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著作物性(思想又は感情の創作的表現・例示・権利の目的とならない著作物、2条1項1号・10条・13条)ちょさくぶつせい

著作権・不正競争防止法 第1章 著作物と著作者 短答で107枝

著作物性とは、ある表現物が著作権法2条1項1号の「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に当たり、著作権法の保護を受けられる性質です。10条1項はその例示で、13条は法令や判決のように権利の目的とならない著作物を定めます。

友人が書いた短い交通標語と、写真家が構図を考えて撮った一枚の写真があるとします。どちらも人が作ったものですが、著作権法が守るのは「思想又は感情を創作的に表現したもの」だけです。誰が書いても同じになる標語や、機械が自動で撮った映像まで独占させると、ほかの人が同じ表現を使えなくなり、文化の発展という法の目的に反するからです。著作物性は、その表現物が著作権法の入口を通れるかを決める最初の関門で、保護の対象になるかならないかを分けます。

裁判所の法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判官」)で法壇に座り、左手に「ありふれた交通標語」と書かれた1枚の紙、右手に「撮影者が構図を選んだ写真」と書かれた写真を持って見比べている。向かいに原告の男性(札「原告」)が立ち、吹き出し「どちらも

著作物は思想又は感情を創作的に表現したものであり、作成者の個性が何らかの形で表れていれば足りますが、ありふれた表現や機械的な再現は創作性を欠きます

2条1項1号は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定めます。創作性は高度な芸術性を求めるものではなく、作成者の個性が何らかの形で表れていれば足ります。反対に、誰が作っても同じようになる表現には個性が表れないので、「ありふれた交通標語は、著作物として保護されない」という枝は正しいです。東京タワーの高さを述べただけの文も事実をありふれた言い回しで伝えたにすぎないので、「という文章は、著作物ではない」という枝は正しいです。写真では被写体の選択、構図、光量、シャッターチャンスなどに撮影者の個性が表れる必要があるので、「ポスターを忠実に撮影したにすぎない写真は、写真の著作物として保護されない」という枝と「固定式の防犯カメラで撮影した写真は、著作物には当たらない」という枝はいずれも正しいです。航空写真を一定の技術的基準で補正する作業も誰が行っても同じ結果になるので、「地図と同じ投影法になるように補正したものは、著作物となる」という枝は誤りです。

写真館の店先の場面。先生が先生役(札「先生」)で、壁に並んだ3枚の額を指し棒で示している。左の額に「固定式の防犯カメラの映像」、中央の額に「ポスターを忠実に撮影した写真」、右の額に「撮影者が被写体と構図を選んだ写真」の札。左と中央の額には×
  • 思想又は感情人の考えや気持ちが元になっていることです。単なる事実やデータそのものは当たりません
  • 創作的に作成者の個性が何らかの形で表れていることです。ありふれた表現、機械的な再現、技術的基準どおりの処理は当たりません
  • 表現したもの外に表された具体的な表現が対象で、アイデアや着想そのものは対象になりません
  • 文芸、学術、美術又は音楽の範囲知的・文化的な精神活動の所産であることを広く言う要件で、実用品や技術文書を直ちに外す趣旨ではありません

保護されるのは表現なので、アイデアやキャラクターそのもの、プログラム言語・規約・解法、事実の伝達にすぎない雑報には権利が及びません

著作権法が守るのは具体的な表現であり、その背後にあるアイデアや設定は誰でも使えます。判例は、漫画の具体的な絵や文章を離れたキャラクターそのものを著作物とは認めません(ポパイネクタイ事件)。登場人物の名前を文字で書いただけでは漫画の表現を再製したことにならないので、「漫画の著名なキャラクターの名称のみを、Tシャツの身頃全面にゴシック体で大書して販売する行為」が漫画の著作権の侵害になるという枝は誤りです。プログラムの著作物についても、10条3項はそれを作るために用いるプログラム言語、規約及び解法に保護が及ばないと定めます。プログラム言語は表現の手段そのものだからで、「新たに作成された独創的なプログラム言語は、著作物となる」という枝は誤りです。また10条2項は、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、言語の著作物には該当しない」と明文で確認しているので、この枝は正しいです。

10条1項の例示は限定列挙ではなく、物への固定が要るのは映画の著作物だけなので、即興のダンスも列挙にない表現物も著作物になります

10条1項は言語、音楽、舞踊又は無言劇、美術、建築、図形、映画、写真、プログラムの九つを「例示すると、おおむね次のとおり」として掲げています。例示なので、どれにも当てはまらない表現物でも2条1項1号を満たせば著作物になり、「例示規定に列挙された著作物に該当しない表現物は、著作物として保護し得ない」という枝は誤りです。物への固定を要件にしているのは2条3項の映画の著作物だけで、言語や舞踊の著作物に固定は要りません。そのため「即興のダンスで創作性のあるものは、著作物となる」という枝は正しいです。意匠法と著作権法は別の法律で、意匠登録を受けられるものを著作権の保護から外す規定はどちらにもありません。令和元年の意匠法改正で建築物が意匠登録の対象になったことを理由に「建築物について著作権法による保護を受けることはできなくなった」という枝は誤りです。

