再審と審決取消訴訟(53〜59条)さいしんとしんけつとりけしそしょう
再審とは、確定審決に対して当事者又は参加人が、民事訴訟法338条の再審の事由があるときに請求できる非常の不服申立てです(53条)。審決取消訴訟とは、審決や審判での補正の却下の決定などに対する訴えで、東京高等裁判所の専属管轄とされています(59条)。
審決が確定した後に、審判官が賄賂を受け取っていたことや、相手が偽造した証拠で審決を取ったことが分かったとします。確定した判断を蒸し返すのは法的安定を損ないますが、こうした重い事由まで放置はできません。そこで53条は、確定審決に対して当事者又は参加人が民事訴訟法338条の再審の事由がある場合に限って再審を請求できるとしています。一方、確定前の審決に不服があるときの通常の争い方が審決取消訴訟で、専門性の高い事件を集めるために東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)の専属管轄とされています。

再審は確定審決に対して当事者又は参加人が民事訴訟法338条の再審の事由で請求し、再審の確定審決も対象になります
53条1項は、確定審決に対して当事者又は参加人が再審を請求できるとし、2項が民事訴訟法338条1項・2項と339条の再審の事由を準用します。対象は「確定審決」なので、再審の確定審決に再審の事由があればさらに再審を請求でき、「再審の確定審決に対して改めて再審の請求をすることはできない」という枝は誤りです。再審の事由は民事訴訟法338条1項各号に限られ、審判で主張しなかった別の無効理由や証拠があることは事由に当たりません。インターネット掲載を理由とする無効審判で請求不成立の審決が確定した後に、雑誌掲載を理由に「新規性違反があるとして再審を申し立てることができる」という枝は誤りで、別の無効審判を請求すべきものです。58条1項が準用する特許法174条5項により民事訴訟法348条1項が準用され、審理は不服申立ての限度で行うので、「当事者が申し立てていない再審の請求の理由を職権で審理することが許されている」という枝は誤りです。再審は審決が確定した後再審の理由を知った日から30日以内に請求します(特許法173条1項の準用)。
審判の請求人と被請求人が共謀して第三者を害する審決をさせたときは、その第三者も再審を請求でき、両者を共同被請求人とします
54条1項は、審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的で審決をさせたときに、その第三者が確定審決に対し再審を請求できるとしています。当事者でない者にも道を開いているので、「当事者及び参加人以外の者が再審請求をできる場合はない」という枝は誤りです。無効審決で権利を失う専用実施権者はこの第三者に当たるので、共謀して無効審決をさせた場合でも「専用実施権者は当該無効審判の確定審決に対し再審の請求をすることはできない」という枝は誤りです。この再審は、請求人及び被請求人を共同被請求人として請求しなければなりません(54条2項)。
再審で回復した意匠権の効力は審決確定後再審の請求の登録前の善意の実施等には及ばず、善意の事業者には通常実施権が生じます
無効審決が確定して意匠権が無くなったと信じて実施を始めた人を、再審で意匠権が復活したからといって侵害者にするのは酷です。そこで55条1項は、無効にした意匠登録に係る意匠権が再審により回復したとき、審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に輸入し、又は日本国内において製造若しくは取得した登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品等には意匠権の効力が及ばないとし、2項はその期間における善意の実施や善意の所持等の行為にも及ばないとしています。回復した意匠権の効力が審決確定後再審の請求の登録前の「当該意匠の善意の業としての実施にも及ぶ」という枝は誤りです。物品については善意に日本国内で製造・取得したものなら登録後に譲渡しても及ばないので、「善意に日本国内において取得し、当該再審の請求の登録後に日本国内において譲渡した」物品に及ばないという枝と、善意に製造された物品を「当該再審の請求の登録後に日本国内において譲渡のために所持する行為」に及ばないという枝は正しいです。一方、輸入は再審の請求の登録前にしたものに限られるので、「善意に外国において製造し、当該再審の請求の登録後に日本国内に輸入した」物品に及ばないという枝は誤りです。56条は、その期間に善意に日本国内で実施の事業やその準備をしている者に、「その実施をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠権について通常実施権を有する」という中用権を与えており、この枝は正しいです。拒絶審決があった出願に再審で設定登録があったときも同じです。

