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新規性(3条1項)しんきせい

意匠 第2章 登録要件 短答で12枝

新規性とは、意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠(3条1項1号)、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(2号)、これらに類似する意匠(3号)のいずれにも当たらないことです。柱書の工業上利用することができる意匠であることと合わせて、3条1項の登録要件になります。

展示会で見せた椅子、雑誌に載った椅子、通販サイトに写真を出した椅子は、どれも出願の時にはもう世の中に出ています。意匠権は新しいデザインを生み出した対価として与える独占なので、すでに知られているデザインやそれに似たデザインに権利を与えるわけにはいきません。3条1項は、出願前に公然知られた意匠、刊行物に記載された意匠、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠、これらに類似する意匠を除いて、工業上利用することができる意匠の創作をした者に意匠登録を認めます。

展示会の会場の場面。先生が特許庁の審査官役(札「審査官」)で立ち、目の前の展示台に椅子(札「意匠イ:展示会で公開済み」)が置かれ、周りに来場者が数人いる。展示台の脇に雑誌(表紙に同じ椅子の写真、札「刊行物」)とノートパソコン(画面に同じ椅子

工業上利用することができる意匠であることが柱書の要件で、工業的方法により量産できることをいいます

3条1項柱書は「工業上利用することができる意匠」を登録の対象にします。意匠法は量産される商品のデザインを守る法律なので、「工業的方法により量産されるものに限られることを意味する」という枝は正しいです。自然物をほとんど加工せずに主な要素にしたものは同じものを反復して生産できないので工業上利用できませんが、「さくら貝と巻貝の貝殻をそのまま用いて、交互に多数繋げたネックレス」は、つなぎ方という加工による形態を備え反復生産できるので、意匠登録の対象になるという枝は正しいです。この要件を欠くときは拒絶理由(17条1号)であり無効理由(48条1項1号)です。

1号の公然知られた意匠は、秘密を保つ義務のない者に現実に知られた意匠で、日本国内又は外国を問わず出願の時を基準に判断します

公然知られたとは、秘密を保つ義務のない者に現実に知られ、秘密の状態を脱したことをいいます。試作を依頼した乙社の従業員が多数でも秘密保持契約で守秘義務を負っているなら、「乙社の多数の従業員に意匠イが開示されたことを理由に」公然知られた意匠に当たるとして拒絶されるという枝は誤りで、「複数の会社に守秘義務契約を締結したうえで」試作品の製作を依頼しても登録要件を満たさないとされることはないという枝は正しいです。学園祭でロボットを展示しても「研究室への来場者が1人もいなかった」なら現実に知られていないので、公然知られたことを理由に登録要件を満たさないとされることはないという枝は正しいです。公知になった場所は日本国内又は外国を問わず、判断の基準は出願の日ではなく出願の時です。「日本時間の午前中に外国においてテレビで紹介された新製品」の意匠をその日の午後に出願しても、新規性喪失の例外の手続を取らなければ1号で拒絶されることはないという枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「午前:外国のテレビで新製品を紹介(公然知られた)」「午後:日本で意匠登録出願」の2本が立ち、2本の札の間に矢印と文字「同じ日

2号の刊行物に記載された意匠と電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠は、現実に知られたことの立証が要りません

2号は、頒布された刊行物に記載された意匠と、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠です。1号と違って、誰かが現実に見たことは要らず、公衆が見られる状態になれば足ります。自分のウェブサイトに写真を載せたら、「個人で作成したものであり、コメント数も20人弱と少ないため」新規性喪失の例外の手続をしなくても登録を受けられるという枝は誤りです。創作非容易性の引用でも同じで、インターネットで公開された意匠について「現実に知られたという事実が立証されない限り」容易に創作できた意匠に当たらないという枝は誤りです。「動画配信サイトにおいて、机2台を横並びにしたオフィスのレイアウトを提案する動画」を配信した後に、それと類似する机2台の組物の意匠を出願しても登録を受けられるという枝は誤りで、「公開されたアニメ映画において登場したスマートフォンに表されていたアイコン画像」と類似するアイコン画像の意匠が登録を受けられる場合があるという枝も誤りです。公知の資料に表された物品の表示部の画像も、画像の意匠の新規性判断の資料になるからです。

