非営利無料の上演等と図書館・障害者のための複製(38条・31条・37条)ひえいりむりょうのじょうえんとうととしょかんしょうがいしゃのためのふくせい
非営利無料の上演等とは、公表された著作物を、営利を目的とせず、聴衆又は観衆から料金を受けず、実演家等に報酬が支払われない場合に、公に上演・演奏・上映・口述できるとする38条1項の権利制限で、同条は放送の伝達(3項)、複製物の貸与(4項・5項)にも非営利無料の利用を認めます。図書館等における複製(31条)と視覚障害者等のための複製(37条)は、調査研究や障害者の福祉という公益のために、図書館等や政令で定める者による複製を認める権利制限です。
町内会の集まりで誰かがピアノを弾く、学校の文化祭で劇を演じる、公民館でテレビを映して皆で見る、といった場面は、お金の動かない文化の営みです。上演権や演奏権、公衆伝達権は本来こうした行為にも及びますが、誰も利益を得ず著作権者の市場も奪わない利用まで許諾に係らせる必要はありません。そこで38条は、営利を目的とせず、料金も受けず、実演家にも報酬が支払われない場合に限って、上演・演奏・上映・口述、放送の伝達、複製物の貸与を認めました。図書館の複製(31条)と点字など障害者のための複製(37条)も、公益のための制限です。

38条1項の上演等は、営利を目的とせず、聴衆又は観衆から料金を受けず、実演家等に報酬が支払われないという三つがそろって初めて認められます
38条1項は、公表された著作物を、営利を目的とせず、かつ聴衆又は観衆から料金を受けない場合に、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述できるとし、ただし書で、実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合を除きます。三つの要件は一つでも欠けると使えません。大学の演劇サークルが大学祭で脚本を演じる行為は、「入場料を徴収していたとしても」上演権の侵害とならないという枝は誤りです。営利を目的としないとは、間接的にも営利に結び付かないことです。営利企業が社会貢献として料金を受けず報酬も払わない演奏会を主催しても、企業の宣伝や信用の向上に結び付くので、「当該演奏会で演奏される既に公表された音楽の著作物の演奏権を有する者の許諾は必要ではない」という枝は誤りです。また38条1項が制限するのは上演・演奏・上映・口述だけです。非営利無料の朗読会で詩が朗詠された場合でも、第三者の丙が「これを録画し、DVDとして販売しても」詩の著作権と朗読者の著作隣接権を侵害しないという枝は誤りです。録画と販売は複製権・譲渡権と実演家の録画権の問題で、38条1項の及ぶところではないからです。
- 要件1営利を目的としないことです。企業の宣伝など間接的に営利に結び付く場合も除かれます
- 要件2聴衆又は観衆から料金(名目を問わず、著作物の提供・提示につき受ける対価)を受けないことです
- 要件3上演・演奏・上映・口述について実演家又は口述を行う者に報酬が支払われないことです
- 対象行為公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することだけで、複製や公衆送信は含みません
放送される著作物の非営利無料の伝達(38条3項)は著作権だけの制限で、放送事業者の伝達権には準用されません
38条3項は、放送され又は有線放送される著作物を、営利を目的とせず、料金を受けない場合に、受信装置を用いて公に伝達することを認め、通常の家庭用受信装置を用いてする場合も同様とします。後段は家庭用の受信装置なら営利目的や料金の徴収があっても伝達できるという意味なので、通常の家庭用テレビで入場料を徴収して放送の映画番組を視聴させることにも、映画の著作権者の許諾は要りません。反対に、スタジアムの巨大スクリーンのような特別の装置でも、非営利で対価を得ないなら前段で伝達でき、「非営利で、観衆から対価を得ない場合であっても」著作者の公衆伝達権の侵害となるという枝は誤りです。ただし、102条1項が著作隣接権に準用するのは38条2項と4項だけで、3項は準用されません。放送事業者は影像を拡大する特別の装置を用いてテレビジョン放送を公に伝達する権利(100条)を持つので、大学が構内に特別の装置を設置して放送を視聴させることは、「非営利かつ無料で行われる行為であれば」放送事業者の著作隣接権の侵害とならないという枝は誤りです。入場料を取ってスタジアムの巨大スクリーンに番組を映す行為が、作詞作曲者の著作権と放送事業者の著作隣接権を侵害するが「乙の著作隣接権は侵害しない」という枝は正しいです。歌手である実演家には伝達権がないからです。

非営利無料の貸与は映画の著作物を除いて補償金なしでき、映画の著作物の貸与は政令で定める施設が補償金を支払って行います
38条4項は、映画の著作物を除く公表された著作物の複製物を、営利を目的とせず、貸与を受ける者から料金を受けない場合に、貸与により公衆に提供することを認めます。補償金の定めはないので、公立図書館が「利用者に書籍を無償で貸し出す場合には」相当な額の補償金を支払わなければならないという枝は誤りです。市販のコンピュータ・プログラムを不特定の者に貸与することは、「営利を目的とせず、貸与を受ける者から料金を受けない場合でも」貸与権の侵害となるという枝も誤りです。映画の著作物は頒布権(26条)の対象で市場への影響が大きいため4項から外れ、5項が、視聴覚教育施設その他の政令で定める施設(施行令2条の3第1項2号で図書館法の図書館を含みます)と政令で定める聴覚障害者等の福祉に関する事業を行う者に限り、料金を受けない貸与による頒布を認め、頒布権を有する者への相当な額の補償金の支払を義務付けます。公立図書館が「映画のDVDを無料で利用者に貸し出す場合」に補償金を支払う必要がないという枝は誤りです。

