意匠の定義と実施(2条)いしょうのていぎとじっし
意匠の定義と実施とは、意匠法2条が定める、意匠とは物品・建築物の形状等又は画像であって視覚を通じて美感を起こさせるものをいうという定義と、意匠の実施とは物品の製造・使用・譲渡等、建築物の建築・使用・譲渡等、画像の作成・使用・提供等をいうという定義です。
椅子の形、ビルの外観、スマートフォンのアイコンは、どれも見た目で選ばれる商品です。意匠法は、こうした見た目のデザインを守るために、守る対象を「物品・建築物の形状等又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と2条1項で区切り、権利者だけができる行為を「実施」として2条2項で列挙しています。何が意匠で、どこまでが実施かをここで決めておかないと、登録要件も意匠権の効力も動かないので、2条は意匠法全体の入口です。

意匠は物品・建築物の形状等又は画像であって視覚を通じて美感を起こさせるものをいい、物品・建築物・画像のそれぞれの部分も含みます
2条1項は、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合を「形状等」と呼び、物品の形状等、建築物の形状等、画像の三つを意匠の客体とします。物品・建築物・画像のいずれも「部分を含む」とかっこ書きで定めているので、物品の形状等について「その部分についても意匠登録を受けることができる」という枝は正しく、「視覚を通じて美感を起こさせる建築物の部分」は意匠登録の対象になるという枝も正しいです。建築物と画像そのものが意匠に加わったのは令和元年改正(令和2年4月1日施行)からで、それ以前の枝では建築物は物品でないとされ、画像は物品の部分として扱われていたので、古い枝を読むときはこの点に注意が要ります。
- 物品の意匠物品(部分を含む)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(形状等)です
- 建築物の意匠建築物(部分を含む)の形状等です。令和元年改正で加わりました
- 画像の意匠機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られ、画像の部分を含みます。令和元年改正で加わりました
- 共通の要件視覚を通じて美感を起こさせるものであることです
物品は市場で流通する有体物の動産で、その物品自体の形態であることが必要です
条文に物品の定義はありませんが、意匠登録の対象になる物品は、有体物のうち市場で流通する動産であると審査基準で扱われています。粉や液体のように決まった形のないものは物品と認められませんが、集まって固定した形になれば物品に当たるので、「粉状物の集合であって固定した形態を有する」角砂糖は意匠登録を受けることができるという枝は正しく、「蝶結びして乾燥させた麺は、意匠登録の対象となる」という枝も正しいです。不動産は物品ではありませんが、工業的に量産され販売時に動産として扱われるものは物品に当たるので、「組立物置は意匠登録の対象となるが、組立家屋は意匠登録の対象とならない」という枝は誤りです。その物品自体の形態であることも必要で、「タオルを折り畳んで作ったバラの花に似せた形状の」置物は、置物という物品自体の形態として意匠登録を受けることができるという枝は正しいです。
視覚を通じて美感を起こさせるものなので、通常の取引で外から見えない部分や肉眼で認識できない形状等は原則として意匠に当たりません
意匠は見た目のデザインを守る制度なので、2条1項は「視覚を通じて美感を起こさせるもの」に限ります。電気掃除機の内部にあり「外部から視認できないモーターの形状は」電気掃除機の部分として意匠登録の対象になるという枝は誤りです。物品の取引で形状等を肉眼で観察するのが通常である場合に、肉眼によって認識することができない形状等は、視覚を通じて美感を起こさせるものに当たりません。ただし、取引の際に拡大して観察するのが通常である極小の物品は、肉眼で認識できるものと同じに扱われるので、極小の歯車が「取引の際、拡大観察することが通常であっても」意匠登録の対象にならないという枝は誤りです。
画像は機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限られますが、3条2項・37条2項・38条7号8号などでは限定が外れます
2条1項のかっこ書きは、画像を「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り」ます。どこに表示されるかは限定していないので、表示画像は「当該機器又はこれと一体として用いられる機器の表示部に表示される場合に限り」意匠登録を受けることができるという枝は誤りで、壁や路面に投影される画像も対象になります。同じかっこ書きは、この限定を外す条文として3条2項、37条2項、38条7号及び8号、44条の3第2項6号、55条2項6号を列挙しています。創作非容易性の引用画像や、侵害の行為を組成した画像、間接侵害の対象になる画像は、どんな画像でもよいからです。そこで、「廃棄請求の対象となる侵害の行為を組成した画像は」操作画像又は表示画像に限られるという枝は誤りです。反対に、列挙にない5条2号には限定が及ぶので、「他人の業務に係る画像は、機器の操作の用に供される画像又は機器がその機能を発揮した結果として表示される画像に限られる」という枝は正しいです。

