関連意匠制度(10条・21条2項・22条・27条)かんれんいしょうせいど
関連意匠制度とは、意匠登録出願人が自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(本意匠)に類似する意匠(関連意匠)について、その出願の日が本意匠の出願の日以後で本意匠の出願の日から10年を経過する日前であれば、9条1項・2項にかかわらず意匠登録を受けられるとする10条の仕組みです。関連意匠にのみ類似する意匠も、その関連意匠を本意匠とみなして連鎖して登録できます。
甲が椅子の意匠イを出願した後、背もたれの形を少し変えた意匠ロも売り出すことにしました。ロはイに類似するので、そのまま出願すると自分の先願イに9条で負け、イの公報が出た後なら新規性も失います。しかし似た意匠をいくつも持っておけば、他社がイの周辺を真似たときに権利の範囲を示しやすくなります。そこで10条は、自己の本意匠に類似する意匠を、本意匠の出願日から10年以内に出願すれば9条や3条の2の例外として登録します。令和元年改正で期間が延び、関連意匠にのみ類似する意匠の連鎖も認められました。

関連意匠は本意匠に類似する意匠で、その出願の日が本意匠の出願の日以後かつ本意匠の出願の日から10年を経過する日前であることが要件です
10条1項の本意匠は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠です。関連意匠はその本意匠に類似する意匠でなければならず、「意匠イと意匠ロが非類似であっても、意匠ロについて意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができる場合がある」という枝は誤りです(本意匠に類似しない意匠は、他の関連意匠にのみ類似する場合でも、意匠イを本意匠とする関連意匠にはならないからです)。時期は、関連意匠の出願の日が本意匠の出願の日以後で、本意匠の出願の日から10年を経過する日前です。「意匠イの意匠登録出願日から5年後に」した関連意匠の出願について「意匠ニは意匠登録を受けることができる」という枝は正しいです。優先権の主張を伴う出願では、本意匠も関連意匠も最初の出願の日で数えます。本意匠の最初の出願から10年を過ぎてした出願について「出願Bに係る意匠ロは、意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができる」という枝は誤りです。令和元年改正前は本意匠の意匠公報の発行の日前までしか出願できなかったので、平成28年度以前の枝はその基準で出ています。

関連意匠にのみ類似する意匠はその関連意匠を本意匠とみなして連鎖して登録でき、自己の公知意匠のうち本意匠と同一又は類似のものは新規性の判断で除かれます
10条4項は、関連意匠にのみ類似する意匠について、その関連意匠を本意匠とみなして登録を認め、さらに連鎖する段階的な関連意匠にのみ類似する意匠も同様とします。基礎意匠とは、連鎖の最初に選択した一の意匠です。「意匠ハが意匠イとは非類似の場合であっても、意匠ハに係る意匠登録出願cは、意匠ロを本意匠とした関連意匠として意匠登録を受けることができる」という枝は正しいです。この場合の10年は、10条5項により基礎意匠の出願の日から数えます。本意匠は関連意匠の出願前に公報で公知になっていることが多いので、10条2項は、3条1項1号・2号に該当するに至った自己の意匠のうち本意匠と同一又は類似のものを、関連意匠の新規性・創作非容易性の判断で公知にならなかったものとみなします(8項は基礎意匠に係る他の関連意匠と同一又は類似のものも同じに扱います)。除かれるのは本意匠と同一又は類似のものだけなので、本意匠と非類似の自己の公知意匠に類似する意匠について、「出願Dに係る意匠ニは、意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができない」という枝は正しいです(3条1項3号に当たり、公知から1年を過ぎていれば4条2項も使えないからです)。
設定登録の際に本意匠の意匠権が消滅・無効・放棄されていると登録できず、本意匠に専用実施権が設定されていても登録できませんが、通常実施権は妨げになりません