38条の各項
| 項 | 認める行為 | 補償金 |
|---|---|---|
| 1項 | 非営利・無料・無報酬の上演・演奏・上映・口述です | ありません |
| 2項 | 放送される著作物の非営利・無料の有線放送等です(著作隣接権にも準用されます) | ありません |
| 3項 | 放送等される著作物の非営利・無料の公の伝達です。家庭用受信装置なら営利・有料でも伝達できます(著作隣接権には準用されません) | ありません |
| 4項 | 映画を除く複製物の非営利・無料の貸与です(著作隣接権にも準用されます) | ありません |
| 5項 | 政令で定める施設等による映画の著作物の無料の貸与です | 頒布権を有する者に支払います |
図書館等は調査研究のための一部分の複製などができ、点字による複製は誰でもできます
31条1項は、国立国会図書館と政令で定める図書館等が、営利を目的としない事業として、利用者の求めに応じて調査研究の用に供するために公表された著作物の一部分の複製物を一人につき一部提供する場合(1号)、図書館資料の保存のため必要がある場合(2号)、他の図書館等の求めに応じて絶版等資料の複製物を提供する場合(3号)に、図書館資料を用いて複製することを認めます。インターネット資料やオンライン資料の収集のための記録は、43条1項で国立国会図書館の館長だけに認められるので、「国立大学法人の附属図書館の館長は」記録媒体に記録できるという枝は誤りです。37条1項は、公表された著作物を点字により複製することを、主体も目的も限らずに認めます。公表された著作物は「いかなる場合であっても、点字により複製することが許されている」という枝は正しく、小説を点字により複製して「不特定の者に販売したとしても」複製権及び譲渡権の侵害とはならないという枝も正しいです。2項は、電子計算機を用いて点字を処理する方式による記録と公衆送信も同じく主体を限らずに認めるので、点字データのインターネット配信も、点字図書館などの政令で定める施設でなくても許諾なくできます。主体が政令で定める者に限られるのは、3項の音声化など視覚障害者等が利用するために必要な方式による複製・公衆送信です。

著作権法38条1項公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
著作権法38条3項放送され、有線放送され、特定入力型自動公衆送信が行われ、又は放送同時配信等(放送又は有線放送が終了した後に開始されるものを除く。)が行われる著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。
著作権法38条4項公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。
著作権法37条1項公表された著作物は、点字により複製することができる。
試験ではこう問われる
- 38条1項は非営利・無料・無報酬の三つがそろう必要がある。大学祭の上演が「入場料を徴収していたとしても」侵害にならないという枝は誤り。営利企業の社会貢献の演奏会も営利を目的としないとはいえない
- 38条1項が制限するのは上演・演奏・上映・口述だけ。非営利の朗読会を丙が「録画し、DVDとして販売しても」侵害しないという枝は誤り
- 38条3項の放送の伝達は非営利無料なら特別の装置でも可能。家庭用受信装置なら「入場料を徴収して」も可能。巨大スクリーンでの非営利無料の伝達が公衆伝達権の侵害になるという枝は誤り
- 38条3項は著作隣接権に準用されない(102条1項は2項・4項だけ)。特別の装置での放送の視聴は「非営利かつ無料で行われる行為であれば」放送事業者の伝達権(100条)を侵害しないという枝は誤り。実演家には伝達権がない
- 38条4項の非営利無料の貸与に補償金はない。書籍の無償貸出しに補償金が要るという枝、プログラムの非営利無料の貸与が貸与権侵害になるという枝は誤り
- 映画の著作物の貸与は5項で政令の施設等に限られ、「映画のDVDを無料で利用者に貸し出す場合」も補償金が要る
- 31条1項の図書館等の複製は調査研究用の一部分・保存・絶版等資料の三つ。インターネット資料の収集のための記録は国立国会図書館の館長だけ(43条)
- 点字による複製(37条1項)と点字データの記録・公衆送信(2項)は主体を限らず誰でもできる。政令で定める者に限られるのは3項の音声化など
この用語が問われた枝
営利企業が社会貢献として、聴衆から料金を受けず実演家に報酬を支払わないで、公衆に直接聞かせる演奏会を主催する場合、それにより著作権者の利益を不当に害することにならないのであれば、当該演奏会で演奏される既に公表された音楽の著作物の演奏権を有する者の許諾は必要ではない。
大学の設置者である甲が、大学構内に影像を拡大する特別の装置を設置し、不特定多数の学生及び教職員に対して、受信した放送事業者乙のテレビ放送を視聴させることは、非営利かつ無料で行われる行為であれば、乙の著作隣接権の侵害とならない。
公表された著作物は、いかなる場合であっても、点字により複製することが許されている。
公表された脚本の著作物を大学の演劇サークルが大学祭で演じる行為は、入場料を徴収していたとしても、上演権の侵害とならない。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。