上演権・演奏権・上映権・口述権(22条・22条の2・24条・2条7項)じょうえんけんえんそうけんじょうえいけんこうじゅつけん
上演権・演奏権とは、著作者がその著作物を公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(公に)上演し、又は演奏する権利を専有するという支分権です(22条)。上映権は著作物を公に上映する権利(22条の2)、口述権は言語の著作物を公に口述する権利(24条)で、いずれも録音・録画されたものの再生を含みます(2条7項)。
店で生演奏をする、BGMにCDを流す、店内のモニターに映画を映す、朗読のCDを教室で再生する、といった行為は、著作物を紙に写すわけではないので複製ではありません。しかし、その場にいる人に著作物を直接見せたり聞かせたりすることで、著作者が許諾料を得る機会は失われます。そこで著作権法は、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とする上演・演奏(22条)、上映(22条の2)、口述(24条)を著作者の権利とし、録音・録画されたものの再生もこれに含めています(2条7項)。

「公に」とは公衆に直接見せ又は聞かせる目的をいうので、客が少数でも、演奏の対価を取らなくても演奏権が及びます
22条は「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」を「公に」と定義し、公衆には特定かつ多数の者も含まれます(2条5項)。上演は演奏以外の方法で著作物を演ずること、演奏は歌唱を含みます(2条1項16号)。問題になるのは相手が公衆かどうかで、人数の多さや料金の有無ではありません。音楽教室事件(知財高判令和3年3月18日)は、受講契約を結べば誰でも生徒になれる以上、事業者と生徒の間に個人的な結び付きはなく生徒は不特定の者だとしたので、「生徒が少人数であったとしても、その演奏は演奏権の対象となる行為である」という枝は正しいです。演奏の対価を別に取っているかどうかも関係がないので、飲食店で客に聞かせるギターの生演奏は、演奏の対価を取らずに飲食物の対価だけを取っている場合でも演奏権の侵害になります。2条7項により、録音された演奏を再生することも演奏に含まれるので、「デパートで、BGMとして、CDの音楽を流すことは、演奏権の侵害となる」という枝は正しいです。また、上演・演奏を電気通信設備を用いて伝達することも、公衆送信に当たらない限り上演・演奏に含まれるので、歌手が「野球場でのコンサートでマイクを通して歌った場合」は演奏権侵害が成立するが公衆送信権侵害となることはないという枝は正しいです。
- 公に公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることです(22条)。公衆には特定かつ多数の者を含みます(2条5項)
- 上演・演奏演奏(歌唱を含む)と、それ以外の方法で著作物を演ずることです(2条1項16号)
- 上映著作物(公衆送信されるものを除く)を映写幕その他の物に映写することで、映画の著作物の音の再生を含みます(2条1項17号)
- 口述朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達することで、実演に当たるものは除きます(2条1項18号)
- 再生・伝達録音・録画された上演・演奏・口述の再生(公衆送信・上映を除く)と、電気通信設備を用いた伝達(公衆送信を除く)を含みます(2条7項)
非営利・無料・無報酬の三つをすべて満たさない限り、公の上演・演奏には許諾が要ります(38条1項)
38条1項は、公表された著作物を、営利を目的とせず、聴衆又は観衆から料金を受けず、実演家に報酬が支払われない場合に限って、許諾なく公に上演・演奏・上映・口述できるとしています。三つの要件は一つでも欠ければ使えません。大学の演劇サークルの大学祭の上演でも、「入場料を徴収していたとしても、上演権の侵害とならない」という枝は誤りです。営利を目的としないとは、間接的にも営利に結び付かないことをいうので、営利企業が社会貢献として「聴衆から料金を受けず実演家に報酬を支払わないで」主催する演奏会について演奏権者の許諾は必要ではないという枝は誤りです(企業の宣伝や信用の向上につながるからです)。権利制限の詳しい内容は、非営利無料の上演等の語で扱います。

二次的著作物の演奏には原著作者の許諾も要りますが、レコード製作者には演奏権がありません
楽曲を無断で編曲して作った楽曲Bも二次的著作物として保護され、編曲家はBの著作者として演奏権を持ちます。原著作者も、二次的著作物の利用について著作者と同一の種類の権利を専有するので(28条)、無断編曲された楽曲Bをオーケストラがコンサートで演奏する場合は「甲だけでなく乙の許諾を得なければならない」という枝は正しいです。一方、CDを再生して公に聞かせる行為で許諾が要るのは著作者に対してだけです。レコード製作者の権利は複製権・送信可能化権・譲渡権・貸与権と二次使用料・報酬を受ける権利に限られるので(89条2項)、レコード製作者は「レコードに録音された楽曲を再生することによる公の演奏については、著作隣接権を有しない」という枝は正しいです。
上映は映写幕その他の物に映写することなので、写真や絵画をディスプレイや壁面に映すのは上映であって展示ではありません
上映とは、著作物を映写幕その他の物に映写することで、映画の著作物に固定されている音の再生を含みます(2条1項17号)。対象は映画の著作物に限らず、写真や絵画、プログラムを含むすべての著作物です。映写する先は映写幕に限らず、ビルの壁面やモニターの画面も「その他の物」に当たります。未公表の写真を企業の宣伝のために「繁華街のビルの壁面に映写する行為は」上映権及び公表権の侵害となるが展示権の侵害とならないという枝は正しく、展示権(25条)は原作品による展示にしか及ばないからです。飲食店で不特定多数の客に「ゲームソフトのプレイ画面を見せることは」上映権者の許諾を得る必要があるという枝、絵画の原作品を撮影した画像をタブレット型端末の「画面に当該画像を表示して喫茶店内に飾る行為は」上映権の侵害となることがあるという枝も正しいです。ただし、上映権が及ぶのはその著作物の表現を映す場合だけなので、キャストと登場人物のみが共通する別の映画Bを製作した場合に「乙はBの映画館での上映について甲の許諾を得なければならない」という枝は誤りです。