10条1項ただし書は、関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、その本意匠の意匠権が44条4項の登録料不納で消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、又は放棄されているときは登録を認めません。「意匠ロの意匠権の設定登録の際に、本意匠イに係る意匠権が放棄されていた」場合に「意匠イの関連意匠として意匠登録を受けることはできない」という枝は正しいです。ここで見るのは「その本意匠」の意匠権なので、関連意匠ロを本意匠とみなして出願した意匠ハは、基礎意匠イの意匠権が消滅しても、ロの意匠権が存続していれば登録を受けられます。基礎意匠が44条4項で消滅したときは「意匠ハについて、意匠ロを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることはできない」という枝は誤りです。10条6項は、本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは関連意匠の登録を認めません(専用実施権者の独占と関連意匠の権利者が食い違うからです)。この要件は査定時に判断するので、「出願Gが審査に係属している間に当該専用実施権の抹消が登録されたとき」は登録を受けられるという枝は正しいです。通常実施権は妨げにならず、「甲が意匠権A及び意匠権Bについて乙に通常実施権を許諾した場合であっても」関連意匠として登録を受けられるという枝は正しいです。

10条6項違反だけが無効理由で、本意匠に類似しないことや10年を過ぎたことは拒絶理由にとどまり、本意匠と関連意匠の間には9条を適用しません
48条1項1号が無効理由として挙げる10条の規定は6項だけです。関連意匠が本意匠に類似すること(1項)や10年の期間は17条1項1号の拒絶理由ですが、登録後に争う無効理由ではありません。「本意匠に類似しない関連意匠登録であることを理由として、意匠登録無効審判を請求することはできない」という枝は正しいです。関連意匠が本意匠に類似しないと後から分かっても、その関連意匠は独立の意匠権として残ります。10条7項は、基礎意匠に係る関連意匠にそれぞれ該当する二以上の意匠の出願には9条1項・2項を適用しないと定め、1項も9条にかかわらず登録すると書いているので、本意匠と関連意匠、関連意匠同士の間で先願は問題になりません。令和元年改正前は、関連意匠にのみ類似する意匠は登録できず、その違反が無効理由でしたが、現行法では連鎖が認められるので結論が変わります。
関連意匠の意匠権は独立の権利ですが、存続期間は基礎意匠の出願日から25年で、基礎意匠と分離して移転できず、専用実施権は全てに同一の者へ同時に設定します
関連意匠の意匠権は23条の独立した意匠権で、関連意匠及びこれに類似する意匠の実施に及びます。本意匠には類似しないが関連意匠には類似する意匠を実施する者に「意匠ロに係る意匠権に基づいて権利行使をすることができる」という枝は正しいです。一方で本意匠と一体の扱いもあります。存続期間は、関連意匠の意匠権については基礎意匠の意匠登録出願の日から25年で終わります(21条2項)。関連意匠の意匠権は「意匠登録出願Aの出願日から25年を超えて存続しない」という枝は正しく、「当該基礎意匠の第一国の出願日から25年をもって終了する」という枝は誤りです(21条2項には10条1項のような優先日に読み替えるかっこ書が無く、日本の出願日で数えるからです)。令和元年改正前は本意匠の設定登録日から20年だったので、旧法の枝はその基準です。基礎意匠及びその関連意匠の意匠権は分離して移転できず(22条1項)、基礎意匠の意匠権が消滅・無効・放棄された後も関連意匠同士は分離して移転できません(22条2項)。「意匠イに係る意匠権と意匠ロに係る意匠権を分離して移転することができる場合がある」という枝は誤りです。専用実施権は、基礎意匠及び全ての関連意匠の意匠権について同一の者に対して同時に設定する場合に限り設定できるので(27条1項ただし書)、関連意匠ロに設定するには「同時に意匠イについても乙に対して専用実施権を設定しなければならない」という枝は正しいです。通常実施権にはこの制限がありません。秘密にすることの請求は出願ごとなので、「本意匠を秘密にすることを請求しなかった場合でも、その関連意匠を秘密にすることを請求することができる」という枝は正しいです。

- 意匠権の効力関連意匠ごとに独立の意匠権で、本意匠に類似しない意匠にも関連意匠に類似すれば及びます(23条)
- 存続期間基礎意匠の意匠登録出願の日から25年です(21条2項。旧法は本意匠の設定登録日から20年)
- 移転基礎意匠と全ての関連意匠は分離して移転できません。基礎意匠の消滅後も関連意匠同士は分離できません(22条)
- 専用実施権基礎意匠及び全ての関連意匠について同一の者に同時に設定する場合に限ります(27条1項ただし書・3項)
- 通常実施権制限が無く、関連意匠だけに許諾できます(28条)
- 秘密意匠出願ごとに請求します。本意匠だけ・関連意匠だけの請求もできます(14条1項)
