特許異議の申立て(113〜120条の8)とっきょいぎのもうしたて
特許異議の申立てとは、何人も、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限り、特許庁長官に対し、特許が113条各号のいずれかに該当することを理由として、その特許の取消しを求めることができる制度です。3人又は5人の審判官の合議体が書面審理で審理し、取消決定又は特許を維持すべき旨の決定をします。
特許が設定登録されて特許掲載公報に載ったとき、「この発明は公報より前の雑誌に出ていた」と気づいた人が、特許庁に特許を見直してもらう窓口が特許異議の申立てです。無効審判のように当事者どうしが争う手続ではなく、何人からでも情報を受け取って特許庁が自ら審理するので、利害関係がない人でも申し立てられます。そのかわり、権利を早く安定させるために、期間は特許掲載公報の発行の日から6月、理由は113条各号に限られています。

申立ては何人も、特許掲載公報の発行の日から6月以内に、請求項ごとにすることができます
113条は、何人も、特許掲載公報の発行の日から6月以内に限り、特許庁長官に特許異議の申立てをすることができると定めています。起算点は特許権の設定の登録の日ではなく公報の発行の日なので、「特許権の設定の登録の日から6月以内に限る旨の規定がある」という枝は誤りです(登録から公報の発行まで日が空くため、第三者が内容を見られる公報の発行の日を基準にしているからです)。二以上の請求項に係る特許については請求項ごとに申し立てることができます。申立期間が経過する前でも審理を始めることを禁じる規定はないので、「申立期間が経過しなければ、審理を開始することができない」という枝は誤りです。特許異議申立書の補正は要旨を変更するものであってはなりませんが、申立ての理由と証拠の表示については、申立期間が経過する時か取消理由通知がある時のいずれか早い時までは要旨変更の補正ができます(115条2項)。申立書の副本は審判長が特許権者に送付します。無効審判の請求書の副本の送達(134条1項)と違って送達までは求められていないので、「特許異議申立書の副本を特許権者に送達しなければならない」という枝は誤りです。

申立ての理由は113条各号に限られ、冒認・共同出願違反や訂正要件違反は含まれません
特許異議の申立ては審査の見直しが目的なので、理由は公報を読めば誰でも気づける公益的なものに限られています。特許を受ける権利を有しない者の出願に対して特許がされたこと(冒認)や38条の共同出願違反は、123条1項では無効理由になりますが、113条各号にはありません。「そのことを理由として特許異議の申立てをすることができる」という枝は誤りで、「特許異議の申立ては同条違反を申立理由とすることができない」という枝は正しいです(本来の権利者が自分で争うべき理由だからです)。一方、条約違反は113条3号に掲げられているので、「当該理由で特許異議の申立てをすることはできない」という枝は誤りです。訂正が126条の要件に違反してされたこと(123条1項8号)も異議の理由にはなりません。
- 1号17条の2第3項の要件を満たしていない補正(新規事項の追加)をした特許出願に対してされたことです。外国語書面出願は除かれ、5号で受けます
- 2号25条(外国人の権利の享有)、29条、29条の2、32条又は39条1項から4項までに違反してされたことです
- 3号条約に違反してされたことです
- 4号36条4項1号(実施可能要件)又は6項(4号の簡潔性を除く記載要件)を満たしていない特許出願に対してされたことです
- 5号外国語書面出願に係る特許の明細書等に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないことです
- 含まれない理由冒認(123条1項6号)、共同出願違反(同項2号のうち38条)、訂正要件違反(同項8号)、後発的な権利享有の喪失や条約違反(同項7号)は無効審判でしか争えません
審理は書面審理で、申し立てない理由も審理できますが、申立てのない請求項は審理できません
118条1項は、特許異議の申立てについての審理は書面審理によると定めています。無効審判以外の審判について145条2項が置く、申立て又は職権で口頭審理にできるただし書は特許異議の申立てには無いので、「職権で口頭審理によるものとすることができる」という枝は誤りです。120条の2第1項は、特許権者、特許異議申立人又は参加人が申し立てない理由についても審理することができると定めています。審理するかどうかは合議体の裁量なので、「申し立てない理由についても、審理しなければならない」という枝は誤りです。他方、同条2項により申立てのない請求項は審理できないので、「特許異議の申立てがされていない請求項については、審理することができない」という枝は正しいです(申立人が争わなかった請求項まで職権で取り消すと、何人もできる申立てが権利者に重すぎるからです)。同一の特許権に係る二以上の申立ては特別の事情がある場合を除き併合し(120条の3)、特許権についての権利を有する者その他利害関係を有する者は決定があるまで特許権者を補助するために参加できますが、申立人を補助する参加はありません(119条)。

