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意匠権の効力と類否判断の枠組み(23条・24条・25条・25条の2)いしょうけんのこうりょくとるいひはんだんのわくぐみ

意匠 第5章 意匠権の効力・実施権 短答で17枝

意匠権の効力とは、意匠権者が業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有することです(23条)。類否判断の枠組みとは、登録意匠の範囲を願書の記載と図面等に現された意匠に基づいて定め(24条1項)、登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かを需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて判断する(24条2項)という決まりです。

登録した椅子の意匠とそっくりの椅子が売られていたら、意匠権者はそれを止められます。特許権が特許発明そのものの実施だけを専有するのと違い、意匠権は登録意匠に類似する意匠の実施まで専有します。見た目の創作は少し変えれば簡単に逃げられるので、似ている範囲まで守らないと権利の意味がないからです。そこで、どこまでが「類似」かが権利の広さを決める一番の争点になり、意匠法は、対比の基礎は願書と図面等、判断の物差しは需要者の視覚を通じて起こさせる美感、と条文で枠組みを決めています。

家具店の店先の場面。先生が先生役(札「先生」)で、陳列された2脚の椅子の間に立っている。左の椅子に「登録意匠(願書と図面で特定)」の札、右の椅子に「乙の椅子:背もたれの形が少し違う」の札。右の椅子の横に店主の男性(札「乙」)が立ち、吹き出し

意匠権者は業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有し、専用実施権を設定した範囲では専有しません

23条本文は、意匠権者は業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有すると定めます。特許法68条が「特許発明の実施」だけを専有の対象にするのに対し、意匠権は登録意匠に類似する意匠の実施まで及ぶ点が意匠法の特徴です。「業として」は事業として行うことを意味し、営利を目的とするかどうかを問わないので、「業として」に該当するのは「営利を目的とする場合に限られない」という枝は正しいです。実施は2条2項で物品の製造、使用、譲渡などと定義され、業としてという限定は2条の実施の定義ではなく23条の効力の要件に置かれています。そこで、「カメラ」の登録意匠に類似する意匠のカメラをプロのカメラマンが「私用目的で使用する行為が含まれる」という枝は、登録意匠の実施行為に含まれるという趣旨で正しいです(この枝の解説は当時の2条3項を引いていますが、現行法では2条2項1号です)。ただし書により、意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については意匠権者は専有しません。専用実施権者が専有する範囲については、意匠権者は「業としてその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有しない」という枝は正しいです。

登録意匠の範囲は願書の記載と図面等に現された意匠に基づいて定め、実施品や意匠登録請求の範囲ではありません

24条1項は、登録意匠の範囲は願書の記載及び願書に添付した図面に記載され又は願書に添付した写真、ひな形若しくは見本により現された意匠に基づいて定めなければならないと定めます。意匠には特許の特許請求の範囲に当たる書面がないので、「願書に添付した意匠登録請求の範囲の記載に基いて定めなければならない」という枝は誤りです。侵害訴訟で相手方の物品の意匠と対比するのも願書と図面等で特定される登録意匠であって、意匠権者が実際に売っている製品ではありません。侵害訴訟では意匠権者の「登録意匠の実施品」と相手方の物品の意匠との類否が判断されるという枝は誤りです。願書の記載には意匠に係る物品の欄だけでなく、6条3項以下の物品の材質や大きさ、意匠に係る物品の説明、意匠の説明も含まれるので、願書の記載とは意匠に係る物品を意味し「願書のその他の記載が基礎とされることはない」という枝は誤りです。

類否は取引者を含む需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて判断し、物品の類否と形態の類否の両方を見ます

24条2項は、登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うと定めます。平成18年改正で明文化されたもので、判断の主体は需要者であって創作者や当業者ではなく、物差しは美感の共通性であって出所の混同のおそれではありません。この需要者には最終消費者だけでなく物品を取引する取引者も含まれるので、24条2項の需要者には「取引者が含まれる」という枝は正しいです。観察は需要者が現に見る状態で行うので、物品が拡大レンズで見て取引されるのが通常の場合には「拡大レンズで見た状態で意匠の類否判断が行われる」という枝は正しいです。意匠は物品等と形態が一体なので、類否は物品の類否と形態の類否の両方で決まります。物品の類否は用途と機能の共通性で見るので、形態が類似していても物品が非類似なら両意匠は非類似で、登録意匠に形態が類似する意匠であっても「両意匠は非類似となる場合がある」という枝は正しいです。形態の類否は、需要者が注意を引かれる部分を要部として認定し、要部が共通して美感を共通にするかで判断します。美感の共通性がなければ類似しないので、意匠イと意匠ロに需要者に起こさせる美感の共通性がない場合に意匠ロの学習机の製造・譲渡は意匠イ及び「これに類似する意匠の実施には該当しない」という枝は正しいです。関連意匠は本意匠に類似するものとして登録されているので、本意匠の要部や類似の範囲を把握する手がかりになり、本意匠と他の意匠との類否判断に当たり「関連意匠を参酌できる」という枝は正しいです。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判官役(札「審判官」)で高い席に座り、机の上に「登録意匠イ:学習机」と「意匠ロ:学習机」と書かれた2枚の図面を並べている。先生の前に大きな板が立ち、「類否の2段階」と題して「①物品の類否:用途・機能が共通か」「
  • 判断の主体需要者です(24条2項)。取引者を含み、創作者や当業者ではありません
  • 判断の物差し視覚を通じて起こさせる美感の共通性です。出所の混同のおそれではありません
  • 物品の類否用途と機能の共通性で見ます。形態が似ていても物品が非類似なら意匠は非類似です
  • 形態の類否需要者の注意を引く部分を要部として認定し、要部の共通性で美感が共通するかを見ます。観察は需要者が現に見る状態(通常は肉眼、拡大レンズで取引されるなら拡大した状態)です
  • 参酌できるもの関連意匠は本意匠の類似の範囲を把握する手がかりになります

