意匠登録無効審判(48・49・30条)いしょうとうろくむこうしんぱん
意匠登録無効審判とは、意匠登録が48条1項各号のいずれかに該当するときに、その意匠登録を無効にすることについて請求できる審判です。何人も請求でき、無効にすべき旨の審決が確定すると意匠権は初めから存在しなかったものとみなされます(49条)。
審査官が見落として登録になった意匠でも、実は出願前に雑誌に載っていたなら、本来は登録されるべきではなかったものです。そのままでは誰もが使えるはずの意匠を一人が独占してしまうので、意匠法は特許庁の審判で登録をさかのぼって無効にする意匠登録無効審判を置いています。意匠法には特許法の登録異議の申立てや訂正審判が無いので、登録を無効にする道はこの審判だけです。どの理由で無効にできるかは48条1項に列挙され、審査で見る拒絶理由より狭くなっています。

無効理由は48条1項に限定列挙され、7条・8条・10条1項の違反や要旨変更は拒絶理由であっても無効理由ではありません
48条1項1号は、3条(新規性・創作非容易性)、3条の2、5条(不登録事由)、9条1項・2項(先願)、10条6項(専用実施権が設定された本意匠の関連意匠)、15条1項で準用する特許法38条(共同出願)、68条3項で準用する特許法25条(外国人の権利の享有)に違反した登録を挙げ、2号は条約違反、3号は意匠登録を受ける権利を有しない者の出願(冒認)、4号は登録後に享有できない者になったことや条約違反になったことを挙げています。手続的な要件である7条(一意匠一出願)、8条(組物)、8条の2(内装)の違反は拒絶理由(17条)であっても無効理由ではありません。要旨を変更する補正は審査で決定をもって却下され(17条の2)、意匠権の設定の登録があった後に要旨変更と認められたときは出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされるだけで(9条の2)、無効理由にはなりません。「意匠登録が意匠法第7条に違反してされたとしても」無効審判を請求できないという枝は正しく、「意匠登録無効審判以外の方法により、無効にできる場合がある」という枝は誤りです。関連意匠が本意匠に類似することを求める10条1項の違反も無効理由に無いので、「本意匠に類似しない関連意匠登録であることを理由として」無効審判を請求できないという枝は正しいです。関連意匠が「本意匠には類似せず、他の関連意匠にのみ類似する場合」に無効審判を請求できるという平成28年度の枝は当時の10条3項違反として正しいですが、令和元年改正の10条4項は関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認めたので、現行法では無効理由になりません。

- 無効理由になるもの3条、3条の2、5条、9条1項・2項、10条6項、共同出願(特38条)、外国人の享有(特25条)、条約違反、冒認、後発的な享有不能・条約違反です
- 無効理由にならないもの7条(一意匠一出願)、8条(組物)、8条の2(内装)、10条1項(本意匠との類似)、登録後の要旨変更の認定(9条の2)、6条の図面の不備です
- 特許法との違い特許法123条には記載要件違反(36条)や補正の範囲外(17条の2第3項)が無効理由にありますが、意匠法にはこれに当たる無効理由が無く、請求人適格も「何人も」です
何人も請求できますが、共同出願違反と冒認を理由とする請求は意匠登録を受ける権利を有する者に限られ、意匠権の消滅後も請求できます
48条2項本文は、意匠登録無効審判を何人も請求できるとしています。特許法123条2項の無効審判が利害関係人に限るのと違う点です。ただし書により、共同出願違反(15条1項で準用する特許法38条)又は冒認(48条1項3号)を理由とする請求は、その意匠について意匠登録を受ける権利を有する者に限られます。冒認を理由とする無効審判は「意匠登録を受ける権利を有する者しかできない」という枝と、「意匠登録出願時の共同出願違反を理由とする意匠登録無効審判は」意匠登録を受ける権利を有する者に限り請求できるという枝はいずれも正しいです。真の権利者が26条の2の移転請求で意匠権の移転の登録を受けたときは、冒認・共同出願違反はもはや無効理由になりません(48条1項1号・3号のかっこ書)。3項により意匠権の消滅後も請求できるので、「意匠権の消滅後には請求することができない」という枝は誤りで、44条4項の登録料不納で「意匠権は消滅した。この場合であっても、当該意匠登録について意匠登録無効審判を請求することができる」という枝は正しいです。消滅前の侵害について損害賠償を争う相手が、登録を無効にして責任を免れる必要があるからです。除斥期間はありません。
無効にすべき旨の審決が確定すると意匠権は初めから存在しなかったものとみなされ、後発的な理由のときは該当するに至った時からです
49条本文により、無効審決が確定すると意匠権は初めから存在しなかったものとみなされます。48条1項3号の冒認を理由に「初めから存在しなかったものとみなされる」という枝は正しいです。ただし書により、4号の後発的な理由のときは、その理由に該当するに至った時から存在しなかったものとみなされます。審判長は、無効審判の請求があったときはその旨を専用実施権者その他その意匠登録に関し登録した権利を有する者に通知しなければなりません(48条4項)。質権者や登録した通常実施権者も含まれるので、「専用実施権者のみに通知される」という枝は誤りです。基礎意匠の意匠権が無効審決の確定で消滅しても関連意匠の意匠権は残り、その専用実施権は全ての関連意匠の意匠権について同一の者に対して同時に設定する場合に限り設定できます(27条3項)。

