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自他商品識別力と3条1項各号じたしょうひんしきべつりょくとさんじょういっこうかくごう

商標 第2章 登録要件(識別力・不登録事由) 短答で20枝

自他商品識別力とは、商標が需要者に自己の商品又は役務を他人の商品又は役務と区別して認識させる力です。商標法3条1項は、自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標のうち、この力を欠く商標を1号から6号に列挙して、商標登録を受けることができないとしています。

パン屋が「パン」という文字だけの商標を登録できたら、ほかのパン屋は自分の商品を「パン」と呼べなくなります。商標は、需要者が「これはあの店の商品だ」と見分けるための目印なので、誰の商品にも付く言葉や形には目印としての働きがありません。商標法3条1項は、自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標は登録を受けることができると定めたうえで、この見分ける力(自他商品識別力)を欠く商標を1号から6号に並べて除いています。登録の入口でまず問われるのがこの条文です。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「商標登録願:商標『パン』 指定商品 パン」と書かれた願書を手にしている。向かいにパン屋の店主の男性(札「出願人(パン屋)」)が立ち、吹き出し「うちのパンは『パン』という名前で

柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」は、現在使用している商標だけでなく使用をする意思がある商標も含み、査定時に備わっていれば足ります

商標法は使用により蓄積された信用を保護する法律ですが、登録主義をとるので、出願の時点で現に使用していることまでは求めません。「使用をする」には、現在使用をしているものと、使用をする意思があり近い将来において信用の蓄積があるであろうと推定されるものの両方が含まれます。この要件は査定時に備わっていれば足りるので、「この要件は商標登録出願時に備わっていなければならない」という枝は誤りです(登録要件は査定時を基準に判断するからです)。また、未使用のまま登録を受けた後に使用を始めても、「当該使用を示す証拠を特許庁長官に提出する必要がある」という枝は誤りです(そのような提出を義務づける規定は商標法にないからです)。使用の意思が疑われるときは、審査で使用の意思を確認する書面の提出を求められることがありますが、それは柱書の要件の判断資料にすぎません。なお、柱書は「自己の業務」と言いますが、団体商標(7条)と地域団体商標(7条の2)は構成員に使用をさせる商標を登録するので、「他人に使用をさせるための商標についても商標登録を受けられる場合がある」という枝は正しいです。

1号の普通名称と2号の慣用商標は、その名称や標章「のみからなる」商標だけを拒み、普通名称の略称や音の慣用商標も当たり得ます

1号は、その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です。普通名称は、取引界においてその商品又は役務の一般的な名称と意識されているものをいい、「一般の消費者が特定の名称をその商品の一般的な名称であると意識するに至っていれば足りる」という枝は誤りです(一般の消費者だけでなく取引者を含む取引界の認識で判断するからです)。普通名称には略称や俗称も含まれるので、「普通名称の略称が該当する場合がある」という枝は正しいです。1号が拒むのは普通名称「のみからなる」商標なので、普通名称を含んでいても識別力のある文字や図形と結合していたり特殊な態様で表されていたりすれば登録され得ます。「普通に用いられる方法で表示する標章を含む商標については」登録を受けることができる場合はないという枝は誤りで、「その指定商品又は指定役務の普通名称であっても、商標登録を受けることができる場合がある」という枝は正しいです。2号の慣用商標は、同業者の間で自由に使われた結果、誰の商品かを示さなくなった商標です。慣用商標は文字や図形に限られず、「音商標が商標法第3条第1項第2号の」慣用商標に該当する場合はないという枝は誤りです(売り声や呼び込みの音のように、取引者の間で慣用される音もあるからです)。登録後に登録商標が普通名称になった場合は、46条1項6号が列挙する後発的無効理由に3条1項1号が含まれていないので、「後発的な無効理由に該当する」という枝は誤りです。この場合は26条1項2号により、普通名称を普通に用いられる方法で表示する商標に商標権の効力が及ばなくなります。