判定は3名の審判官が登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲について示す公式見解で、拘束力も不服申立てもなく、時期の制限もありません

25条1項は、登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については特許庁に対し判定を求めることができると定め、2項により特許庁長官は3名の審判官を指定して判定をさせます。判定は特許庁の公式見解の表明であって行政処分ではなく、「法律的な拘束力を有するものでない」という枝は正しいです。裁判所も判定に拘束されないので、侵害訴訟の前に非類似との判定があっても裁判所は「意匠イと乙物品の意匠は類似するとの判断をすることができる」という枝は正しいです。拘束力がないので判定の結果に対する不服申立てもできず、判定結果に対しては「不服申立てが可能である」という枝は誤りです(25条3項で準用する特許法71条4項により、判定の請求を却下する決定にも不服を申し立てられません)。請求の時期に制限はなく、侵害訴訟を提起した後であっても意匠イに類似する意匠の範囲について「特許庁に対し、判定を求めることができる」という枝は正しいです。判定で審理するのは対象物が登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するかどうかだけなので、「先使用権の成否など、意匠権侵害訴訟における抗弁に該当する事実の存否は判定制度の審理対象にはならない」という枝は正しいです。審理は特許法145条2項の準用で書面審理が原則ですが、審判長は申立てにより又は職権で口頭審理にできます。裁判所から登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲について鑑定の嘱託があったときも、特許庁長官は3名の審判官を指定して鑑定をさせます(25条の2第1項)。

特許庁の判定の審理室と裁判所を左右に並べた場面。左は特許庁で、先生が審判官役(札「審判官(3名のうち1名)」)として机に座り、「判定書:乙の物品は登録意匠イに類似する意匠の範囲に属しない」と書かれた書面を手にしている。右は裁判所の法廷で、裁
意匠法23条

意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

意匠法24条1項

登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。

意匠法24条2項

登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。

意匠法25条1項

登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。

試験ではこう問われる

  1. 意匠権は登録意匠に類似する意匠の実施まで専有する。「業として」は営利目的に限らない。類似する意匠のカメラを私用で使う行為も実施に含まれる
  2. 専用実施権を設定した範囲では意匠権者は「業としてその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有しない」(23条ただし書)
  3. 登録意匠の範囲は願書の記載と図面等で定める。「意匠登録請求の範囲の記載に基いて」という枝は誤り。侵害訴訟で対比するのは「登録意匠の実施品」ではない。願書の記載は物品の欄に限らない
  4. 類否は需要者の視覚を通じて起こさせる美感で判断する(24条2項)。需要者には「取引者が含まれる」。創作者基準や混同のおそれではない
  5. 形態が類似しても物品が非類似なら「両意匠は非類似となる場合がある」。拡大レンズで取引される物品は拡大した状態で判断する。関連意匠を参酌できる
  6. 判定は3名の審判官による公式見解で「法律的な拘束力を有するものでない」。裁判所は判定と異なる判断ができる。不服申立てはできない
  7. 判定は侵害訴訟の提起後でも求められる。先使用権の成否など抗弁の事実は判定の対象にならない。書面審理が原則で口頭審理にできる
  8. 裁判所から鑑定の嘱託があれば特許庁長官が3名の審判官を指定して鑑定させる(25条の2)

この用語が問われた枝

令和6年度 問22 枝ロ正しい

意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有するところ、「業として」に該当するのは営利を目的とする場合に限られない。

令和4年度 問28 枝ロ正しい

意匠権者は、その意匠権の専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、業としてその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有しない。

令和4年度 問28 枝イ誤り

登録意匠の範囲は、願書に添付した意匠登録請求の範囲の記載に基いて定めなければならない。

平成29年度 問27 枝ホ誤り

意匠権の侵害訴訟においては、意匠権者の「登録意匠の実施品」と相手方の物品の意匠との類否が判断される。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

意匠を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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