実用新案登録の訂正(実14条の2・14条の3)じつようしんあんとうろくのていせい
実用新案登録の訂正とは、実用新案権者が訂正書を提出して、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面を自ら直す14条の2の手続です。減縮・誤記の訂正・明瞭でない記載の釈明・引用関係の解消を目的とする訂正は一回に限りで時期の制限があり、請求項の削除を目的とする訂正は回数の制限なく、1項の時期の制限も受けずにできます。
無審査で登録された実用新案は、技術評価書で先行技術が見つかったり無効審判を請求されたりして初めて、請求の範囲が広すぎたと気づくことがあります。特許なら訂正審判や訂正の請求で何度でも直せますが、実用新案では特許庁が審理する場がありません。そこで14条の2は、権利者が訂正書を出すだけで直せる代わりに、減縮などの訂正は一回限りで時期も区切り、請求項を削るだけの訂正は自由にできるという形にしました。第三者が訂正のたびに権利の範囲を読み直す負担を抑えつつ、権利者には無効を避ける最低限の手段を残す仕組みです。

減縮・誤記の訂正・釈明・引用関係の解消を目的とする訂正は一回に限りでき、請求項の削除を目的とする訂正は回数の制限なくできます
実用新案権者は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができ(14条の2第1項)、その目的は実用新案登録請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を引用しないものとすることの四つに限られます(同条2項)。これとは別に、請求項の削除を目的とするものに限り、回数の制限なく訂正ができます(同条7項)。請求項を削るだけなら第三者の権利範囲の読み直しが要らないからです。訂正の目的はこの五つしかないので、減縮・誤記の訂正・釈明・引用関係の解消又は請求項の削除を目的とするものでなければ「いかなる場合であっても、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができない」という枝は正しいです。期間を過ぎると減縮等の「いずれを目的とする訂正もすることはできない」という枝は、請求項の削除が7項で別枠になっているので誤りです。減縮・誤記の訂正・釈明・引用関係の解消「又は請求項の削除のいずれを目的とする場合も」一回に限りという枝も、削除を一回限りの枠に入れている点で誤りです。訂正は権利の消滅後もできますが、無効審判で無効にされた後はできません(同条8項)。
1項の訂正と7項の訂正
| 1項の訂正 | 7項の訂正 | |
|---|---|---|
| 目的 | 減縮・誤記の訂正・明瞭でない記載の釈明・引用関係の解消 | 請求項の削除のみ |
| 回数 | 一回に限ります | 制限はありません |
| 時期 | 最初の評価書謄本の送達から2月、無効審判の最初の答弁書提出期間の経過後はできません | 無効審判係属中は審理終結の通知の後はできません |
| 訂正書 | 訂正した明細書等を添付します(10項) | 訂正書のみです |
減縮等の訂正は、最初の技術評価書謄本の送達から2月を過ぎた後と無効審判の最初の答弁書提出期間を過ぎた後はできず、一回もしていなくても同じです
1項の訂正ができなくなるのは、13条3項の最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があった日から2月を経過したとき(1号)と、実用新案登録無効審判について39条1項により最初に指定された答弁書提出期間を経過したとき(2号)です。評価書や無効審判で先行技術を知った権利者に一度だけ直す機会を与え、それを過ぎたら権利の範囲を固める趣旨です。回数ではなく時期の制限なので、「実用新案権者がそれまでに訂正を一回も行っていない場合は」減縮の訂正ができるという枝は誤りです。他人の請求に係る評価書の送達から2月を過ぎた後に無効審判が請求されても、最初の答弁書提出期間内に「甲は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とする訂正をすることができる」という枝は誤りです(1号の期間をすでに過ぎているからです)。2号は「最初に指定された」期間なので、無効審判において指定された期間を「経過するまでであればいつでも」一回に限りできるという枝は誤りです。これに対し、請求項の削除を目的とする訂正は時期の制限が緩く、無効審判が係属していても41条で準用する特許法156条1項の審理終結の通知があるまではできるので(7項ただし書)、答弁書提出期間を過ぎた後であっても「請求項の削除を目的とした訂正をすることができる場合がある」という枝は正しいです。1号の期間は責めに帰することができない理由があれば、理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で期間経過後6月以内に限り延びます(6項)。無効審判係属中に1項又は7項の訂正があったときは、審判長がその副本を請求人に送達します(39条3項)。

訂正の要件は新規事項の追加の禁止と実質上の拡張・変更の禁止だけで、独立登録要件はなく、違反は無効理由として扱われます
1項の訂正は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしなければならず、誤記の訂正だけは願書に最初に添付した明細書等が基準です(14条の2第3項)。また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものであってはなりません(同条4項)。特許法126条7項のような、訂正後の考案が出願の際独立して登録を受けられるものでなければならないという要件は置かれていません。無審査で登録した権利に、訂正の場面だけ登録要件を審理する場がないからです。減縮の訂正について「独立して実用新案登録を受けることができるものでなければならない旨が規定されている」という枝は誤りで、「実用新案登録無効審判の請求がされていない請求項についての」減縮の訂正に独立登録要件を求める枝も誤りです。要件違反の訂正でも特許庁は中身を審理せず、訂正があれば訂正後の明細書等により出願と設定の登録がされたものとみなされます(同条11項)。記載した事項の範囲内でない訂正でも「その訂正後における明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面により実用新案登録出願がされたものとみなされる」という枝は正しく、その違反は37条1項7号の無効理由として無効審判で争われます。新規事項の追加を理由に「特許庁長官はこれを理由として、実用新案権者に対し、補正をすべきことを命ずることができる」という枝は誤りです(14条の3の補正命令の事由に入っていないからです)。

