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著作隣接権の総則(89条・2条1項3〜9号の3・101条・102条・103条)ちょさくりんせつけんのそうそく

著作権・不正競争防止法 第6章 著作隣接権 短答で32枝

著作隣接権とは、実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者が89条1項から4項までにより享有する権利のうち、実演家人格権と報酬・二次使用料を受ける権利を除いたものです(89条6項)。著作物を創作する者ではなく、著作物を公衆に伝達する実演・レコード・放送・有線放送という行為に与えられる権利で、その享有にはいかなる方式の履行も要しません(89条5項)。

歌手が歌を歌い、レコード会社がそれを録音し、放送局が流します。歌の著作者は作曲家ですが、歌手の歌い方、録音の手間、放送の設備がなければ、その歌は公衆に届きません。著作隣接権は、こうして著作物を伝える仕事をした人に、創作ではないけれど保護に値する行為として与えられる権利です。保護されるのは行為そのものなので、歌が著作物でなくても、波の音の録音でも、同じ番組の再放送でも権利が生じます。登録などの手続は要らず、実演や固定や放送をした時に自動的に始まります。

テレビ局のスタジオの場面。先生が先生役(札「先生」)で、舞台の脇に立ち指し棒で舞台の上を示している。舞台の左にシルクハットから鳩を出す手品師の男性(札「手品師」)、右に棒高跳びのバーを越える選手の男性(札「棒高跳び選手」)。手品師の札の下に

実演は著作物を演じなくても芸能的な性質があれば足り、実演家はアマチュアでも本人であり、職務著作のような規定はありません

実演とは、著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずることで、これに類する行為で著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含みます(2条1項3号)。手品は著作物を演じませんが芸能的な性質があるので、手品が「著作権法上の実演に該当し得る」という枝は正しく、テレビ番組でアマチュアとして手品を見せる出演者は「実演家としての著作隣接権を有する」という枝も正しいです。一方、棒高跳びの跳躍は記録を争う競技であって芸能的な性質がないので、「実演として著作隣接権により保護される」という枝は誤りです。実演家とは俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者で(2条1項4号)、職業かアマチュアかは問いません。著作物には法人等を著作者とする職務著作(15条)がありますが、実演にはそれに当たる規定がなく準用もされていないので、音楽教室に雇用されたピアニストが職務上行う実演について「その会社が実演家となり、原始的に著作隣接権を取得する」という枝は誤りです。

レコードは物に音を固定したもので音が著作物である必要はなく、放送は同じ番組の再放送にも新たに権利が生じます

レコードとは蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもので、音を専ら影像とともに再生することを目的とするものは除かれます(2条1項5号)。固定される音が著作物であることは要件でないので、電車の走行音を録音したレコードについて「著作隣接権は発生しない」という枝は誤りです。レコード製作者はその音を最初に固定した者で(6号)、「オルゴールに音を最初に固定した者も、レコード製作者に該当する」という枝は正しいです。個人が波の音を録音したものもレコードで、その個人はレコード製作者として著作隣接権を持ちますが、放送事業者への二次使用料は市販の目的をもって製作される商業用レコード(7号)を用いた放送に限られるので、市販の目的でない複製物を用いた放送について「二次使用料を請求することはできない」という枝は正しいです。風景の影像とともに音を再生する DVD は、音を専ら影像とともに再生するものとしてレコードから除かれます。放送とは公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的とする無線通信の送信で(8号)、放送事業者は放送を業として行う者です(9号)。権利は番組の内容ではなく個々の放送行為に生じるので、同一の番組を再度放送した場合に「当該再度の放送については、著作隣接権は発生しない」という枝は誤りです。保護を受ける放送(9条)には有線放送(9条の2)と違って他の放送を受信して行うものを除く限定がないので、放送局乙が甲の放送番組を受信して再放送した場合に「放送局乙は、再放送につき著作隣接権を取得する」という枝は正しいです。

  • 実演(2条1項3号)著作物を演ずること、又は著作物を演じないが芸能的な性質を有する類似の行為です
  • 実演家(4号)俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者と、実演を指揮し、又は演出する者です
  • レコード(5号)物に音を固定したもので、音を専ら影像とともに再生することを目的とするものは除きます
  • レコード製作者(6号)レコードに固定されている音を最初に固定した者です
  • 商業用レコード(7号)市販の目的をもって製作されるレコードの複製物です
  • 放送・有線放送(8号・9号の2)公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的とする無線通信・有線電気通信の送信です