  • 1号 公然知られた意匠秘密を保つ義務のない者に現実に知られたことが要ります。来場者がいない展示や守秘義務契約の下での開示は当たりません
  • 2号 頒布された刊行物に記載された意匠・電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠公衆が見られる状態になれば足り、現実に知られたことの立証は要りません。個人サイトでも閲覧者が少なくても当たります
  • 3号 前二号に類似する意匠物品の同一・類似を前提に、形状等の類否を見ます。物品が非類似なら3条2項の問題です
  • 場所と時日本国内又は外国を問わず、出願の時を基準にします

3号の類似する意匠は物品の同一・類似が前提で、物品が非類似なら3条2項の問題になり、1項各号に当たる意匠には2項を使いません

3号は1号・2号の意匠に類似する意匠です。意匠の類似は意匠に係る物品の同一又は類似を前提にするので、乗用自動車の意匠が外国で公然知られた後に形状の似た自動車おもちゃの意匠を出願しても、乗用自動車と自動車おもちゃは用途・機能が異なる非類似の物品なので3号には当たらず、公知の形状に基づく容易創作として3条2項で判断します。公知になった場所も問わないので、出願前に国内の公知の形状から容易に創作でき、かつ「イが出願前に外国において公然知られた意匠に類似するものであるとき」に3条1項の登録要件を満たさないとされることはないという枝は誤りです。3条2項は「前項各号に掲げるものを除く」と定めるので、国内の公知意匠に類似し、かつ外国の公知の形状から容易に創作できた意匠は、3条2項ではなく1項3号で拒絶されます。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、机の左に乗用自動車の写真(札「外国で公然知られた乗用自動車の意匠」)、右に同じ形の自動車おもちゃの図面(札「出願に係る意匠:自動車おもちゃ」)。二つの間に大きな文字「乗用自動車
意匠法3条1項

工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠

試験ではこう問われる

  1. 柱書の工業上利用は「工業的方法により量産されるものに限られることを意味する」。貝殻をつなげたネックレスは反復生産できるので対象になる
  2. 公然知られたは秘密を保つ義務のない者に現実に知られたこと。秘密保持契約の下で多数の従業員に開示しても公知にならず、来場者がいない展示も公知にならない
  3. 基準は出願の時。「日本時間の午前中に外国においてテレビで紹介された新製品」をその日の午後に出願しても拒絶され得る
  4. インターネット掲載は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠。個人サイトでも「コメント数も20人弱と少ないため」手続不要という枝は誤り。「現実に知られたという事実が立証されない限り」という枝も誤り
  5. 動画配信や映画の中に表された形状等・画像も新規性判断の資料になる。アニメ映画のアイコン画像に類似する意匠が登録を受けられる場合があるという枝は誤り
  6. 3号の類似は物品の同一・類似が前提。乗用自動車と自動車おもちゃは非類似物品なので、3号ではなく3条2項の問題
  7. 1項各号に当たる意匠は2項の対象から除かれる。公知意匠に類似する意匠は3条2項ではなく1項3号で拒絶される

この用語が問われた枝

令和4年度 問22 枝イ正しい

意匠法第3条の「工業上利用することができる」とは、工業的方法により量産されるものに限られることを意味する。

平成30年度 問21 枝ニ正しい

さくら貝と巻貝の貝殻をそのまま用いて、交互に多数繋げたネックレスは、意匠登録の対象となる。

令和3年度 問23 枝イ誤り

生産設備を持たない甲社は、「スマートフォン」の新製品を設計し、乙社に同「スマートフォン」の試作品製作を依頼した。この際、同「スマートフォン」の意匠イを乙社の多数の従業員に開示することとなったが、その開示前に甲社と乙社との間で同「スマートフォン」の意匠に関する秘密保持契約が締結されていた。その後、甲社が意匠イについて意匠登録出願Aをした場合、出願Aは、乙社の多数の従業員に意匠イが開示されたことを理由に意匠法第3条第1項第1号の「公然知られた意匠」に該当するとして拒絶される。

令和2年度 問23 枝ホ誤り

甲は、インターネット上の自己のウェブサイトに開発中の意匠イの写真を宣伝のために掲載したところ、20人弱から製品化を望むコメントの書き込みがあったため、実際に製品化し、意匠登録出願することにした。このウェブサイトは、個人で作成したものであり、コメント数も20人弱と少ないため、意匠イに係る意匠登録出願について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるために必要な手続をしなくても、意匠登録を受けることができる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

意匠を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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