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再審(171〜177条)さいしん

特許・実用新案 第7章 特許異議・審判・再審 短答で23枝

再審とは、確定した取消決定又は確定審決に再審の事由があるときに、当事者又は参加人がその取消しを求めて請求する非常の不服申立てです。審判の請求人と被請求人が共謀して第三者を害する審決をさせたときは、その第三者も再審を請求できます。

特許を無効にすべき旨の審決が確定し、取消訴訟の期間も過ぎた後で、審決に関与した審判官が実は除斥される人だったとか、相手が出した証拠が偽造だったと分かることがあります。審決は一度確定すると争えないのが原則ですが、そこまで重い瑕疵があるのに何もできないのでは当事者が納得できません。そこで171条から176条までは、確定した取消決定と確定審決について、限られた事由と期間の中でもう一度審理をやり直す再審を認め、同時に回復した特許権から善意の第三者を守る規定を置いています。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判長役(札「審判長」)で正面の席に座り、机の上に「特許無効審判の確定審決(特許を無効にすべき旨)」と書かれた書類と、その上に重ねた「再審の請求書」と書かれた紙がある。向かいの席に特許権者の男性(札「特許権者(当

再審を請求できるのは確定した取消決定・確定審決の当事者又は参加人で、再審の確定審決にもさらに再審を請求できます

171条1項は、確定した取消決定及び確定審決に対して当事者又は参加人が再審を請求できると定めています。特許異議の申立てのように何人も請求できる手続ではなく、その事件に関わった人だけが請求できます。再審の審決も確定すれば確定審決なので、「再審の確定審決に対し、当事者又は参加人は、再審を請求することができる」という枝は正しいです。参加人は単独で請求でき、特許権者とともに請求しなければならないという制限はありません。174条3項は無効審判の確定審決に対する再審に132条1項・2項・4項を準用しますが、共有者の全員による共同請求を定める132条3項を準用しないので、特許権の共有者が無効審判の確定審決に対する再審を請求するときに「共有者の全員が共同して請求しなければならない」という枝は誤りです。再審の事由は171条2項が民事訴訟法338条1項・2項と339条を準用して定めており、法律により関与できない審判官の関与、判断の遺脱、前の確定審決との抵触などが入ります。審判の請求人が、法律により審決に関与することができない審判官が関与したことを「その審決の確定後に知ったときは、そのことを理由として、確定審決に対して再審を請求することができる」という枝は正しいです。ただし民事訴訟法338条1項ただし書により、当事者が審決取消訴訟でその事由を主張したとき、又は知りながら主張しなかったときは再審の事由になりません。確定審決との抵触を「審決取消訴訟においてその事由を既に主張していたとしても、その事由によって審決Aに対して再審を請求することができる」という枝は誤りです。

  • 対象確定した取消決定(特許異議の申立て)と確定審決(拒絶査定不服審判・無効審判・延長登録無効審判・訂正審判)です。再審の確定審決も含みます
  • 請求人当事者又は参加人です。利害関係人や何人もではありません。詐害審決は172条の第三者です
  • 事由民事訴訟法338条1項各号の準用です。取消訴訟で主張した事由、知りながら主張しなかった事由は除かれます

審判の請求人と被請求人が共謀して第三者を害する審決をさせたときは、その第三者が両者を共同被請求人として再審を請求します

172条1項は、審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもって審決をさせたときは、その第三者が確定審決に対して再審を請求できると定めています。当事者でない第三者が請求できる唯一の場合で、詐害審決に対する再審と呼ばれます。特許権者甲が質権者乙を害する目的で無効審判の請求人丙と共謀して無効審決を受けたような場面です。同条2項により、この再審は審判の請求人及び被請求人を共同被請求人として請求しなければなりません。審決をさせた二人のどちらも審理の相手にしないと、共謀の事実を争う場がないからです。「その確定審決の請求人及び被請求人を、その再審の共同被請求人として、請求しなければならない」という枝は正しく、質権者の「乙は甲のみを被請求人としてその確定審決に対し再審を請求することができる」という枝は誤りです。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判長役(札「審判長」)で正面の席に座る。向かって左の席に質権者の男性(札「乙(質権者)」)が立ち、机の上の「再審の請求書 被請求人:甲及び丙」と書かれた紙を指して、吹き出し「特許権者の甲と無効審判の請求人の丙が

