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特許を受ける権利(承継の対抗・共有・共同出願 33条・34条・38条・73条)とっきょをうけるけんり

特許・実用新案 第1章 発明・特許を受ける権利・手続の総則 短答で81枝

特許を受ける権利とは、発明の完成によって発明者に生じ、特許出願をして特許権の設定の登録を受けることができる地位をいい、移転することはできますが質権の目的とすることはできません(33条1項・2項)。承継を第三者に対抗するには出願前なら特許出願、出願後なら特許庁長官への届出が要り(34条)、共有のときは持分の譲渡や共同出願などに他の共有者との関係の規律があります(33条3項・38条・73条)。

発明を完成した人は、まだ出願していなくても、その発明について特許を受ける権利を持っています。この権利は売ることも相続することもできますが、目に見えない上に登録簿もないので、誰が本当の権利者かを外から知る手がかりがありません。そこで特許法は、出願前の承継は出願をしなければ第三者に対抗できず、出願後の承継は特許庁長官への届出がなければ効力を生じないと定めて、特許庁の記録で権利者を確かめられるようにしています。共有のときに他の共有者の同意を求める規律も、共有者にとって誰と組むかが大きな利害になるからです。

特許庁の窓口の場面。先生が特許庁の職員役(札「特許庁」)でカウンターの内側に座り、手元に「特許出願:発明イ 出願人 丙」と書かれた願書を置いている。カウンターの外に二人の男性が並び、左の男性(札「乙(先に譲り受けた)」)が「譲渡証書:甲→乙

特許を受ける権利は発明の完成で発明者に生じ、移転することはできますが、質権の目的とすることはできません

特許を受ける権利は、産業上利用することができる発明をした者に、発明の完成と同時に生じます(29条1項柱書)。33条1項はこの権利を移転できるとし、2項は質権の目的とすることができないとしています。特許になるかどうか不確かな段階の権利を担保にして換価させると、発明者の保護に欠け、質権者が出願の手続に関わる仕組みもないからです。抵当権についても目的とできる旨の規定がないので設定できません。「質権の目的とすることができないが、抵当権の目的とすることや譲渡担保の目的とすることはいずれもできる」という枝は誤りです(譲渡担保を禁じる規定はありませんが、抵当権の目的とすることはできないからです)。

出願前の承継は特許出願が対抗要件で、同日に二つの出願があれば協議で定めた者が対抗でき、出願後の承継は届出が効力要件ですが、一般承継は届出の義務だけです

34条1項は、特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗することができないと定めます。甲が発明イの特許を受ける権利を乙に承継させ、その後に丙にも承継させた場合、先に承継した乙ではなく先に出願した者が勝つので、「丙が、乙よりも先に特許出願したとしても、乙は、特許を受ける権利の承継について、丙に対抗することができる」という枝は誤りです。職務発明の特許を受ける権利を勤務規則で承継した乙会社より先に、譲渡を受けた戊が出願した場合も同じで、「乙会社は、戊に対し、発明ロの特許を受ける権利について対抗できない」という枝は正しいです。同一の者から承継した同一の特許を受ける権利について同日に二以上の特許出願があったときは、特許出願人の協議により定めた者以外の者の承継は第三者に対抗できません(34条2項)。特許出願と実用新案登録出願が同日にあったときも同じ扱いなので(3項)、「時、分を考慮して最先の出願をした者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない」という枝は誤りです。特許出願後の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ効力を生じません(4項)。出願後に甲が乙と丙に二重に譲渡し、丙だけが届け出たときは、届出をした丙が承継するので、「丙は発明イの特許を受ける権利を承継できない」という枝は誤りです(乙が別に出願Bをしても、出願後の承継の効力は届出で決まるからです)。一般承継の場合は承継人が遅滞なく届け出る義務があるだけで(5項)、届出は効力要件ではありません。会社合併により承継した場合に「特許庁長官に届け出なければ、その効力は生じない」という枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の中央に太い縦線と札「特許出願」が立ち、その左側の区間に看板「出願前の承継:承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できない(34条1項)」
  • 出願前の承継(34条1項)承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できません。先に出願した承継人が勝ちます
  • 同日の二以上の出願(34条2項・3項)特許出願人の協議により定めた者以外の承継は対抗できません。時・分では決めず、特許出願と実用新案登録出願の間でも同じです
  • 出願後の特定承継(34条4項)特許庁長官に届け出なければ効力を生じません。同日に二以上の届出があれば協議で定めた者の届出だけが効力を持ちます(6項)
  • 出願後の一般承継(34条5項)承継の時に効力が生じ、承継人は遅滞なく届け出る義務を負うだけです

