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審査と拒絶理由(16〜19条)しんさときょぜつりゆう

意匠 第4章 審査・補正・登録 短答で23枝

審査と拒絶理由とは、特許庁長官が審査官に意匠登録出願を審査させ(16条)、審査官が17条各号に限定列挙された拒絶の理由を発見したときは拒絶をすべき旨の査定を、発見しないときは意匠登録をすべき旨の査定をする仕組みです(17条・18条)。審査の手続には特許法50条・52条・54条が準用されます(19条)。

特許では出願してから審査請求をしないと審査が始まらず、出願から1年6月で出願公開されますが、意匠では出願した意匠はそのまま審査官の手に渡り、公開もされないまま登録されるかどうかが決まります。意匠は見た目の創作なので、公開されると模倣されやすく、審査を待つ間に公開しておく利益より、登録まで秘密にしておく利益の方が大きいからです。審査官が拒絶できる理由は17条に並んだものに限られ、拒絶するときは理由を通知して意見書を出す機会を与えます。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「意匠登録出願(願書と図面)」と書かれた封筒を開いている。机の上に「拒絶の理由(17条)」と題した一覧の紙があり、「3条・3条の2・5条・8条・8条の2・9条・10条/共同出願

意匠登録出願は出願審査の請求を待たずに審査官が全件審査し、出願公開の制度もありません

16条は、特許庁長官は審査官に意匠登録出願を審査させなければならないと定めます。特許法48条の2のような出願審査の請求を受けて審査を始める規定は意匠法になく、特許法64条のような出願公開の規定もありません。したがって、意匠では出願から登録までの間に出願の内容が公報に載ることはなく、出願公開を前提とする補償金請求権も国内出願にはありません(国際意匠登録出願の国際公表に伴う補償金請求権は60条の12にあります)。「出願公開された意匠」や「出願審査の請求」を意匠登録出願について語る枝は、制度が存在しないので誤りになります。審査官が拒絶の理由を発見しないときは、18条により意匠登録をすべき旨の査定をしなければなりません。

  • 出願審査の請求意匠法にはありません。出願すれば審査官が審査します(16条)
  • 出願公開意匠法にはありません。願書と図面等の内容は設定登録後の意匠公報で初めて公になります(20条3項)
  • 補償金請求権国内の意匠登録出願にはありません。国際意匠登録出願の国際公表後にだけあります(60条の12)
  • 査定拒絶の理由があれば拒絶をすべき旨の査定(17条)、なければ意匠登録をすべき旨の査定(18条)です

拒絶の理由は17条に限定列挙され、7条違反は拒絶理由ですが無効理由ではありません

17条1項は、1号で3条(工業上利用性・新規性・創作非容易性)、3条の2、5条、8条、8条の2、9条1項・2項、10条1項・4項・6項、15条1項で準用する特許法38条(共同出願)、68条3項で準用する特許法25条(外国人の権利の享有)を、2号で条約違反を、3号で7条(一意匠一出願)違反を、4号で意匠登録を受ける権利を有しない者の出願を拒絶理由に挙げます。ここに無いものは拒絶理由になりません。一方、無効理由は48条1項に別に列挙され、7条・8条・8条の2・10条1項・4項の違反は入っていません。7条は出願の単位を整えるための手続的な要件で、登録後に権利を無効にするほどの瑕疵ではないからです。そこで、7条の要件を満たさない場合に「意匠法第48条の規定により意匠登録の無効の理由となる」という枝は誤りです。同じ理由で、補正が願書の記載や図面の範囲内でなかったことだけを理由に「意匠登録無効審判においてその意匠登録が無効とされる場合がある」という枝も誤りです。要旨を変更する補正が登録後に認められたときは、9条の2により手続補正書を提出した時に出願したものとみなされるだけです。審査の段階でも、図面の要旨を変更する補正は拒絶理由の通知ではなく17条の2の決定をもって却下するので、要旨変更と認めても拒絶の理由を通知する必要はありません。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判官役(札「審判官」)で高い席に座り、左右に2枚の大きな板が立っている。左の板は「拒絶理由(17条)」と題し「3条/3条の2/5条/9条/7条(一意匠一出願)/8条/10条/冒認」の文字、右の板は「無効理由(4
  • 拒絶理由にも無効理由にもなるもの3条・3条の2・5条・9条1項2項・10条6項、共同出願違反(特38条)、外国人の享有(特25条)、条約違反、権利を有しない者の出願です
  • 拒絶理由だけのもの7条(一意匠一出願)、8条(組物)、8条の2(内装)、10条1項・4項(関連意匠)の違反です。48条1項に挙がっていないので無効理由にはなりません
  • どちらでもないもの要旨を変更する補正です。審査では17条の2の決定で却下し、登録後に認められたときは9条の2で出願日が手続補正書の提出時に繰り下がります

