私的使用のための複製(30条・49条)してきしようのためのふくせい
私的使用のための複製とは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときに、その使用する者が著作物を複製できるとする30条1項の権利制限です。公衆用の自動複製機器による複製、技術的保護手段の回避を知りながら行う複製、違法な自動公衆送信と知りながら行うデジタル方式の録音録画・複製は除かれ、作った複製物を目的外で頒布・公衆提示すれば49条で複製を行ったものとみなされます。
買った音楽 CD をスマートフォンに入れて通学中に聴く、テレビ番組を録画して家族で見る、といった複製は毎日のように行われています。複製は本来、複製権(21条)を持つ著作権者だけができる行為ですが、家庭の中の複製まで一つずつ許諾を取らせるのは現実的でなく、著作権者の利益を大きく損なうものでもありません。そこで30条1項は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使う目的のときは、その使用する者が自分で複製してよいと定めました。

30条1項は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使う目的のときに、その使用する者が複製することを認めます
要件は、私的使用の目的であることと、その使用する者が複製することの二つです。「限られた範囲内」は家庭内かそれに準ずる、人数が少なく親密なつながりのある範囲を指すので、友人に渡すための複製は入りません。個人が市販の音楽 CD を専ら友達のために複製する行為は、私的使用のための複製にあたりません。複製の方法は問わないので、CD から直接コピーしなくても、購入した CD と同じ楽曲を自分で演奏して録音すれば録音という複製(2条1項15号)であり、私的使用の目的なら30条1項の対象です。複製の主体が使用する者でなければならないので、販売目的の者が他人に指示して複製させた場合は、指示した者が複製の主体と評価され、その者について複製権の侵害が成立する可能性があります。
- 目的個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することです。友人・社内の会議のための複製は入りません
- 主体その使用する者が自ら複製することです。他人に複製させた場合は、その他人が複製の主体になることがあります
- 対象著作権の目的となっている著作物の複製です。翻訳・編曲・変形・翻案も47条の6第1項1号で認められます
- 除外公衆用の自動複製機器(1号)、技術的保護手段の回避を知りながら行う複製(2号)、違法な自動公衆送信と知りながら行うデジタル方式の録音録画(3号)・複製(4号)です
公衆用の自動複製機器による複製と、技術的保護手段の回避を知りながら行う複製は、私的使用の目的でも除かれます
30条1項1号は、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いる複製を除きます。店に置かれた機器で誰でも大量に複製できるようにすると、家庭内の複製という前提が崩れるからです。ただし、附則5条の2により、専ら文書又は図画の複製に使う機器は当分の間この自動複製機器に含めないとされているので、コンビニエンスストアなどに設置されているコイン式複写機を用いて私的使用の目的で書籍を複製する場合に、著作権者の許諾は要りません。2号は、技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行う場合を除きます。コピーガードを外した複製を家庭内だからと認めれば、技術的保護手段を設けた意味がなくなるからです。複製に使う機器や記録媒体が私的録音録画補償金の対象であっても、技術的保護手段を回避して行われる複製は私的使用のための複製にあたりません。コピー・プロテクションを友人に解除してもらい、それを知って携帯電話に複製した場合も同じです。一方で、刑事罰(120条の2第2号)が科されるのは、業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行った者なので、友人として一度解除しただけの者に刑事罰は科されません。

違法な自動公衆送信と知りながら行うデジタル方式の録音録画・複製も除かれますが、重過失で知らない場合や28条の権利だけの侵害は含まれません
30条1項3号は、著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(特定侵害録音録画)を、そのことを知りながら行う場合を除きます。以前は音楽と映像に限られていましたが、令和2年改正で4号が加わり、漫画や小説などすべての著作物のデジタル方式の複製(特定侵害複製)に広がりました。ただし4号には、複製される部分の割合や表示の精度に照らして軽微なものと、著作権者の利益を不当に害しない特別な事情がある場合を除くかっこ書があり、30条2項は、3号・4号について重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならないと定めています。さらに4号の「著作権」からは、翻訳以外の方法で創作された二次的著作物に係る28条の権利が除かれています。漫画 A のパロディである漫画 B が違法にアップロードされていると知りながら受信して「私的使用を目的としてデジタル方式で複製をする行為は」漫画 A の著作権の侵害には当たらないという枝は正しいです。漫画 B は漫画 A の二次的著作物で、漫画 A の著作者が持つのは28条の権利だからです。

私的使用の目的で作った複製物を頒布し、又は公衆に提示した者は、49条1項1号で複製を行ったものとみなされます
30条1項で適法に作った複製物でも、後から頒布したり公衆に提示したりすれば、私的使用という前提が崩れるので、49条1項1号はその時点で21条の複製を行ったものとみなします。みなされるのは複製物の頒布と公衆への提示に限られます。頒布は複製物を公衆に譲渡し又は貸与することです(2条1項19号)。購入した CD をハードディスクに複製した後、「その複製物を保存したままで」元の CD をインターネット・オークションで譲渡しても複製権侵害とみなされるという枝は誤りです。譲渡したのは適法に買った CD 自体で、複製物は頒布も公衆提示もされていないからです。同じく、音楽 CD を CD-R に複製した後に元の CD を中古業者に売り渡しても、複製物の頒布ではないので複製権の侵害にはなりません。複製した CD-R を友人一人に譲渡した場面でも、一人への譲渡は公衆への譲渡ではないので頒布に当たらず、譲渡権(26条の2第1項)も公衆に提供する権利ですから、譲渡権の侵害にもなりません。

