出願の変更(実10条)しゅつがんのへんこう
出願の変更とは、特許出願人又は意匠登録出願人が、その出願を実用新案登録出願に変更する実用新案法10条の手続です。拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月を経過した後、又は出願の日から9年6月を経過した後はできず、変更後の実用新案登録出願はもとの出願の時にしたものとみなされ、もとの出願は取り下げたものとみなされます。
特許出願をして審査を受けたものの、進歩性が足りないと拒絶査定を受けた出願人が、同じ技術で実用新案登録に切り替えたいと考えることがあります。実用新案なら進歩性の水準が低く、審査もありません。そこで10条は、特許出願(と意匠登録出願)を実用新案登録出願に変更する道を開き、変更後の出願はもとの出願の時にしたものとみなします。同じ内容の出願をやり直すと出願日が遅れて自分の出願公開で新規性を失うからです。ただ、何度でも行き来できると審査の結果を逃れる手段になるので、時期と方向に制限を置いています。

特許出願から実用新案登録出願への変更は、拒絶査定謄本の送達から3月以内かつ出願の日から9年6月以内に限られます
特許出願人は、その特許出願を実用新案登録出願に変更することができますが、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月を経過した後、又はその特許出願の日から9年6月を経過した後はできません(10条1項ただし書)。3月は拒絶査定不服審判の請求期間に合わせたもので、特許法4条でその審判の請求期間が延長されれば同じだけ延びます(10条6項)。9年6月は実用新案権の存続期間が出願の日から10年で終わることを踏まえた上限で、これを過ぎた後の回復の規定はありません。特許出願の日から9年6月を経過した後は「いかなる場合であっても、その特許出願を実用新案登録出願に変更することができない」という枝は正しいです。期間はもとの出願の日で数えるので、実用新案登録出願Aを特許出願Bに変更し、さらにBを分割した特許出願Cは、Aの出願の日から4年を経過した時点でも拒絶査定がなければ「特許出願Cを実用新案登録出願に変更することができる」という枝は正しいです。意匠登録出願人も同じ要件で実用新案登録出願に変更できます(10条2項)。国際出願が特許出願とみなされたものを変更するときは、翻訳文と国内書面の提出と手数料の納付の後であれば足り、国内処理基準時の経過は要件ではありません(48条の11)。外国語特許出願は「国内処理基準時の経過後でなければ、当該出願を実用新案登録出願に変更することができない」という枝は誤りです。

- 特許出願→実用新案登録出願拒絶査定謄本の送達から3月以内かつ出願の日から9年6月以内です(10条1項)。3月は121条1項の期間の延長に合わせて延びます(10条6項)
- 意匠登録出願→実用新案登録出願拒絶査定謄本の送達から3月以内かつ出願の日から9年6月以内です(10条2項)
- 実用新案登録出願→特許出願出願の日から3年以内です(特許法46条1項)。責めに帰することができない理由があれば回復があります(同条5項)
- 国際出願翻訳文・国内書面の提出と手数料の納付の後であればできます(48条の11)。国内処理基準時の経過は要りません
実用新案登録に基づく特許出願は実用新案登録出願に変更できませんが、変更出願を再び変更することは禁じられていません
10条1項の括弧書は、特許法46条の2第1項の実用新案登録に基づく特許出願(分割や変更でその出願の時にしたものとみなされるものを含みます)を変更の対象から除いています。すでに実用新案登録を受けて放棄した権利を、再び実用新案登録出願の状態に戻して補正や分割をできるようにするのは制度の趣旨に反するからです。実用新案登録に基づく特許出願の出願人は「その特許出願を実用新案登録出願に変更することができる」という枝は誤りです。これに対し、実用新案登録出願から変更された特許出願を実用新案登録出願に変更することや、特許出願から変更された実用新案登録出願を特許出願に変更することを禁じる規定はありません。実用新案登録に基づく特許出願の変更は「実用新案登録出願の状態に戻ることが可能となり、補正又は分割を行い得ることとなるため、禁止されている」という枝は正しいです。意匠登録出願についても、実用新案登録に基づく特許出願から変更された意匠登録出願は10条2項の括弧書で除かれるので、「実用新案登録に基づく特許出願から変更された意匠登録出願を実用新案登録出願へ変更することは、禁止されている」という枝は正しいです。