請求期間は再審の理由を知った日から30日以内で、確定の日から3年を経過すると請求できませんが、確定審決との抵触を理由とするときは期間の制限がありません

173条1項は、再審は請求人が取消決定又は審決が確定した後に再審の理由を知った日から30日以内に請求しなければならないと定めています。起算点は理由を知った日であって、審決の送達を受けた日ではありません。「送達により審決があったことを知った日の翌日から起算して30日以内にしなければならない」という枝は誤りです(同条3項が送達により審決があったことを知った日の翌日から起算するのは、法律の規定に従って代理されなかったことを理由とする再審だけです)。責めに帰することができない理由で請求できなかったときは、同条2項により、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、その期間の経過後6月以内に限り請求できます。6月の起算は30日の期間が経過した時からなので、「再審の理由を知った日から6月を超えるとその請求をすることができない」という枝は誤りです。同条4項により確定の日から3年を経過すると請求できませんが、5項により理由が確定後に生じたときは理由が発生した日の翌日から起算し、6項により前の確定審決との抵触を理由とする再審には1項の30日も4項の3年も適用されません。確定から「3年を経過した後であっても、再審を請求することができる場合がある」という枝は正しいです。4条により特許庁長官は遠隔又は交通不便の地にある者のために173条1項の期間を延長できますが、延長は期間内にするもので、「再審を請求できる期間が経過した後であっても」延長を受けられるという枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「審決の確定」「再審の理由を知った日」「30日以内に再審の請求」「確定の日から3年」が立ち、「再審の理由を知った日」と「30日
  • 30日(173条1項)取消決定又は審決の確定後、再審の理由を知った日から起算します。代理されなかったことを理由とするときは送達により知った日の翌日から起算します(3項)
  • 追完(173条2項)理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、30日の期間の経過後6月以内です
  • 3年(173条4項)確定の日から起算します。理由が確定後に生じたときは発生した日の翌日から起算します(5項)
  • 抵触を理由とする再審(173条6項)30日も3年も適用されません
  • 4条の延長遠隔又は交通不便の地にある者のため、173条1項の期間内に限り延長できます

再審の審理には審判の規定が準用されますが、無効審判の確定審決に対する再審では申し立てない理由を審理できません

174条は、確定した取消決定に対する再審(1項)、拒絶査定不服審判の確定審決に対する再審(2項)、特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決に対する再審(3項)、訂正審判の確定審決に対する再審(4項)に分けて、準用する条文を列挙しています。同条5項は民事訴訟法348条1項を準用し、再審の審理は不服申立ての限度で行います。無効審判の再審に準用されるのは135条から152条までと154条などで、当事者が申し立てない理由も審理できるとする153条は入っていません。再審は確定した審決を限られた事由で見直す手続なので、審判のように職権で理由を広げないからです。無効審判の確定審決に対する再審で「当該再審の請求人が申し立てない理由についても、審理することができる」という枝は誤りです。一方、確定した取消決定に対する再審には174条1項が120条の2を準用するので、申し立てない理由についても審理できます。取消決定に対する再審で「当該再審の請求人が申し立てない理由についても審理することができる」という枝は正しいです。

再審により回復した特許権の効力は再審の請求の登録前の善意の実施等には及ばず、善意で事業をしていた者には通常実施権が残ります

無効審決の確定で特許権は初めからなかったものとされ、第三者はその発明を自由に実施します。その後に再審で特許権が回復しても、信頼して動いた第三者を遡って侵害者にするのは酷なので、175条と176条が効力を制限します。175条1項により、物の発明の特許では、取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に輸入し、又は日本国内において生産し、若しくは取得した物には特許権の効力が及びません。同条2項により、その期間における当該発明の善意の実施や、善意の所持などの行為にも及びません。善意が守られるのは再審の請求の登録前までなので、「審決が確定してから再審によって回復するまでの期間における実施が侵害となることはない」という枝は誤りです(再審の請求が登録されれば特許権が回復する可能性を知り得るからです)。176条により、同じ期間に善意に日本国内で発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内で通常実施権を持ちます。万年筆の製造方法を善意で事業として実施していた者が「特許権の回復後も引き続いて当該万年筆を製造することができる場合がある」という枝は正しいです。この通常実施権には79条の2や80条のような相当の対価の規定がありません。

万年筆を作る町工場の場面。先生が先生役(札「先生」)で工場の入口に立ち、横に工場主の男性(札「善意の実施者」)が万年筆を手にして立っている。奥の作業台に万年筆が並び、台の上に「無効審決の確定後に実施を開始」と書かれた札。壁に横長の時系列の貼

