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刑事罰と親告罪(119〜124条)けいじばつとしんこくざい

著作権・不正競争防止法 第7章 侵害と救済(著作権法) 短答で26枝

刑事罰とは、著作権法119条から124条までが著作権等の侵害や法の違反に対して定める罰則で、著作権・出版権・著作隣接権の侵害罪(119条1項)、著作者人格権・実演家人格権の侵害罪(119条2項1号)、違法ダウンロードの罪(119条3項)、60条違反の罪(120条)、著作者名の詐称(121条)などがあります。親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起することができない罪で、123条1項が119条1項から3項までの罪などを親告罪とし、2項が一定の海賊版行為を非親告罪としています。

海賊版を売る業者に対して、権利者は差止めや損害賠償を求められますが、民事の手当てだけでは組織的な侵害は止まりません。そこで著作権法は119条以下に罰則を置き、著作権等の侵害を犯罪としています。ただし、著作権は私人の財産であり、侵害を公にしたいかどうかは権利者の判断に委ねるのが筋なので、侵害罪は原則として告訴がなければ公訴を提起できない親告罪です。平成30年のTPP整備法で、権利者の利益を大きく損なう海賊版行為に限って非親告罪になりました。

警察署の相談窓口の場面。先生が警察官役(札「警察官」)でカウンターの内側に座り、カウンターの外に漫画家の男性(札「著作権者」)が「海賊版の漫画がネットで売られています。告訴しないと捜査できませんか」の吹き出しで、「海賊版」と札のついた本を差

著作権等の侵害罪は10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金で、人格権の侵害罪は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金です

119条1項は、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者を10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又は併科します。私的使用の目的で自ら複製した者と、113条2項・3項・6項から8項まで・10項のみなし侵害を行った者は1項から除かれ、別の号や条で扱われます。2項は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金で、著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(1号。113条8項の権利管理情報のみなし侵害を除きます)、営利を目的として自動複製機器を侵害となる複製に使用させた者(2号)、113条1項の海賊版の輸入・頒布のみなし侵害を行った者(3号)、リーチサイトの公衆への提示を行った者(4号)、リーチアプリの公衆への提供等を行った者(5号)、113条5項の違法複製プログラムの業務上の使用を行った者(6号)が対象です。著作者は人格権の侵害に対して差止めや損害賠償を請求でき、「その侵害行為に対しては刑事罰の規定が適用される場合もある」という枝は正しいです。2項1号が除くのは113条8項のみなし侵害だけなので、名誉又は声望を害する方法による利用(113条11項)についての「著作者人格権のみなし侵害は、刑事罰の対象ではない」という枝は誤りです。3項は私的使用の目的でする違法ダウンロードの罪で、有償で提供されている音楽・映像を侵害と知りながらデジタル方式で録音・録画した者(1号)と、令和2年改正で加わった、有償の著作物全般を侵害と知りながらデジタル方式で複製する行為を継続的に又は反復して行った者(2号。軽微なものと著作権者の利益を不当に害しない特別な事情がある場合を除きます)を2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金に処します。4項・5項は、重大な過失により知らなかった者を含むと解釈してはならないと定めます。令和4年改正で懲役は拘禁刑に改められました。

  • 119条1項著作権・出版権・著作隣接権の侵害です。10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又は併科です
  • 119条2項人格権の侵害(113条8項のみなし侵害を除く)、営利目的の自動複製機器の使用、113条1項・5項のみなし侵害、リーチサイト・リーチアプリです。5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科です
  • 119条3項私的使用目的の違法ダウンロードです。2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又は併科です。重大な過失による場合は含みません
  • 120条60条・101条の3(著作者・実演家の死後の人格的利益)の違反です。500万円以下の罰金です
  • 120条の2回避装置・回避プログラムの提供(1号)、業としての回避(2号)、リーチサイトでのリンク提供(3号)、指令符号の提供(4号)、営利目的の権利管理情報の改変等(5号)、営利目的の還流レコード(6号)です。3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又は併科です
  • 121条・122条著作者名を詐称した複製物の頒布は1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、48条の出所明示違反は50万円以下の罰金です

