みなし侵害と技術的保護手段(113条・113条の2・2条1項20〜22号・30条1項2号・120条の2)みなししんがいとぎじゅつてきほごしゅだん
みなし侵害とは、著作権等を直接に侵害する行為ではないものの、113条が著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす行為で、海賊版の輸入・頒布、違法複製プログラムの業務上の使用、リーチサイト等による侵害著作物等利用容易化、技術的利用制限手段の回避、権利管理情報の改変、名誉又は声望を害する方法による利用などです。技術的保護手段とは、コピーガードのように電磁的方法で著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段(2条1項20号)で、これを回避して行う複製は私的使用のための複製から除かれます(30条1項2号)。
海外で作られた海賊版DVDを日本で売る業者は、自分では複製していませんし、国外での複製には日本の著作権が及びません。それでも放っておけば国内の市場は海賊版で荒らされます。そこで113条は、権利の直接の侵害ではない行為のうち権利者の利益を損なうものを「侵害する行為とみなす」ことで、差止めや損害賠償、刑事罰の対象に取り込んでいます。コピーガードのような技術的保護手段を外す行為も同じ発想で、回避してした複製は私的使用の例外から外され(30条1項2号)、回避装置を売る行為には刑事罰があります(120条の2)。

国内で頒布する目的で、輸入の時に国内で作成したとしたならば侵害となるべき行為によって作成された物を輸入する行為は、侵害とみなされます
113条1項1号は、国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成された物を輸入する行為を、侵害とみなします。国外での複製は日本法の侵害ではないので、もし国内で作ったら侵害になるかという仮定で判断し、その基準時は「輸入の時」です。作成の時ではないので、日本の存続期間中に国外で無断複製された映画のDVDでも、「存続期間が満了した後に国内で販売するために輸入した」業者の行為は侵害とみなされるという枝は誤りです。輸入の時には国内で作成しても侵害にならないからです。基準時を「作成の時」に置き換えた記述は、基準時のすり替えなので誤りです。私的使用の目的など国内で頒布する目的がない輸入は対象になりません。

侵害によって作成された物を情を知って頒布する行為は頒布の時に判断し、違法複製プログラムの業務上の使用は権原を取得した時に情を知っていた場合に限られます
113条1項2号は、侵害する行為によって作成された物(1号の輸入に係る物を含みます)を、情を知って、頒布し、頒布の目的をもって所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもって所持する行為を侵害とみなします。「情を知って」いるかどうかは頒布などの行為の時点で見るので、仕入れた時は海賊版と知らなかった小売業者でも、「海賊版であることを知った後も」許諾なしにそのDVDを販売できるという枝は誤りです。これに対して113条5項は、プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された複製物を業務上電子計算機において使用する行為について、その複製物を使用する権原を取得した時に情を知っていた場合に限って侵害とみなします。プログラムは一度導入すると業務に組み込まれて止めにくく、取得後に知った者まで侵害者にすると酷だからです。入手した時に違法複製物と「知らなかった場合でも、著作権侵害とみなされる」という枝は誤りです。この項は平成30年度の枝が出た当時は113条2項でしたが、令和2年改正でリーチサイトの規定が2項から4項に入ったため、現在は5項です。なお、海賊版と知らずに譲り受けた者については113条の2が(映画の著作物の複製物は除かれます)、譲渡を受けた時に26条の2第2項各号のいずれにも該当しないことを知らず、かつ知らないことにつき過失がない者が公衆に譲渡する行為を、譲渡権を侵害する行為でないものとみなします。

情を知っていた時点の違い
| 行為 | 基準時 | 条文 |
|---|---|---|
| 海賊版の頒布・頒布目的の所持・業としての輸出 | 頒布などの行為の時に情を知っていること | 113条1項2号 |
| 違法複製プログラムの業務上の使用 | 複製物を使用する権原を取得した時に情を知っていたこと | 113条5項 |
| 海賊版と知らずに譲り受けた者の公衆への譲渡 | 譲渡を受けた時に善意無過失なら譲渡権侵害でないものとみなす | 113条の2 |
リーチサイトやリーチアプリで侵害著作物等の利用を容易にする行為は、令和2年改正で侵害とみなされるようになりました