私的録音録画補償金は著作権者に支払うもので、支払の有無は複製が30条1項で認められるかどうかとは別の問題です
30条3項は、政令で定めるデジタル方式の録音録画機器と記録媒体を使って私的使用のための録音又は録画を行う者に、相当な額の補償金を著作権者に支払う義務を課します。デジタル方式では劣化のない複製が繰り返せるので、複製を認める代わりに著作権者の損失を補うものです。補償金を受けるのは著作権者であり、102条1項の準用で実演家とレコード製作者も受けます。放送事業者は補償金を受ける側に入っていません。補償金は支払義務にすぎず、複製の適否を決める要件ではありません。補償金の支払がなされていない CD-R に家庭内で音楽を複製しても、著作権の侵害にはなりません。また、30条は著作権の制限であって著作者人格権に影響しません(50条)。自宅の絵画の原作品に「家庭内において利用することを目的とし」その利用する者が加筆しても著作者の権利の侵害となり得るという枝は正しいです。意に反する改変は同一性保持権(20条1項)の問題だからです。
著作権法30条1項柱書・1号著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
著作権法49条1項柱書・1号次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つたものとみなす。
一 第三十条第一項、第三十条の三、第三十一条第一項第一号、第二項第一号、第四項、第七項第一号若しくは第九項第一号、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項若しくは第四項、第三十五条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二本文(同条第二号に係る場合にあつては、同号。次項第一号において同じ。)、第四十一条、第四十一条の二第一項、第四十二条、第四十二条の二第一項、第四十二条の三、第四十二条の四、第四十三条第二項、第四十四条第一項から第三項まで、第四十七条第一項若しくは第三項、第四十七条の二又は第四十七条の五第一項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第一号又は第二号の複製物に該当するものを除く。)を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物の公衆への提示(送信可能化を含む。以下同じ。)を行つた者
著作権法50条この款の規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。
試験ではこう問われる
- 「限られた範囲内」は家庭内かそれに準ずる範囲。市販の CD を専ら友達のために複製する行為は私的使用のための複製にあたらない
- 複製の方法は問わない。自分で演奏して録音しても複製であり、私的使用の目的なら30条1項の対象になる
- コンビニのコイン式複写機は附則5条の2で当分の間自動複製機器に含まれず、「コイン式複写機を用いて」書籍を複製するのに許諾が要るという枝は誤り
- 技術的保護手段の回避を知りながら行う複製は除外(1項2号)。補償金の対象機器を使っても私的使用にはあたらない。友人が一度解除しただけでは業としてではないので刑事罰(120条の2第2号)の対象にならない
- 違法アップロードと知りながらのデジタル複製は除外(1項3号・4号)だが、4号の著作権から28条の権利(翻訳以外の二次的著作物)は除かれる。パロディ漫画のダウンロードが原作の著作権侵害に当たらないという枝は正しい。重過失で知らない場合は含まない(2項)
- 49条1項1号のみなし複製は私的複製物を頒布・公衆提示したとき。複製物を「保存したままで」元の CD を譲渡しても複製権侵害とみなされない。元 CD の売却が「目的外使用となり」侵害になるという枝は誤り
- 友人一人への CD-R の譲渡は公衆への譲渡ではないので、「譲渡権を侵害する」という枝は誤り。販売目的の乙が甲に複製させれば乙が複製の主体になる
- 補償金(30条3項)は著作権者・実演家・レコード製作者が受けるもので放送事業者は取得しない。補償金の支払がなされていない CD-R への家庭内の複製も侵害にならない。30条は著作者人格権に影響せず(50条)、家庭内でも原作品への加筆は同一性保持権の侵害となり得る
この用語が問われた枝
漫画Aの著作権を侵害してインターネット上にアップロードされている漫画Bが、漫画Aのパロディとして新たな創作性が加わっている作品である場合には、漫画Bが漫画Aの著作権を侵害してアップロードされていることを知りながらこれを受信して、私的使用を目的としてデジタル方式で複製をする行為は、漫画Aに関する著作権の侵害には当たらない。
自宅の居間に飾ってある絵画の原作品に加筆することは、家庭内において利用することを目的とし、その利用する者が加筆した場合であっても、著作者の権利の侵害となり得る。
購入した音楽 CDをパソコンのハードディスクに私的使用の目的で複製した後、その複製物を保存したままで、当該音楽 CDをインターネット・オークションによって公に譲渡した場合、複製権侵害とみなされる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。