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一意匠一出願(7条)いちいしょういちしゅつがん

意匠 第3章 出願(組物・内装・関連意匠・秘密意匠・分割変更・優先権) 短答で10枝

一意匠一出願とは、意匠登録出願は経済産業省令で定めるところにより意匠ごとにしなければならないとする7条の原則です。意匠ごとの出願とは、一つの意匠に係る物品・建築物・画像について一つの形状等を一つの願書で出すことで、二以上の意匠を包含する出願は7条違反として拒絶されます。

甲が同じ形のコップを白と黒の二色で作り、一枚の願書に両方の図面を添えて出願したとします。意匠は物品の形状・模様・色彩の結合なので、色の違う二つのコップは二つの意匠です。7条は、意匠登録出願を意匠ごとにしなければならないと定め、こうした出願を認めません。一つの願書に一つの意匠を対応させておけば、審査でどの意匠を審査するかが定まり、登録後も一つの意匠権がどの意匠を独占しているかが公報で一目で分かるからです。二つに分けたいときは出願の分割(10条の2)を使います。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、一枚の「願書 意匠に係る物品:コップ」と書かれた紙と、その横に白いコップの図面と黒く塗ったコップの図面の二枚を並べている。向かいに出願人の男性(札「出願人」)が立ち、吹き出し「

意匠登録出願は経済産業省令で定めるところにより意匠ごとにしなければならず、令和元年改正で「物品の区分」の文言は条文から消えました

7条は「意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない」と定めています。以前は「経済産業省令で定める物品の区分により」と書かれ、省令の別表に物品の区分表があり、区分に無い物品は「同程度の区分による物品の区分」を願書に記載する扱いでした。令和元年改正で区分表は廃止され、物品の記載は省令の定めに従うだけになったので、「物品の区分に基づいて、意匠ごとにしなければならない」という枝は誤りです(現行の7条に物品の区分の文言は無いからです)。平成24年度の枝にある「同程度の区分による物品の区分を願書の「意匠に係る物品」の欄に記載する」扱いは当時の制度で、現行法では問われません。

一つの願書に二以上の物品を書いたり、二つの形状や二つの色彩の図面を添えたりすると、二以上の意匠を包含する出願として7条に違反します

一意匠かどうかは、願書の意匠に係る物品の記載と図面の両方で見ます。物品が二つなら、図面の形状が一つでも二つの意匠です。「願書の意匠に係る物品の欄に二以上の意匠に係る物品を記載して出願することで、一意匠として意匠登録を受けることができる」という枝は誤りです。「オートバイ」と「オートバイおもちゃ」を書いた平成24年度の枝も同じ理由で7条に違反します。物品が一つでも、図面に別の意匠が二つあれば二意匠です。白色の文鎮の図面と、同じ形で黒色の文鎮の図面を一の願書に添付した出願は「一意匠一出願の要件を満たす」という枝は誤りです(形状が同じでも色彩が違えば別の意匠で、6条5項の彩色の省略は図面の表し方にすぎないからです)。「花瓶」と記載して「造花の入った花瓶が記載された図面が添付された意匠登録出願」が7条の要件を満たすという枝も誤りです(花瓶と造花は別の物品であり、二つの物品の意匠を一つの願書に載せているからです)。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机の上に三枚の願書を並べ、指し棒で順に示している。一枚目は「意匠に係る物品:オートバイ、オートバイおもちゃ」と二つの物品名が書かれ図面は一つ、二枚目は「意匠に係る物品:文鎮」で白い文鎮と

機能に基づいて変化する意匠、組物の意匠、内装の意匠は、法律が一意匠として出願することを認めています

見た目が複数あっても、法律が一つの意匠と扱う場面があります。物品の形状等がその物品の有する機能に基づいて変化する場合は、その旨と機能の説明を願書に記載すれば変化の前後にわたる形状等が一つの意匠になります(6条4項)。「ロボットおもちゃ」の変化する前の形状と変化した後の形状を図面に記載した出願が「願書の記載にかかわらず、複数の意匠を含むものとして一意匠一出願の要件を満たさない」という枝は誤りです。機能に基づいて変化する場合に「変化の前後にわたるその物品の形状を含めて出願することで、一意匠として意匠登録を受けることができる」という枝は正しく、「変化前のその物品の形状及び変化後のその物品の形状について別個に出願することで、それぞれ一意匠として意匠登録を受けることができる」という枝も正しいです(6条4項は一意匠として出願することを認めるだけで、別々に出願することを妨げないからです)。同時に使用される二以上の物品・建築物・画像からなる組物で組物全体として統一があるもの(8条)と、内装全体として統一的な美感を起こさせる内装の意匠(8条の2)も、7条の例外として一意匠で出願できます。

