著作者の認定と著作者の推定(2条1項2号・14条・17条・75条・6条)ちょさくしゃのにんていとちょさくしゃのすいてい
著作者の認定とは、著作物を創作する者(2条1項2号)を創作という事実によって定めることで、著作者は著作者人格権と著作権を何らの方式も要せず享有します(17条)。著作者の推定とは、原作品や公衆への提供・提示の際に実名又は周知の変名が著作者名として通常の方法により表示されている者を著作者と推定する仕組み(14条)で、実名の登録にも同じ推定があります(75条3項)。
有名人の名前で出た本を実はライターが書いていたという話は珍しくありません。契約で名義を決め、お金も払ったのだから名義人が著作者だと言いたくなりますが、著作権法では著作者は「著作物を創作する者」であり、誰が創作したかという事実で決まります。特許のように出願して登録する手続はなく、創作した瞬間に著作者人格権と著作権が生まれます。ただし、何年も後に誰が創作したかを証明するのは大変なので、作品に著作者として名前が表示されている人をひとまず著作者と推定して、争う側に反証を求める仕組みが用意されています。

著作者は著作物を創作する者であり、依頼・資金提供・名義の合意や報酬では著作者になりません
2条1項2号は著作者を「著作物を創作する者」と定めます。誰が著作者かは創作という事実で決まり、当事者の合意や報酬で創作していない者を著作者にすることはできません。芸能人甲がライター乙に書かせた小説について「甲を著作者とする旨の合意があり、かつ著作権の対価相当の報酬が乙に支払われた場合には、甲が著作者となる」という枝は誤りです。表現の創作に実質的に関与しない者も著作者になりません。インタビューで情報を提供し校正で事実誤認を直しただけの歌手ではなく「乙が著作者となる」という枝は正しく、誤字を指摘しただけの上司が「当該記事の共同著作者となる」という枝は誤りです。資金を出した人や依頼した企業も同じで、銅像の作成を委ねて多額の資金を提供した甲が「当該銅像の著作者とならない」という枝、広告のストーリーを依頼した企業が「そのストーリーの著作者とはならない」という枝はいずれも正しいです。17条1項により著作者は著作者人格権と著作権を享有し、2項によりその享有にはいかなる方式の履行も要しません。

14条は実名又は周知の変名が著作者名として通常の方法により表示されている者を著作者と推定しますが、周知でない筆名では働かず、推定されるのは著作者であることだけです
14条は、著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、実名又は変名として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者を、その著作物の著作者と推定します。「著作物の原作品に、その氏名が著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定される」という枝は正しいです。数百人の聴衆の前での演奏は公衆への提示なので、そのプログラムに作曲者として氏名が書かれていた甲が「当該楽曲の著作者として推定される」という枝も正しいです。変名は周知のものに限られるので、原作品に表示しても「周知でない筆名を表示するのであっても、その者について著作者の推定を受けることができる」という枝は誤りです。推定の対象は著作者であることで、譲渡によって別人に移り得る著作権の帰属までは推定しません。原作品に実名が表示されている者が「その著作物の著作権を有する者と推定される」という枝は誤りです。

実名の登録を受けた者も著作者と推定されますが、みなされるのではなく、登録に係る作品が著作物であることも推定されません
無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず実名の登録を受けることができ(75条1項)、実名の登録がされている者は当該登録に係る著作物の著作者と推定されます(75条3項)。「登録がなされるとその者が著作者と推定される」という枝は正しいです。これも推定なので反証で覆り、「当該登録に係る著作物の著作者とみなされる」という枝は誤りです。推定の範囲も著作者であることに限られ、「著作権法において保護される著作物であると推定される」という枝は誤りです。対照的に、職務上作成するプログラムの著作物について15条2項は法人等を著作者「とする」と定めており、これは推定規定ではありません。「別段の定めがない限り、その法人等と推定される」という枝は誤りです。
- 14条(著作者名の表示)実名又は周知の変名の表示で著作者と推定します。周知でない変名では働きません
- 75条3項(実名の登録)登録を受けた者を著作者と推定します。著作権者や著作物であることは推定しません
- 15条2項(職務上のプログラム)別段の定めがない限り法人等を著作者とします。推定ではありません
日本国民の著作物は発行の有無や場所を問わず保護され、最初に国内で発行された著作物と条約により保護の義務を負う著作物も保護されます
6条は、この法律の保護を受ける著作物を、日本国民の著作物(1号)、最初に国内において発行された著作物(2号)、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物(3号)と定めます。日本国民には日本の法令に基づいて設立された法人と国内に主たる事務所を有する法人が含まれます。1号は国籍だけで足りるので、日本国民の著作物は未発行でも国外で発行されても保護され、「日本国内で発行されない限り、わが国の著作権法による保護を受けることはできない」という枝は誤りです。2号は国外で最初に発行されても発行の日から30日以内に国内で発行されたものを含みます。3号があるので、ベルヌ条約などの同盟国民の著作物は1号にも2号にも当たらなくても保護され、「日本国において著作権法による保護を受けることができない」という枝は誤りです。
著作権法2条1項2号著作者 著作物を創作する者をいう。
著作権法14条著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。
著作権法17条2項著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
著作権法75条3項実名の登録がされている者は、当該登録に係る著作物の著作者と推定する。
試験ではこう問われる
- 著作者は創作した者。名義の合意と報酬があっても芸能人甲は著作者にならず、ライター乙が著作者。資金提供者・依頼企業・モデルも著作者でない
- 情報提供や校正、誤字の指摘だけでは著作者・共同著作者にならない
- 14条は「推定」。原作品への実名表示、コンサートのプログラムへの作曲者名の表示で著作者と推定される
- 周知でない筆名では推定が働かない。推定されるのは著作者であることで、「著作権を有する者と推定される」という枝は誤り
- 実名の登録(75条3項)も著作者の推定にとどまる。「著作者とみなされる」「著作物であると推定される」という枝は誤り
- 15条2項のプログラムは法人等を著作者「とする」規定で推定ではない
- 著作者人格権と著作権の享有に方式は要らない(17条2項)
- 日本国民の著作物は未発行・国外発行でも保護(6条1号)。条約で保護義務を負う著作物も保護される(6条3号)
この用語が問われた枝
雑誌記事の執筆を引き受けた甲は、職場の上司乙に当該記事の原稿を見せたところ、乙から誤字について指摘されたので、当該誤字を修正した。乙は、当該記事の共同著作者となる。
甲は、自らの立ち姿を模した銅像の作成を乙に委ね、乙はこれを引き受けた。甲が乙に多額の資金を提供していた場合でも、甲は当該銅像の著作者とならない。
小説家がある企業の依頼を受けて、当該企業の映像広告に使われるストーリーを創作する場合、当該企業は、そのストーリーの著作者とはならない。
著作物の原作品に、その氏名が著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定される。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。