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二次的著作物と原著作者の権利(2条1項11号・11条・27条・28条)にじてきちょさくぶつとげんちょさくしゃのけんり

著作権・不正競争防止法 第1章 著作物と著作者 短答で10枝

二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物です(2条1項11号)。原著作者の権利とは、その原著作物の著作者が二次的著作物の利用について二次的著作物の著作者と同一の種類の権利を専有すること(28条)で、翻案権(27条)とともに原著作者を守ります。

小説を映画にしたり、ピアノ曲をオーケストラ用に編曲したりすると、元の作品を土台にした新しい作品が生まれます。これが二次的著作物です。新しく加わった創作的な表現は翻案した人のものですが、土台になった小説や楽曲の表現もその中に生きています。そこで著作権法は、二次的著作物の著作者に権利を与えつつ、原著作者にもその二次的著作物の利用について同じ種類の権利を持たせます。元の作品を作った人の取り分を守らなければ、翻案さえすれば原著作者を無視して使えることになってしまうからです。

コンサートホールの楽屋の場面。先生が先生役(札「先生」)で、譜面台の上の2冊の楽譜を指し棒で示している。左の楽譜に「楽曲A(甲が作曲・原著作物)」、右の楽譜に「楽曲B(乙が無断で編曲・二次的著作物)」の札。左の楽譜から右の楽譜へ矢印があり、

二次的著作物は既存の著作物に依拠して翻訳・編曲・変形・翻案して創作した著作物であり、原著作者の許諾は成立の要件ではありません

2条1項11号は、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物を二次的著作物と定めます。翻案は既存の著作物に依拠してその表現上の本質的な特徴を残しつつ新たな創作的表現を加える行為なので(江差追分事件)、「二次的著作物に該当するためには、既存の著作物に依拠するものでなければならない」という枝は正しいです。原著作者の許諾を得たかどうかは成立の要件ではないので、無断で編曲しても編曲者がその二次的著作物の著作者になり、17条1項により著作者人格権と著作権を取得します。甲の楽曲を乙が編曲した場合に「その編曲に関する著作権及び著作者人格権は甲が有し、乙は何ら権利を有しない」という枝は誤りです。一方、既存の著作物に手を加えたのではなく、詩に旋律を付けて歌曲にしたように二つの著作物が結び付いただけで分離して利用できるものは、二次的著作物ではなく結合著作物です。「歌曲ハは、詩イを原著作物とする二次的著作物である」という枝は誤りです。

原著作者は28条により二次的著作物の利用について二次的著作物の著作者と同一の種類の権利を専有するので、利用には双方の許諾が要ります

28条は、二次的著作物の原著作物の著作者が、その二次的著作物の利用に関し、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すると定めます。11条も、二次的著作物の保護は原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさないと確認しています。甲の楽曲Aを乙が無断で編曲した楽曲Bを丙が演奏する場合、乙は楽曲Bの演奏権を持ち、甲も28条で楽曲Bの演奏について同じ演奏権を持つので、「甲だけでなく乙の許諾を得なければならない」という枝は正しいです。この権利は一方向にしか働きません。原著作物の利用に二次的著作物の著作者の権利は及ばないので、甲のイラストを基に乙がぬいぐるみを作っていても、イラストそのものを使ってアニメーションを作るなら「甲のみから許諾を得ることで足りる」という枝は正しいです。翻案が連鎖した場合、小説を基にした漫画を基にした映画は、小説の創作的表現にも依拠しているので小説の二次的著作物でもあります。「映画は漫画の二次的著作物とはなるが、小説の二次的著作物とはならない」という枝は誤りです。

玩具会社の事務所の場面。先生が先生役(札「先生」)で、机の上の2つの品を指し棒で示している。左に「妖精のイラスト(甲・原著作物)」の札が付いた絵、右に「ぬいぐるみ(乙・二次的著作物)」の札が付いたぬいぐるみ。左から右へ太い矢印に「28条:原

権利が及ぶ向き

利用するもの要る許諾
二次的著作物(編曲した楽曲B・ぬいぐるみ)の利用二次的著作物の著作者の許諾と、28条により原著作者の許諾の両方が要ります
原著作物(楽曲A・イラスト)そのものの利用原著作者の許諾だけで足り、二次的著作物の著作者の権利は及びません

原著作者の権利は翻案権と未公表の原著作物の公表権にも表れ、著作権の譲渡契約では27条・28条の権利は特掲がなければ留保と推定されます

二次的著作物を作ること自体は、27条の翻訳権、翻案権等として原著作者が専有します。また18条1項後段は、未公表の著作物を原著作物とする二次的著作物についても原著作者が公表権を持つと定めます。未公表の小説を原作とする漫画を「原著作者である小説家の同意なく公表する行為は、当該小説家の公表権の侵害となる」という枝は正しいです。著作権を譲渡する契約で27条又は28条の権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます(61条2項)。翻案されて作られる作品の価値は譲渡の時には見通しにくく、原著作者を守る趣旨です。「著作権等一切の権利を譲渡する」という条項だけでは特掲と認められず、「翻案権は譲渡した者に留保されたものと推定される」という枝は正しいです。ただし推定なので、契約の趣旨から譲渡の合意が認められれば覆ります。特掲がない場合に「その譲受人乙が翻案権を取得することはない」という枝は、取得の余地を否定している点で誤りです。

