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創作非容易性(3条2項)そうさくひよういせい

意匠 第2章 登録要件 短答で5枝

創作非容易性とは、意匠登録出願前に、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠でないことです。3条2項が定める登録要件で、3条1項各号に当たる意匠は対象から除かれます。

世の中にある椅子の脚をそのまま別の机に付け替えただけの机や、よく知られた動物の形をそのまま貯金箱にしただけのものは、どこにも同じ意匠が無くても、その分野のデザイナーなら誰でも思いつきます。新規性があるというだけでこうした意匠に権利を与えると、ありふれた手法によるデザインまで独占されてしまいます。3条2項は、公知の形状等や画像から通常の知識を有する者が容易に創作できた意匠を登録しないことで、意匠権を創作の価値があるものに限っています。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、机の左に雑誌の切り抜き(よく知られた猫の置物の写真、札「公然知られた形状」)、右に出願の図面(猫の形をそのまま使った貯金箱の絵、札「出願に係る意匠:貯金箱」)。二つの間に矢印と

判断の主体はその意匠の属する分野における通常の知識を有する者で、需要者ではありません

3条2項は「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を主体にして、容易に創作できたかを判断します。意匠の類否(24条2項)は需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて判断しますが、創作の容易さはデザインを作る側の目で見るものだからです。部分意匠の場合に創作非容易性は「需要者を主体として判断される」という枝は誤りです。

公知の形状等又は画像に基づく容易創作を問うので、公知意匠と非類似でも物品が違っても拒絶され、引用する画像に2条1項の限定はありません

3条2項の基礎になるのは、公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「形状等又は画像」であり、意匠であることを要しません。そこで、展示会で公知にした意匠イと非類似の意匠ロを出願した場合に、「公知となった意匠イに基づき拒絶される場合はない」という枝は誤りです。乗用自動車の形状と類似する自動車おもちゃの意匠も、物品が非類似なので3条1項3号には当たりませんが、公知の形状に基づく容易創作として3条2項の問題になります。画像についても、2条1項のかっこ書きが3条2項を除いているので、「意匠法第3条第2項の拒絶理由に引用される画像は」操作画像・表示画像に限られるという枝は誤りで、「拒絶理由として引用される日本国内において公然知られた画像は」限られないという枝は正しいです。インターネットで公開された意匠は公衆に利用可能になれば足りるので、「現実に知られたという事実が立証されない限り」容易に創作できた意匠に当たらないという枝は誤りです。動画配信で公開されたレイアウトの後に「当該動画に登場した机と類似する机2台を横並びにした組物」の意匠を出願しても、公知意匠に類似するか少なくとも容易に創作できた意匠なので、登録を受けられるという枝は誤りです。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、机の上に横に並んだ二枚の紙。左の紙は「3条1項3号」と題し、文字「公知の意匠に類似する意匠/物品の同一・類似が前提」、右の紙は「3条2項」と題し、文字「公知の形状等又は画像に基
  • 主体その意匠の属する分野における通常の知識を有する者です。需要者ではありません
  • 基礎日本国内又は外国において公然知られ、刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像です。意匠であることも物品の同一・類似も要りません
  • 画像引用する画像に2条1項の限定(操作画像・表示画像)は及びません
  • 除外3条1項各号に当たる意匠は2項の対象から除かれ、新規性で判断します

1項各号に当たる意匠は2項の対象から除かれ、新規性が先に判断されます

3条2項のかっこ書きは「前項各号に掲げるものを除く」と定めます。公知意匠と同一又は類似なら新規性で拒絶すれば足り、創作の容易さを論じる必要が無いからです。国内の公知意匠に類似し、かつ外国の公知の形状から容易に創作できた意匠は、3条2項ではなく1項3号で拒絶されます。反対に、「我が国において公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたもの」であり、かつ外国の公知意匠に類似する意匠について、3条1項の登録要件を満たさないとされることはないという枝も誤りで、公知の場所を問わず1項3号で拒絶されます。

