年までの特許料を納めて特許庁が設定の登録をしたときに、特許権が発生します。一方で、権利が終わる日は登録の日とは関係なく、特許出願の日から20年と決まっています。出願から20年という枠の中で審査に時間がかかれば、そのぶん権利を使える期間が短くなります。そこで、審査が長引いた分と、医薬品の承認のように国の処分を待つ間に実施できなかった分については、延長登録の出願で存続期間を延ばせるようにしています。

特許権は設定の登録により発生しますが、存続期間は特許出願の日から20年をもって終了します
特許権は設定の登録により発生し(66条1項)、設定の登録は第1年から第3年までの各年分の特許料の納付又はその免除若しくは猶予があったときにされます(66条2項)。これに対して存続期間の起算点は登録の日ではなく出願の日で、特許出願の日から20年をもって終了します(67条1項)。権利の始まりと終わりの基準日が違うのは、出願の日から数えれば審査にかかった時間の長短で独占の終わる日が動かず、第三者にも終期が予測できるからです。したがって、存続期間が「設定の登録の日から20年をもって終了する」と規定されているという枝は誤りです。分割出願は44条2項でもとの出願の時にしたものとみなされるので、分割出願の特許権も、もとの出願の日から20年で終わります。分割出願Bの存続期間が「特許出願Bの分割の日から20年をもって終了する」という枝は誤りです。また、3条2項が末日を翌日に繰り下げるのは「手続についての期間」だけです。存続期間は手続をすべき期間ではないので、末日が行政機関の休日に当たっても「その日の翌日をもってその期間の末日となる」という枝は誤りで、末日が1月1日に当たる場合に「当該某年の1月5日に終了する」という枝も誤りです。
- 発生設定の登録によります(66条1項)。第1年から第3年までの特許料の納付又は免除・猶予があったときに登録されます(66条2項)
- 存続期間特許出願の日から20年です(67条1項)。優先日や設定の登録の日からではなく、分割・変更出願はもとの出願の日からです
- 末日の計算3条2項の休日の繰下げは手続についての期間だけに働くので、存続期間の末日は休日でも延びません
- 実用新案権実用新案登録出願の日から10年です(実用新案法15条)。延長登録の制度はありません
審査に時間がかかった分は67条2項の延長登録で取り戻せますが、設定の登録が基準日以後にされたときに限られます
特許権の設定の登録が、特許出願の日から起算して5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から起算して3年を経過した日のいずれか遅い日(基準日)以後にされたときは、延長登録の出願により存続期間を延長することができます(67条2項)。延長できる期間は、基準日から設定の登録の日までの期間から、出願人側の手続に要した期間などを控除した延長可能期間の範囲内です(67条3項)。この延長登録の出願は、設定の登録の日から3月以内にしなければならず、存続期間の満了後はできません(67条の2第3項)。共有の特許権では共有者全員が共同で出願しなければならず(67条の2第4項)、出願があれば、拒絶査定の確定又は延長登録があるまで存続期間は延長されたものとみなされます(67条の2第5項)。拒絶理由は、設定の登録が基準日以後にされていないこと、延長を求める期間が延長可能期間を超えていること、出願人が特許権者でないこと、共有者全員の共同出願でないことの4つで(67条の3第1項)、125条の2第1項の無効理由と一対一で対応しています。そのため、期間補償のための延長登録の出願の拒絶理由のうち「延長登録無効審判を請求することができる理由とされていない理由はない」という枝は正しいです。審判官の除斥事由である139条7号は、67条2項の延長登録の出願に係る事件で、その特許出願の査定に審査官として関与した場合を定めています。67条4項の延長登録の出願には及ばないので、医薬品等の延長登録出願について「その査定に審査官として関与したときは、その職務の執行から除斥される」という枝は誤りです。また、前置審査(162条)は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正があった場合の制度なので、「期間の算定の根拠を記載した書面について補正があったときは、特許庁長官は、審査官にその請求を審査させなければならない」という枝は誤りです。

医薬品等の処分で実施できなかった期間は67条4項の延長登録で5年を限度に延長でき、処分を受けた日から政令で定める期間内に出願します
