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考案と基礎的要件・無審査登録(実1〜8条・6条の2・14条・15条・31〜34条)こうあんときそてきようけんむしんさとうろく

特許・実用新案 第9章 実用新案法 短答で13枝

考案とは、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、実用新案法はそのうち物品の形状、構造又は組合せに係る考案を保護します。実用新案登録出願は新規性や進歩性の実体審査を受けずに、基礎的要件(6条の2)を満たしていれば設定の登録がされます。

折りたたみ傘の骨の組み方を少し工夫した、というような小さな改良は、特許の審査を待っていると商品の寿命のほうが先に尽きてしまいます。実用新案法は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案に限って、新規性や進歩性を審査せずに登録する道を用意しました。審査をしない代わりに、出願の形が整っているかという基礎的要件だけを特許庁長官が見て、足りなければ補正を命じ、応じなければ却下します。権利の中身の当否は、登録の後に技術評価書や無効審判で確かめる仕組みです。

特許庁の出願窓口の場面。先生が特許庁長官役(札「特許庁長官」)でカウンターの内側に立ち、「実用新案登録出願:折りたたみ傘の骨の構造」と書かれた願書を受け取っている。カウンターの外に出願人の男性(札「出願人」)が立ち、吹き出し「新規性や進歩性

実用新案法が保護するのは物品の形状、構造又は組合せに係る考案で、方法やプログラム自体は登録を受けられません

考案は自然法則を利用した技術的思想の創作で(2条1項)、特許法の発明と違って高度であることは求められません。そのうち実用新案登録を受けられるのは、産業上利用することができる考案であって物品の形状、構造又は組合せに係るものに限られます(1条・3条1項柱書)。物品を離れた方法の考案や、物品に結びつかないプログラム自体は対象になりません。「プログラム自体について実用新案登録を受けることはできない」が、登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物の生産や譲渡が侵害とみなされる場合があり、その物にはプログラム等が含まれるという枝は正しいです(28条1号括弧書)。新規性・進歩性の要件は3条1項各号と2項に置かれ、進歩性は「きわめて容易に」考案をすることができたかで判断するので、特許の「容易に」より低い水準です。公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある考案は登録を受けられません(4条)。

実体審査はなく、基礎的要件(6条の2)に欠けるときだけ特許庁長官が補正を命じ、応じなければ却下します

実用新案登録出願は、放棄、取下げ又は却下された場合を除いて設定の登録がされます(14条2項)。審査官による審査がない代わりに、特許庁長官は、6条の2各号の基礎的要件に該当するときに限り、相当の期間を指定して明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の補正を命ずることができます。事由は、考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき(1号)、4条の公序良俗等に当たるとき(2号)、5条6項4号の委任省令要件又は6条の考案の単一性を満たしていないとき(3号)、明細書等に必要な事項が記載されておらず又は記載が著しく不明確なとき(4号)の4つです。考案が「物品の形状、構造又は組合せに係るものでない場合、特許庁長官は、補正をすべきことを命ずることができる」という枝は正しいです。事由を物品性・4条・5条6項4号・著しい不明確の4つだけ並べて「のいずれかに該当するときに限られている」という枝は、6条の単一性違反が抜けているので誤りです。公序良俗違反も補正命令を経るべき事由なので、長官が「補正を命ずることなく、当該実用新案登録出願を却下することができる」という枝は誤りです(2条の3は、補正を命じた者が指定期間内に補正をしないときに却下できると定めるからです)。自発補正は経済産業省令で定める期間を過ぎるとできませんが(2条の2第1項ただし書)、補正命令を受けたときは指定期間内に補正できるので、「経済産業省令で定める期間を経過した後であっても」実用新案登録請求の範囲を補正できる場合があるという枝は正しいです。新規性や進歩性、先願の違反は補正命令の事由ではなく、登録後の無効理由(37条1項)として扱います。

特許庁の方式審査室の場面。先生が特許庁長官役(札「特許庁長官」)で机に座り、「補正命令(6条の2)」と書かれた書面を書いている。机の上に開かれた願書に「実用新案登録請求の範囲:薬剤の製造方法」の文字。壁に4段の掲示板があり、上から「1号 物
  • 1号考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないときです(方法・プログラム自体など)
  • 2号考案が4条(公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれ)により登録を受けられないときです
  • 3号5条6項4号(経済産業省令の記載要件)又は6条(考案の単一性)の要件を満たしていないときです
  • 4号明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に必要な事項が記載されておらず、又は記載が著しく不明確なときです
  • 含まれないもの新規性・進歩性(3条)、拡大先願(3条の2)、先願(7条)、新規事項の追加(2条の2第2項)は補正命令の事由ではなく、無効理由(37条1項)です