審決等に対する訴えは東京高等裁判所の専属管轄で、出訴期間は30日、共有者は単独で提起でき、訴えの係属中は出願の分割ができません
59条1項は、審決に対する訴え、審判で準用する17条の2第1項の補正の却下の決定に対する訴え、審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えを東京高等裁判所の専属管轄とします。2項で特許法178条2項から6項まで、179条、180条1項などを準用するので、訴えを提起できるのは当事者、参加人又は参加を拒否された者で、出訴期間は審決又は決定の謄本の送達から30日の不変期間です。被告は特許庁長官ですが、無効審判とその再審の審決に対する訴えでは審判の請求人又は被請求人を被告とします。共有に係る意匠権の無効審決に対する取消訴訟は権利の消滅を防ぐ保存行為なので、判例(最判平成14年2月22日・最判平成14年3月25日)の理が及び、「共有者の1人が単独で提起することはできない」という枝は誤りです。出願の分割は審査、審判又は再審に係属している場合に限られるので(10条の2第1項)、拒絶審決に対する「審決に対する訴えが裁判所に係属している場合」に分割できるという枝は誤りです。補正却下決定不服審判では出願の審査が中止されているだけで審査に係属しているので、その「審決取消訴訟が裁判所に係属している場合であっても」願書や図面の補正ができるという枝は正しいです。裁定の対価の額に不服がある者は60条の訴えで増減を求めます。

意匠法53条1項確定審決に対しては、当事者又は参加人は、再審を請求することができる。
意匠法54条1項審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもつて審決をさせたときは、その第三者は、その確定審決に対し再審を請求することができる。
意匠法56条無効にした意匠登録に係る意匠権が再審により回復したとき、又は拒絶をすべき旨の審決があつた意匠登録出願について再審により意匠権の設定の登録があつたときは、当該審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠権について通常実施権を有する。
意匠法59条1項審決に対する訴え、第五十条第一項(第五十七条第一項において準用する場合を含む。)において準用する第十七条の二第一項の規定による却下の決定に対する訴え及び審判又は再審の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。
試験ではこう問われる
- 再審は確定審決に対して当事者又は参加人が請求する(53条1項)。再審の確定審決も「確定審決」なので再審の対象になる
- 再審の事由は民事訴訟法338条1項に限られる。審判で主張しなかった別の理由や証拠は再審の事由でなく、別の無効審判で争う。申し立てていない理由の職権審理はできない
- 共謀による詐害審決には第三者(権利を失う専用実施権者など)も再審を請求できる(54条)。請求人と被請求人を共同被請求人にする
- 回復した意匠権は、審決確定後再審の請求の登録前の善意の実施・善意に製造や取得した物品に及ばない(55条)。輸入は登録前にしたものに限られ、登録後の輸入には及ぶ
- 審決確定後再審の請求の登録前に善意で実施の事業や準備をしている者は通常実施権を持つ(56条)。拒絶審決後の再審で設定登録があった場合も同じ
- 審決等取消訴訟は東京高等裁判所の専属管轄(59条1項)。出訴期間は謄本の送達から30日(特178条3項準用)。被告は特許庁長官、無効審判の審決は相手方当事者
- 共有に係る意匠権の無効審決の取消訴訟は共有者の一人が単独で提起できる(保存行為)
- 審決取消訴訟の係属中は審査・審判・再審のどれにも係属しないので分割できない。補正却下決定不服審判の係属中や訴訟中は審査が中止されているだけで補正はできる
この用語が問われた枝
拒絶査定不服審判や無効審判の確定審決は再審の対象になるが、再審の確定審決に対して改めて再審の請求をすることはできない。
登録されている意匠について「登録意匠に類似する意匠がインターネットに掲載されている」という理由に基づいて新規性違反があるとして無効審判を申し立てた。この無効審判において、請求人は「登録意匠に類似する意匠が雑誌に掲載されている」という理由に基づいても新規性違反があるのではないかと思料したが、結局は「登録意匠に類似する意匠がインターネットに掲載されている」という理由のみ主張し、請求不成立審決が下され、その審決が確定した。このとき、請求人は、「登録意匠に類似する意匠が雑誌に掲載されている」という理由に基づいて新規性違反があるとして再審を申し立てることができる。
再審の審理においては、当事者が申し立てていない再審の請求の理由を職権で審理することが許されている。
確定審決に対して、当事者及び参加人以外の者が再審請求をできる場合はない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。