部分意匠の要件と効力(2条1項かっこ書き・7条・3条の2)ぶぶんいしょうのようけんとこうりょく
部分意匠とは、物品の部分、建築物の部分又は画像の部分の形状等について意匠登録を受ける意匠です。2条1項が物品・建築物・画像のそれぞれに「部分を含む」と定めることで認められ、全体意匠と同じ登録要件と意匠権の効力の規定が適用されます。
マグカップの取っ手の形だけが新しいデザインだとします。カップ全体で意匠登録を受けると、取っ手だけを真似して胴体の形を変えた商品に権利が及ばないおそれがあります。そこで意匠法は、物品・建築物・画像の「部分」も意匠に含めて(2条1項のかっこ書き)、取っ手の部分だけを意匠登録を受けようとする部分として出願できるようにしています。これが部分意匠で、特徴のある部分を切り出して守る分、願書の書き方や先願との関係、類否の見方に全体意匠と違う点が出てきます。

部分意匠は物品・建築物・画像の部分の形状等で、願書の意匠に係る物品は独立して取引される物品の名で書きます
2条1項は、物品、建築物、画像のそれぞれに「部分を含む」と定めているので、物品の形状等について「その部分についても意匠登録を受けることができる」という枝は正しいです。ただし、出願は7条により、経済産業省令で定めるところにより意匠ごとにしなければならず、願書の意匠に係る物品(6条1項3号)には、独立して取引される物品の名を書きます。部分は物品ではないからです。そこで、「縁(ふち)に模様が施された茶碗について」意匠に係る物品を「茶碗の縁」として意匠登録を受けることができるという枝は誤りで、「ワイシャツの肩の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について」意匠に係る物品を「ワイシャツの肩」として意匠登録を受けることができるという枝も誤りです。長靴の靴底部分の図面を作るときも、「靴底部分の意匠の権利化を考えているのであるから」意匠に係る物品の欄に「長靴用靴底部分」と記載しなければならないという枝は誤りで、「長靴」と書いたうえで、意匠登録を受けようとする部分を実線、その他の部分を破線で描き分けます。傘骨のように部品が独立して取引されるなら、それは部分意匠ではなく部品の意匠として「傘骨」を物品にできます。
- 客体物品の部分、建築物の部分、画像の部分の形状等です(2条1項)
- 願書の意匠に係る物品全体の物品の名(「茶碗」「ワイシャツ」「長靴」)を書きます。「茶碗の縁」のように部分の名は書けません
- 図面意匠登録を受けようとする部分を実線、その他の部分を破線で描き、全体の中の位置・大きさ・範囲が分かるようにします
- 部品との違い独立して取引される部品(傘骨)は部品の意匠として、その名を物品にできます
部分も視覚を通じて美感を起こさせるものである必要があり、通常の取引で外から見える部分なら対象になります
部分意匠も意匠なので、2条1項の「視覚を通じて美感を起こさせるもの」でなければなりません。ここでいう見えるかどうかは、その物品の通常の取引状態で判断します。ピアノの鍵盤部分は「蓋を開けなければ外部から見えないことから」部分意匠として意匠登録の対象にならないという枝は誤りです。鍵盤は蓋を開けて使う通常の状態で見えるからです。反対に、電気掃除機の内部のモーターのように取引状態で外から見えない部分は、対象になりません。
組物の意匠と内装の意匠も、令和元年改正でその部分について意匠登録を受けられるようになりました
令和元年改正前の2条1項は、物品の部分を含むという定めから8条の組物の意匠を除いていたので、組物については部分意匠が認められていませんでした。「屋外用いすと屋外用テーブルの脚部に統一感ある模様が施されているとき」に、その脚部の模様部分を組物の部分意匠として登録できるという平成28年度の枝は、当時の法で誤りとされています。現行法ではこの除外が削られ、「組物の意匠は、その部分について意匠登録を受けることができる」という枝も、「内装の意匠は、その部分について意匠登録を受けることができる」という枝も正しいです。古い枝を読むときは、組物の部分意匠が不可とされているのが旧法の扱いであることに注意が要ります。
先願の図面には物品全体が現れているので、先願が部分意匠の出願でも、登録を受けようとする部分以外の部分が3条の2の引用になります
3条の2は、先の意匠登録出願の「願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠」の一部と同一又は類似の後願を拒絶します。部分意匠の出願でも、図面には破線で物品全体が描かれているので、意匠登録を受けようとする部分以外の部分も「現された意匠」に含まれます。甲の自動車のドア部分の部分意匠の出願Aの後、その公報発行前に、乙が出願Aの図面に記載された「バンパー部分の部分意匠ロについて意匠登録出願Bをした」場合に、出願Bは3条の2で拒絶されることはないという枝は誤りです。カメラのレンズ部分の部分意匠の図面に表された「ストロボ部分の部分意匠ロについて意匠登録出願Bをした」場合も同じで、拒絶されることはないという枝は誤りです。一方、3条の2は先願の意匠の「一部」との同一・類似を問うので、後願が先願の図面に現されたナイフ全体の意匠と同一であれば、「意匠公報に掲載された意匠の存在を理由として」3条の2で拒絶されることはないという枝は正しく、この場合は9条の先願の問題になります。