著作隣接権の享有にはいかなる方式の履行も要せず、存続期間は実演時・音の最初の固定時・放送時に始まります

89条5項は、実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者の権利の享有にいかなる方式の履行も要しないと定めます。著作者の権利(17条2項)と同じ無方式主義なので、著作隣接権の発生には「文化庁への登録が必要である」という枝は誤りです。存続期間は101条1項により、実演はその実演を行った時、レコードはその音を最初に固定した時、放送はその放送を行った時、有線放送はその有線放送を行った時に始まります。実演の著作隣接権の存続期間が「その実演を最初に固定した時に始まる」という枝は誤りで、固定されない生の実演も実演の時から保護されます。レコードの存続期間が「そのレコードを発行した時に始まる」という枝は誤りで、発行は満了を計算する基準にすぎません。放送の存続期間が「その放送を行った時に始まる」という枝は正しいです。

横軸の時系列を3段に並べた図。先生が先生役(札「先生」)で3本の横軸の左に立ち、指し棒で示している。上の軸は札「実演を行った時:始期」から矢印が伸び、末尾に札「翌年から起算して70年で満了」。中の軸は札「音を最初に固定した時:始期」から矢印

存続期間は実演とレコードが70年、放送と有線放送が50年で、翌年から起算します

101条2項により、実演は実演が行われた日の属する年の翌年から起算して70年、レコードは発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年(最初の固定の翌年から70年の間に発行されなかったときは固定の翌年から70年)、放送と有線放送はそれぞれ行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時に満了します。平成30年12月30日施行の改正で実演とレコードが50年から70年に延びましたが、放送と有線放送は50年のままです。放送事業者の著作隣接権が「70 年を経過した時に存続期間が満了する」という枝は誤りです。レコード製作者の著作隣接権が発行の翌年から起算して「50年を経過した時をもって満了する」という枝は平成27年度の枝で、当時は正しいですが、現行法では70年なので誤りになります。

権利制限は102条で準用の範囲が限られ、譲渡・許諾・裁定は103条で著作権の規定が準用されます

著作権の権利制限規定は、102条1項が個別に挙げたものだけが著作隣接権に準用されます。30条1項(私的使用)、30条の2から32条まで、35条、36条、37条3項、38条2項・4項、41条から43条まで、44条、46条から47条の2まで、47条の4、47条の5などが準用され、33条から33条の3まで(教科用図書等への掲載)は放送又は有線放送にだけ準用されます。34条(学校教育番組の放送等)と38条3項(放送される著作物の有線放送等による伝達)は準用されていないので、著作物では自由にできる利用でも実演やレコードには許諾が要る場面があります。譲渡は61条1項、消滅は62条1項、利用の許諾は63条・63条の2、共有は65条、質権は66条、著作隣接権者と連絡できない場合の裁定は67条が103条で準用されるので、著作隣接権も全部又は一部を譲渡でき、録画権だけの譲渡もできます。

音楽教室の事務室の場面。先生が先生役(札「先生」)で、壁に貼った2枚の紙を指し棒で示している。左の紙は札「著作物:職務著作(15条)→ 法人が著作者」、右の紙は札「実演:職務著作に当たる規定なし → 演奏した本人が実演家」。向かいに音楽教室
著作権法89条5項

前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。

著作権法2条1項3号

実演著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

著作権法2条1項5号

レコード蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

試験ではこう問われる

  1. 実演は著作物を演じなくても芸能的な性質があれば足りる。手品は実演に当たり、棒高跳びの跳躍が「実演として著作隣接権により保護される」という枝は誤り
  2. アマチュアも指揮者も実演家。実演に職務著作の規定はなく、雇用された会社が「実演家となり、原始的に著作隣接権を取得する」という枝は誤り
  3. レコードは音が著作物でなくてよく、電車の走行音でも波の音でも成立する。二次使用料は商業用レコードに限る
  4. 放送は個々の放送行為に権利が生じるので、同一番組の再放送にも生じ、受信して再放送した局も取得する
  5. 無方式で、登録は要らない。「文化庁への登録が必要である」という枝は誤り
  6. 始期は実演時・音の最初の固定時・放送時。「最初に固定した時に始まる」(実演)、「発行した時に始まる」(レコード)という枝は誤り
  7. 実演・レコードは70年、放送・有線放送は50年。放送が「70 年を経過した時に存続期間が満了する」という枝は誤り。平成30年改正前の枝は50年で出ている
  8. 権利制限の準用は102条の範囲だけで、34条・38条3項は準用されない。譲渡・許諾・裁定は103条で準用

この用語が問われた枝

令和7年度 問51 枝ロ誤り

棒高跳び選手の競技における跳躍は、実演として著作隣接権により保護される。

令和8年度 問52 枝イ正しい

甲の行った手品は、著作物を演じるものではないが、著作権法上の実演に該当し得る。

令和元年度 問55 枝ニ誤り

音楽教室を運営する会社に雇用されているピアニストが職務上行う実演については、その会社が実演家となり、原始的に著作隣接権を取得する。

令和元年度 問55 枝ロ誤り

電車の走行音を録音したレコードについては、著作隣接権は発生しない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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