113条2項は、侵害著作物等(著作権、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等)のURLなどの送信元識別符号等を提供して他人による利用を容易にする行為(侵害著作物等利用容易化)を、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するウェブサイト等(1号イ)や主として侵害著作物等の利用のために用いられるウェブサイト等(1号ロ)、同じ性質のプログラム(2号)において行うときは、侵害著作物等であることを知っていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合に、侵害とみなします。違法にアップロードされた著作物のURLのリンク集で、利用を促す文言を表示しURLを強調して「公衆を侵害著作物に殊更に誘導するウェブサイトを用いて」利用を容易にする行為は、侵害著作物であることを知って行われた場合に侵害とみなされるという枝は正しいです。3項は、そのウェブサイト等の公衆への提示やプログラムの公衆への提供等を行っている者が、他人による侵害著作物等利用容易化を放置する行為を侵害とみなします。刑事罰は、リンクを提供した者が120条の2第3号、リーチサイトの公衆への提示を行った者が119条2項4号で、いずれも123条1項の親告罪に含まれます。リーチサイトの提示の罪について「告訴がなくても公訴を提起することができる」という枝は誤りです。
技術的保護手段を回避して行う複製は私的使用から除かれ、技術的利用制限手段の回避は視聴するだけでも侵害とみなされます
技術的保護手段(2条1項20号)はコピーガードのように著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段で、技術的利用制限手段(2条1項21号)はアクセスコントロールのように著作物等の視聴を制限する手段です。どちらも電磁的方法によるもので、権利者の意思に基づかずに用いられているものは除かれます。技術的保護手段については、その回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行う場合が30条1項2号で私的使用のための複製から除かれます。複製に使う機器が私的録音録画補償金の対象であっても、技術的保護手段を回避して行われる複製は私的使用のための複製にあたりません。技術的利用制限手段については、113条6項がその回避を行う行為そのものを、研究又は技術の開発の目的上正当な範囲内で行われる場合その他著作権者等の利益を不当に害しない場合を除いて侵害とみなします。回避した後に複製するかどうかは問わないので、「回避行為の後、当該著作物を視聴するだけであったとしても」侵害とみなされるという枝は正しいです。以前は視聴を制限する手段の回避は著作権法の対象ではなく不正競争防止法だけで扱われていましたが、平成30年改正で技術的利用制限手段が著作権法に入りました。7項は、回避を行うことをその機能とする指令符号を公衆に譲渡等する行為を侵害とみなし、120条の2第1号・2号は回避装置や回避プログラムの公衆への譲渡等と、業として公衆からの求めに応じて回避を行う行為を処罰します。

- 技術的保護手段(2条1項20号)著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段です。回避してした複製は私的使用に当たらず(30条1項2号)、回避の指令符号の提供は侵害とみなされます(113条7項)
- 技術的利用制限手段(2条1項21号)著作物等の視聴を制限する手段です。回避を行う行為自体が侵害とみなされます(113条6項)
- 刑事罰(120条の2第1号・2号・4号)回避装置・回避プログラムの公衆への譲渡等、業として公衆からの求めに応じた回避、7項の指令符号の提供が対象です
権利管理情報の虚偽付加・除去・改変は侵害とみなされますが、刑事罰は営利を目的とする場合に限られ、人格権侵害罪からも除かれます
権利管理情報(2条1項22号)は、著作物等や権利者を特定する情報や利用の許諾の条件に関する情報のうち、電磁的方法により著作物等とともに記録され又は送信され、電子計算機による権利の管理に用いられているものです。113条8項は、権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為(1号)、権利管理情報を故意に除去し又は改変する行為(2号)、それらが行われた複製物を情を知って頒布等し又は情を知って公衆送信等する行為(3号)を侵害とみなします。これに対する刑事罰は120条の2第5号で、営利を目的として行った場合だけが対象です。音楽CDの権利管理情報を除去する行為は「営利目的がなければ、刑事罰の対象とならない」という枝は正しいです。また119条2項1号の著作者人格権・実演家人格権侵害の罪は、8項により人格権を侵害するとみなされる行為を除いています。平成26年度の枝が出た当時は113条3項で、令和2年改正で8項になりました。
著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は著作者人格権の侵害とみなされ、改変は要りませんが著作物の利用は要ります