補正命令に応じないときの却下は特許庁長官の処分なので、不服は審判ではなく行政不服審査と取消訴訟で争います

指定した期間内に補正がなければ、特許庁長官はその出願を却下することができます(2条の3)。この却下は審査官の拒絶査定ではなく特許庁長官の処分なので、拒絶査定不服審判のような審判は用意されていません。不服があれば行政不服審査法の審査請求をするか、処分の取消しの訴えを起こします。記載が著しく不明確だとして補正を命じられ、応じなかったために却下されたとき、「出願人は出願の却下を不服として審判を請求できる」という枝は誤りです。却下の処分が確定すると、出願と同時に納めた登録料は請求により返還されます(34条1項2号)。

特許庁の出願窓口の場面。先生が特許庁長官役(札「特許庁長官」)でカウンターの内側に立ち、「出願却下の処分(2条の3)」と書かれた書面を差し出している。カウンターの外の出願人の男性(札「出願人」)が「審判請求書」と書かれた紙を手に持ち、吹き出

先願(7条)は特許出願との間でも働き、同日の協議不成立で拒絶が確定した特許出願は実用新案の後願を排除します

同一の考案について異なった日に二以上の実用新案登録出願があれば最先の出願人だけが登録を受けられ(7条1項)、同日なら協議ではなく、いずれも登録を受けられません(7条2項)。実用新案登録出願と特許出願の間では、異なった日なら先に出願した者だけが権利を受けられ(7条3項・特許法39条3項)、同日なら特許法39条4項の協議により定めた者だけが権利を受けられます(特許法39条4項・7条6項)。「乙は実用新案登録出願Bに記載された考案イについて実用新案登録を受けることができない」という枝は、同日出願で甲乙の協議が成立しない場面なので正しいです。協議不成立で拒絶査定が確定した特許出願は先願の地位を失わないので(7条5項ただし書・特許法39条5項ただし書)、「丙は当該実用新案登録出願に係る考案について実用新案登録を受けることができない」という枝は正しく、同じ理由で「特許出願Cは特許出願Aを先願として」拒絶されることはないという枝は誤りです。同一の者から承継した権利について同日に特許出願と実用新案登録出願があったときは、協議により定めた者以外の者の承継は第三者に対抗できないので(特許法34条2項・3項)、「時、分を考慮して最先の出願をした者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない」という枝は誤りです。実用新案登録出願にも8条の優先権主張があり、先の出願には自分の特許出願も含まれますが、先の出願が分割・変更に係る出願であるときや、実用新案登録出願の時に設定の登録がされているときは基礎にできません(8条1項2号・5号)。実用新案登録を受ける権利に基づく仮通常実施権は4条の2に置かれ、特許出願への変更があれば特許法34条の3第8項の読替えで承継されます。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左に同じ日付の位置に2本の札「特許出願A(甲):発明イ」「特許出願B(乙):発明イ」が並び、その札の下に「同日・協議不成立 → 拒絶査定が

存続期間は実用新案登録出願の日から10年で、第1年から第3年までの登録料は出願と同時に一時に納めます

実用新案権は設定の登録により発生し(14条1項)、存続期間は実用新案登録出願の日から10年をもって終了します(15条)。特許法67条のような延長登録の制度は実用新案法になく準用もされないので、医薬品に係る考案でも「実用新案権の存続期間の延長をするための出願をすることができる」という枝は誤りです。登録料は設定の登録の日から存続期間の満了の日までの各年分を納めますが(31条1項)、第1年から第3年までの各年分は実用新案登録出願と同時に、出願の変更又は出願の分割があった場合はその変更又は分割と同時に一時に納付します(32条1項)。「実用新案登録出願と同時に」納める旨の規定があるという枝は正しいです。第4年以後の各年分は前年以前に納め(32条2項)、納められなければ6月以内の追納と割増登録料(33条)、追納期間を過ぎても故意でなければ回復(33条の2)の道があります。登録料の減免又は猶予を受けられるのは、納付すべき者がその出願に係る考案の考案者又はその相続人であって貧困により資力がないと認められる場合です(32条の2)。既納の登録料は、無効にすべき旨の審決が確定した年の翌年以後の各年分が、審決確定の日から6月以内の請求で返還されます(34条1項3号・2項)。「当該請求をした年の翌年以降の各年分の登録料の返還を受けることができる」という枝は、基準が審決確定の年であって請求の年ではないので誤りです。

