組物の意匠と内装の意匠(8条・8条の2)くみもののいしょうとないそうのいしょう
組物の意匠とは、同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であって経済産業省令で定めるもの(組物)を構成する物品等に係る意匠を、組物全体として統一があるときに一意匠として出願し登録を受けられる8条の制度です。内装の意匠とは、店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(内装)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠を、内装全体として統一的な美感を起こさせるときに一意匠として出願し登録を受けられる8条の2の制度です。
同じ模様でそろえたナイフ・フォーク・スプーンは、三本並べたときに一つのデザインとして価値があります。一意匠一出願の原則(7条)に従えば三つの出願が要り、セットとしての統一感は守れません。そこで8条は、同時に使用される二以上の物品・建築物・画像で省令で定める組物を、組物全体として統一があるときに一意匠として登録します。8条の2は令和元年改正で加わった同じ発想の制度で、店舗や事務所の内装を、内装全体として統一的な美感を起こさせるときに一意匠として保護します。

組物は同時に使用される二以上の物品・建築物・画像で経済産業省令で定めるものをいい、構成物品が同じ種類である必要はなく、建築物や画像の組物もあります
8条の組物は、同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であって経済産業省令で定めるものです。省令の別表に「一組の飲食用具セット」「一組の家具セット」などが並び、そのいずれかに当たる必要があります。構成物品が互いに同じ種類である必要はないので、テーブル・椅子・ベッドからなる組物について、構成する意匠に「係る物品が、同一ではないため、意匠登録を受けることはできない」という枝は誤りです。令和元年改正までは組物は物品に限られていましたが、改正で建築物と画像も構成要素になったので、「複数の建築物からなる意匠は、組物の意匠として意匠登録を受けることができる場合がある」という枝は正しいです。組物全体として統一があることが8条の要件で、統一は形状・模様・色彩の共通性や観念上の関連などで判断します。
新規性・創作非容易性・不登録事由などの登録要件は組物全体として判断し、構成物品の意匠が個々に要件を満たす必要はありません
組物の意匠は組物全体で一つの意匠なので、3条の新規性・創作非容易性も5条の不登録事由も組物全体について判断します。「組物を構成する個々の物品の意匠は、登録要件を満たす必要はない」という枝は正しいです。反対に、全体で見るからこそ、構成物品の一つに他人の著名な商標と同一の図形があれば5条2号で「組物全体として意匠登録を受けることができない場合がある」という枝も正しいです。全体で見ることは、構成物品が公知なら必ず登録できるという意味ではありません。運転席用と助手席用のフロアマットがそれぞれ登録され意匠公報で公開された後に、その二つだけを構成物品とする組物の意匠を出願した場合、公知の意匠をそのまま組み合わせただけで3条2項の容易に創作できた意匠に当たるので、「出願Cは、意匠登録を受けることができる」という枝は誤りです(公報掲載による公知には4条2項の新規性喪失の例外も使えないからです)。
8条違反は拒絶理由ですが無効理由ではなく、統一が無い組物の出願は分割できますが、統一のある組物は一意匠なので分割できません
組物全体として統一が無い出願は17条1項1号で拒絶されますが、48条1項の無効理由に8条はありません。「組物全体として統一がないにもかかわらず組物の意匠として登録された場合、当該登録に対して意匠登録無効審判を請求することはできない」という枝は正しいです。構成物品が省令の組物として適当でないという理由でも同じく無効審判は請求できません。分割(10条の2第1項)は二以上の意匠を包含する出願にしかできません。8条の要件を満たす組物は全体で一意匠なので、「構成物品ごとに一又は二以上の新たな意匠登録出願としても」、それは「適法な出願の分割とは認められない」という枝は正しいです。一方、統一が無いと拒絶理由が通知された出願は一意匠と認められず二以上の意匠を包含するので、係属中なら構成物品ごとに分割できます。統一が無いという理由で「拒絶理由が通知された場合には、その出願を分割することはできない」という枝は誤りです。

組物の意匠権は組物全体について一つ成立するので、構成物品単体の実施には及ばず、構成物品だけの実施権も許諾できず、先願関係でも組物と構成物品は別の意匠です
組物の意匠権(23条)は、登録意匠である組物全体の意匠とこれに類似する意匠に及びます。構成物品の一つを単体で製造・販売する行為は、物品が異なるので登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に当たりません。「一組のせん茶セット」の意匠権者が、きゅうす単体を販売した者に「意匠イに係る意匠権に基づいて権利行使をすることができない」という枝は正しいです。同じ理由で、組物の意匠権者が構成物品の「意匠イのみについて、通常実施権の許諾をすることはできない」という枝も正しいです(通常実施権は登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をする権利で、構成物品の意匠は登録意匠ではないからです)。9条の先願でも、組物の意匠と構成物品単体の意匠は物品が異なり類似しないので、先願の組物に万年筆が含まれていても、後願の万年筆の「意匠ロは意匠登録を受けることができない」という枝は誤りです。

