意匠登録を受ける権利・共同出願・仮通常実施権(15条準用 特33〜35・38条、5条の2)いしょうとうろくをうけるけんりきょうどうしゅつがんかりつうじょうじっしけん
意匠登録を受ける権利とは、意匠の創作をした者に発生し、意匠登録出願をして意匠権を取得できる権利です。15条2項・3項で特許法33条・34条・35条が準用され、共有なら特許法38条の準用で共同出願が必要になり、5条の2でこの権利に基づく仮通常実施権を許諾できます。
デザイナーが新しい椅子の意匠を創作した時点で、その人には意匠登録を受ける権利が生まれます。この権利は譲ることができ、会社の仕事として創作したなら勤務規則で会社に取得させることもできます。二人で創作したなら権利は共有になり、出願も二人でしなければなりません。意匠法はこれらの場面を自分で書かず、15条で特許法の特許を受ける権利・職務発明・共同出願の規定を準用しています。ただし、仮専用実施権だけは準用せず、5条の2で仮通常実施権だけを置いたところに意匠法らしさがあります。

意匠登録を受ける権利は移転でき、出願前の承継は承継人が意匠登録出願をしなければ第三者に対抗できません
15条2項は特許法33条と34条1項・2項・4項から7項までを準用します。意匠登録を受ける権利は移転できますが、出願前の承継は承継人が意匠登録出願をしなければ第三者に対抗できず、同一の者から承継した同一の権利について同日に二以上の出願があれば協議で定めた者以外の承継は対抗できません。出願後の承継は、相続その他の一般承継を除き、特許庁長官に届け出なければ効力を生じません。先に出願した承継人は正当な権利者なので、二重譲渡のうち一人が出願して設定登録を受けても、二重譲渡されていたことは無効理由になりません。
共有なら全員で出願し審判も全員で請求しなければならず、共同出願違反の無効審判は意匠登録を受ける権利を有する者だけが請求できます
15条1項が準用する特許法38条により、意匠登録を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は他の共有者と共同でなければ意匠登録出願をすることができません。52条が準用する特許法132条3項により審判の請求も共有者全員でしなければならないので、「共有者の一部の者が拒絶査定不服審判を請求しても、審決をもって却下される」という枝は正しいです。共同出願違反は拒絶理由であり無効理由(48条1項1号)でもありますが、48条2項ただし書により、「意匠登録出願時の共同出願違反を理由とする意匠登録無効審判は」意匠登録を受ける権利を有する者に限り請求できるという枝は正しく、冒認出願を理由とする無効審判も「意匠登録を受ける権利を有する者しかできない」という枝は正しいです。これらは権利の帰属に関わる争いなので、権利を持つ者だけに争わせる趣旨です。共同出願は3条の2のただし書でも効いてきて、甲及び乙の共同出願Aの後に甲が単独でした出願Bは出願人が同一でないので、「出願人名義変更をして甲及び乙の共同の出願としなくても」3条の2で拒絶されることはないという枝は誤りです。

職務創作には特許法35条が準用され、使用者は通常実施権を持ち、従業者は相当の利益を受ける権利を持ちます
15条3項は、仮専用実施権に係る部分を除いて特許法35条を、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員がした意匠の創作に準用します。従業者が職務創作について意匠登録を受けたときは、契約や勤務規則に承継の定めがなくても、「当該会社は、当該意匠権について通常実施権を有する」という枝は正しいです(特許法35条1項)。契約、勤務規則その他の定めで職務創作について使用者に意匠登録を受ける権利を取得させたときは、従業者は「相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する」という枝も正しいです(同条4項)。あらかじめ使用者に取得させることを定めたときは、権利は発生した時から使用者に帰属します(同条3項)。
意匠法には仮通常実施権だけがあり、仮専用実施権はありません
5条の2第1項により、意匠登録を受ける権利を有する者は、その権利に基づいて取得すべき意匠権について、願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠又はこれに類似する意匠の範囲内で、他人に仮通常実施権を許諾できます。出願中の甲が「乙に仮通常実施権を許諾することができる」という枝は正しいです。一方、特許法34条の2の仮専用実施権に当たる規定は意匠法になく、15条3項も仮専用実施権に係る部分を除いて準用しているので、出願中の甲が「乙に仮専用実施権を設定することができる」という枝は誤りです。意匠は出願から登録までが短く、登録前の独占的な実施権を登録して公示する必要が小さいからです。