共有に係る特許を受ける権利や特許権では、持分の譲渡・質権の設定・実施権の設定や許諾に他の共有者の同意が要りますが、実施と持分の放棄には要りません

特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は他の共有者の同意を得なければ持分を譲渡できず(33条3項)、仮専用実施権の設定や仮通常実施権の許諾もできません(4項)。特許権が共有に係るときも、持分の譲渡と持分を目的とする質権の設定(73条1項)、専用実施権の設定と通常実施権の許諾(3項)には他の共有者の同意が要ります。共有者の資力や技術力によって他の共有者の持分の値打ちが大きく変わるからです。一方、特許発明の実施は契約で別段の定めをした場合を除き他の共有者の同意なしにできます(2項)。「その特許発明の実施を他の共有者の同意を得ずにすることができる場合があるが、自らの持分の譲渡を他の共有者の同意を得ずにすることができる場合はない」という枝は正しく、同意を要する行為と実施を並べた「契約で別段の定めをした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる」という枝も正しいです。持分の放棄について他の共有者の同意を求める規定はなく、放棄に承諾が要るのは専用実施権者や質権者がいる場合です(97条1項)。「自らの持分を放棄する場合には、他の共有者の同意を得なければならない」という枝は誤りです。仮専用実施権には33条2項から4項まで(34条の2第8項)、仮通常実施権には33条2項・3項(34条の3第12項)が準用されるので、仮専用実施権の共有者は「他の共有者の同意を得なくても、その特許を受ける権利を有する者の承諾を得た場合には」仮通常実施権を許諾できるという枝は誤りです。

会社の会議室の場面。先生が共有者役(札「共有者 甲」)で机に座り、向かいに共有者の男性(札「共有者 乙」)が座っている。机の上に「特許権(甲・乙の共有)」と書かれた特許証。乙の吹き出し「私の持分を丙に売りたい。それと丙に通常実施権も許諾した
  • 他の共有者の同意が要る行為持分の譲渡、持分を目的とする質権の設定、専用実施権の設定、通常実施権の許諾、仮専用実施権の設定、仮通常実施権の許諾です
  • 同意が要らない行為特許発明の実施(契約で別段の定めがない限り)と持分の放棄です。相続その他の一般承継による持分の移転にも同意は要りません
  • 74条による持分の移転共同出願違反の特許について真の共有者が持分の移転を請求する場合は、73条1項を適用しません(74条3項)

共有者は他の共有者と共同でなければ出願できず、違反は拒絶理由と無効理由になりますが、特許異議の申立ての理由にはならず、74条の移転の登録があれば無効理由からも外れます

38条は、特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は他の共有者と共同でなければ特許出願をすることができないと定めます。違反は49条1項2号の拒絶理由であって、17条3項の補正命令の事由(手続能力・方式・手数料)ではないので、特許庁長官が「特許法第38条の規定に違反していることを理由として、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる」という枝は誤りです。特許後は123条1項2号の無効理由になりますが、113条各号には38条が挙げられていないので、「特許異議の申立ては同条違反を申立理由とすることができない」という枝は正しいです。異議は何人も申し立てられる公益的な見直しの手続で、共同出願違反は共有者の私益の問題だからです。共同出願違反の特許について、特許を受ける権利を有する者は特許権者に持分の移転を請求でき(74条1項)、その請求に基づく移転の登録があったときは無効理由から除かれます(123条1項2号かっこ書)。移転の登録で「特許を受ける権利の共有者全員が当該特許権を共有することとなったときには、共同出願違反の無効理由には該当しない」という枝は正しいです。

