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訂正審判と訂正の請求(126〜128条・134条の2・134条の3・120条の5・165条・17条の5)ていせいしんぱんとていせいのせいきゅう

特許・実用新案 第7章 特許異議・審判・再審 短答で103枝

訂正審判とは、特許権者が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、引用関係の解消のいずれかを目的として訂正するために請求する審判です。訂正の請求とは、特許無効審判又は特許異議の申立ての係属中に、被請求人である特許権者がその手続の中で指定された期間内に限り同じ目的の訂正を求める手続です。

特許を取った後で、請求項の書き方が広すぎて先行技術にかかりそうだと気づいたり、明細書に誤記を見つけたりすることがあります。特許権者が自分から明細書や特許請求の範囲を直す手続が訂正審判で、無効審判や特許異議の申立ての中で同じことをするのが訂正の請求です。一度公開された権利の範囲を後から広げると第三者が困るので、訂正は減縮など四つの目的に限られ、新しい内容を加えることも、権利の範囲を実質的に広げることも許されません。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判官役(札「審判官」)で机に座り、「訂正審判請求書」と書かれた書類を手にしている。机の上に「特許請求の範囲:訂正前」と書かれた広い枠と、その内側に収まる「訂正後(減縮)」と書かれた小さい枠が描かれた紙がある。向

訂正の目的は減縮・誤記又は誤訳の訂正・釈明・引用関係の解消の四つに限られ、新規事項の追加と実質上の拡張・変更は許されません

126条1項ただし書は、訂正の目的を特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を引用しないものとすることの四つに限っています。訂正は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしなければなりませんが、誤記又は誤訳の訂正だけは願書に最初に添付した明細書等(外国語書面出願では外国語書面)が基準です(同条5項)。したがって、誤記の訂正は「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内であればすることができる」という枝は誤りです(誤記の訂正は本来の記載に戻す訂正なので、補正で変わる前の最初の書面で見るからです)。訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはなりません(同条6項)。補正の17条の2第5項2号のような発明特定事項の限定という縛りは訂正にはないので、減縮の訂正は「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである必要はない」という枝は正しいです。引用形式の請求項を独立形式に書き直して減縮するような場合には請求項の数が増えることもあるので、「請求項の数を増加させる訂正が認められる場合がある」という枝は正しいです。訂正審判は特許権者だけが請求でき、要約書は訂正の対象ではありません。

  • 目的(126条1項ただし書)特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、引用関係の解消の四つです
  • 範囲(同条5項)願書に添付した明細書等の範囲内です。誤記又は誤訳の訂正は願書に最初に添付した明細書等(外国語書面出願は外国語書面)の範囲内です
  • 拡張・変更の禁止(同条6項)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはなりません
  • 独立特許要件(同条7項)減縮と誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正は、訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければなりません
  • 単位(同条3項・4項)二以上の請求項に係る特許請求の範囲の訂正は請求項ごとにでき、一群の請求項があるときはその一群ごとに請求します。明細書・図面の訂正は関係する請求項の全てについて行います

独立特許要件は減縮と誤記又は誤訳の訂正に課され、無効審判や異議の中の訂正の請求では請求されていない請求項だけに課されます

126条7項は、減縮と誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正について、訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることを求めます。訂正審判では全ての請求項について課されますが、134条の2第9項と120条の5第9項の読替えにより、無効審判の中の訂正の請求では特許無効審判の請求がされていない請求項、特許異議の申立ての中の訂正の請求では申立てのない請求項に限って課されます。請求されている請求項については無効理由や取消理由の審理の中で特許要件が判断されるので、重ねて独立特許要件を見る必要がないからです。無効審判が請求されていない請求項の誤記の訂正について「特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない」という枝は正しいです。釈明と引用関係の解消は、もともと特許性を変えない訂正なので独立特許要件の対象ではありません。訂正審判で目的や要件に合わないときは、審判長が165条により理由を通知して意見書の機会を与え、無効審判では134条の2第5項により当事者が申し立てない理由についても審理した上で、認めないときは審理の結果を通知して意見を申し立てる機会を与えます。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判官役(札「審判官」)で机に座り、机の上に「特許無効審判:請求項1」と書かれた書類と「訂正の請求:請求項1(減縮)・請求項2(減縮)」と書かれた書類がある。請求項1の欄には札「無効理由の審理で特許要件を見る」、

