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商標登録の無効審判・除斥期間・遡及効(46条・46条の2・47条)しょうひょうとうろくのむこうしんぱんじょせききかんそきゅうこう

商標 第7章 審判・再審・訴訟 短答で21枝

商標登録の無効審判とは、商標登録が46条1項各号に掲げる無効理由のいずれかに該当するときに、利害関係人が指定商品又は指定役務ごとにその商標登録を無効にすることについて請求できる審判です。除斥期間とは、47条が定める、設定の登録の日から5年を経過した後は一定の無効理由で無効審判を請求できなくなる期間で、遡及効とは、無効審決が確定したときに商標権が初めから存在しなかったものとみなされる46条の2の効果です。

審査をすり抜けて登録された商標が、実は他人の周知商標に似ていたり、識別力が無かったりすることがあります。そうした登録を後から消す手続が商標登録の無効審判(46条)で、無効審決が確定すると商標権は初めから無かったことになります(46条の2)。ただし、登録から何年も経って取引が積み上がった後に、軽い瑕疵で全部ひっくり返すのは酷なので、47条は一部の無効理由について設定の登録の日から5年という除斥期間を置いています。どの理由に除斥期間があり、いつから権利が消えるかが、この語の中心です。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判長役(札「審判長」)で中央に座り、左右に審判官(札「審判官」)が座る。前に請求人の男性(札「請求人(利害関係人)」)が「無効審判請求書:4条1項11号違反」と書かれた書類を掲げ、吹き出し「この登録商標は私の先

無効審判は利害関係人が請求でき、指定商品ごとに請求でき、商標権の消滅後も請求できます

46条2項により、無効審判は利害関係人に限り請求できます。何人も申し立てられる登録異議の申立て(43条の2)や、何人も請求できる不使用取消審判(50条)とはここが違います。登録後に公序良俗を害する商標に該当するものとなっていることを理由に「何人も、そのことを理由として当該商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる」という枝は誤りです(後発的な理由でも請求人は利害関係人に限られるからです)。利害関係人には、登録商標と類似する商標を将来使用する具体的な計画を持つ者も含まれ、現に使っていなくても利害関係があります。そこで、そうした者は「いずれについても使用をしていない者は、利害関係人とはいえない」という枝は誤りです。利害関係の有無は、条文には書かれていませんが審判実務では審判請求の時ではなく審決の時を基準に判断するので、「その利害関係の有無は審判請求時を基準に判断される」という枝は誤りです。この利害関係人の限定は平成26年改正で明文化されたもので、それより前の枝は条文に書かれていない前提で出ています。1項後段により、指定商品又は指定役務が二以上あれば指定商品又は指定役務ごとに請求でき、3項により商標権の消滅後も請求できます。4項により、審判長は請求があったことを専用使用権者その他登録した権利を有する者に通知します。

無効理由は46条1項に限定列挙され、共同創作や一商標一出願の違反は無効理由ではなく、冒認は無効理由ですが登録異議の理由ではありません

46条1項1号は、3条、4条1項、7条の2第1項、8条1項・2項・5項、51条2項、53条2項、特許法25条(外国人の権利の享有)の違反を無効理由とします。2号は条約違反、3号は5条5項の要件を満たさない出願に対する登録、4号は出願により生じた権利を承継しない者の出願に対する登録(いわゆる冒認)です。ここに無い事情は無効理由になりません。商標は創作ではなく選択されるものなので、特許法の共同出願違反に当たる無効理由はありません。「当該商標が共同で創作されたことのみを理由として、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することはできない」という枝は正しいです。一商標一出願(6条1項)の違反も列挙されていないので、「そのことを理由として、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することはできない」という枝は正しいです。8条の違反で無効理由になるのは1項・2項・5項で、協議の届出に関する8条4項の違反は入りません。登録異議の申立ての理由(43条の2第1項)は、1号の違反と条約違反、5条5項の要件を満たさない出願に対する登録の三つで、冒認は含まれていません。条約違反と冒認が「いずれも登録異議の申立ての理由及び商標登録の無効の審判の請求の理由となる」という枝は誤りです(冒認は無効理由ですが異議理由ではないからです)。

特許庁の相談窓口の場面。先生が先生役(札「先生」)でカウンターの内側に座り、壁の二枚の掲示板を指している。左の掲示板「無効理由(46条1項):1号 3条・4条1項・7条の2・8条・特許法25条の違反/2号 条約違反/3号 5条5項の要件を欠