119条1項から3項までの罪は親告罪ですが、対価目的又は権利者の利益を害する目的で有償著作物等を原作のまま公衆に譲渡・公衆送信する場合は非親告罪です

123条1項は、119条1項から3項まで、120条の2第3号から6号まで、121条の2及び122条の3第1項の罪を、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪とします。平成30年12月30日に施行されたTPP整備法による改正で、123条2項が加わり、有償著作物等(有償で公衆に提供され又は提示されている著作物又は実演等)について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し又は原作のまま公衆送信を行うこと(1号)、そのために複製すること(2号)を、その対価として財産上の利益を受ける目的又は有償著作物等の提供等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的で行い、かつ権利者の利益が不当に害されることとなる場合に限って、119条1項の罪を非親告罪としました。海賊版の販売のような悪質な行為だけを取り出したもので、二次創作や引用のような原作のままでない利用は対象外です。したがって、この改正によって「著作権侵害罪はすべて、非親告罪となった」という枝は誤りです。リーチサイトの公衆への提示の罪は119条2項4号で、123条1項の親告罪に含まれるので、この罪について「告訴がなくても公訴を提起することができる」という枝は誤りです。無名又は変名の著作物については、123条4項により発行者が告訴をすることができます(著作者の変名が周知の場合、実名の登録がある場合、告訴が著作者の明示した意思に反する場合を除きます)。

検察庁の執務室の場面。先生が検察官役(札「検察官」)で机の前に立ち、壁の大きな掲示板を指し棒で示している。掲示板は左右二つに分かれ、左の見出し「親告罪(告訴がなければ公訴を提起できない)」の下に札「119条1項〜3項:侵害罪・人格権侵害罪・
  • 親告罪(123条1項)119条1項〜3項(侵害罪・人格権侵害罪・違法ダウンロード)、120条の2第3号〜6号(リーチサイトのリンク提供、指令符号、権利管理情報、還流レコード)、121条の2、122条の3第1項です
  • 非親告罪となる場合(123条2項)対価目的又は権利者の利益を害する目的で、有償著作物等を原作のまま公衆に譲渡・公衆送信し、又はそのために複製し、権利者の利益が不当に害されることとなる場合の119条1項の罪です
  • もともと非親告罪120条(60条違反)、120条の2第1号・2号(回避装置の提供・業としての回避)、121条(著作者名の詐称)、122条(出所明示違反)です

60条違反の罪、回避装置の提供、著作者名の詐称は親告罪ではなく、告訴がなくても公訴を提起できます

120条は、著作者又は実演家の死後に人格的利益を害する行為を禁じる60条・101条の3に違反した者を500万円以下の罰金に処します。この罪は123条1項に挙げられていないので非親告罪です。死後には告訴をする著作者本人がおらず、遺族がいない場合もあるからです。法人が著作者の著作物について、法人が解散した後にその意に反する改変をして頒布する者には、116条の遺族に当たる者がいないので差止請求はされませんが、「刑事罰については告訴がなくとも公訴を提起することができる」という枝は正しいです。121条は、著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者を1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し、これも非親告罪です。著作者でない者の実名を「著作者名として表示した著作物の複製物を頒布する行為は、刑事罰の対象となる」という枝は正しいです。120条の2第1号・2号は、技術的保護手段・技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とする装置やプログラムの複製物を公衆に譲渡等する行為と、業として公衆からの求めに応じて回避を行う行為を、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処します。回避そのものを処罰するのは業として公衆の求めに応じた場合だけなので、友人に頼まれて一度だけコピー・プロテクションを解除した者に刑事罰は科されません(回避されたことを知りながらした依頼者の複製は、30条1項2号により私的使用に当たらず複製権を侵害します)。

書店の店先の場面。先生が書店員役(札「書店員」)で、平台に「著作者名を詐称した複製物(著作者でない有名作家の実名を表示)」と札のついた本が積まれている。客の男性(札「客」)が「作者はもう亡くなっていて遺族もいないなら、誰も告訴できないから罪