創作非容易性の引用は意匠でない形状等や画像でもよく、2条1項の画像の限定を受けません

3条1項の新規性は公然知られた「意匠」との対比ですが、3条2項の創作非容易性は公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「形状等又は画像」に基づいて容易に創作できたかを見ます。2条1項は意匠を構成する画像を機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限っていますが、そのかっこ書で3条2項を除いているので、創作非容易性の判断に使う画像にはこの限定がかかりません。したがって、3条2項の拒絶理由に引用される画像は「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られる」という枝は誤りで、引用される日本国内において公然知られた画像は操作・表示画像に「限られない」という枝は正しいです。

拒絶理由の通知と意見書は特許法50条の準用で、共同出願人の各人が単独で意見書を出せますが、補正の却下には意見書の機会がありません

19条は、審査官の資格(特許法47条2項)、審査官の除斥(48条)、拒絶理由の通知(50条)、査定の方式(52条)、訴訟との関係(54条)を意匠登録出願の審査に準用します。審査官は拒絶査定をしようとするときは拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならず、査定は文書で理由を付して行います。意見書の提出は15条1項で準用する特許法14条の「各人が全員を代表する」手続に当たるので、共同出願人の一人が単独でできます。拒絶査定不服審判の請求は共同でしなければなりませんが(52条で準用する特許法132条3項)、意見書の提出までは共同を要しないので、審判の請求も「意見書を提出するときも、甲と乙は共同してしなければならない」という枝は誤りで、審判の請求は共同ですが、意見書は各人が単独で提出できます。拒絶査定不服審判で査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときにも50条3項で特許法50条が準用されるので、審判官は「拒絶の理由を通知し、当該審判の請求人に意見書を提出する機会を与えなければ」新たな理由で請求不成立の審決をできないという枝は正しいです。これに対し、補正の却下の決定は17条の2第2項で文書に理由を付せば足り、あらかじめ意見書の機会を与える規定はないので、補正の却下の決定をしようとする場合に「出願人に意見書を提出する機会を与えなければならない」という枝は誤りです。

特許庁の窓口の場面。先生が審査官役(札「審査官」)でカウンターの内側に座り、「拒絶理由通知(特許法50条準用)」と書かれた書類を差し出している。カウンターの外に共同出願人の男性2人(札「甲」「乙」)が並び、甲が「意見書 提出者 甲」と書かれ

秘密意匠を引用された出願人は秘密期間中でも閲覧を請求でき、特許庁長官は請求を認めるときに意匠権者へ通知します

秘密にすることを請求された登録意匠も先願(9条)や3条の2の引用になるので、審査官は秘密請求期間の経過を待たずに、その存在を理由とする拒絶の理由を通知できます。先願が秘密意匠だからといって後願の審査を止める規定はないからです。秘密意匠の存在を理由に9条1項の拒絶理由を通知する場合も、秘密請求期間の経過を待つ必要はありません。ただ、それでは拒絶理由を受けた出願人が引用意匠を見られないので、14条4項2号は、その意匠と同一又は類似の意匠に関する審査・審判・再審・訴訟の当事者又は参加人から請求があったときは特許庁長官はその意匠を示さなければならないと定めます。この閲覧の手続は63条で、秘密意匠に関する書類は長官が秘密を保持する必要があると認めるときは閲覧を拒めますが、63条2項により請求を認めるときはその書類を提出した者にその旨と理由を通知しなければなりません。通知が要るのは請求を認めるときだけなので、「その請求を認めるか否かに関わらず、乙にその請求があった旨を通知しなければならない」という枝は誤りで、閲覧の請求をしたときに「特許庁長官は乙に閲覧の請求があった旨を通知しなければならない」という枝も誤りです。平成24年度の「乙にその請求があった旨を通知しなければならない」という枝も同じ理由で誤りですが、その解説は当時の14条5項を根拠にしており、現行法ではこの通知の規定は63条2項に置かれています。