後発的無効理由は5号から7号で、登録後に4条1項1号〜3号・5号・7号・16号に該当するに至ったときや、地域団体商標が周知でなくなったときに限られます

登録の時は適法でも、後から無効理由に当たるようになる場合があります。5号は商標権者が特許法25条で商標権を享有できない者になったとき、又は商標登録が条約に違反することとなったとき、6号は登録商標が4条1項1号から3号まで、5号、7号又は16号に掲げる商標に該当するものとなっているとき、7号は地域団体商標の商標権者が組合等に該当しなくなったとき、又は登録商標が商標権者若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの若しくは7条の2第1項各号に該当するものでなくなっているときです。6号の列挙は限定で、4条1項6号の地方公共団体を表示する著名な標章は入っていません。登録後に「地方公共団体を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標に該当するものとなっているときは」無効審判を請求できるという枝は誤りです。登録商標が普通名称化した場合も後発的無効理由には入っておらず、26条1項2号で効力が及ばなくなるだけです。

  • 5号登録後に商標権者が特許法25条で商標権を享有できない者になったとき、又は商標登録が条約に違反することとなったときです
  • 6号登録後に登録商標が4条1項1号〜3号(国旗等・国際機関の標章)、5号(監督用の印章等)、7号(公序良俗)又は16号(品質の誤認)に該当するものとなっているときです。4条1項6号や普通名称化は入りません
  • 7号地域団体商標の商標権者が組合等に該当しなくなったとき、又は登録商標が商標権者若しくは構成員の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの若しくは7条の2第1項各号に該当するものでなくなっているときです

無効審決が確定すると商標権は初めから存在しなかったものとみなされ、後発的無効理由では該当するに至った時から、特定できないときは請求の登録の日からです

46条の2第1項本文により、無効審決が確定したときは商標権は初めから存在しなかったものとみなされます。ただし書で、46条1項5号から7号までの後発的無効理由による無効では、その事由に該当するに至った時から存在しなかったものとみなし、2項で、その時を特定できないときは無効審判の請求の登録の日から存在しなかったものとみなします。登録の時には有効だった権利を初めから消すのは筋が通らないからです。役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標に該当するものとなったことを理由とする無効で、「常に当該審判の請求の登録の日から存在しなかったものとみなされる」という枝は誤りです(該当するに至った時が特定できるならその時からだからです)。地域団体商標が周知でなくなったことを理由とする無効で、該当するに至った時を特定できないときは「その無効審判の請求の登録の日から存在しなかったものとみなされる」という枝は正しいです。基準になるのは請求の登録の日で、審判請求書の提出の日でも審決の確定の日でもありません。条約に違反するに至った時を特定できないときに「審判請求書の提出の日から存在しなかったものとみなされる」という枝は誤りです。不使用取消審判の取消審決は54条2項により請求の登録の日に商標権が消滅したものとみなすだけで、初めから無かったことにはなりません。そこで、全ての指定商品について不使用取消審決が確定しても、無効審判は商標権の消滅後も請求できる以上、「当該無効審判の請求が取り下げられない限り、当該無効審判の審理は続行される」という枝は正しいです。反対に、全ての指定商品について無効審決が確定すれば商標権は初めから無かったことになるので、係属中の取消審判は対象を失って却下されます。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「設定の登録」「後発的無効理由に該当するに至った時(特定できる場合)」「無効審判の請求の登録の日」「無効審決の確定」が立つ。横

47条の除斥期間は設定の登録の日から5年で、対象は3条・4条1項8号・11号〜14号・8条・46条1項4号と、不正競争の目的を除く10号・17号、不正の目的を除く15号です

47条1項は、商標登録が3条、4条1項8号、11号から14号まで、8条1項・2項・5項の規定に違反してされたとき、4条1項10号・17号に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除きます)、4条1項15号に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除きます)、又は46条1項4号の冒認に該当するときは、設定の登録の日から5年を経過した後は無効審判を請求できないとします。識別力の欠如や先願との類似のような比較的軽い瑕疵や私益的な理由は、5年経てば取引の安定を優先するという趣旨です。そこで、4条1項15号違反の無効審判は「設定の登録の日から5年を経過した後においても、請求することができる場合がある」という枝は正しく(不正の目的で登録を受けた場合です)、15号について「それが不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除き」5年を過ぎると請求できないという枝は誤りです(15号で除かれるのは不正の目的で、不正競争の目的が除かれるのは10号と17号だからです)。8号の他人の氏名・肖像の違反には目的による例外が無いので、「不正の目的で商標登録を受けた場合であっても、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない」という枝は正しいです。列挙に無い理由には除斥期間がありません。4条1項19号、7条の2第1項、条約違反、後発的無効理由(5号〜7号)がそれで、登録後に品質の誤認を生ずるおそれがある商標になった場合に「商標権の設定登録の日から5年を経過した後は、当該商標登録について、商標登録の無効の審判の請求をすることができない」という枝は誤りです。防護標章登録の無効審判には、68条4項が46条・46条の2を準用する一方で47条を準用していないので、除斥期間がありません。64条の要件を欠くことを理由とする無効審判は「設定の登録の日から5年を経過した後も、請求することができる」という枝は正しいです。47条2項は地域団体商標の特則で、出願時に周知でなかったという7条の2第1項違反は、設定の登録の日から5年を経過し、かつ現に周知になっていれば請求できません。