無効審判の確定審決に対する再審の審決の取消訴訟は、特許庁長官ではなく再審の請求人又は被請求人を被告とします

再審の審決に対する訴えも178条の審決等取消訴訟として東京高等裁判所の専属管轄です。179条は被告を特許庁長官とするのが原則ですが、ただし書で、特許無効審判・延長登録無効審判とこれらの審判の確定審決に対する171条1項の再審の審決については、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告とします。当事者系の争いは当事者どうしで決着させるという考え方が再審にも及ぶからです。無効審判の確定審決に対する再審の審決に対する訴えで「特許庁長官を被告としなければならない」という枝は誤りです。詐害審決に対する172条の再審は179条ただし書に挙げられていないので、その審決に対する訴えは原則どおり特許庁長官を被告とします。意匠法と商標法にも同じ型の再審の規定があり、商標では回復した商標権の効力の制限と再審により回復した商標権の効力に関する使用権が別の語で扱われます。

特許法171条1項

確定した取消決定及び確定審決に対しては、当事者又は参加人は、再審を請求することができる。

特許法172条1項

審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもつて審決をさせたときは、その第三者は、その確定審決に対し再審を請求することができる。

特許法172条2項

前項の再審は、その請求人及び被請求人を共同被請求人として請求しなければならない。

特許法173条1項

再審は、請求人が取消決定又は審決が確定した後再審の理由を知つた日から三十日以内に請求しなければならない。

特許法173条4項

取消決定又は審決が確定した日から三年を経過した後は、再審を請求することができない。

特許法173条6項

第一項及び第四項の規定は、当該審決が前にされた確定審決と抵触することを理由とする再審の請求には、適用しない。

特許法176条

取り消し、若しくは無効にした特許に係る特許権若しくは無効にした存続期間の延長登録に係る特許権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた特許出願若しくは特許権の存続期間の延長登録の出願について再審により特許権の設定の登録若しくは特許権の存続期間を延長した旨の登録があつたときは、当該取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。

試験ではこう問われる

  1. 請求できるのは当事者又は参加人(171条1項)。再審の確定審決に対しても再審を請求できる。参加人は単独で請求でき、無効審判の再審では共有者全員の共同請求(132条3項)は準用されない
  2. 事由は民事訴訟法338条の準用。関与できない審判官の関与を確定後に知れば請求できるが、取消訴訟で主張した事由や知りながら主張しなかった事由では請求できない
  3. 詐害審決は害された第三者が請求し、審判の請求人及び被請求人を共同被請求人とする(172条)。「乙は甲のみを被請求人として」請求できるという枝は誤り
  4. 期間は再審の理由を知った日から30日(送達により知った日の翌日起算は代理されなかった場合だけ)。追完は理由がなくなった日から14日・在外者2月で、30日の期間経過後6月以内
  5. 確定から3年で請求できないが、理由が後に生じたときは翌日起算、確定審決との抵触を理由とするときは30日も3年も適用なし。4条の延長は期間経過後には受けられない
  6. 無効審判の確定審決に対する再審では申し立てない理由を審理できない(153条不準用)。取消決定に対する再審では120条の2の準用で審理できる
  7. 回復した特許権は、確定後再審の請求の登録前の善意の輸入・生産・取得品や善意の実施には及ばない(175条)。登録後回復までの実施には及ぶ。善意の実施事業者は176条の通常実施権(対価の規定なし)
  8. 無効審判の確定審決に対する再審の審決の取消訴訟の被告は請求人又は被請求人で、特許庁長官ではない(179条ただし書)

この用語が問われた枝

令和元年度 問12 枝ホ正しい

再審の確定審決に対し、当事者又は参加人は、再審を請求することができる。

平成30年度 問13 枝イ誤り

特許権の共有者が、その共有に係る権利について、特許無効審判又は特許権の存続期間の延長登録無効審判の確定審決に対する再審を請求するときには、共有者の全員が共同して請求しなければならない。

平成28年度 問14 枝ホ正しい

審判の請求人は、法律により審決に関与することができない審判官がその審決に関与したことを、その審決の確定後に知ったときは、そのことを理由として、確定審決に対して再審を請求することができる。

平成30年度 問13 枝ホ誤り

当事者は、確定した審決Aが、前に確定した審決Bと抵触するとの事由がある場合、審決Aについての審決取消訴訟においてその事由を既に主張していたとしても、その事由によって審決Aに対して再審を請求することができる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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