意匠法16条

特許庁長官は、審査官に意匠登録出願を審査させなければならない。

意匠法17条1項

審査官は、意匠登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その意匠登録出願に係る意匠が第三条、第三条の二、第五条、第八条、第八条の二、第九条第一項若しくは第二項、第十条第一項、第四項若しくは第六項、第十五条第一項において準用する特許法第三十八条又は第六十八条第三項において準用する同法第二十五条の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。
二 その意匠登録出願に係る意匠が条約の規定により意匠登録をすることができないものであるとき。
三 その意匠登録出願が第七条に規定する要件を満たしていないとき。
四 その意匠登録出願人がその意匠について意匠登録を受ける権利を有していないとき。

意匠法19条

特許法第四十七条第二項(審査官の資格)、第四十八条(審査官の除斥)、第五十条(拒絶理由の通知)、第五十二条(査定の方式)及び第五十四条(訴訟との関係)の規定は、意匠登録出願の審査に準用する。

意匠法63条2項

特許庁長官は、前項第一号から第七号までに掲げる書類、ひな形又は見本について、同項本文の請求を認めるときは、当該書類、ひな形又は見本を提出した者に対し、その旨及びその理由を通知しなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 意匠法に出願審査の請求と出願公開はない。「出願公開された意匠」「出願審査の請求」を意匠登録出願について語る枝は制度がないので誤り
  2. 7条違反は17条の拒絶理由だが48条の無効理由ではない。「意匠法第48条の規定により意匠登録の無効の理由となる」という枝は誤り
  3. 補正の不適法だけを理由に「意匠登録無効審判においてその意匠登録が無効とされる場合がある」という枝は誤り。登録後の要旨変更は9条の2で出願日が補正書提出時になるだけ
  4. 図面の要旨変更は決定で却下するので、拒絶の理由の通知は要らない。補正の却下の決定に「出願人に意見書を提出する機会を与えなければならない」という枝も誤り
  5. 3条2項の引用画像は2条1項の操作・表示画像に限られない。「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られる」という枝は誤り
  6. 意見書は共同出願人の一人が単独で出せる(特14条準用)。審判の請求は共同でなければならない(特132条3項準用)
  7. 拒絶査定不服審判で新たな拒絶理由を発見したときは特許法50条が準用され、通知と意見書の機会なしに請求不成立の審決はできない(50条3項)
  8. 秘密意匠を引用した拒絶理由は秘密請求期間の経過を待たずに通知できる。閲覧請求を受けた特許庁長官が意匠権者に通知するのは請求を認めるときだけ(63条2項)。「認めるか否かに関わらず」「請求があった旨を通知」という枝は誤り

この用語が問われた枝

令和4年度 問25 枝ロ誤り

意匠登録出願人は、意匠登録出願をした後に、願書の記載及び願書に添付した図面について補正をし、審査官は、その意匠登録出願について意匠登録をすべき旨の査定をした。これらの補正が、願書の記載及び願書に添付した図面の範囲内においてしたものではないとの理由のみにより、意匠登録無効審判においてその意匠登録が無効とされる場合がある。

令和4年度 問22 枝ハ誤り

意匠法第3条第2項の拒絶理由に引用される画像は、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られる。

令和5年度 問21 枝ロ正しい

画像の意匠に係る意匠登録出願について、意匠法第3条第2項の拒絶理由として引用される日本国内において公然知られた画像は、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られない。

令和3年度 問25 枝ハ誤り

意匠登録出願人がした補正に対して、審査官は、補正の却下の決定をしようとする場合、出願人に意見書を提出する機会を与えなければならない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

意匠を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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