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専用実施権と通常実施権(27条・28条・34条・35条)せんようじっしけんとつうじょうじっしけん

意匠 第5章 意匠権の効力・実施権 短答で40枝

専用実施権とは、意匠権者が設定行為で定めた範囲内において、業として登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をする権利を専有させる権利で、通常実施権とは、意匠法の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業として登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をする権利です(27条・28条)。

机の意匠を登録した家具メーカーが、自分では作らずに他社に作らせたいとき、相手に実施の権利を与える方法が二つあります。相手だけに任せ切るのが専用実施権で、設定した範囲では意匠権者自身も実施できなくなります。何社にも並行して許すのが通常実施権で、意匠権者も引き続き実施できます。独占を与える専用実施権は登録して初めて効力が生じ、通常実施権は契約だけで生じて登録がなくても後から権利を取得した者に対抗できます。この強さの違いが、設定の制限や移転の要件の違いになって現れます。

家具工場の事務所の場面。先生が先生役(札「先生」)で机の前に立ち、机の上に2枚の契約書が並んでいる。左の契約書は「専用実施権設定契約(27条)」、右の契約書は「通常実施権許諾契約(28条)」と書かれている。工場主の男性(札「意匠権者 甲」)

専用実施権は設定行為で定めた範囲内で実施を専有し、その範囲では意匠権者も実施できず、重なる範囲に二つ目は設定できません

27条1項本文は、意匠権者はその意匠権について専用実施権を設定することができると定め、2項は、専用実施権者は設定行為で定めた範囲内において業としてその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をする権利を専有すると定めます。専有するのは専用実施権者なので、23条ただし書により、意匠権者はその範囲について実施をする権利を専有しません。意匠権者はその専用実施権者が「業としてその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有しない」という枝は正しいです。範囲は時期・地域・内容で区切ることができますが、同じ範囲に重ねて専有させることはできないので、乙に販売地域をG県とする専用実施権を設定している場合に、第三者に対しG県及びH県として「登録意匠イについて専用実施権を設定することはできない」という枝は正しいです。専用実施権の設定は登録しなければ効力を生じず(27条4項で準用する特許法98条1項2号)、移転は実施の事業とともにする場合・意匠権者の承諾を得た場合・相続その他の一般承継の場合に限られます(特許法77条3項の準用)。専用実施権者が他人に通常実施権を許諾し、又は質権を設定するには意匠権者の承諾が要るので(特許法77条4項の準用)、専用実施権者乙が「甲の承諾を得ることなく、その専用実施権について、第三者である丙に対し通常実施権を許諾することができる」という枝は誤りです。

特許庁の登録の窓口の場面。先生が窓口の職員役(札「特許庁」)でカウンターの内側に座り、カウンターの上に日本地図の一部を描いた板があり、「G県」と「H県」の2つの県が描かれている。G県に「乙の専用実施権(販売地域:G県)」の札が立っている。カ

専用実施権と通常実施権の違い

専用実施権(27条)通常実施権(28条)
内容設定行為で定めた範囲内で実施を専有します意匠法の規定により又は設定行為で定めた範囲内で実施をする権利を持ちます
意匠権者の実施専有の範囲では意匠権者も実施できません(23条ただし書)意匠権者も実施でき、他にも許諾できます
効力の発生設定の登録が効力要件です(特許法98条1項2号の準用)許諾で生じ、登録は要りません
第三者への対抗登録されているので当然に対抗できます発生後に意匠権や専用実施権を取得した者にも効力を有します(特許法99条の準用)
基礎意匠・関連意匠全ての意匠権について同一の者に同時に設定する場合に限ります(27条1項ただし書)制限はありません
移転事業とともに・承諾・一般承継に限ります(特許法77条3項の準用)裁定によるものを除き、事業とともに・承諾・一般承継に限ります(34条1項)