変更には仮専用実施権者の承諾が要りますが、仮通常実施権は変更後の出願に承継されます
特許出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その承諾を得た場合に限り実用新案登録出願に変更できます(10条9項)。実用新案には専用実施権の仮の設定がなく、変更によって仮専用実施権者の地位が失われるからです。仮専用実施権に係る特許出願を実用新案登録出願に変更するとき「必ず仮専用実施権者の承諾を得る必要がある」という枝は正しいです。分割にはこの承諾の定めがありません。仮通常実施権は承諾が要らない代わりに、変更後の出願に引き継がれます。実用新案登録出願に4条の2の仮通常実施権が許諾されていて特許出願に変更されたときは、設定行為に別段の定めがなければ、変更後の特許出願に係る特許を受ける権利について同じ範囲で仮通常実施権が許諾されたものとみなされます(特許法34条の3第8項)。そのため「当該特許出願に係る新たな仮通常実施権の許諾が必要である」という枝は誤りです。特許出願の仮通常実施権が実用新案登録出願に変更されたときも、4条の2第3項で読み替えて準用する同じ規定で承継されます。
変更出願はもとの出願の時にしたものとみなされ、もとの出願は取り下げたものとみなされますが、他の出願としての先願の地位は現実の出願日で見ます
変更があったときは、実用新案登録出願はもとの特許出願又は意匠登録出願の時にしたものとみなされ(10条3項本文)、もとの出願は取り下げたものとみなされます(同条5項)。ただし、変更出願が3条の2の他の実用新案登録出願又は特許法29条の2の実用新案登録出願として後願を拒絶する側に立つときと、11条1項で準用する特許法30条3項の証明書の提出については遡及しません(10条3項ただし書)。実用新案登録出願から特許出願への変更でも、特許法46条6項で準用する44条2項ただし書により同じ扱いです。実用新案登録出願Aを特許出願Bに変更し、乙がAの後でBの変更前に特許出願Cをした場合、Aは取り下げたものとみなされて実用新案掲載公報が発行されず、Bは他の特許出願としては現実の変更の時の出願と扱われるので、「出願Cは出願A又は出願Bをいわゆる拡大された範囲の先願として拒絶されることはない」という枝は正しく、「出願Cは、出願A又はBの存在を理由に」29条の2でも39条でも拒絶されることはないという枝も正しいです。一方、変更出願自身が判断される側では遡及するので、分割出願Bをさらに変更した出願Cは原出願Aと同日の出願になり、同一の発明と考案であれば出願人が同じでも長官が「協議をしてその結果を届け出るべき旨を命ずる」という枝は正しいです(特許法39条4項・6項)。変更に係る出願は国内優先権の基礎にできないので(特許法41条1項2号・8条1項2号)、特許出願Aから変更した実用新案登録出願Bを基礎として「優先権の主張を伴う特許出願Cをすることができる」という枝は誤りです。第1年から第3年までの登録料は「出願の変更又は出願の分割と同時に」一時に納付し(32条1項)、変更後の実用新案登録出願については何人も実用新案技術評価を請求できるので、拒絶査定謄本の送達から3月が経過する前に変更した甲は「実用新案登録出願Bに係る考案に関し、実用新案技術評価を請求することができる」という枝は正しいです。

実用新案法10条1項特許出願人は、その特許出願(特許法第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(同法第四十四条第二項(同法第四十六条第六項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)を除く。)を実用新案登録出願に変更することができる。ただし、その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月を経過した後又はその特許出願の日から九年六月を経過した後は、この限りでない。
実用新案法10条3項前二項の規定による出願の変更があつたときは、その実用新案登録出願は、その特許出願又は意匠登録出願の時にしたものとみなす。ただし、その実用新案登録出願が第三条の二に規定する他の実用新案登録出願又は特許法第二十九条の二に規定する実用新案登録出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び次条第一項において準用する同法第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。
実用新案法10条9項特許出願人は、その特許出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その承諾を得た場合に限り、第一項の規定による出願の変更をすることができる。
試験ではこう問われる
- 特許出願→実用新案登録出願は拒絶査定謄本の送達から3月以内かつ出願の日から9年6月以内。9年6月を過ぎれば「いかなる場合であっても」変更できないという枝は正しい
- 期間はもとの出願の日で数える。変更・分割を経た特許出願Cも最初の出願の日から9年6月以内なら「特許出願Cを実用新案登録出願に変更することができる」
- 実用新案登録に基づく特許出願は変更できない(10条1項括弧書)。変更出願を再び変更することは禁止されていない
- 実用新案登録に基づく特許出願から変更された意匠登録出願も実用新案登録出願に変更できない(10条2項括弧書)
- 変更には仮専用実施権者の承諾が要る(10条9項)。仮通常実施権は承継され「新たな仮通常実施権の許諾が必要である」という枝は誤り
- 変更出願は遡及するが、29条の2・3条の2の他の出願になるときは現実の出願日で見る。もとの出願は取り下げたものとみなされ公報は発行されない
- 変更に係る出願は国内優先権の基礎にできない(41条1項2号)。「優先権の主張を伴う特許出願Cをすることができる」という枝は誤り
- 国際出願の変更は翻訳文等の提出と手数料納付の後でよく、国内処理基準時の経過は要らない(48条の11)。登録料は変更と同時に納め、変更後の出願について技術評価を請求できる
この用語が問われた枝
特許出願人は、特許出願の日から9年6月を経過した後は、いかなる場合であっても、その特許出願を実用新案登録出願に変更することができない。
実用新案登録出願Aを特許出願Bに変更した。その後、特許出願Bの一部を分割して新たな特許出願Cとした。特許出願Cは特許庁に係属しており、拒絶すべき旨の査定がされていない。この場合、実用新案登録出願Aの出願の日から4年を経過したときに、特許出願Cを実用新案登録出願に変更することができる。
特許法第 184 条の4第1項に規定される外国語特許出願の出願人は、同法第 184 条の5第1項の規定による手続をし、同法第 195 条第2項の規定により納付すべき手数料を納付し、同法第 184 条の4第1項又は同条第4項の規定による翻訳文を提出した後であっても、国内処理基準時の経過後でなければ、当該出願を実用新案登録出願に変更することができない。なお、この外国語特許出願について出願審査の請求はされていないものとし、また、国際出願日から9年6月を経過していないものとする。
実用新案登録に基づく特許出願の特許出願人は、その特許出願を実用新案登録出願に変更することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。