  • 動的意匠(6条4項)機能に基づいて変化する前後の形状等を、その旨と機能の説明を願書に記載して一意匠にします
  • 組物の意匠(8条)同時に使用される二以上の物品・建築物・画像で省令で定めるものを、組物全体として統一があるときに一意匠にします
  • 内装の意匠(8条の2)店舗・事務所などの内部の設備・装飾を、内装全体として統一的な美感を起こさせるときに一意匠にします

7条違反は拒絶理由ですが無効理由ではなく、侵害訴訟で特許法104条の3の無効の抗弁に使うこともできません

17条1項3号は「その意匠登録出願が第七条に規定する要件を満たしていないとき」を拒絶の査定の理由に挙げています。一方、48条1項の無効理由には3条・3条の2・5条・9条・10条6項などが並びますが、7条はありません。一意匠一出願は審査の便宜のための手続的な要件で、登録されてしまえば権利の範囲は公報で明らかになり、無効にして第三者を守る必要が無いからです。「意匠法第7条に違反してされたとしても、当該意匠登録について意匠登録無効審判を請求することはできない」という枝は正しく、7条違反が「意匠法第48条の規定により意匠登録の無効の理由となる」という平成27年度の枝は誤りです。無効理由でない以上、41条で準用する特許法104条の3第1項の抗弁にもなりません。侵害訴訟で被告が、出願が「二以上の意匠を包含するものであるため、当該意匠登録が意匠登録無効審判により無効にされるべきものと認められるとの主張をすることができる」という枝は誤りです。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座り、左に意匠権者の男性(札「意匠権者」)、右に被告の男性(札「被告」)が立っている。被告の吹き出し「この登録意匠の出願は二以上の意匠を包含していたから、無効にされるべきもので権利行

二以上の意匠を包含する出願は分割で直し、二以上の意匠を含む国際出願は意匠ごとにされた出願とみなされるので分割の手続は要りません

7条違反の拒絶理由を受けた出願人は、審査・審判・再審に係属している間に、出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願に分割して直します(10条の2第1項)。「2以上の意匠を包含する意匠登録出願が、審査、審判又は再審に係属している場合、当該出願の一部を1又は2以上の新たな意匠登録出願とすることができる」という枝は正しいです。ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際出願は一つの出願に複数の意匠を含められますが、日本では60条の6第2項により「国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願」とみなされます。「国際登録の日に国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願とみなされる」という枝は正しく、「我が国において意匠ごとに出願を分割する手続をしなければならない」という枝は誤りです(法律上当然に意匠ごとの出願になるからです)。

意匠法7条

意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない。

意匠法17条1項3号

審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
三 その意匠登録出願が第七条に規定する要件を満たしていないとき。

意匠法60条の6第2項

二以上の意匠を包含する国際出願についての前項の規定の適用については、同項中「された意匠登録出願」とあるのは、「国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願」とする。

試験ではこう問われる

  1. 7条は「意匠ごとに」で、令和元年改正により「物品の区分」の文言は無い。「物品の区分に基づいて」という枝は誤り。旧法の「同程度の区分」の枝は当時の制度
  2. 物品欄に二以上の物品を書けば形状が一つでも二意匠。「二以上の意匠に係る物品を記載して出願することで、一意匠として」登録を受けられるという枝は誤り
  3. 同じ形で白と黒の文鎮の図面を一の願書に添付すると二意匠。造花の入った花瓶も二つの物品で7条違反
  4. 機能に基づいて変化する形状は、その旨と機能の説明を願書に記載すれば一意匠(6条4項)。別個に出願してそれぞれ一意匠とすることもできる
  5. 組物(8条)と内装(8条の2)は全体として統一があれば一意匠で出願できる
  6. 7条違反は17条1項3号の拒絶理由だが、48条の無効理由ではない。無効審判を請求できず、侵害訴訟で特許法104条の3の抗弁にもならない
  7. 二以上の意匠を包含する出願は、審査・審判・再審の係属中に分割で直す(10条の2第1項)
  8. 二以上の意匠を含む国際出願は国際登録の対象である意匠ごとにされた出願とみなされ(60条の6第2項)、日本で分割する手続は要らない

この用語が問われた枝

令和7年度 問21 枝イ誤り

意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、物品の区分に基づいて、意匠ごとにしなければならない。

令和6年度 問29 枝イ誤り

形状が同一の場合には、願書の意匠に係る物品の欄に二以上の意匠に係る物品を記載して出願することで、一意匠として意匠登録を受けることができる。

令和6年度 問29 枝ロ正しい

意匠に係る物品の形状がその物品の有する機能に基づいて変化する場合には、変化の前後にわたるその物品の形状を含めて出願することで、一意匠として意匠登録を受けることができる。

令和6年度 問29 枝ハ正しい

意匠に係る物品の形状がその物品の有する機能に基づいて変化する場合には、変化前のその物品の形状及び変化後のその物品の形状について別個に出願することで、それぞれ一意匠として意匠登録を受けることができる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

意匠を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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