口述は言語の著作物を口頭で伝達することで、朗読の録音物の再生も含み、翻訳物の朗読には原著作者の口述権も及びます
口述とは、朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達することで、演劇的に演ずる実演に当たるものは除かれます(2条1項18号)。口述権の対象は言語の著作物だけです(24条)。録音された口述の再生も口述に含まれるので(2条7項)、英語の小説の朗読CDを「営利目的の英会話教室において再生して」不特定多数の生徒に聞かせるには口述権者の許諾を得る必要があるという枝は正しいです。翻訳は二次的著作物なので、翻訳を公に朗読すれば翻訳家の口述権と、28条により原著作者の口述権の両方が働きます。「翻訳家の口述権の侵害となるが、小説家の口述権の侵害とはならない」という枝は誤りです。一方、朗読を放送や有線放送で届けることは公衆送信であって、2条7項のかっこ書で口述から除かれています。「その詩を朗読した映像を放送することは、口述権の侵害となる」という枝は誤りで、問題になるのは公衆送信権(23条)です。口述にも引用(32条1項)は使えるので、講演会で小説の一部を読み上げて批評する行為は、小説の一部であることが聴衆に明らかで「批評に必要な範囲である場合には、口述権の侵害とならない」という枝は正しいです。

著作権法22条著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
著作権法22条の2著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
著作権法24条著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
著作権法2条7項この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。
試験ではこう問われる
- 「公に」は公衆に直接見せ聞かせる目的。音楽教室の生徒は不特定の者で、「生徒が少人数であったとしても、その演奏は演奏権の対象となる行為である」
- 演奏の対価の有無は関係ない。飲食店で客に聞かせる生演奏は、飲食物の対価しか取っていなくても演奏権の侵害になる
- 録音物の再生も演奏(2条7項)。「デパートで、BGMとして、CDの音楽を流すことは、演奏権の侵害となる」。マイクを通した歌唱は演奏で、公衆送信ではない
- 38条1項は非営利・無料・無報酬をすべて満たす必要がある。大学祭でも「入場料を徴収していたとしても、上演権の侵害とならない」という枝は誤り。営利企業の社会貢献の演奏会も営利目的に当たる
- 無断編曲の楽曲の演奏には原著作者と編曲者の両方の許諾が要る(28条)。レコード製作者はCDの再生による公の演奏について著作隣接権を有しない(89条2項)
- 写真を「繁華街のビルの壁面に映写する行為は」上映で、展示権の侵害ではない。店内のモニターでゲームのプレイ画面を見せることや、タブレットの画面に絵画を表示して飾ることも上映
- キャストと登場人物だけが共通する別の映画の上映に上映権は及ばない。「乙はBの映画館での上映について甲の許諾を得なければならない」という枝は誤り
- 朗読CDを「営利目的の英会話教室において再生して」聞かせるのは口述。翻訳の朗読には小説家の口述権も及ぶ。朗読の映像の放送は公衆送信で口述ではない。批評に必要な範囲の読み上げは引用で口述権侵害にならない
この用語が問われた枝
音楽教室のレッスンにおける教師の演奏について、規範的観点から演奏の主体とされた音楽教室事業者と生徒の関係が、受講契約を締結すれば誰でも生徒としてレッスンを受講できるものである場合には、音楽教室事業者と生徒との間に個人的結合関係はなく、音楽教室事業者にとって生徒は不特定の者であり、生徒が少人数であったとしても、その演奏は演奏権の対象となる行為である。
公表された脚本の著作物を大学の演劇サークルが大学祭で演じる行為は、入場料を徴収していたとしても、上演権の侵害とならない。
営利企業が社会貢献として、聴衆から料金を受けず実演家に報酬を支払わないで、公衆に直接聞かせる演奏会を主催する場合、それにより著作権者の利益を不当に害することにならないのであれば、当該演奏会で演奏される既に公表された音楽の著作物の演奏権を有する者の許諾は必要ではない。
作曲家甲が創作した楽曲Aを、編曲家乙が甲に無断で編曲して楽曲Bを創作した。オーケストラ丙がBをコンサートで演奏する場合、甲だけでなく乙の許諾を得なければならない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。