取消決定の前には必ず取消理由が通知され、特許権者はその指定期間内に限り訂正を請求できます
審判長は、取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加人に特許の取消しの理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければなりません(120条の5第1項)。特許権者は、この指定期間内に限り、減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、引用関係の解消を目的として訂正を請求できます(同条2項)。訂正の請求があったときは、審判長は取消理由の書面と訂正請求書等の副本を特許異議申立人に送付して意見書の機会を与えますが、申立人が希望しない旨を申し出たときなどは与えなくてよいです(同条5項)。申立人の意見書に対して特許権者にもう一度意見書の機会を与える規定はないので、「その意見書の副本を特許権者に送付し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない」という枝は誤りです。先にした訂正の請求があるときは、後の請求によって先の請求は取り下げられたものとみなされ、訂正の基準は願書に添付した明細書等に戻ります(同条7項)。独立特許要件(126条7項)は、同条9項の読替えにより、申立てのない請求項に係る減縮と誤記又は誤訳の訂正だけに課されます。申立てのある請求項は取消理由の審理の中で特許要件を判断すれば足り、釈明は特許性を変えないからです。したがって「明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正は」独立特許要件を満たさなければならないという枝は誤りです。
取消理由通知の後は取り下げられず、維持決定に不服は申し立てられず、取消決定は東京高等裁判所で争います
特許異議の申立ては、取消理由通知があった後は取り下げることができません(120条の4第1項)。通知が出た後は特許庁が職権で見直す段階に入っていて、申立人の都合で止める理由がないからです。特許権者の承諾があれば取り下げられる旨の例外はないので、「特許権者の承諾を得れば、取り下げることができる」という枝は誤りです。合議体は、113条各号に該当すると認めるときは取消決定を、認めないときは特許を維持すべき旨の決定をします(114条2項・4項)。維持決定に対しては不服を申し立てることができないので(同条5項)、「特許を維持すべき旨の決定に対する訴えを提起することができる」という枝は誤りです(申立人は利害関係があれば無効審判を請求すればよいからです)。取消決定に対する訴えは東京高等裁判所の専属管轄で、特許権者のほか参加人と参加を拒否された者が提起できます(178条1項・2項)。取消決定が確定すると特許権は初めから存在しなかったものとみなされますが(114条3項)、決定は請求項ごとに申立てがされたときは請求項ごと(一群の請求項ごとに訂正の請求がされたときはその一群ごと)に確定し、185条により取り消された請求項だけが初めから無かったことになります。「全ての請求項に係る特許権は、初めから存在しなかったものとみなされる」という枝は誤りです。167条の一事不再理は無効審判と延長登録無効審判の確定審決にだけ生じるので、維持決定の後でも、申立人は利害関係人であれば同じ理由で無効審判を請求できます。「特許異議の申立ての理由と同一の理由に基づいて特許無効審判を請求することができない」という枝は誤りです。不適法な申立ての却下決定(120条の8で準用する135条)にも不服を申し立てられず、確定した取消決定には再審を請求できます(171条)。平成15年改正で旧異議制度は廃止され、現行の制度は平成26年改正で設けられたものなので、平成15年以前の枝は旧法の条文で出ています。意匠法には異議制度がなく、商標法の登録異議の申立て(商標法43条の2)は商標掲載公報の発行の日から2月以内です。

- 誰が申し立てるか特許異議の申立ては何人もできます。特許無効審判は利害関係人に限られ、冒認・共同出願違反は特許を受ける権利を有する者だけが請求できます
- いつまでか特許異議の申立ては特許掲載公報の発行の日から6月以内です。特許無効審判は特許権の消滅後も請求できます
- 理由特許異議の申立ては113条各号で、冒認・共同出願違反・訂正要件違反は含みません。特許無効審判は123条1項各号です
- 審理の方式特許異議の申立ては書面審理です。特許無効審判は口頭審理が原則です(145条1項)
- 結論と不服特許異議の申立ては取消決定か維持決定で、維持決定には不服を申し立てられません。特許無効審判は無効審決か不成立審決で、どちらも審決取消訴訟を提起できます
- 一事不再理特許異議の申立てにはありません。特許無効審判の確定審決には167条で生じます
特許法113条柱書何人も、特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り、特許庁長官に、特許が次の各号のいずれかに該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の請求項に係る特許については、請求項ごとに特許異議の申立てをすることができる。
特許法120条の2第1項・2項特許異議の申立てについての審理においては、特許権者、特許異議申立人又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。
特許異議の申立てについての審理においては、特許異議の申立てがされていない請求項については、審理することができない。
特許法114条4項・5項審判官は、特許異議の申立てに係る特許が前条各号のいずれかに該当すると認めないときは、その特許を維持すべき旨の決定をしなければならない。
前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
試験ではこう問われる
- 期間は特許掲載公報の発行の日から6月。「特許権の設定の登録の日から6月以内に限る旨の規定がある」という枝は誤り。申立期間の経過前でも審理を開始できる
- 理由は113条各号に限られる。冒認(「特許を受ける権利を有しない者の特許出願」)や38条の共同出願違反は理由にならず、条約違反は理由になる
- 申立書の副本は審判長が特許権者に「送付」する。「送達しなければならない」という枝は誤り
- 審理は書面審理のみ。「職権で口頭審理によるものとすることができる」という枝は誤り
- 申し立てない理由は審理することが「できる」(しなければならない、は誤り)。申立てのない請求項は審理できない
- 取消決定の前に取消理由通知は必ずあり、特許権者は指定期間内に限り訂正を請求できる。申立人の意見書に対して特許権者に再度の意見書の機会を与える規定はない。独立特許要件は申立てのない請求項の減縮・誤記誤訳訂正だけ
- 取消理由通知の後は取下げ不可(特許権者の承諾があっても不可)。維持決定に不服申立てはできず、取消決定の訴えは東京高等裁判所
- 取消決定は請求項ごとに確定し、取り消された請求項だけが初めから無かったことになる。一事不再理はなく、申立人は利害関係人なら同一の理由で無効審判を請求できる
この用語が問われた枝
特許法には、特許異議の申立てをすることができる期間について、特許権の設定の登録の日から6月以内に限る旨の規定がある。
特許異議の申立てがされた後、申立期間が経過しなければ、審理を開始することができない。
審判長は、特許異議申立書の副本を特許権者に送達しなければならない。
特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたときは、そのことを理由として特許異議の申立てをすることができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。