利用許諾・出版権・裁定・登録(63条・63条の2・67条・75〜79条・80条・84条・88条)りようきょだくしゅっぱんけんさいていとうろく
利用許諾とは、著作権者が他人に著作物の利用を許諾することで、許諾を得た者は利用方法及び条件の範囲内で利用できる利用権を持ちます(63条)。出版権とは、複製権等保有者が出版行為又は公衆送信行為を引き受ける者に設定する排他的な権利(79条・80条)で、裁定は著作権者と連絡できない場合に文化庁長官の裁定と補償金の供託で利用できる制度(67条)、登録は実名・第一発行年月日・創作年月日・権利の移転などを著作権登録原簿に記録する制度(75条〜78条・88条)です。
小説家が自分の小説を本にしたいとき、出版社に「使っていいよ」と許すやり方には二つあります。一つは利用許諾で、出版社は許された範囲で本を出せますが、他社が海賊版を出しても自分では止められません。もう一つは出版権の設定で、出版社はその小説を独占して出版する権利を持ち、海賊版を自分で差し止められます。著作権者が誰かわからず許諾を取りようがないときのために、文化庁長官の裁定で利用できる道も用意されています。登録は、無方式で生まれる著作権の存在や移転を後から証明しやすくするための仕組みです。

利用許諾を受けた者の利用権は、著作権者の承諾があれば譲渡でき、登録がなくても第三者に対抗できますが、差止請求はできません
63条1項により著作権者は他人に著作物の利用を許諾でき、許諾を得た者はその許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で著作物を利用できます(2項)。この利用権は著作権者の承諾を得ない限り譲渡できません(3項)が、裏返せば承諾があれば譲渡できます。許諾を受けた者は「著作権者の承諾を得た場合でも、その著作物を利用する権利を第三者に譲渡することはできない」という枝は誤りです。令和2年改正で新設された63条の2により、利用権はその著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗できるので、著作権が譲渡されても許諾を受けた者は利用を続けられます。著作権の移転は登録しなければ第三者に対抗できないが、利用許諾を得た者は新たに著作権を取得した者に対して「その登録をしなくても対抗することができる」という枝は正しいです。一方、112条1項で差止めを請求できるのは著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者であり、許諾を受けた者は含まれません。利用の許諾を受けた者は誰でも「違法に著作物を利用する者に対して利用行為の差止めを請求することができる」という枝は誤りです。放送又は有線放送についての許諾は、契約に別段の定めがない限り録音・録画の許諾を含みません(63条4項)。
出版権は複製権等保有者が出版行為又は公衆送信行為を引き受ける者に設定する排他的な権利で、電子配信だけを引き受ける者にも設定できます
79条1項は、複製権又は公衆送信権を有する者(複製権等保有者)が、文書若しくは図画として出版すること(出版行為)又は記録媒体に記録された複製物を用いて公衆送信を行うこと(公衆送信行為)を引き受ける者に対し、出版権を設定できると定めます。平成26年改正で電子書籍の配信も出版権の対象になったので、「電子書籍をインターネット上で送信することのみを引き受ける者に対しては設定することができない」という枝は誤りです。出版権者は設定行為で定めるところにより、原作のまま複製する権利(80条1項1号)と公衆送信を行う権利(2号)の全部又は一部を専有し、自分の名で差止めを請求できます(112条1項)。他人に複製又は公衆送信を許諾するには複製権等保有者の承諾が要るので(80条3項)、出版社が「小説家の承諾を得ることなく、他の出版社に当該小説の複製について許諾を与えることができる」という枝は誤りです。出版権の存続期間は設定行為で定め、定めがないときは設定後最初の出版行為等があった日から3年を経過した日に消滅します(83条)。複製権等保有者である著作者は、著作物の内容が自己の確信に適合しなくなったときは、出版権者に通常生ずべき損害をあらかじめ賠償して出版権者に通知し、出版権を消滅させることができます(84条3項)。複製権を有する著作者が「その絵画について設定していた出版権を撤回することができる」という枝は正しいです。出版権の設定は登録しなければ第三者に対抗できませんが(88条1項1号)、設定自体は設定行為で効力を生じるので、出版権の設定は「その登録をしなければ、その効力を生じない」という枝は誤りです。