113条11項は、著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為を、著作者人格権を侵害する行為とみなします。公表権・氏名表示権・同一性保持権のどれにも当たらない利用、たとえば芸術作品を改変せずにそのまま風俗営業の看板に使うような場合に、著作者の社会的な評価が傷つくのを防ぐ規定です。改変は要件でないので、「その利用が著作物の改変を伴わない場合には、著作者人格権の侵害とみなされることはない」という枝は誤りで、利用行為が「著作者の社会的・外部的な評価の低下をもたらす場合」に人格権の侵害とみなされるという枝は正しいです。展示のように改変を伴わない利用も、名誉又は声望を害する方法であればみなし侵害になります。一方で「その著作物を利用する行為」であることは要件なので、他人の論文について「著作者名とタイトルのみを挙げて批判をした結果」名誉又は声望を害しても、論文という著作物を利用していないので侵害とはみなされず、この枝は誤りです。11項の行為は119条2項1号の人格権侵害の罪から除かれていないので、名誉又は声望を害する利用についての「著作者人格権のみなし侵害は、刑事罰の対象ではない」という枝は誤りです。この項は平成26年度には6項、令和元年度には7項でしたが、令和2年改正で11項になりました。10項は、国内頒布目的商業用レコードと同一の国外頒布目的商業用レコードを情を知って国内頒布の目的で輸入等する行為(還流レコード)を、権利者の利益が不当に害されることとなる場合に限って侵害とみなします。
著作権法113条1項1号国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
著作権法113条1項2号著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為
著作権法113条5項プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第四十七条の三第一項の規定により作成された複製物並びに第一項第一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第一項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。
著作権法113条6項技術的利用制限手段の回避(技術的利用制限手段により制限されている著作物等の視聴を当該技術的利用制限手段の効果を妨げることにより可能とすること(著作権者等の意思に基づいて行われる場合を除く。)をいう。次項並びに第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)を行う行為は、技術的利用制限手段に係る研究又は技術の開発の目的上正当な範囲内で行われる場合その他著作権者等の利益を不当に害しない場合を除き、当該技術的利用制限手段に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
著作権法113条11項著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。
試験ではこう問われる
- 海賊版の輸入(113条1項1号)は国内頒布の目的があり、「輸入の時」に国内で作成したら侵害となる物が対象。「存続期間が満了した後に国内で販売するために輸入した」行為は侵害とみなされるという枝は誤り。「作成の時」と書いた枝も誤り
- 情を知っての頒布(113条1項2号)は頒布の時に判断する。仕入れ時に善意でも「海賊版であることを知った後も」販売できるという枝は誤り
- 違法複製プログラムの業務上の使用(113条5項)は使用する権原を取得した時に情を知っていた場合に限り侵害とみなされる。入手時に「知らなかった場合でも、著作権侵害とみなされる」という枝は誤り。旧法の枝では2項として出る
- リーチサイト・リーチアプリ(113条2項・3項、令和2年改正)は「公衆を侵害著作物に殊更に誘導するウェブサイトを用いて」利用を容易にする行為で、悪意又は知ることができた相当の理由があれば侵害とみなされる。その罪は親告罪で「告訴がなくても公訴を提起することができる」という枝は誤り
- 技術的保護手段の回避による複製は私的使用から除かれる(30条1項2号)。補償金の対象機器を使っても私的使用にはあたらない
- 技術的利用制限手段の回避(113条6項、平成30年改正)は「回避行為の後、当該著作物を視聴するだけであったとしても」侵害とみなされる
- 権利管理情報の除去・改変(113条8項)の刑事罰は営利目的に限る(120条の2第5号)。「営利目的がなければ、刑事罰の対象とならない」という枝は正しい
- 名誉又は声望を害する方法による利用(113条11項)は改変を伴わなくてもみなし侵害で、刑事罰の対象。ただし「著作者名とタイトルのみを挙げて批判をした結果」名誉を害しても著作物を利用していないので当たらない
この用語が問われた枝
日本の著作権の存続期間中に国外で著作権者に無断で複製された映画の DVD を、著作権の存続期間が満了した後に国内で販売するために輸入した日本の業者の行為は、著作権侵害とみなされる。
プログラムの著作物の違法複製物の所有者がそのプログラムを業務上使用する行為は、当該複製物を入手したときに、それが違法に作成されたものであることを知らなかった場合でも、著作権侵害とみなされる。
著作物が違法にアップロードされているウェブサイトのアドレス(URL)のリンク集であって、その利用を促す文言を表示し、その URL を強調し、公衆を侵害著作物に殊更に誘導するウェブサイトを用いて、侵害著作物の他人による利用を容易にする行為は、侵害著作物であることを知って行われた場合、当該侵害著作物に係る著作権を侵害する行為とみなされる。
侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等(いわゆるリーチサイト)の公衆への提示を対象とした罪については、告訴がなくても公訴を提起することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。