基礎意匠と関連意匠の専用実施権は、全ての意匠権について同一の者に同時に設定する場合に限られますが、通常実施権にこの制限はありません

27条1項ただし書は、基礎意匠又は関連意匠の意匠権についての専用実施権は、基礎意匠及び全ての関連意匠の意匠権について、同一の者に対して同時に設定する場合に限り設定できると定めます。基礎意匠と関連意匠は互いに類似する意匠で、権利の範囲が重なっているため、別々の人に専有させると同じ意匠について二人が専有する矛盾が生じるからです。関連意匠ロの意匠権について専用実施権を設定するには「同時に意匠イについても乙に対して専用実施権を設定しなければならない」という枝は正しいです。基礎意匠の意匠権が登録料の不納で消滅し、無効審決が確定し、又は放棄されたときも、関連意匠の意匠権についての専用実施権は全ての関連意匠の意匠権について同一の者に同時に設定する場合に限られます(3項)。本意匠の意匠権について無効審決が確定したときの関連意匠の専用実施権は「すべての関連意匠の意匠権について同一の者に対して同時に設定する場合に限り」設定できるという枝は正しく、この枝は令和元年改正前の「本意匠」の語で出ていますが、現行法では「基礎意匠」に読み替えます。通常実施権は専有させるものではないので、この制限はありません。「基礎意匠又は関連意匠の意匠権についての通常実施権は」同一の者に同時に設定する場合に限るという枝は誤りで、関連意匠ロの通常実施権を許諾するには「同時に意匠イについても乙に対して通常実施権を許諾しなければならない」という枝も誤りです。

通常実施権は許諾で生じ、類似する意匠だけを対象にもでき、登録がなくても後から意匠権や専用実施権を取得した者に対抗できます

28条1項は、意匠権者はその意匠権について他人に通常実施権を許諾することができると定め、2項は、通常実施権者は意匠法の規定により又は設定行為で定めた範囲内において業としてその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をする権利を有すると定めます。範囲は設定行為で自由に定められるので、意匠権者は「自己の登録意匠に類似する意匠について、通常実施権を許諾することができる」という枝は正しく、「自己の登録意匠に類似する意匠のみについて、通常実施権を許諾することはできない」という枝は誤りです。28条3項が準用する特許法99条により、通常実施権はその発生後にその意匠権若しくは専用実施権又はその意匠権についての専用実施権を取得した者に対しても効力を有します。平成23年改正で通常実施権の登録制度が廃止され、登録がなくても当然に対抗できるようになったので、通常実施権は「その発生後にその意匠権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する」という枝は正しく、意匠権を譲り受けた甲の「乙の通常実施権は設定の登録がないため甲に対して効力を有しない」という主張は誤りです。「意匠法の規定により」生じる通常実施権には、先使用による通常実施権(29条)や裁定による通常実施権(33条)などがあります。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で高い席に座っている。下に男性2人が向かい合い、左の男性(札「新しい意匠権者 甲」)の吹き出し「私は丙から意匠権を譲り受けた。乙の通常実施権は登録されていないのだから、私には効力がないはずだ

通常実施権の移転は、実施の事業とともにする場合・意匠権者の承諾を得た場合・一般承継の場合に限られ、裁定による通常実施権は別に扱われます

34条1項は、通常実施権は、裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、意匠権者(専用実施権についての通常実施権にあっては意匠権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合、及び相続その他の一般承継の場合に限り移転することができると定めます。実施の事業とともにする場合は意匠権者の承諾が要らないので、通常実施権者乙が事業を丙に譲渡するとき「甲の承諾を得なければ、甲の意匠権に係る通常実施権を丙に移転することができない」という枝は誤りです。相続その他の一般承継でも移転できるので、通常実施権は「実施の事業とともにする場合や意匠権者の承諾を得た場合以外に、移転することができる場合がある」という枝は正しいです。通常実施権に質権を設定するにも、裁定による通常実施権を除き意匠権者(及び専用実施権者)の承諾が要ります(2項)。33条3項の裁定(意匠権者側からの裁定)による通常実施権は、通常実施権者の意匠権・特許権・実用新案権が実施の事業とともに移転したときはこれに従って移転し、事業と分離して移転したとき又は消滅したときは消滅します(3項)。33条4項の裁定(相手方からの裁定)による通常実施権は、その意匠権等に従って移転し、消滅したときは消滅します(4項)。先使用による通常実施権の移転も34条1項によるので、事業とともにする場合は承諾なしに移転できます。

  • 事業とともにする場合意匠権者の承諾は要りません。先使用による通常実施権も同じです
  • 承諾を得た場合意匠権者の承諾です。専用実施権についての通常実施権は意匠権者と専用実施権者の両方の承諾が要ります
  • 一般承継相続・合併などで、承諾は要りません
  • 裁定による通常実施権1項の対象外で、通常実施権者の意匠権等に従って移転し、消滅すれば消滅します(3項・4項)

