実用新案登録無効審判と特許法の準用(実37条・39条・40条・41条・45条・47条・20条・26条)じつようしんあんとうろくむこうしんぱんととっきょほうのじゅんよう
実用新案登録無効審判とは、実用新案登録が37条1項各号の無効理由に当たるときに、その登録を無効にすることについて何人も請求できる審判です。審判の手続や審決取消訴訟は、41条・45条・47条が特許法の規定を準用する形で組み立てられ、審決の予告や中用権のように準用されないものが特許法との違いになります。
無審査で登録された実用新案権は、有効かどうかを誰も確かめていないまま世の中に出ています。だから、その権利に邪魔される人だけでなく誰でも無効審判を請求できるようにして、登録後に有効性を検証する入口を広く開けています。審判の進め方や審決への不服は特許法の条文を準用して同じ形にしていますが、無審査ゆえに不要なもの、たとえば権利者に訂正の機会を保証する審決の予告や、特許の無効で初めて生じる中用権は準用していません。実用新案法の条文は、特許法との差分を読む形で覚えると筋が通ります。

実用新案登録無効審判は何人も請求できますが、冒認・共同出願違反を理由とするものは真の権利者に限られます
実用新案登録無効審判は、何人も請求することができます(37条2項本文)。平成26年改正で特許無効審判の請求人が利害関係人に限られた後も、実用新案法は「何人も」のままです。特許法29条違反の特許無効審判と実用新案法3条違反の実用新案登録無効審判は「いずれも利害関係人に限り請求することができる」という枝は誤りで、条約違反を理由とするときに「利害関係人でなくても、そのことを理由として」請求できるという枝は正しいです。ただし、共同出願違反(11条1項で準用する特許法38条)と冒認(37条1項5号)を理由とするものは、その考案について実用新案登録を受ける権利を有する者に限り請求できます(37条2項ただし書)。そのため、何人も請求でき「請求人適格が限定される場合はない」という枝は誤りです。無効審判は実用新案権の消滅後も請求でき(37条3項)、二以上の請求項に係るものは請求項ごとに請求できます(37条1項後段)。無効理由には、新規性・進歩性・拡大先願・先願・公序良俗などの登録要件違反のほか、補正の新規事項(2条の2第2項違反)、記載要件(5条4項・6項。6項4号を除きます)、訂正の要件違反(14条の2第2項から4項まで)が含まれます。
- 請求人何人もです。冒認・共同出願違反だけ真の権利者に限られます(37条2項)。特許法123条2項の利害関係人限定と違います
- 時期・単位権利消滅後も請求でき(37条3項)、請求項ごとに請求できます(37条1項後段)
- 無効理由(37条1項)補正の新規事項(1号)、25条・3条・3条の2・4条・7条・共同出願違反(2号)、条約違反(3号)、5条4項・6項の記載要件(4号。委任省令要件は除きます)、冒認(5号)、後発的な享有不能・条約違反(6号)、訂正要件違反(7号)です
- 訂正との関係1項の訂正は最初に指定された答弁書提出期間まで、請求項の削除の訂正は審理終結の通知までできます(14条の2)
審判の手続は41条で特許法を準用しますが、審決の予告は準用されず、取下げの承諾と30日の特例があります
41条は、特許法125条、132条から133条の2まで、135条から154条まで、156条1項・3項・4項、157条、167条、167条の2、169条、170条を審判に準用します。審判官の合議体、除斥・忌避、審理の方式、証拠調べ、審理の併合・分離、審理の終結、審決、一事不再理はこの準用で特許と同じになります。同一の実用新案権に対する二以上の無効審判は被請求人が共通するので特許法154条1項で併合でき、「その審理の併合をすることができない」という枝は誤りです。一方、特許無効審判で訂正の機会を保証する審決の予告(特許法164条の2)は準用されていません。実用新案の訂正は審判の中で請求するものではなく、14条の2の訂正書で権利者が自らする仕組みだからです。審判長は「審決の予告を当事者及び参加人にしなければならない」という枝は誤りで、「審決の予告をすることなく、審判長は、口頭審理において、審理の終結を口頭で通知することができる」という枝は正しいです。請求の取下げは実用新案法が自ら定めます。審決が確定するまで取り下げられますが(39条の2第1項)、答弁書の提出があった後は相手方の承諾が要ります(同条2項)。無効審判の請求後にその実用新案登録に基づく特許出願がされたときは、審判長がその旨を請求人と参加人に通知し(39条5項)、請求人は通知を受けた日から30日以内に限り承諾なく取り下げられます(39条の2第3項)。取下げが擬制されるわけではないので、「当該請求は取り下げられたものとみなされる」という枝は誤りです。請求項ごとの取下げもできます(同条6項)。侵害訴訟との関係では、審判は訴訟手続が完結するまで、裁判所は審決が確定するまで、それぞれ手続を中止することが「できる」にとどまります(40条1項・2項)。