特許庁の審判廷の場面。先生が審判長役(札「審判長」)で中央に座る。前に請求人の男性(札「請求人」)が「無効審判請求書:4条1項15号違反」と書かれた書類と「設定の登録から6年経過」と書かれたカレンダーを持ち、吹き出し「登録から6年経っていま

除斥期間(設定の登録の日から5年)の有無

3条、4条1項8号・11号〜14号、8条1項・2項・5項、46条1項4号(冒認)あります
4条1項10号・17号あります。ただし不正競争の目的で登録を受けた場合は除かれます
4条1項15号あります。ただし不正の目的で登録を受けた場合は除かれます
4条1項1号〜7号・9号・16号・18号・19号、条約違反、7条の2第1項(ただし47条2項の特則があります)、後発的無効理由(5号〜7号)ありません
防護標章登録の64条違反ありません(68条4項は47条を準用していません)
商標法46条の2第1項

商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、商標権は、初めから存在しなかつたものとみなす。ただし、商標登録が前条第一項第五号から第七号までに該当する場合において、その商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その商標登録が同項第五号から第七号までに該当するに至つた時から存在しなかつたものとみなす。

商標法46条の2第2項

前項ただし書の場合において、商標登録が前条第一項第五号から第七号までに該当するに至つた時を特定できないときは、商標権は、その商標登録を無効にすべき旨の審判の請求の登録の日から存在しなかつたものとみなす。

商標法47条1項

商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が同項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第四号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。

試験ではこう問われる

  1. 請求人は利害関係人(46条2項)。後発的な理由でも「何人も」請求できるという枝は誤り。将来使用する具体的計画を持つ者も利害関係人で、利害関係は審決時に判断する
  2. 無効理由は限定列挙。共同創作や一商標一出願の違反を理由に「審判を請求することはできない」。冒認(46条1項4号)は無効理由だが異議理由ではなく、「いずれも登録異議の申立ての理由」となるという枝は誤り
  3. 後発的無効理由(6号)は4条1項1号〜3号・5号・7号・16号に限られ、「地方公共団体を表示する標章」に該当するに至っても請求できない。普通名称化も入らない
  4. 遡及効は原則初めから。後発的無効理由は該当するに至った時から、特定できなければ「請求の登録の日から」。「常に」請求の登録の日からという枝、「審判請求書の提出の日から」という枝は誤り
  5. 除斥期間5年の対象は3条・4条1項8号・11号〜14号・8条・冒認。10号・17号は不正競争の目的、15号は不正の目的で外れる。15号について「不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除き」という枝は誤り。8号は「不正の目的で商標登録を受けた場合であっても」5年で請求できない
  6. 後発的無効理由・19号・条約違反・7条の2第1項には除斥期間なし。防護標章登録には47条が準用されない(68条4項)。品質誤認の後発的無効理由で「5年を経過した後は」請求できないという枝は誤り。防護標章の64条違反は「5年を経過した後も、請求することができる」
  7. 不使用取消審決が確定しても無効審判は「取り下げられない限り」続行される。無効審決が全指定商品で確定すれば係属中の取消審判は却下

この用語が問われた枝

平成30年度 問35 枝イ誤り

商標登録の無効審判は、利害関係人に限り請求することができ、その利害関係の有無は審判請求時を基準に判断される。

平成30年度 問35 枝ハ誤り

商標登録の無効審判において、当該登録商標と類似の商標をその指定商品に将来的に使用する具体的計画を有していても、請求人適格の判断時において、当該登録商標及びこれに類似する商標のいずれについても使用をしていない者は、利害関係人とはいえない。

令和2年度 問40 枝ニ正しい

二人の者が共同で創作した商標について、一人の者が単独で商標登録出願をして商標登録を受けた場合、当該商標が共同で創作されたことのみを理由として、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することはできない。

令和5年度 問38 枝ハ正しい

一商標一出願の原則(商標法第6条第1項)に違反して商標登録がされたとしても、そのことを理由として、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することはできない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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