一事不再理は当事者及び参加人に限られ、通常実施権者は補助参加でき、善意の実施者には30条の通常実施権が生じます
52条が準用する特許法167条により、無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求できません。平成23年改正で第三者には及ばなくなったので、請求不成立の審決が確定すると「以後は何人も同一の事実及び同一の証拠に基づいて」請求できないという枝は誤りです。審判の結果について利害関係を有する者は当事者の一方を補助するため参加でき(特許法148条3項)、登録が無効になれば実施権を失う通常実施権者が「意匠権者を補助するため、その審判に参加することができる」という枝は正しいです。補正をすることができない不適法な請求は答弁書の提出の機会を与えずに審決で却下できるので(特許法135条)、「いかなる場合であっても、被請求人に答弁書を提出する機会を与えないで」却下できないという枝は誤りです。同一又は類似の意匠について二以上の登録のうち一つを無効にしたときなどの原意匠権者や実施権者で、請求の登録前に無効理由を知らないで実施の事業やその準備をしている者には30条の通常実施権が生じ、意匠権者又は専用実施権者が「無効審判の請求登録前の実施による通常実施権を有する者に対しては相当の対価を受ける権利を有する」という枝は正しいです。
意匠法48条2項意匠登録無効審判は、何人も請求することができる。ただし、意匠登録が前項第一号に該当すること(その意匠登録が第十五条第一項において準用する特許法第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は前項第三号に該当することを理由とするものは、当該意匠登録に係る意匠について意匠登録を受ける権利を有する者に限り請求することができる。
意匠法48条3項意匠登録無効審判は、意匠権の消滅後においても、請求することができる。
意匠法49条意匠登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、意匠権は、初めから存在しなかつたものとみなす。ただし、意匠登録が前条第一項第四号に該当する場合において、その意匠登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、意匠権は、その意匠登録が同号に該当するに至つた時から存在しなかつたものとみなす。
試験ではこう問われる
- 無効理由は48条1項の限定列挙。7条(一意匠一出願)・8条(組物の統一)・8条の2・10条1項(本意匠との類似)・要旨変更は拒絶理由だが無効理由ではない
- 登録を無効にできるのは無効審判だけ。登録異議の申立て・訂正審判は意匠法に無い。「意匠登録無効審判以外の方法により、無効にできる場合がある」という枝は誤り
- 請求人は「何人も」(特許法の利害関係人と違う)。冒認・共同出願違反は意匠登録を受ける権利を有する者だけ。移転請求で移転の登録があれば無効理由でなくなる
- 意匠権の消滅後も請求できる(48条3項)。登録料不納で消滅した後でも請求できる。除斥期間は無い
- 無効審決の確定で意匠権は初めから存在しなかったものとみなす。後発的理由(4号)は該当するに至った時から
- 請求があった旨の通知先は専用実施権者その他登録した権利を有する者で、専用実施権者「のみ」ではない
- 一事不再理は当事者及び参加人に限られ、何人もではない。通常実施権者は補助参加できる。補正できない不適法な請求は答弁書なしで却下できる
- 関連意匠が他の関連意匠にのみ類似する場合は、旧法では無効理由だったが、令和元年改正の10条4項で登録が認められ現行法では無効理由でない
この用語が問われた枝
ある意匠が意匠登録を受けた場合に、その意匠登録が意匠法第7条に違反してされたとしても、当該意匠登録について意匠登録無効審判を請求することはできない。
意匠登録は、意匠登録無効審判以外の方法により、無効にできる場合がある。
本意匠に類似しない関連意匠登録であることを理由として、意匠登録無効審判を請求することはできない。
冒認出願を理由とする無効審判請求は、当該意匠登録に係る意匠について意匠登録を受ける権利を有する者しかできない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。