訂正審判は異議・無効審判の係属中は請求できず、特許権の消滅後も請求できますが、取消決定や無効審決の後は請求できません

126条2項は、特許異議の申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時からその決定又は審決(請求項ごとに申立て又は請求がされたときは全ての決定又は審決)が確定するまでの間は、訂正審判を請求できないと定めています。その間は、その手続の中の訂正の請求で対応すればよく、二つの手続で訂正が食い違うと混乱するからです。制限は請求項の単位ではなく特許全体に及ぶので、無効審判が請求されていない「請求項2については特許無効審判が請求されていないため、訂正審判を請求することができる」という枝は誤りで、異議の申立てがされていない「請求項2について訂正審判を請求することはできない」という枝は正しいです。訂正審判は特許権の消滅後も請求できますが、特許が取消決定により取り消され、又は特許無効審判により無効にされた後は請求できません(同条8項)。「特許が取消決定により取り消され、又は特許無効審判により無効にされた後は、請求することができない」という枝は正しく、無効にされた後も「請求することができる」という枝は誤りです(消えた権利を訂正しても意味がないからです)。127条により、専用実施権者又は質権者があるときはその承諾が要ります。令和3年改正の前は通常実施権者の承諾も要りましたが、現行法では不要なので、独占的通常実施権者であれば「その者の承諾を得る必要がある」という枝は誤りです。無効審判の訂正の請求について「これらの者の承諾を得た場合に限り、訂正の請求をすることができる」という令和3年度の枝は、出題当時は通常実施権者の承諾も要ったため誤りとされましたが、現行法では正しい内容です。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から札「特許権の設定の登録」「特許無効審判が特許庁に係属」「審決の確定」「特許権の消滅」「無効審決の確定」が立つ。「特許無効審判が特許庁

訂正の請求は指定された期間内に限りでき、後の請求があると先の請求は取り下げられたものとみなされます

特許無効審判の被請求人は、答弁書の提出期間(134条1項・2項)、取消判決の確定後に申立てにより指定された期間(134条の3)、職権審理の結果に対する意見の申立ての期間(153条2項)、審決の予告で指定された期間(164条の2第2項)の四つの期間内に限り訂正を請求できます(134条の2第1項)。取消判決の後は、判決の確定の日から1週間以内に被請求人から申立てがあった場合に限り審判長が期間を指定するので、「判決の確定の日から一週間以内に限り、被請求人は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる」という枝は誤りです(1週間は申立ての期限であって請求の期限ではないからです)。特許異議の申立てでは、取消理由通知で指定された期間内に限り訂正を請求できます(120条の5第2項)。同じ事件で先にした訂正の請求があるときは、後の請求によって先の請求は取り下げられたものとみなされるので(134条の2第6項・120条の5第7項)、「先にした訂正の請求と後にした訂正の請求の両者がともに認められることがある」という枝は誤りです。訂正の請求が認められて請求項が削除されると、その請求項に対する無効審判の請求は対象を失うので、「その特許無効審判の請求が不適法な請求であるため、却下される」という枝は正しいです。無効審判が請求項ごとに請求されたときは訂正の請求も請求項ごとに行い、一群の請求項があるときはその一群ごとに行います(134条の2第2項・3項)。

横軸の時系列を中心にした図。先生が審判長役(札「審判長」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から札「答弁書の提出期間(134条1項・2項)」「職権審理の意見の期間(153条2項)」「審決の予告の指定期間(164条の2第2項)