特許出願からの変更には仮専用実施権者の承諾が要り、仮通常実施権は変更後の出願に引き継がれて登録後は通常実施権とみなされます
13条5項により、特許出願人は、その特許出願について「仮専用実施権を有する者があるときは、その承諾を得た場合に限り」意匠登録出願に変更できるという枝は正しく、「当該仮専用実施権を有する者の承諾を得なくても」変更できるという枝は誤りです。変更でもとの特許出願は取り下げたものとみなされ(13条4項)、仮専用実施権が消えてしまうからです。承諾が要るのは仮専用実施権者だけなので、「仮通常実施権を有する者があるときは、その承諾を得た場合に限り」変更できるという枝は誤りです。仮通常実施権は、5条の2第3項が準用する特許法34条の3第9項の読替えにより、変更後の意匠登録出願について許諾されたものとみなされ、意匠権の設定登録があれば、設定行為で定めた範囲内で「通常実施権が許諾されたものとみなされる」という枝は正しいです(5条の2第2項)。
- 仮通常実施権(5条の2)意匠登録を受ける権利を有する者が、願書・図面等に現された意匠又はこれに類似する意匠の範囲内で許諾します。設定登録後は通常実施権が許諾されたものとみなされます
- 仮専用実施権意匠法にはありません。15条3項の特許法35条の準用も仮専用実施権に係る部分を除きます
- 特許出願からの変更(13条5項)特許出願の仮専用実施権者の承諾が要ります。仮通常実施権者の承諾は要りません
意匠法5条の2第1項意匠登録を受ける権利を有する者は、その意匠登録を受ける権利に基づいて取得すべき意匠権について、その意匠登録出願の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠又はこれに類似する意匠の範囲内において、他人に仮通常実施権を許諾することができる。
意匠法15条3項特許法第三十五条(仮専用実施権に係る部分を除く。)(職務発明)の規定は、従業者、法人の役員又は国家公務員若しくは地方公務員がした意匠の創作に準用する。
意匠法48条2項意匠登録無効審判は、何人も請求することができる。ただし、意匠登録が前項第一号に該当すること(その意匠登録が第十五条第一項において準用する特許法第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は前項第三号に該当することを理由とするものは、当該意匠登録に係る意匠について意匠登録を受ける権利を有する者に限り請求することができる。
試験ではこう問われる
- 出願前の承継は承継人の出願が対抗要件。二重譲渡で先に出願した者の登録は無効理由にならない
- 共有者は全員で出願し、審判も全員で請求する。「共有者の一部の者が拒絶査定不服審判を請求しても、審決をもって却下される」という枝は正しい
- 共同出願違反・冒認を理由とする無効審判は意匠登録を受ける権利を有する者に限る。「何人も」「利害関係人」とする枝は誤り
- 共同出願Aと単独出願Bは出願人が同一でないので3条の2のただし書が使えない。名義変更をしなくても拒絶されないという枝は誤り
- 職務創作は特許法35条の準用。使用者は定めがなくても通常実施権を持ち、権利を取得させた従業者は「相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する」
- 仮通常実施権は許諾できるが、「仮専用実施権を設定することができる」という枝は誤り
- 特許出願から意匠登録出願への変更は仮専用実施権者の承諾が要る。仮通常実施権者の承諾を要件にした枝は誤り
- 変更後の出願に仮通常実施権は引き継がれ、設定登録があれば「通常実施権が許諾されたものとみなされる」
この用語が問われた枝
意匠登録を受ける権利が共有の場合、共有者の一部の者が拒絶査定不服審判を請求しても、審決をもって却下される。
意匠登録出願時の共同出願違反を理由とする意匠登録無効審判は、当該意匠登録に係る意匠について意匠登録を受ける権利を有する者に限り請求することができる。
冒認出願を理由とする無効審判請求は、当該意匠登録に係る意匠について意匠登録を受ける権利を有する者しかできない。
甲及び乙が共同で「カメラ」の意匠イについて意匠登録出願Aをした後に、甲は単独で意匠イのカメラに取付けられた「レンズ」の意匠に類似する「レンズ」の意匠ロについて意匠登録出願Bをした。その後、意匠イについて意匠権の設定の登録がされた。この場合、意匠ロの出願Bについて出願人名義変更をして甲及び乙の共同の出願としなくても、意匠法第3条の2の規定に該当することを理由としては拒絶されることはない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。