訂正に係る補正命令(14条の3)の事由は物品性・公序良俗・委任省令と単一性・著しい不明確に限られ、却下されても請求項の削除の訂正はできます
1項の訂正に係る訂正書が提出されると、特許庁長官は、訂正後の請求の範囲により特定される考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき(1号)、4条により登録できないものであるとき(2号)、5条6項4号又は6条の要件を満たしていないとき(3号)、必要な事項の不記載又は記載が著しく不明確なとき(4号)に限り、相当の期間を指定して訂正書に添付した訂正した明細書等の補正を命ずることができます(14条の3)。出願の基礎的要件(6条の2)と同じ四つの観点だけを方式的に見る仕組みです。設定の登録後に、訂正した請求の範囲の考案が「物品の形状、構造又は組合せに係るものでなかった場合に」長官が補正を命ずることができるという枝は正しいです。指定期間内に補正をしなければ長官はその訂正を却下することができます(2条の3)。却下されても7項の請求項の削除を目的とする訂正は別枠なので、「再度、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができる場合がある」という枝は正しいです。訂正に係る補正命令は訂正書に添付した明細書等の補正の機会にすぎず、登録済みの出願を補正できる時期ではないので、補正を命じられたときに「その実用新案登録出願Aの一部を分割して新たな出願とすることができる」という枝は誤りです(11条1項で準用する特許法44条1項の分割は出願が係属し補正できる時期に限られるからです)。

訂正があったときは実用新案公報に掲載され、専用実施権者等の承諾と共有者全員の手続が準用されます
現行の14条の2は平成16年改正で入ったもので、それ以前の実用新案法では、登録後の訂正は請求項の削除を目的とするものに限られていました。現行法では誤記の訂正も1項の訂正としてできます。訂正があったときは、1項の訂正なら訂正後の明細書等の内容を、7項の訂正ならその旨を実用新案公報に掲載し(12項)、特許法127条の専用実施権者等の承諾と132条3項の共有者全員の手続が準用されます(13項)。訂正で設定登録時の請求の範囲から外れた考案について権利行使や警告をしていたときは、29条の3第2項により賠償責任の規定が準用されます。実用新案登録に基づく特許出願(特許法46条の2)は、権利者自身が技術評価を請求した後はできず、その後に請求項を削除する訂正をしても請求があった事実は消えません。
実用新案法14条の2第1項実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができる。
一 第十三条第三項の規定による最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があつた日から二月を経過したとき。
二 実用新案登録無効審判について、第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
実用新案法14条の2第7項実用新案権者は、第一項の訂正をする場合のほか、請求項の削除を目的とするものに限り、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができる。ただし、実用新案登録無効審判が特許庁に係属している場合において第四十一条において準用する特許法第百五十六条第一項の規定による通知があつた後(同条第三項の規定による審理の再開がされた場合にあつては、その後更に同条第一項の規定による通知があつた後)は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができない。
実用新案法14条の2第11項第一項又は第七項の訂正があつたときは、その訂正後における明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面により実用新案登録出願及び実用新案権の設定の登録がされたものとみなす。
試験ではこう問われる
- 目的は減縮・誤記の訂正・釈明・引用関係の解消(1項)と請求項の削除(7項)の五つだけ。それ以外は「いかなる場合であっても」訂正できないという枝は正しい
- 1項の訂正は一回限り。「又は請求項の削除のいずれを目的とする場合も」一回限りという枝は誤りで、削除は回数の制限がない
- 時期は最初の評価書謄本送達から2月、無効審判の「最初に」指定された答弁書提出期間まで。「訂正を一回も行っていない場合は」できるという枝は誤り
- 期間経過後に無効審判が請求されても減縮の訂正はできない。請求項の削除は審理終結の通知までできるので「請求項の削除を目的とした訂正をすることができる場合がある」という枝は正しい
- 独立登録要件はない。「独立して実用新案登録を受けることができるものでなければならない旨が規定されている」という枝は誤り
- 新規事項の訂正も訂正後の明細書等で出願・登録されたものとみなされ、無効理由(37条1項7号)になる。長官が補正を命ずるという枝は誤り
- 14条の3の補正命令の事由は物品性・4条・5条6項4号と6条・著しい不明確の四つ。補正命令を受けても出願の分割はできない
- 平成16年改正前は請求項の削除に限られていたが、現行法では誤記の訂正も1項の訂正としてできる
この用語が問われた枝
実用新案権者は、実用新案登録請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、又は請求項の削除のいずれかを目的とするものでなければ、いかなる場合であっても、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができない。
実用新案権者は、最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があった日から2月を経過したとき、又は実用新案登録無効審判について、答弁書を提出するために実用新案法第39条第1項の規定により最初に指定された期間を経過したときは、請求項の削除、実用新案登録請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのいずれを目的とする訂正もすることはできない。
実用新案権者は、実用新案法第13条第3項の規定による最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があった日から2月を経過したとき、及び実用新案登録無効審判について実用新案法第39条第1項の規定により最初に指定された期間を経過したとき、を除き、実用新案登録請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、又は請求項の削除のいずれを目的とする場合も、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を1回に限りすることができる。
実用新案権の設定登録後、最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があった日から2月を経過したとき、又は、実用新案登録無効審判について最初に指定された答弁書提出可能期間を経過したときでも、実用新案権者がそれまでに訂正を一回も行っていない場合は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした訂正をすることができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。