特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分(政令で定めるもの)を受けることが必要であるために、特許発明を実施できない期間があったときは、5年を限度として延長登録の出願により存続期間を延長できます(67条4項)。医薬品や農薬は承認を受けるまで売れないので、承認を待った期間だけ独占の期間が目減りしてしまうからです。願書には延長を求める期間(5年以下の期間に限ります)と処分の内容を記載し(67条の5第1項)、出願は処分を受けた日から政令で定める期間内にしなければならず、存続期間の満了後はできません(67条の5第3項)。したがって、処分を受けた日から政令で定める期間内に出願する必要があるが「特許権の存続期間が満了した後には、延長登録の出願をすることができない」という枝は正しいです(この枝は旧67条の2第3項の条番号で出ていますが、期間補償の延長が加わった改正で現行の67条の5第3項に移りました)。満了前6月の前日までに処分を受けられないと見込まれるときは、その日までに特許番号と処分を記載した書面を提出しておかないと、満了前6月以後には出願できません(67条の6)。出願があれば、拒絶査定の確定又は延長登録があるまで存続期間は延長されたものとみなされるので(67条の5第4項で準用する67条の2第5項)、「その特許権の存続期間は延長されたものとみなされる」という枝は正しいです。共有の特許権では共有者全員で出願しなければならないので、共有者の一人が「他の共有者の同意を得て単独で延長登録の出願をした場合」に拒絶理由にも無効理由にも当たらないという枝は誤りです。延長登録は特許権だけの制度で実用新案法には規定がないため、「実用新案権の存続期間の延長をするための出願をすることができる」という枝は誤りです。

処分による延長登録の拒絶理由は67条の7第1項の5つで、延長を求める期間が実施できなかった期間を超えているときがその一つです
審査官は、特許発明の実施に処分を受けることが必要であったとは認められないとき、特許権者又は専用実施権者・通常実施権者が処分を受けていないとき、延長を求める期間が特許発明の実施をすることができなかった期間を超えているとき、出願人が特許権者でないとき、共有者全員の共同出願でないときに拒絶査定をします(67条の7第1項)。そのため、「延長を求める期間が、その特許発明を実施することができなかった期間を超えていたとしても、拒絶の理由となることはない」という枝は誤りです。一方、期間についての拒絶理由はこの「超えているとき」だけです。実施できなかった期間が6年で延長を求める期間も6年なら超えてはいないので、「延長を求める期間が6年であること」は拒絶の理由となるという枝は誤りで、5年を超える部分は67条4項の限度で延長されないにとどまります。これらの拒絶理由は125条の3第1項の無効理由と対応しています。過去問の多くは旧67条の3の条番号で出ていますが、期間補償の延長が加わった改正で、処分による延長の拒絶理由は67条の7に移りました。
- 処分の必要性特許発明の実施にその処分を受けることが必要であったと認められないときは拒絶されます(67条の7第1項1号)
- 処分を受けた者特許権者、専用実施権者又は通常実施権者が処分を受けていないときは拒絶されます(同2号)
- 期間延長を求める期間が実施をすることができなかった期間を超えているときは拒絶されます(同3号)。5年の限度は67条4項です
- 出願人特許権者でない者の出願、共有者全員でない出願は拒絶されます(同4号・5号)
延長された特許権の効力は処分の対象となった物についての実施に限られ、無効審判では超える期間だけが無効になることがあります
67条4項で延長された特許権の効力は、延長登録の理由となった処分の対象となった物(処分でその物の使用される特定の用途が定められているときは、その用途に使用されるその物)についての特許発明の実施以外の行為には及びません(68条の2)。延長は処分を待った分の穴埋めなので、処分と関係のない物にまで独占を延ばす理由がないからです。承認が「有効成分として物質a、効能・効果として消化促進」の医薬品についてされたなら、同じ物質aでもかゆみ止めの医薬品を業として生産する行為には「及ばない」という枝は正しいです(この枝は旧67条2項・薬事法の文言で出ていますが、現行では67条4項・医薬品医療機器等法に当たります)。延長登録無効審判(125条の2・125条の3)で無効審決が確定すると、延長は初めからされなかったものとみなされますが、延長された期間が実施できなかった期間を超えている場合には、その超える期間についてだけ延長がされなかったものとみなされます(125条の3第3項ただし書)。したがって、「延長された期間の一部が延長されなかったものとみなされることはない」という枝は誤りです。

二以上の請求項に係る特許権は185条で請求項ごとに特許権があるものとみなされるので、一部の請求項の無効や放棄は他の請求項に及びません