利用許諾と出版権の違い
| 利用許諾(63条) | 出版権(79条〜88条) | |
|---|---|---|
| 設定する者 | 著作権者 | 複製権等保有者(複製権又は公衆送信権を有する者) |
| 権利の性質 | 許諾の範囲内で利用できる利用権で、排他性はありません | 原作のまま複製・公衆送信する権利を専有する排他的な権利です |
| 差止請求 | できません(112条1項に挙がっていません) | 出版権者として自ら請求できます |
| 譲渡・再許諾 | 著作権者の承諾があれば譲渡できます(63条3項) | 再許諾には複製権等保有者の承諾が要ります(80条3項) |
| 第三者対抗 | 登録なしで対抗できます(63条の2) | 設定の登録が対抗要件です(88条1項1号) |
著作権者と連絡できないときは文化庁長官の裁定を受けて補償金を供託すれば利用でき、著作隣接権にも準用されます
67条1項は、公表著作物等を利用しようとする者が、文化庁長官が定める措置をとっても著作権者と連絡することができず、著作者が利用を廃絶しようとしていることが明らかでないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ通常の使用料の額に相当する補償金を著作権者のために供託して利用できると定めます。権利者が見つからないという理由だけで著作物が使えなくなるのを避け、権利者が現れたときの対価は供託で確保する仕組みです。裁定の申請中も担保金を供託すれば利用できます(67条の2)。この裁定は103条で著作隣接権にも準用されるので、レコードに収録された歌唱の実演家が不明で許諾を得られない場合でも「文化庁長官の裁定を受けたときは、補償金を供託することで、利用することができる」という枝は正しいです。
登録には実名の登録・第一発行年月日等の登録・創作年月日の登録・権利の移転等の登録があり、創作年月日の登録はプログラムの著作物に限られます
著作権は無方式で発生するので(17条2項)、登録は権利の発生要件ではなく、事実を推定したり第三者に対抗したりするための制度です。無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現に著作権を有するかどうかにかかわらず実名の登録を受けることができ、登録された者はその著作物の著作者と推定されます(75条1項・3項)。実名の登録の制度があり「登録がなされるとその者が著作者と推定される」という枝は正しいです。効果は推定にとどまるので、実名の登録がされている者は「当該登録に係る著作物の著作者とみなされる」という枝は誤りです。推定されるのは著作者であることだけで、その作品が著作物に当たることまでは推定されないので、実名の登録に係る作品は「著作権法において保護される著作物であると推定される」という枝は誤りです。著作権者又は無名・変名の著作物の発行者は第一発行年月日又は第一公表年月日の登録を受けることができ、登録の年月日に最初の発行又は公表があったものと推定されます(76条)。創作年月日の登録はプログラムの著作物の著作者だけが受けられ、創作後6月を経過すると受けられません(76条の2)。美術の著作物の著作者が「その著作物について創作年月日の登録を受けることができる」という枝は誤りです。著作権の移転や質権の設定は77条、出版権の設定は88条で、登録が第三者対抗要件になります。不正競争防止法のドメイン名の「登録」は登録機関への登録であり、この著作権登録とは別の話です。

- 実名の登録(75条)無名又は変名で公表された著作物の著作者が受け、登録された者を著作者と推定します
- 第一発行年月日等の登録(76条)著作権者又は無名・変名の著作物の発行者が受け、登録の年月日に最初の発行又は公表があったものと推定します
- 創作年月日の登録(76条の2)プログラムの著作物の著作者だけが、創作後6月以内に受け、登録の年月日に創作があったものと推定します
- 著作権の登録(77条)移転・信託による変更・処分の制限と質権の設定等が、第三者対抗要件になります
- 出版権の登録(88条)出版権の設定・移転等と質権の設定等が、第三者対抗要件になります
著作権法63条3項利用権(第一項の許諾に係る著作物を前項の規定により利用することができる権利をいう。次条において同じ。)は、著作権者の承諾を得ない限り、譲渡することができない。
著作権法63条の2利用権は、当該利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
著作権法80条3項出版権者は、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製又は公衆送信を許諾することができる。
著作権法76条の2第1項プログラムの著作物の著作者は、その著作物について創作年月日の登録を受けることができる。ただし、その著作物の創作後六月を経過した場合は、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 利用権は著作権者の承諾があれば譲渡できる。「著作権者の承諾を得た場合でも」譲渡できないという枝は誤り
- 利用権は登録なしで著作権の譲受人その他の第三者に対抗できる(63条の2)
- 許諾を受けた者は差止請求権者でない。「利用行為の差止めを請求することができる」という枝は誤り
- 出版権は電子配信のみを引き受ける者にも設定できる。再許諾には複製権等保有者の承諾が要る(80条3項)
- 著作者は確信不適合で損害をあらかじめ賠償して出版権を消滅させられる(84条3項)。出版権の設定の登録は対抗要件で効力要件でない
- 著作権者と連絡できなければ裁定と補償金の供託で利用できる(67条)。著作隣接権にも準用(103条)
- 実名の登録は著作者の「推定」で、「みなされる」という枝は誤り。著作物であることまでは推定されない
- 創作年月日の登録はプログラムの著作物だけ。美術の著作物について受けられるという枝は誤り
この用語が問われた枝
著作権者は、他人に対して、その著作物の利用を許諾することができるが、その許諾を受けた者は、著作権者の承諾を得た場合でも、その著作物を利用する権利を第三者に譲渡することはできない。
著作権の移転は、登録しなければ第三者に対抗することができないが、著作権者から著作物の利用許諾を得た者は、その利用権を、新たに当該著作権を取得した者に対して、その登録をしなくても対抗することができる。
著作権法における出版権の設定については、書籍を紙媒体により出版することを引き受ける者に対しては設定することができるが、電子書籍をインターネット上で送信することのみを引き受ける者に対しては設定することができない。
絵画について複製権を有する著作者は、その絵画の内容が自己の確信に適合しなくなったときは、その絵画について設定していた出版権を撤回することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。