質権者は別段の定めがなければ実施できず、意匠権者は質権者の承諾なしに専用実施権を設定できます

35条1項は、意匠権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、当該登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をすることができないと定めます。質権は担保であって実施のための権利ではないからです。通常実施権を目的として質権を設定した場合に質権者は「契約で別段の定めをした場合を除き、当該登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をすることができない」という枝は正しいです。意匠権に質権が設定されていても、意匠権者が専用実施権を設定することを制限する規定はなく、質権者の承諾なしに範囲を全部とする専用実施権も設定できます。質権者の承諾が要るのは意匠権を放棄するときで、36条が準用する特許法97条1項により、意匠権者は専用実施権者又は質権者があるときはその承諾を得た場合に限り意匠権を放棄できます。質権には特許法96条の物上代位が準用され、意匠権又は専用実施権を目的とする質権の設定は登録が効力要件です(35条2項・3項)。意匠権には、このほか特許法69条1項・2項(効力の及ばない範囲)、73条(共有)、76条(相続人がない場合の消滅)が準用されます(36条)。

意匠法27条1項

意匠権者は、その意匠権について専用実施権を設定することができる。ただし、基礎意匠又は関連意匠の意匠権についての専用実施権は、基礎意匠及び全ての関連意匠の意匠権について、同一の者に対して同時に設定する場合に限り、設定することができる。

意匠法27条2項

専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。

意匠法34条1項

通常実施権は、前条第三項若しくは第四項、特許法第九十二条第三項又は実用新案法第二十二条第三項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、意匠権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、意匠権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

意匠法35条1項

意匠権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をすることができない。

試験ではこう問われる

  1. 専用実施権者が専有する範囲では意匠権者も実施をする権利を専有しない(23条ただし書)。「業としてその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有しない」の枝は正しい
  2. 同じ範囲に重ねて専用実施権は設定できない。G県の専用実施権があるのにG県及びH県で「専用実施権を設定することはできない」の枝は正しい
  3. 基礎意匠・関連意匠の専用実施権は全ての意匠権について同一の者に同時に設定する場合に限る(27条1項ただし書)。基礎意匠が消滅・無効・放棄された後も関連意匠全てで同時(3項)。旧法の枝は「本意匠」の語で出る
  4. 通常実施権には同時設定の制限がない。「基礎意匠又は関連意匠の意匠権についての通常実施権は」同時設定に限るという枝、関連意匠ロの通常実施権に「同時に意匠イについても」許諾が要るという枝は誤り
  5. 専用実施権者が通常実施権を許諾し、又は質権を設定するには意匠権者の承諾が要る(特許法77条4項の準用)。「甲の承諾を得ることなく」許諾できるという枝は誤り
  6. 通常実施権は類似する意匠だけを対象にも許諾できる。「類似する意匠のみについて、通常実施権を許諾することはできない」の枝は誤り
  7. 通常実施権は登録なしに、発生後に意匠権・専用実施権を取得した者に対抗できる(特許法99条の準用)。「設定の登録がないため甲に対して効力を有しない」の主張は誤り
  8. 通常実施権の移転は、裁定によるものを除き、事業とともに・意匠権者の承諾・一般承継に限る(34条1項)。事業とともにする移転に承諾は不要。質権者は別段の定めがなければ実施できず(35条1項)、意匠権者は質権者の承諾なしに専用実施権を設定できる

この用語が問われた枝

令和4年度 問28 枝ロ正しい

意匠権者は、その意匠権の専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、業としてその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有しない。

令和5年度 問25 枝ニ正しい

登録意匠イの意匠権者である甲が、登録意匠イについて、乙に対し「販売地域:G県」とする専用実施権を既に設定している場合、乙以外の第三者に対し「販売地域:G県及びH県」として、登録意匠イについて専用実施権を設定することはできない。

令和8年度 問25 枝ハ正しい

甲は、意匠イに係る意匠権及び意匠イを基礎意匠とする関連意匠ロについての意匠権を有している。甲が、意匠ロの意匠権について乙に対して専用実施権を設定するためには、同時に意匠イについても乙に対して専用実施権を設定しなければならない。

令和元年度 問28 枝ハ正しい

本意匠の意匠権について、無効にすべき旨の審決が確定したときは、当該本意匠に係る関連意匠の意匠権についての専用実施権は、すべての関連意匠の意匠権について同一の者に対して同時に設定する場合に限り、設定することができる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

意匠を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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