部分意匠の類否は、部分の形状等だけでなく、物品の同一・類似と、部分の位置・大きさ・範囲も見て判断します
部分意匠の意匠権も23条により登録意匠及びこれに類似する意匠に及びますが、意匠の類似は物品の同一又は類似が前提です。机の脚の部分意匠の意匠権者は、脚の形状が類似する椅子を製造販売する者に対し、「意匠イに係る意匠権に基づいて権利行使をすることができない」という枝は正しいです。机と椅子は非類似の物品だからです。また、部分の形態が似ていても、物品全体の中での位置・大きさ・範囲が大きく違えば類似しません。Tシャツの図柄αに類似する図柄βを部分意匠として出願した場合に、「意匠イの存在を理由として、拒絶されない場合がある」という枝は正しいです。意匠権の効力の場面でも、「意匠イの意匠登録を受けた部分が外観に現れず」視覚を通じて認識できない学習机は、意匠イを利用も侵害もしないので製造・譲渡できるという枝は正しいです。部分意匠の意匠権の効力は、登録を受けた部分を含む物品全体の実施に及ぶので、部分意匠を含む物品の実施品に意匠権が及ばないという考えは誤りです。

意匠法2条1項この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
意匠法3条の2意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 物品・建築物・画像のそれぞれに部分を含む。「その部分についても意匠登録を受けることができる」という枝は正しい
- 意匠に係る物品は独立して取引される物品の名で書く。「茶碗の縁」「ワイシャツの肩」「長靴用靴底部分」として登録を受けられるという枝は誤り
- 見えるかどうかは通常の取引状態で判断する。ピアノの鍵盤が「蓋を開けなければ外部から見えないことから」対象にならないという枝は誤り
- 組物・内装の部分意匠は令和元年改正で可能になった。「組物の意匠は、その部分について意匠登録を受けることができる」という枝は正しい。平成28年度以前の枝で不可とされているのは旧法の扱い
- 先願が部分意匠でも図面の破線部分を含めて3条の2の引用になる。「バンパー部分の部分意匠ロについて意匠登録出願Bをした」場合に拒絶されないという枝は誤り
- 3条の2は先願の意匠の「一部」との同一・類似。先願の全体と同一の後願は3条の2ではなく9条の問題
- 類否は物品の同一・類似が前提。机の脚の部分意匠で椅子に「権利行使をすることができない」という枝は正しい
- 位置・大きさ・範囲が大きく違えば非類似になり得る。図柄が類似しても「拒絶されない場合がある」という枝は正しい
この用語が問われた枝
意匠には、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合が含まれており、また、その部分についても意匠登録を受けることができる。
組物の意匠は、その部分について意匠登録を受けることができる。
内装の意匠は、その部分について意匠登録を受けることができる。
甲は、机の天板の一部分を意匠登録を受けようとする部分として、意匠イについて意匠登録を受けていた。意匠ロにおいて、意匠イの意匠登録を受けた部分が外観に現れず、視覚を通じて認識することができない場合、乙は、意匠ロに係る学習机を製造、譲渡することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。