令和元年改正で組物の部分についても意匠登録を受けられるようになりました
2条1項の物品・建築物・画像は、それぞれの部分を含みます。改正前の2条1項には部分意匠から8条の組物を除くかっこ書があり、組物の部分意匠は認められていませんでした(平成21年度の枝は当時の制度で出ています)。令和元年改正でこの除外が削られ、「組物の意匠は、その部分について意匠登録を受けることができる」という枝は正しいです。画像の部分が組物の意匠を構成する場合もあります。内装の意匠についても、部分を除外する規定が無いので、内装の部分について登録を受けられます。
内装の意匠は内装全体として統一的な美感を起こさせるときに一意匠として登録でき、画像を含めてよく、構成物品が公知でも内装全体で新規性を判断します
8条の2の内装は、店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾です。それを構成する物品、建築物又は画像に係る意匠が「内装全体として統一的な美感を起こさせるものであれば」8条の2の一意匠として出願し登録を受けられるという枝は正しいです。組物と違い、同時に使用される二以上という要件や省令の別表による限定はありません。構成要素には画像も含まれるので、内装にリモコンの「表示画面に表示される画像の意匠を加えた意匠ヘについて、意匠登録を受けることはできない」という枝は誤りです。登録要件は内装全体で判断するので、テーブル・椅子・ベッドの各意匠が「意匠公報に掲載され公知となった後は、内装の意匠ホについて意匠登録を受けることはできない」という枝も誤りです(それらを配した内装全体が公知意匠と同一・類似でなく、容易に創作できたともいえなければ登録を受けられるからです)。令和元年改正前は内装やショールームの配置は意匠と認められませんでした。

- 組物の意匠(8条)同時に使用される二以上の物品・建築物・画像で省令で定めるもので、組物全体として統一があるときに一意匠です
- 内装の意匠(8条の2)施設の内部の設備及び装飾を構成する物品・建築物・画像で、内装全体として統一的な美感を起こさせるときに一意匠です
- 共通する点登録要件は全体で判断し、意匠権は全体に一つ成立し、部分について登録を受けられます
- 違う点内装には同時に使用される二以上という要件と省令の別表による限定がありません
意匠法8条同時に使用される二以上の物品、建築物又は画像であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。
意匠法8条の2店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「内装」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、内装全体として統一的な美感を起こさせるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。
試験ではこう問われる
- 組物は同時に使用される二以上の物品・建築物・画像で省令で定めるもの。構成物品が同一でないから登録できないという枝は誤り。複数の建築物の組物もある
- 登録要件は組物全体で判断し、個々の構成物品が要件を満たす必要はない。構成物品の一つに他人の著名な商標があれば組物全体として5条で登録できない場合がある
- 公知の構成物品をそのまま組み合わせた組物は3条2項で登録できない。公報掲載による公知に4条2項は使えない
- 8条違反(統一が無い・構成物品が不適当)は拒絶理由だが無効理由ではなく、無効審判を請求できない
- 8条を満たす組物は一意匠なので構成物品ごとの分割は適法な分割でない。統一が無いと拒絶理由を受けた出願は係属中に分割できる
- 組物の意匠権は構成物品単体の実施に及ばない。構成物品のみの通常実施権は許諾できない。先願でも組物と構成物品は非類似
- 令和元年改正で組物の部分・内装の部分も登録できる。平成21年度の「組物の部分意匠は不可」は当時の制度
- 内装は内装全体として統一的な美感があれば一意匠。画像を加えてもよく、構成物品が公知でも内装全体で新規性を判断する
この用語が問われた枝
組物の意匠ニは、その組物を構成する意匠イ、意匠ロ及び意匠ハに係る物品が、同一ではないため、意匠登録を受けることはできない。
複数の建築物からなる意匠は、組物の意匠として意匠登録を受けることができる場合がある。
組物の意匠登録において、組物の意匠全体について登録要件を満たしていれば、組物を構成する個々の物品の意匠は、登録要件を満たす必要はない。
甲は、意匠に係る物品「自動車用フロアマット」の運転席用の意匠イに係る意匠登録出願Aと助手席用の意匠ロに係る意匠登録出願Bについてそれぞれ意匠登録を受け、意匠公報が発行され当該意匠が公開された。その後、甲は、意匠イ及び意匠ロのみを構成物品とする「一組の自動車用フロアマットセット」の組物の意匠ハに係る意匠登録出願Cをした。出願Cは、意匠登録を受けることができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。