  • 第1年から第3年実用新案登録出願と同時に一時に納めます(変更・分割はその変更・分割と同時です)。請求により30日以内の延長があります(32条1項・3項)
  • 第4年以後前年以前に納めます(32条2項)。遅れれば6月以内に割増登録料とともに追納でき、納めなければ期間経過時に遡って消滅したものとみなされます(33条)
  • 減免・猶予考案者又はその相続人が貧困で資力がないと認められるときに、軽減・免除・猶予があります(32条の2)
  • 返還過誤納、却下処分の確定、無効審決が確定した年の翌年以後の各年分、存続期間満了の翌年以後の各年分が対象です(34条1項)
実用新案法3条1項柱書

産業上利用することができる考案であつて物品の形状、構造又は組合せに係るものをした者は、次に掲げる考案を除き、その考案について実用新案登録を受けることができる。

実用新案法6条の2

特許庁長官は、実用新案登録出願が次の各号の一に該当するときは、相当の期間を指定して、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をすべきことを命ずることができる。
一 その実用新案登録出願に係る考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき。
二 その実用新案登録出願に係る考案が第四条の規定により実用新案登録をすることができないものであるとき。
三 その実用新案登録出願が第五条第六項第四号又は前条に規定する要件を満たしていないとき。
四 その実用新案登録出願の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは図面に必要な事項が記載されておらず、又はその記載が著しく不明確であるとき。

実用新案法2条の3

特許庁長官は、前条第四項、第六条の二又は第十四条の三の規定により手続の補正をすべきことを命じた者がこれらの規定により指定した期間内にその補正をしないときは、その手続を却下することができる。

実用新案法7条6項

特許法第三十九条第四項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、実用新案登録出願人は、その考案について実用新案登録を受けることができない。

実用新案法32条1項

前条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の登録料は、実用新案登録出願と同時に(第十条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更又は第十一条第一項において準用する特許法第四十四条第一項の規定による出願の分割があつた場合にあつては、その出願の変更又は出願の分割と同時に)一時に納付しなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 保護対象は物品の形状、構造又は組合せに係る考案。「プログラム自体について実用新案登録を受けることはできない」が、製造にのみ用いる物にプログラムが含まれるので間接侵害にはなり得る
  2. 補正命令の事由は6条の2の4号まで。物品性・4条・5条6項4号・著しい不明確の4つだけ並べて「のいずれかに該当するときに限られている」という枝は、6条の単一性が抜けているので誤り
  3. 公序良俗違反も補正命令を経る。「補正を命ずることなく、当該実用新案登録出願を却下することができる」という枝は誤り(2条の3)
  4. 却下は長官の処分。「出願人は出願の却下を不服として審判を請求できる」という枝は誤りで、行政不服審査・取消訴訟で争う
  5. 同日の特許出願と実用新案登録出願は協議で定めた者だけが権利を受け、協議不成立なら双方受けられない(特許法39条4項・実7条6項)。協議不成立で拒絶が確定した特許出願は先願の地位を失わない(実7条5項ただし書)
  6. 承継の対抗は協議で定めた者以外が対抗不可。「時、分を考慮して最先の出願をした者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない」という枝は誤り(特許法34条2項・3項)
  7. 存続期間は出願の日から10年で延長なし。「実用新案権の存続期間の延長をするための出願をすることができる」という枝は誤り
  8. 第1年から第3年の登録料は「実用新案登録出願と同時に」一時に納付。返還は無効審決が確定した年の翌年以後の各年分で、「当該請求をした年の翌年以降」という枝は誤り

この用語が問われた枝

令和5年度 問5 枝ホ正しい

実用新案登録を受けることができるのは、物品の形状、構造又は組合せに係る考案のみであり、プログラム自体について実用新案登録を受けることはできないが、登録実用新案に係る物品の製造に用いられるプログラムの生産や譲渡が、その登録実用新案に係る実用新案権を侵害するものとみなされる場合がある。

令和6年度 問13 枝ホ正しい

実用新案登録出願の願書に添付した実用新案登録請求の範囲に記載された考案が、物品の形状、構造又は組合せに係るものでない場合、特許庁長官は、補正をすべきことを命ずることができる。

令和4年度 問18 枝ロ誤り

特許庁長官が、実用新案登録出願の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)について補正をすべきことを命ずることができるのは、実用新案登録出願に係る考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき、実用新案登録出願に係る考案が実用新案法第4条の規定に該当するとき(公序良俗等に反する考案であるとき)、実用新案登録請求の範囲が実用新案法第5条第6項第4号に規定する要件(委任省令要件)を満たしていないとき、及び、明細書等に必要な事項が記載されておらず、又はその記載が著しく不明確であるとき、のいずれかに該当するときに限られている。

平成30年度 問18 枝イ誤り

実用新案登録出願に係る考案が、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがあるものである場合、特許庁長官は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正を命ずることなく、当該実用新案登録出願を却下することができる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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