審決に対する訴えは東京高等裁判所の専属管轄で、出訴期間・被告適格・長官の意見・大合議は特許法を準用します
審決に対する訴えと、審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄です(47条1項)。実用新案登録無効審判の審決に対する訴えは「大阪高等裁判所にも提起することができる」という枝は誤りです。47条2項は特許法178条2項から6項までと179条から182条の2までを準用するので、出訴期間は審決謄本の送達から30日の不変期間で、遠隔又は交通不便の地にある者のために審判長が職権で附加期間を定められること、無効審判の審決取消訴訟の被告が審判の請求人又は被請求人であること、裁判所が特許庁長官に法律の適用その他の必要な事項について意見を求められること(180条の2)、5人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定ができること(182条の2)は特許と同じです。裁判所は長官に「必要な事項について、意見を求めることはできない」という枝と、「5人の裁判官の合議体で審理及び裁判をすることはできない」という枝は、いずれも誤りです。確定審決に対する再審は45条で特許法173条・174条3項・5項・176条を準用し、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において再審を請求し、又は請求されることができます(2条の4)。
中用権(20条)は特許を無効にした場合の原特許権者等の規律で、実用新案登録を無効にされた原実用新案権者には認められません
20条は、実用新案登録に係る考案と特許に係る発明とが同一である場合に特許を無効にしたときの原特許権者、特許を無効にして同一の考案について正当権利者に実用新案登録をしたときの原特許権者、それらの特許に係る専用実施権者・通常実施権者が、特許無効審判の請求の登録前に無効理由を知らないで事業をし又は準備をしていれば、無効にした場合における実用新案権について通常実施権を有すると定めます。特許法80条と対になり、無効にされる側が「特許」、通常実施権の対象が「実用新案権」です。実用新案登録を無効にした場合の原実用新案権者に、特許権や他の実用新案権についての通常実施権を与える規定はどちらの法にもありません。無審査で登録された実用新案権の原権利者まで保護する必要はないという判断です。実用新案登録を無効にしたときの原実用新案権者が「その実用新案登録を無効にした場合における特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する」という枝は誤りで、先願の実用新案権Bとの同一を理由に実用新案権Aが無効にされた甲は、無効理由を知らなかったとしても実用新案権Bについて「無効審判の請求の登録前の実施による通常実施権を有さない」という枝は正しいです。通常実施権を有する者は当該実用新案権者又は専用実施権者に相当の対価を支払います(20条2項)。先使用権(特許法79条)や移転登録前の実施による通常実施権(79条の2)は26条で実用新案権に準用されます。

再審で回復した実用新案権の効力は善意の輸入・製造・取得や善意の所持には及ばず、無効審決の確定による消滅は公報に掲載されます