特許権は一つの出願について一つ発生しますが、請求項が二以上あるときは、185条が列挙する規定の適用については請求項ごとに特許がされ、又は特許権があるものとみなされます。列挙されているのは、特許権の放棄(97条1項)、特許料不納による消滅(111条1項2号)、無効審判の請求(123条3項)、無効審決の効果(125条)、中用権(80条1項)、訂正の効果(128条)などです。そのため、一部の請求項について無効審判が請求されて無効審決が確定しても、残りの請求項の特許権はそのまま残ります。請求項ごとに扱うべき場面を条文で列挙しているので、列挙にない規定、たとえば特許料の納付は請求項ごとにすることができません。
特許法66条1項特許権は、設定の登録により発生する。
特許法67条1項特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
特許法67条4項第一項に規定する存続期間(第二項の規定により延長されたときは、その延長の期間を加えたもの。第六十七条の五第三項ただし書、第六十八条の二及び第百七条第一項において同じ。)は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。
特許法68条の2第六十七条第四項の規定により同条第一項に規定する存続期間が延長された場合(第六十七条の五第四項において準用する第六十七条の二第五項本文の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第四項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。
試験ではこう問われる
- 存続期間は特許出願の日から20年。「設定の登録の日から20年をもって終了する」という枝は誤り。分割出願も「特許出願Bの分割の日から20年をもって終了する」のではなく、もとの出願の日から20年
- 存続期間の末日は手続についての期間ではないので、休日でも翌日に延びない(3条2項は手続の期間だけ)
- 期間補償の延長(67条2項)は、設定の登録が出願から5年又は審査請求から3年の遅い方(基準日)以後のとき。拒絶理由はすべて125条の2の無効理由と対応し、「無効審判を請求することができる理由とされていない理由はない」
- 139条7号の除斥は67条2項の延長登録の出願だけ。医薬品等の延長登録出願では「審査官として関与したときは、その職務の執行から除斥される」という枝は誤り。前置審査は明細書等の補正があった場合だけで、期間の算定の根拠の書面の補正では審査官に審査させない
- 処分による延長(67条4項)は5年を限度に、処分を受けた日から政令で定める期間内に出願し、存続期間の満了後はできない。出願があれば延長されたものとみなされる。共有者は全員で出願し、実用新案権には延長がない
- 拒絶理由は延長を求める期間が実施できなかった期間を「超えているとき」。超えていたとしても「拒絶の理由となることはない」という枝は誤り。実施できなかった期間が6年で6年を求めた場合は超えていないので拒絶理由にならない
- 延長後の効力は処分の対象となった物(用途)についての実施に限られる(68条の2)。無効審決では超える期間だけの一部無効があるので、「一部が延長されなかったものとみなされることはない」という枝は誤り
- 二以上の請求項に係る特許権は185条の列挙規定(放棄・無効審判・特許料不納の消滅など)の適用で請求項ごとに特許権があるものとみなされる
この用語が問われた枝
特許法には、特許権の存続期間は、特許権の設定の登録の日から 20 年をもって終了することが規定されている。
甲は、特許請求の範囲に発明イが記載され、明細書及び図面には発明イ及びロが記載された特許出願Aをし、特許出願Aの出願の日後、特許出願Aを分割して特許請求の範囲、明細書及び図面に発明ロが記載された新たな特許出願Bをした。その後、拒絶の理由が通知されることなく特許出願Bについて特許権の設定の登録がされたとき、この特許権の存続期間は、特許出願Bの分割の日から20年をもって終了する。ただし、特許権の存続期間の延長登録の出願はないものとする。
特許権の存続期間は、その期間の末日が行政機関の休日(行政機関の休日に関する法律(昭和 63 年法律第 91 号)第1条第1項各号に掲げる日)である場合には、その日の翌日をもってその期間の末日となる。
特許権の存続期間の末日が、某年の1月1日に当たる場合、当該某年の1月4日が日曜日であれば、その特許権の存続期間は当該某年の1月5日に終了する。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。