審判の手続(審判官の合議・除斥忌避・請求書・口頭審理・参加・証拠調べ・職権審理・取下げ・審決 131〜157条)しんぱんのてつづき
審判の手続とは、特許庁長官が指定する3人又は5人の審判官の合議体が、審判請求書の受理から審決まで、除斥・忌避、口頭審理又は書面審理、参加、証拠調べ、職権審理、請求の取下げ、審理の終結の通知を経て事件を進める131条から157条までの一連の手続です。特許異議の申立てや再審にも多くの規定が準用されます。
審査は審査官一人が書面で進めますが、審判は裁判に似た形で進みます。特許庁長官が3人又は5人の審判官を指定して合議体を作り、当事者が書面や口頭で主張を出し、証人を呼ぶこともできます。ただし裁判所の民事訴訟そのものではなく、特許という公益に関わる権利の有無を決めるので、当事者が言わない理由も審判官が自分で調べる職権主義が入っています。131条から157条までは、その進め方を順に定めた共通ルールです。

審判は特許庁長官が指定する3人又は5人の審判官の合議体が行い、除斥と忌避の仕組みで公正を保ちます
審判は3人又は5人の審判官の合議体が行い、合議は過半数で決します(136条)。審判官と審判長の指定は特許庁長官がします(137条・138条)。139条は、審判官が当事者の配偶者であるときや、不服を申し立てられた査定に審査官として関与したときなどの除斥の原因を列挙し、該当すれば当然に職務の執行から除かれます。除斥の原因がなくても審判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者又は参加人が忌避を申し立てられます(141条1項)。事件について書面又は口頭で陳述した後は忌避できないのが原則ですが、忌避の原因を知らなかったとき、又は原因がその後に生じたときは陳述後でもできます(同条2項ただし書)。この規定は116条(136条2項と137条から144条までの準用)で特許異議の申立ての合議体にも準用されるので、「取消理由通知に対して意見書を提出した後であっても、審判官を忌避することができる場合がある」という枝は正しいです。除斥又は忌避の原因は申立ての日から3日以内に疎明し(142条2項)、申立てに係る審判官以外の審判官が決定し、その決定には不服を申し立てられません(143条)。審査官には除斥の規定だけが準用され(48条)、忌避はありません。
- 合議体3人又は5人の審判官で、合議は過半数で決します(136条)。審判官と審判長は特許庁長官が指定します
- 除斥(139条)当事者等の配偶者・四親等内の血族・三親等内の姻族、証人・鑑定人、代理人、不服を申し立てられた査定に関与した審査官、直接の利害関係などがあれば当然に除かれます
- 忌避(141条)公正を妨げるべき事情があるときに当事者又は参加人が申し立てます。陳述後は原則できませんが、原因を知らなかったとき・後に生じたときはできます
- 申立てと決定原因は申立ての日から3日以内に疎明し(142条2項)、申立てに係る審判官以外の審判官が決定します。決定に不服申立てはできません(143条)
- 審判請求書(131条)当事者及び代理人の氏名、審判事件の表示、請求の趣旨及びその理由を記載します。方式違反は審判長が補正を命じ、補正がなければ決定で却下します(133条)。不適法で補正できない請求は審決で却下します(135条)
特許無効審判と延長登録無効審判は口頭審理が原則で、口頭審理は公開され、ウェブ会議でも行えます
145条1項は、特許無効審判と延長登録無効審判は口頭審理によると定め、審判長は当事者若しくは参加人の申立てにより又は職権で書面審理にできます。それ以外の審判は書面審理が原則で、申立て又は職権で口頭審理にできます(同条2項)。口頭審理は公開して行い、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるときに限って非公開にできます(同条6項)。審判長の裁量で閉じられるわけではないので、「審判長が必要があると認めるときは、公開しないで行うことができる」という枝は誤りです(審判長が必要と認めるときに非公開にできるのは、71条3項で判定に準用するときの読替えです)。令和3年改正で、審判長は申立てにより又は職権で、映像と音声の送受信により相互に認識しながら通話できる方法で口頭審理の期日の手続を行うことができるようになりました(同条7項)。「できる」であって義務ではないので、当事者双方の申立てがあれば「口頭審理の期日における手続を行わなければならない」という枝は誤りです。この方法で関与した当事者と参加人はその期日に出頭したものとみなされます(同条8項)。

参加には請求人としての参加と補助のための参加があり、参加の許否は合議体が決定して不服は申し立てられません
148条は二種類の参加を定めています。一つは、132条1項により共同で無効審判を請求できる者が、審理の終結に至るまで請求人として参加するものです(1項)。この参加人は、被参加人が審判の請求を取り下げた後も審判手続を続行できます(2項)。したがって、無効審判の請求が取り下げられた後に「参加人が審判手続を続行することができる場合はない」という枝は誤りです。もう一つは、審判の結果について利害関係を有する者が当事者の一方を補助するために参加するものです(3項)。補助参加人は一切の審判手続ができますが(4項)、被参加人が請求を取り下げれば続行できないので、補助参加人が「被参加人がその審判の請求を取り下げた後においても、審判手続を続行することができる」という枝は誤りです(自分の請求ではないからです)。参加の申請があったときは、審判長が副本を送達して意見を述べる機会を与えた上で、その審判の審判官が審判により決定します(149条2項・3項)。当事者の異議の有無にかかわらず決定するので、「当事者が参加について異議を述べたときに限り参加の許否の決定をする」という枝は誤りです。この決定又はその不作為には不服を申し立てられないので(同条5項)、参加を許可する決定に対して「不服を申し立てることができる」という枝は誤りです。特許異議の申立てでは特許権者を補助する参加だけがあり(119条)、拒絶査定不服審判には参加の規定が適用されません(161条)。