無効にした実用新案登録に係る実用新案権が再審により回復したときは、審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に輸入し、又は日本国内において製造し、若しくは取得した物品には効力が及ばず(44条1項)、善意の実施、善意に製造に用いる物を生産・譲渡等した行為、善意に譲渡・貸渡し・輸出のために所持した行為にも及びません(44条2項)。この制限は特許法175条の準用ではなく、実用新案法が44条で自ら定めています。善意が条件なので、所持した行為には「譲渡、貸渡し又は輸出のために所持した行為には、及ぶ場合はない」という枝は誤りで(善意でない所持には及ぶからです)、善意に「輸出のために所持した行為にも、及ぶ」という枝も誤りです。再審の請求登録前の実施による通常実施権は45条で特許法176条を準用します。無効にすべき旨の審決が確定すると実用新案権は初めから存在しなかったものとみなされ、その消滅は実用新案原簿に登録されるほか、53条2項で準用する特許法193条2項5号により実用新案公報に掲載されます。無効審決の確定による消滅は「実用新案公報には掲載されない」という枝は誤りです。既納の登録料のうち審決が確定した年の翌年以後の各年分は、確定の日から6月以内の請求で返還されます(34条)。

実用新案法37条2項実用新案登録無効審判は、何人も請求することができる。ただし、実用新案登録が前項第二号に該当すること(その実用新案登録が第十一条第一項において準用する特許法第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は前項第五号に該当することを理由とするものは、当該実用新案登録に係る考案について実用新案登録を受ける権利を有する者に限り請求することができる。
実用新案法41条1項特許法第百二十五条、第百三十二条から第百三十三条の二まで、第百三十五条から第百五十四条まで、第百五十六条第一項、第三項及び第四項、第百五十七条、第百六十七条、第百六十七条の二、第百六十九条第一項、第二項、第五項及び第六項並びに第百七十条の規定は、審判に準用する。この場合において、同法第百五十六条第一項中「特許無効審判以外の審判においては、事件が」とあるのは、「事件が」と読み替えるものとする。
実用新案法39条の2第3項審判の請求人が前条第五項の規定による通知を受けたときは、前項の規定にかかわらず、その通知を受けた日から三十日以内に限り、その審判の請求を取り下げることができる。
実用新案法47条1項審決に対する訴え及び審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。
試験ではこう問われる
- 請求人は何人も(37条2項)。特許無効審判と「いずれも利害関係人に限り請求することができる」という枝は誤りで、条約違反は「利害関係人でなくても」請求できる
- 冒認・共同出願違反だけ真の権利者に限る。「請求人適格が限定される場合はない」という枝は誤り
- 審決の予告(164条の2)は準用されない。「審決の予告を当事者及び参加人にしなければならない」という枝は誤りで、予告なく審理終結を口頭で通知できる
- 答弁書提出後の取下げは承諾が要る(39条の2第2項)。実用新案登録に基づく特許出願の通知から30日は承諾なく取り下げられ、「取り下げられたものとみなされる」という枝は誤り
- 同一の実用新案権への複数の無効審判は併合できる(154条1項準用)。侵害訴訟との中止は「できる」(40条)
- 審決取消訴訟は東京高裁の専属管轄(47条1項)で、長官の意見(180条の2)と大合議(182条の2)を準用する。「大阪高等裁判所にも提起することができる」という枝は誤り
- 中用権(20条)は特許を無効にした場合の原特許権者等だけ。無効にされた原実用新案権者は「通常実施権を有さない」という枝が正しい
- 再審で回復した権利は善意の所持等に及ばない(44条)。「及ぶ場合はない」という枝は善意でない所持を見落としているので誤り。無効審決による消滅は公報に掲載される
この用語が問われた枝
特許が特許法第29条(特許の要件)の規定に違反してされたことを理由として請求する特許無効審判、及び実用新案登録が実用新案法第3条(実用新案登録の要件)の規定に違反してされたことを理由として請求する実用新案登録無効審判は、いずれも利害関係人に限り請求することができる。
実用新案登録が条約に違反してされたとき、利害関係人でなくても、そのことを理由として、その実用新案登録を無効にすることについて実用新案登録無効審判を請求することができる。
特許無効審判及び延長登録無効審判を請求できる者は利害関係人に限られるが、実用新案登録無効審判は何人も請求することができ、請求人適格が限定される場合はない。
審判長は、実用新案登録無効審判の事件が審決をするのに熟した場合において、審判の請求に理由があると認めるときは、審決の予告を当事者及び参加人にしなければならない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。