実施の内容は物品・建築物・画像で違い、建築物には輸出・輸入がなく、画像にはプログラム等が含まれます
2条2項は実施を客体ごとに分けて定めます。物品の意匠の実施は、製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為です(1号)。建築物の意匠の実施は、建築、使用、譲渡若しくは貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為で、建築物は国境を越えて動かせないので輸出・輸入がありません(2号)。建築物の実施に「輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出」を含めて書いた枝は誤りです。画像の意匠の実施は、画像の作成、使用又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為(3号イ)と、画像を記録した記録媒体又は内蔵する機器(画像記録媒体等)の譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為(3号ロ)です。3号の画像には、その画像を表示する機能を有するプログラム等(特許法2条4項のプログラム等)が含まれるので、「意匠の実施の定義における画像には」プログラムに準ずる情報も含まれるという枝は正しく、画像の意匠の実施に「プログラムを記録した記録媒体を譲渡する行為」が含まれるという枝も正しいです。

- 物品の実施(1号)製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入、譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む)です
- 建築物の実施(2号)建築、使用、譲渡若しくは貸渡し、譲渡若しくは貸渡しの申出です。輸出・輸入はありません
- 画像の実施(3号)イは画像の作成、使用、電気通信回線を通じた提供若しくはその申出、ロは画像記録媒体等の譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入、譲渡若しくは貸渡しの申出です。画像にはプログラム等を含みます
意匠法2条1項この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
意匠法2条2項1号意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為
意匠法2条2項2号意匠に係る建築物の建築、使用、譲渡若しくは貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
試験ではこう問われる
- 意匠は物品・建築物の形状等又は画像で、いずれも部分を含む。「その部分についても意匠登録を受けることができる」という枝、「視覚を通じて美感を起こさせる建築物の部分」が対象になるという枝は正しい
- 建築物と画像そのものは令和元年改正で加わった。それ以前の枝では建築物は物品でなく、画像は物品の部分として扱われている
- 物品は市場で流通する有体物の動産。固定した形になった角砂糖や乾燥麺は対象になり、「組立物置は意匠登録の対象となるが、組立家屋は意匠登録の対象とならない」という枝は誤り
- 視覚を通じて美感を起こさせるものに限る。「外部から視認できないモーターの形状は」対象になるという枝は誤り。極小の歯車が「取引の際、拡大観察することが通常であっても」対象にならないという枝も誤り
- 画像は操作画像と表示画像に限るが、表示される場所は限定しない。「表示部に表示される場合に限り」登録を受けられるという枝は誤り
- 画像の限定は3条2項・37条2項・38条7号8号などで外れ、5条2号には及ぶ。「廃棄請求の対象となる侵害の行為を組成した画像は」限られるという枝は誤り
- 建築物の実施に輸出・輸入は無い。「輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出」を建築物の実施に含めた枝は誤り
- 画像にはプログラム等が含まれ、「プログラムを記録した記録媒体を譲渡する行為」は画像の意匠の実施に当たる
この用語が問われた枝
意匠には、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合が含まれており、また、その部分についても意匠登録を受けることができる。
画像の意匠の実施には、意匠に係る画像を表示する機能を有するプログラムを記録した記録媒体を譲渡する行為が含まれる。
建築物の意匠の実施とは、意匠に係る建築物の建築、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為をいう。
意匠法第2条第2項第3号イ及びロに規定する意匠の実施の定義における画像には、その画像を表示する機能を有するプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。