権利管理情報の改変と還流レコードの罪は営利を目的とする場合に限られ、法人には両罰規定で3億円以下の罰金が科されます

120条の2第5号・6号は、権利管理情報に関するみなし侵害(113条8項)と還流レコードのみなし侵害(113条10項)を営利を目的として行った者を処罰します。民事上は営利目的がなくても侵害とみなされますが、刑事罰は営利目的に限られるので、音楽CDの権利管理情報を除去する行為は「営利目的がなければ、刑事罰の対象とならない」という枝は正しいです。124条は両罰規定で、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、119条1項・2項3号から6号まで・122条の3第1項の違反については法人に3億円以下の罰金刑を、119条2項1号・2号や120条から121条の2まで・122条の違反については各本条の罰金刑を科します。行為者に対してした告訴やその取消しは法人に対しても効力を生じ、法人に対してしたものは行為者にも効力を生じます(124条3項)。

著作権法119条1項

著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

著作権法119条2項1号

著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第八項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)

著作権法123条1項

第百十九条第一項から第三項まで、第百二十条の二第三号から第六号まで、第百二十一条の二及び前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

著作権法123条2項

前項の規定は、次に掲げる行為の対価として財産上の利益を受ける目的又は有償著作物等の提供若しくは提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的で、次の各号のいずれかに掲げる行為を行うことにより犯した第百十九条第一項の罪については、適用しない。

試験ではこう問われる

  1. 著作権侵害罪(119条1項)は原則として親告罪。TPP整備法で「著作権侵害罪はすべて、非親告罪となった」という枝は誤りで、非親告罪は対価目的又は権利者の利益を害する目的で有償著作物等を原作のまま公衆に譲渡・公衆送信し、又はそのために複製する場合だけ(123条2項)
  2. リーチサイトの公衆への提示の罪(119条2項4号)は親告罪。「告訴がなくても公訴を提起することができる」という枝は誤り
  3. 著作者人格権の侵害には差止め・損害賠償に加えて「刑事罰の規定が適用される場合もある」(119条2項1号)。除かれるのは113条8項の権利管理情報のみなし侵害だけで、名誉又は声望を害する利用(113条11項)の「みなし侵害は、刑事罰の対象ではない」という枝は誤り
  4. 60条違反の罪(120条)は非親告罪。解散した法人の著作物の改変について「刑事罰については告訴がなくとも公訴を提起することができる」という枝は正しい
  5. 著作者名の詐称(121条)は刑事罰の対象で非親告罪。「著作者名として表示した著作物の複製物を頒布する行為は、刑事罰の対象となる」という枝は正しい
  6. 回避そのものの処罰は業として公衆からの求めに応じた場合に限る(120条の2第2号)。友人に頼まれて解除しただけの者に刑事罰は科されない
  7. 権利管理情報の除去・改変と還流レコードの刑事罰は営利目的に限る(120条の2第5号・6号)。「営利目的がなければ、刑事罰の対象とならない」という枝は正しい
  8. 両罰規定(124条)で法人には119条1項等の違反につき3億円以下の罰金。無名・変名の著作物は発行者が告訴できる(123条4項)。令和4年改正で懲役は拘禁刑

この用語が問われた枝

令和6年度 問54 枝ニ誤り

TPP11 整備法の施行に伴う著作権法改正によって、著作権侵害罪はすべて、非親告罪となった。

令和5年度 問53 枝ロ誤り

侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等(いわゆるリーチサイト)の公衆への提示を対象とした罪については、告訴がなくても公訴を提起することができる。

令和3年度 問53 枝ハ正しい

法人が著作者である著作物について、法人が解散した後、法人が存しているとすればその意に反する改変を行い、その改変した物を頒布する者に対して、差止請求がされることはないが、刑事罰については告訴がなくとも公訴を提起することができる。

令和4年度 問54 枝ニ正しい

著作者は、著作者人格権が侵害されている場合、その侵害行為に対して差止請求や損害賠償請求を行うことができ、また、その侵害行為に対しては刑事罰の規定が適用される場合もある。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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