ダンススタジオの場面。先生が先生役(札「先生」)で、舞台の上で即興のダンスを踊るダンサーの男性(札「ダンサー」)を見ている。舞台の脇に「録画なし」と書かれた札と、止まったビデオカメラ。ダンサーの吹き出し「振付を紙にも映像にも残していません。

応用美術は美術工芸品に限らず美的鑑賞の対象となる創作性があれば保護されますが、一般住宅や印刷用書体には高い美的創作性が求められます

2条2項は「美術の著作物」に美術工芸品を含むと定めますが、これは含まれることを明らかにした規定で、それ以外の応用美術を一律に外すものではありません。量産される実用品でも美的鑑賞の対象となり得る創作性を備えれば美術の著作物として保護され得るので、「応用美術作品は、美術工芸品を除き、美術の著作物として保護されない」という枝は誤りです。一方で、実用性の強いものには一段高い創作性が求められます。一般住宅が建築の著作物になるには建築芸術といえる美術性が要るとされ(グルニエ・ダイン事件)、「通常加味される程度の美的創作性を備えていれば、建築の著作物として保護される」という枝は誤りです。印刷用書体は、従来の書体に比べて顕著な特徴を持つ独創性と、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性の両方を備えて初めて著作物になります(ゴナ書体事件)。「美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなくても、独創性を備えていれば、著作物に当たる」という枝は誤りです。

建築事務所の場面。先生が先生役(札「先生」)で、机の上の2つの模型を指し棒で示している。左の模型に「一般的な注文住宅」の札、右の模型に「建築芸術といえる美術館」の札。机の端に「美術工芸品の絵皿」と「量産される実用品」の2つの品が並び、どちら

13条は法令・告示・判決と国等が作成する翻訳物・編集物だけを権利の目的から外すので、判決に載った詩や民間の翻訳は保護されます

13条は、憲法その他の法令(1号)、国や地方公共団体の機関などが発する告示、訓令、通達(2号)、裁判所の判決、決定、命令及び審判など(3号)、そしてこれらの翻訳物及び編集物で国や地方公共団体の機関、独立行政法人、地方独立行政法人が作成するもの(4号)を、著作権の目的とならないとしています。国民に広く知らせるべき公の文書を独占させない趣旨です。対象は条文に書かれたものに限られるので、法令を民間の出版社が翻訳した翻訳物や、白書、国土地理院の地図は通常どおり保護されます。権利の目的とならないのは判決そのものであって、判決に引用された詩が独立の著作物として受ける保護まで失うわけではないので、「たとえ判決とは無関係に利用する場合であっても、著作権法上の問題を生じない」という枝は誤りです。

著作権法2条1項1号

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作権法10条1項・2項

この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

著作権法13条

次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
一 憲法その他の法令
二 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
三 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
四 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの

試験ではこう問われる

  1. 創作性は個性が表れていれば足りる。「ありふれた交通標語は、著作物として保護されない」という枝は正しく、東京タワーの高さを述べただけの文章も著作物ではない
  2. 忠実な撮影・機械的な撮影は写真の著作物にならない。「固定式の防犯カメラで撮影した写真は、著作物には当たらない」という枝は正しく、航空写真の投影補正で著作物が生じるという枝は誤り
  3. キャラクターそのものは著作物でない(ポパイネクタイ事件)。名称のみをTシャツに大書しても漫画の著作権侵害にならない
  4. プログラム言語・規約・解法には保護が及ばない(10条3項)。「新たに作成された独創的なプログラム言語は、著作物となる」という枝は誤り
  5. 10条1項は例示。列挙にない表現物も著作物になり得るので、「例示規定に列挙された著作物に該当しない表現物は、著作物として保護し得ない」という枝は誤り
  6. 固定が要るのは映画の著作物だけ(2条3項)。「即興のダンスで創作性のあるものは、著作物となる」という枝は正しい
  7. 応用美術は美術工芸品に限らない。一般住宅には建築芸術性、印刷用書体には独創性と美的特性の両方が要る。意匠登録の対象になったことを理由に著作権の保護が無くなるという枝は誤り
  8. 13条は法令・判決と国等が作成する翻訳物・編集物まで。判決に載った詩を判決と無関係に利用すれば著作権の問題になるので、問題を生じないという枝は誤り

この用語が問われた枝

平成30年度 問56 枝イ正しい

ありふれた交通標語は、著作物として保護されない。

令和3年度 問51 枝ロ正しい

「東京タワーは333メートルである。」という文章は、著作物ではない。

平成30年度 問56 枝ハ正しい

交通標語が記載されたポスターを忠実に撮影したにすぎない写真は、写真の著作物として保護されない。

令和元年度 問51 枝ホ正しい

固定式の防犯カメラで撮影した写真は、著作物には当たらない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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