出版社の契約室の場面。先生が先生役(札「先生」)で、机の上の契約書を指し棒で示している。契約書の表題は「小説Aの著作権譲渡契約書」で、本文に「著作権等一切の権利を譲渡する」の一文が見える。その横に「27条 翻案権」「28条 原著作者の権利」

映画では原作者は映画の著作者から除かれ、映画の著作権が満了すると映画の利用に関する原著作物の著作権も消滅しますが、後から付けた字幕は別の二次的著作物です

映画は原作小説や脚本の二次的著作物ですが、16条は映画の著作物の著作者を全体的形成に創作的に寄与した制作、監督、演出、撮影、美術などの担当者とし、映画において翻案され又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を明文で除いています。原作者は28条の原著作者の権利を持つにとどまるので、小説を原作に乙が監督した映画について「甲は乙とともに当該映画の著作物の共同著作者となる」という枝は誤りで、原作の著作者が「映画の著作物の著作者とみなされる」という枝も誤りです。映画の著作権が存続期間の満了で消滅したときは、その映画の利用に関する原著作物の著作権も映画の著作権とともに消滅したものとされます(54条2項)。映画だけ自由に使えて原作者の権利が残ると、満了の意味がなくなるからです。満了後にその映画を放送する放送局が「その映画の原作小説の著作権者の許諾を得る必要がある」という枝は誤りです。消えるのは映画の利用に関する原著作物の権利だけなので、「外国映画に後から付された日本語字幕の著作権は」映画の台詞を翻訳した別の二次的著作物として独自の保護期間を持ち、映画の満了で「同じく消滅したものとされる」という枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から札「原作小説(甲)」「映画(監督乙が製作)」「映画の著作権の存続期間の満了」「満了後に放送局がテレビ放送」の順に立つ。「映画」の札の
著作権法2条1項11号

二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

著作権法11条

二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。

著作権法28条

二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

著作権法54条2項

映画の著作物の著作権がその存続期間の満了により消滅したときは、当該映画の著作物の利用に関するその原著作物の著作権は、当該映画の著作物の著作権とともに消滅したものとする。

試験ではこう問われる

  1. 無断で編曲しても編曲者が二次的著作物の著作者になる。「その編曲に関する著作権及び著作者人格権は甲が有し、乙は何ら権利を有しない」という枝は誤り
  2. 二次的著作物の利用には原著作者と二次的著作物の著作者の双方の許諾が要る(28条)。無断編曲した楽曲Bの演奏は「甲だけでなく乙の許諾を得なければならない」という枝は正しい
  3. 原著作物の利用に二次的著作物の著作者の権利は及ばない。イラストを使ってアニメを作るなら「甲のみから許諾を得ることで足りる」という枝は正しい
  4. 小説→漫画→映画なら映画は小説の二次的著作物でもある。小説の二次的著作物にならないという枝は誤り
  5. 詩に旋律を付けた歌曲は結合著作物で、詩の二次的著作物ではない。翻案には依拠が要る(江差追分事件)
  6. 未公表の小説を原作とする漫画の公表は原著作者の公表権を侵害する(18条1項後段)
  7. 27条・28条の権利は特掲がなければ譲渡人に留保と推定(61条2項)。推定なので「翻案権を取得することはない」と断定する枝は誤り
  8. 原作者は映画の著作者ではない(16条)。映画の満了で消えるのは映画の利用に関する原著作物の著作権で、後から付けた字幕は別の二次的著作物(54条2項)

この用語が問われた枝

令和8年度 問51 枝イ正しい

二次的著作物に該当するためには、既存の著作物に依拠するものでなければならない。

令和2年度 問51 枝ニ誤り

甲が創作した詩イに、乙が旋律ロをつけて歌曲ハを創作した場合、歌曲ハは、詩イを原著作物とする二次的著作物である。

平成28年度 問52 枝ホ正しい

作曲家甲が創作した楽曲Aを、編曲家乙が甲に無断で編曲して楽曲Bを創作した。オーケストラ丙がBをコンサートで演奏する場合、甲だけでなく乙の許諾を得なければならない。

平成28年度 問51 枝ホ正しい

漫画家甲が創作した妖精のイラストに基づいて、玩具会社乙がぬいぐるみを作成し、販売した。その妖精のイラストを利用してアニメーションを創作する場合、甲のみから許諾を得ることで足りる。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

著作権・不正競争防止法を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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