共有者が審判を請求するときは全員が共同してしなければならず、代表者を届け出ていても拒絶査定不服審判の請求は代表者だけではできません

132条3項は、特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならないと定めます。審決の結果が共有者全員に一律に及ぶからです。「拒絶査定不服審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない」という枝は正しいです。14条は共同で手続をした者について各人が全員を代表するのを原則としますが、出願の変更・放棄・取下げや拒絶査定不服審判の請求などは除かれ、代表者を定めて届け出てもこの除外は変わりません。「代表者を定めて特許庁に届け出ていたときは、出願人全員が共同して審判の請求をしなくとも、代表者が審判の請求をすることができる」という枝は誤りです。共有者が被請求人になる無効審判では共有者全員を被請求人にする必要があり(132条2項)、審決取消訴訟の原告適格は語を分けて審判の手続の項で扱います。

特許法33条1項〜3項

特許を受ける権利は、移転することができる。
2 特許を受ける権利は、質権の目的とすることができない。
3 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。

特許法34条1項・2項・4項・5項

特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない。
2 同一の者から承継した同一の特許を受ける権利について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。
4 特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない。
5 特許を受ける権利の相続その他の一般承継があつたときは、承継人は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。

特許法38条

特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。

特許法73条

特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。

試験ではこう問われる

  1. 特許を受ける権利は移転できるが質権の目的にできない(33条2項)。「抵当権の目的とすることや譲渡担保の目的とすることはいずれもできる」という枝は誤り
  2. 出願前の承継は出願が対抗要件(34条1項)。先に承継した者でも「丙が、乙よりも先に特許出願したとしても」対抗できるという枝は誤り。職務発明を勤務規則で承継した会社も先に出願した譲受人に対抗できない
  3. 同日の二以上の出願は協議で定めた者(34条2項・3項)。「時、分を考慮して最先の出願をした者」という枝は誤り
  4. 出願後の特定承継は届出が効力要件(34条4項)、一般承継は届出義務のみ(5項)。会社合併で「届け出なければ、その効力は生じない」という枝は誤り
  5. 共有では持分譲渡・質権設定・専用実施権設定・通常実施権許諾に同意が要り、実施は別段の定めがなければ自由(73条)。「持分を放棄する場合には、他の共有者の同意」という枝は誤り
  6. 仮専用実施権の共有には33条3項・4項、仮通常実施権の共有には33条3項が準用される。仮専用実施権の共有者が「他の共有者の同意を得なくても」仮通常実施権を許諾できるという枝は誤り
  7. 38条違反は拒絶理由(49条1項2号)であって補正命令の事由ではなく、無効理由(123条1項2号)だが異議理由ではない。74条の移転の登録があれば無効理由に該当しない
  8. 共有者の審判請求は全員が共同して(132条3項)。「代表者が審判の請求をすることができる」という枝は誤り

この用語が問われた枝

令和3年度 問9 枝ハ誤り

特許を受ける権利は、質権の目的とすることができないが、抵当権の目的とすることや譲渡担保の目的とすることはいずれもできる。

令和2年度 問15 枝ホ誤り

甲は、特許出願前における発明イに係る特許を受ける権利を乙に承継した。その1月後、甲は、同じく特許出願前における発明イに係る特許を受ける権利を丙に承継した。この場合、乙は丙よりも先に特許を受ける権利を承継しているから、丙が、乙よりも先に特許出願したとしても、乙は、特許を受ける権利の承継について、丙に対抗することができる。

令和8年度 問4 枝ロ正しい

甲は、単独で、職務発明である発明ロを完成した。乙会社は、勤務規則に従い、発明ロの特許を受ける権利を承継した。その後、甲は、発明ロが職務発明であることを知らない戊 に対し、発明ロの特許を受ける権利を譲渡した。戊は、乙会社よりも前に発明ロについて特許出願を行った。この場合、乙会社は、戊 に対し、発明ロの特許を受ける権利について対抗できない。

令和元年度 問14 枝ロ誤り

同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があったときは、時、分を考慮して最先の出願をした者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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