審判は職権で進み、申し立てない理由は審理できますが意見の機会が要り、申し立てない請求の趣旨は審理できません
152条により、審判長は当事者又は参加人が法定若しくは指定の期間内に手続をせず、又は期日に出頭しないときでも審判手続を進行できます。その際に意見を申し立てる機会を与える義務はないので、手続を進行するに際し「当事者又は参加人に意見を申し立てる機会を与えなければならない」という枝は誤りです。153条1項により、審判では当事者又は参加人が申し立てない理由についても審理できますが、審理したときは審理の結果を通知し、相当の期間を指定して意見を申し立てる機会を与えなければなりません(同条2項)。この通知に例外はないので、「意見を申し立てる機会を与えない場合がある」という枝は誤りです(不意打ちで負けさせないためです)。他方、請求人が申し立てない請求の趣旨は審理できないので(同条3項)、「請求人が申し立てない請求の趣旨についても、審理することができる」という枝は誤りです(無効を求められていない請求項まで無効にすることはできないからです)。証拠調べは当事者若しくは参加人の申立てにより又は職権ででき、証拠保全は審判の請求前は利害関係人、係属中は当事者又は参加人の申立てか職権でできます(150条)。151条は民事訴訟法の規定を限って準用しており、自白や擬制自白の規定は準用されていません。答弁書を出さず口頭審理にも出頭しなかったからといって「無効理由の存在を被請求人側が認めたものとみなされる」という枝は誤りです。準用される民事訴訟法181条1項により、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは取り調べなくてよいので、「当事者が申し出た証拠は、取り調べなければならない」という枝は誤りです。

審理の終結の通知の後に審決をし、再開は審判長の裁量で、審決の謄本は特許庁長官が送達します
審判の請求は審決が確定するまで取り下げることができますが、答弁書の提出があった後は相手方の承諾が要ります(155条1項・2項)。事件が審決をするのに熟したときは、審判長が審理の終結を当事者及び参加人に通知します(156条1項)。特許無効審判では、審決の予告をしないとき、又は予告の指定期間内に訂正の請求も補正もないときに通知します(同条2項)。審判長は必要があるときは通知の後でも申立てにより又は職権で審理を再開できるので、申立てがなくても「審理の再開をするときがある」という枝は正しく、申立てがあったときは「必ず審理を再開しなければならない」という枝は誤りです(同条3項)。審決は通知を発した日から20日以内にするのが原則です(同条4項)。審決があると審判は終了し、審決の謄本は特許庁長官が当事者、参加人及び参加を申請して拒否された者に送達します(157条)。送達の主体は審判長ではないので、「審決の謄本は、審判長が、当事者、参加人及び審判に参加を申請してその申請を拒否された者に送達しなければならない」という枝は誤りです。これらの規定は意匠法52条・商標法56条で各法の審判に準用され、実用新案法41条も同じ構造です。
特許法141条審判官について審判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者又は参加人は、これを忌避することができる。
当事者又は参加人は、事件について審判官に対し書面又は口頭をもつて陳述をした後は、審判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
特許法148条1項〜3項第百三十二条第一項の規定により審判を請求することができる者は、審理の終結に至るまでは、請求人としてその審判に参加することができる。
前項の規定による参加人は、被参加人がその審判の請求を取り下げた後においても、審判手続を続行することができる。
審判の結果について利害関係を有する者は、審理の終結に至るまでは、当事者の一方を補助するためその審判に参加することができる。
特許法153条審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。
審判長は、前項の規定により当事者又は参加人が申し立てない理由について審理したときは、その審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
審判においては、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができない。
特許法156条3項審判長は、必要があるときは、前二項の規定による通知をした後であつても、当事者若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審理の再開をすることができる。
試験ではこう問われる
- 合議体は3人又は5人で過半数で決し、審判官の指定は特許庁長官。忌避は陳述後でも原因を知らなかったとき・後に生じたときはできる。除斥・忌避の原因は申立てから3日以内に疎明し、決定に不服なし。審査官には除斥だけ
- 無効審判・延長登録無効審判は口頭審理が原則、他は書面審理が原則で、申立て又は職権で切り替えられる。口頭審理は公開で、非公開は公序良俗を害するおそれがあるときだけ
- ウェブ会議方式の口頭審理は審判長が「行うことができる」(申立てがあっても義務ではない)
- 請求人としての参加人(148条1項)は取下げ後も続行できるが、補助参加人(3項)は続行できない。参加の許否は異議の有無を問わず合議体が決定し、不服申立てはできない
- 期間内に手続をしない当事者がいても手続を進行できる(意見の機会は不要)。申し立てない理由は審理できるが結果を通知して意見の機会が要る(例外なし)。申し立てない請求の趣旨は審理できない
- 自白・擬制自白の準用はなく、不出頭でも無効理由を認めたものとみなされない。必要でない証拠は取り調べなくてよい
- 審理の再開は必要があるときに申立て又は職権で「できる」(必ずではない)。審決の謄本の送達は特許庁長官が行う
この用語が問われた枝
特許権者又は参加人は、取消理由通知に対して意見書を提出した後であっても、審判官を忌避することができる場合がある。
特許無効審判における口頭審理は、公開して行う。ただし、審判長が必要があると認めるときは、公開しないで行うことができる。
審判長は、当事者双方から申立てがあれば、審判官及び審判書記官並びに当事者及び参加人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、特許無効審判の口頭審理の期日における手続を行わなければならない。
審判の結果について利害関係を有する者は、審理の終結に至るまでは、当事者の一方を補助するため特許法第 148 条第3項で規定する参加人としてその審判に参加することができ、当該参加人は、被参加人がその審判の請求を取り下げた後においても、審判手続を続行することができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。