自己の公知意匠について4条2項の適用を受ければ、その意匠は3条2項の判断でも公知でないものとされます

4条2項の新規性喪失の例外は「第三条第一項及び第二項の規定の適用については」公知に至らなかったものとみなすので、自己の公開した意匠ロについて適用を受ければ、ロを基礎にした容易創作で拒絶されることもなくなります。「自己の意匠ロと第三者の公然知られた意匠ハに基づき容易に意匠の創作をすることができた意匠」イについて、ロの公開に起因して3条2項で拒絶されることはないという枝は正しいです。この平成25年度の枝は公開から6月以内の出願を前提にしていますが、平成30年改正で期間は公開から1年になりました。なお、公知の意匠の一部に類似する図柄を部分意匠として出願した場合、位置・大きさ・範囲が大きく違えば非類似になり、創作も容易でなければ「意匠イの存在を理由として、拒絶されない場合がある」という枝は正しいです。

3条2項で拒絶が確定した出願人は、29条の2の先出願による通常実施権を持てません

29条の2は、他人の意匠権の設定登録の際に実施事業をしている者のうち、先に自ら意匠登録出願をして、その出願が「第三条第一項各号の一に該当し」拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した者に通常実施権を与えます(1項2号)。新規性で拒絶された意匠は公知の意匠と同一又は類似なので、後の他人の出願も本来は登録されないはずであり、登録された意匠権との調整が要るからです。3条2項で拒絶された出願はこの要件を満たさないので、3条2項に該当するとして拒絶査定が確定した出願人は、その後の他人の意匠権について先出願による通常実施権を持ちません。

工場の場面。先生が特許庁の審査官役(札「審査官」)で立ち、横軸の時系列が壁に掛かっていて、左から札「甲の出願A(意匠イ)」「乙の出願B(意匠イに類似)」「出願A:3条2項で拒絶査定が確定」「出願B:意匠権の設定登録」。工場の中で甲(札「甲(
意匠法3条2項

意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

意匠法29条の2第1項2号

前号の自らした意匠登録出願について、その意匠登録出願に係る意匠が第三条第一項各号の一に該当し、拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した者であること。

試験ではこう問われる

  1. 主体は通常の知識を有する者。「需要者を主体として判断される」という枝は誤り
  2. 基礎は形状等又は画像で、意匠でも同一・類似の物品でもなくてよい。公知意匠と非類似の意匠が「拒絶される場合はない」という枝は誤り。自動車おもちゃは3号ではなく3条2項
  3. 引用する画像に2条1項の限定はない。「意匠法第3条第2項の拒絶理由に引用される画像は」限られるという枝は誤り
  4. インターネット公開は「現実に知られたという事実が立証されない限り」という枝が誤り。動画配信で公開されたレイアウトも基礎になる
  5. 1項各号に当たる意匠は2項から除かれる。公知意匠に類似する意匠は3条2項ではなく1項3号で拒絶される
  6. 4条2項の適用を受けた自己の意匠は3条2項でも公知でないものとされる。平成30年改正前の枝の6月は現行法では1年
  7. 29条の2の先出願による通常実施権は3条1項各号で拒絶確定した者だけ。3条2項で拒絶確定した者には無い

この用語が問われた枝

令和5年度 問22 枝ハ誤り

令和5年4月1日に、甲は展示会に出品することで意匠イを公知とした。令和5年5月1日に、甲は意匠イと非類似の意匠ロについて意匠登録出願Aをした。この場合、出願Aは、公知となった意匠イに基づき拒絶される場合はない。

令和4年度 問22 枝ハ誤り

意匠法第3条第2項の拒絶理由に引用される画像は、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られる。

令和5年度 問21 枝ロ正しい

画像の意匠に係る意匠登録出願について、意匠法第3条第2項の拒絶理由として引用される日本国内において公然知られた画像は、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られない。

令和4年度 問22 枝ロ誤り

意匠イがインターネット上で公開された場合、日本国内又は外国において不特定又は多数の者に意匠イが現実に知られたという事実が立証されない限り、意匠ロは、意匠イに基づいて容易に創作することができた意匠に該当しない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

意匠を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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