訂正した明細書等の補正と請求の取下げには期限があり、訂正をすべき旨の審決が確定すると出願の時から訂正後の内容であったものとみなされます

訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書等の補正は、審理の終結の通知がある前(審理が再開されたときは再度の通知の前)に限りできます(17条の5第3項)。訂正拒絶理由通知の指定期間に限られるわけではないので、「同条の規定により指定された期間内に限り」補正できるという枝は誤りです。異議の訂正の請求では取消理由通知又は訂正拒絶理由通知の指定期間内(同条1項)、無効審判の訂正の請求では訂正を請求できる各期間と、訂正を認めない旨の通知に対する意見の申立ての期間(134条の2第5項)の内(同条2項)に限り補正できます。訂正の請求の取下げも補正ができる期間内に限られ、請求項ごとにしたときは全ての請求を取り下げなければなりません(134条の2第7項)。訂正審判も、請求項ごと又は一群の請求項ごとに請求したときは全ての請求について取り下げなければならないので(155条4項)、「当該請求項ごとに取り下げることができる」という枝は誤りです(請求項ごとに取り下げられるのは特許無効審判の請求です)。訂正をすべき旨の審決が確定すると、訂正後の明細書等により特許出願、出願公開、特許をすべき旨の査定又は審決及び特許権の設定の登録がされたものとみなされます(128条)。この遡及効は訂正の請求を認めた審決・決定にも準用されます。審決は審判事件ごとに確定しますが、請求項ごとに請求したときは請求項ごと、一群の請求項ごとに請求したときはその一群ごとに確定します(167条の2)。実用新案登録の訂正(実用新案法14条の2)は審判ではなく特許庁長官への訂正書の提出で行い、意匠法と商標法には訂正審判がありません。

特許法126条1項

特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
特許請求の範囲の減縮
誤記又は誤訳の訂正
明瞭でない記載の釈明
他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。

特許法126条2項

訂正審判は、特許異議の申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時からその決定又は審決(請求項ごとに申立て又は請求がされた場合にあつては、その全ての決定又は審決)が確定するまでの間は、請求することができない。

特許法126条7項・8項

第一項ただし書第一号又は第二号に掲げる事項を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
訂正審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。ただし、特許が取消決定により取り消され、又は特許無効審判により無効にされた後は、この限りでない。

特許法134条の2第1項

特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。

試験ではこう問われる

  1. 目的は減縮・誤記又は誤訳の訂正・釈明・引用関係の解消の四つ。誤記又は誤訳の訂正だけは願書に最初に添付した明細書等が基準。「願書に添付した明細書…の範囲内であれば」は誤り
  2. 減縮の訂正に発明特定事項の限定という要件はない。請求項の数が増える訂正が認められる場合がある
  3. 独立特許要件は減縮と誤記又は誤訳の訂正だけ。無効審判・異議の訂正の請求では請求されていない請求項だけに課される(釈明には課されない)
  4. 訂正審判は異議・無効審判の係属中から決定・審決の確定までは請求できず、申立て・請求のない請求項についても請求できない
  5. 特許権の消滅後も請求できるが、取消決定・無効審決の後は請求できない。承諾が要るのは専用実施権者と質権者だけ(令和3年改正で通常実施権者は不要)
  6. 訂正の請求は答弁書提出期間・取消判決後の指定期間・職権審理の意見期間・審決の予告の指定期間に限る。取消判決後は1週間以内の「申立て」で期間が指定される
  7. 後の訂正の請求で先の請求は取り下げられたものとみなす。訂正で削除された請求項への無効審判の請求は却下される
  8. 訂正明細書等の補正は訂正審判では審理終結通知前まで、訂正の請求では指定期間内。訂正審判の取下げは全ての請求について行う(請求項ごとの取下げは無効審判だけ)

この用語が問われた枝

令和7年度 問4 枝ロ誤り

誤記の訂正を目的とする訂正審判の請求は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内であればすることができる。

令和5年度 問15 枝ホ正しい

訂正審判において、その訂正の目的が特許請求の範囲の減縮である場合、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならないが、特許法第 36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである必要はない。

令和2年度 問13 枝イ正しい

特許請求の範囲の訂正をすることについての訂正審判において、請求項の数を増加させる訂正が認められる場合がある。

令和5年度 問11 枝ニ正しい

特許無効審判が請求されていない請求項について誤記の訂正を目的とする訂正の請求をする場合、その訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

特許・実用新案を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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