意匠法10条1項意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日(第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項、第四十三条の二第一項又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う意匠登録出願にあつては、最初の出願若しくは千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日。以下この項において同じ。)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、当該本意匠の意匠登録出願の日から十年を経過する日前である場合に限り、第九条第一項又は第二項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。ただし、当該関連意匠の意匠権の設定の登録の際に、その本意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅しているとき、無効にすべき旨の審決が確定しているとき、又は放棄されているときは、この限りでない。
意匠法10条4項第一項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠については、当該関連意匠を本意匠とみなして、同項の規定により意匠登録を受けることができるものとする。当該意匠登録を受けることができるものとされた関連意匠にのみ類似する意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠にのみ類似する意匠についても、同様とする。
意匠法10条6項本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠については、第一項及び第四項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
意匠法21条2項関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から二十五年をもつて終了する。
意匠法22条1項基礎意匠及びその関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。
試験ではこう問われる
- 関連意匠は本意匠に類似する意匠に限る。本意匠と非類似の意匠を関連意匠にできる場合があるという枝は誤り。関連意匠にのみ類似する意匠はその関連意匠を本意匠とみなして登録できる(10条4項)
- 出願の日は本意匠の出願の日以後で、基礎意匠の出願の日から10年を経過する日前。優先権の主張があれば最初の出願の日が基準。旧法の「本意匠の公報発行前」は当時基準
- 10条2項・8項で除かれる自己の公知意匠は本意匠(又は他の関連意匠)と同一又は類似のものだけ。本意匠と非類似の自己の公知意匠には新規性で負ける
- 設定登録の際に「その本意匠」の意匠権が登録料不納で消滅・無効審決確定・放棄なら登録不可。関連意匠を本意匠とみなす場合は基礎意匠が消滅していてもよい
- 本意匠に専用実施権があれば登録不可(10条6項。査定時に判断し、唯一の無効理由)。通常実施権は妨げにならない
- 本意匠に類似しないことは無効理由でない。本意匠と関連意匠の間に9条は適用しない(10条7項)
- 関連意匠の意匠権は独立の権利で、本意匠に非類似でも関連意匠に類似すれば権利行使できる。存続期間は基礎意匠の出願日から25年で、第一国出願日や設定登録日からではない
- 分離移転は不可(基礎意匠消滅後も)。専用実施権は全てに同一の者へ同時設定。通常実施権と秘密請求は個別にできる
この用語が問われた枝
甲は、令和14年4月10日に、意匠イに類似する意匠ロについて意匠登録出願Bをした。この場合、出願Bに係る意匠ロは、意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができる。
甲が、意匠イの意匠登録出願日から5年後に、意匠イと類似する意匠ニについて、意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録出願を行った場合、意匠ニは意匠登録を受けることができる。
意匠イと意匠ロが非類似であっても、意匠ロについて意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができる場合がある。
意匠ハが意匠イとは非類似の場合であっても、意匠ハに係る意匠登録出願cは、意匠ロを本意匠とした関連意匠として意匠登録を受けることができる。なお、意匠ロに係る意匠権Bは存続しているものとする。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。