パン屋の店先の場面。先生が先生役(札「先生」)で店の前に立ち、看板を指し棒で示している。店の看板は左右に2枚並び、左の看板は「パン」の文字だけで札「普通名称のみからなる商標 → 1号で登録されない」、右の看板は「パン」の文字の上に独自の図形
  • 1号 普通名称その商品又は役務の普通名称(略称・俗称を含む)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です
  • 2号 慣用商標その商品又は役務について慣用されている商標です。音商標も当たり得ます
  • 3号 記述的表示産地・販売地・品質・原材料・効能・用途・形状などの特徴や数量・価格、役務の提供の場所・質・提供の用に供する物などを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です
  • 4号 ありふれた氏又は名称ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です
  • 5号 極めて簡単でありふれた標章極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標です
  • 6号 その他前各号のほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標です

3号の記述的表示は、取引に必要適切で何人も使用を欲するため独占に適さず、現実の産地や原材料でなくても当たります

3号は、商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状その他の特徴や数量・価格、役務の提供の場所、質、提供の用に供する物などを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です。判例は、このような商標が登録されない理由を、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであって「特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としない」こと、そして一般的に使用される標章であって多くの場合自他商品識別力を欠くことの二つに求めており、この判示のとおりの枝は正しいです。独占適応性の欠如という趣旨から、需要者が産地や原材料と認識するかどうかで判断するので、現実に使われている必要はありません。原材料表示について「必ずしも当該出願の指定商品の原材料として現実に使用されていることを要しない」という枝は正しく、産地表示には大阪で作られたものを「東京」と表示する標章も含まれるという枝も正しいです。役務についても同じで、小売等役務を指定した出願で商標がその取扱商品を表示する標章のみからなるときは、役務の提供の用に供する物を表示するものとして3号に当たります。「それを理由として当該商標登録出願は拒絶されない」という枝は誤りです(3号に該当すれば15条1号の拒絶理由になるからです)。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、「商標登録願:商標『東京』 指定商品 せんべい(製造地 大阪)」と書かれた願書を見ている。向かいに出願人の男性(札「出願人(大阪のせんべい屋)」)が立ち、吹き出し「うちのせんべ

4号から6号は、ありふれた氏、極めて簡単な標章、元号のように誰の商品かを示さない商標で、6号は特定の者まで認識できないことを求めません

4号はありふれた氏又は名称、5号は極めて簡単で、かつ、ありふれた標章です。6号は、前各号に当たらなくても需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標を広く受け止める規定で、地模様やキャッチフレーズ、元号がその例です。6号の「認識することができない」とは、需要者がその商品又は役務が一定の出所から流出したものであることを一般的に認識することができないことをいい、「必ずしも特定の者の業務に係るものであることを認識することができないことをいうものではない」という枝は正しいです。反対に、「特定の者の業務に係るものであることを認識することができない商標でなければならない」という枝は誤りです(商標の本質的な働きは一定の出所に由来することを認識させることで足りるからです)。使用による識別力の獲得を定める3条2項が救うのは3号から5号だけなので、商標が「元号と認識されるにすぎず」6号に当たるときは、使用の結果識別力を得ていても3条2項の適用を受けられないという枝は正しいです。

識別力のない立体的形状でも、識別力のある文字と結合して全体として識別力があれば、立体商標として登録され得ます

識別力は商標全体で判断します。指定商品との関係で識別力を有しない立体的形状であっても、識別力を有する文字などの平面標章と結合していれば、全体として需要者が出所を認識できるので、「立体商標として登録することができる場合がある」という枝は正しいです。「当該立体的形状自体が使用により自他商品の識別力を有するに至らない限り商標登録されることはない」という枝は誤りです(立体的形状の部分だけで識別力を求める必要はないからです)。商標法には識別力のない部分について権利を放棄する手続がないので、「権利不要求の手続をしない限り」登録を受けることができる場合はないという枝も誤りです。もっとも、登録後にその立体的形状だけを使われても、識別力のない部分には26条1項の制限が働きます。立体商標として登録を受けるには5条2項によりその旨を願書に記載します。

商標法3条1項

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二 その商品又は役務について慣用されている商標
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

試験ではこう問われる

  1. 柱書の「使用をする」は使用の意思を含み、査定時に備わっていれば足りる。「この要件は商標登録出願時に備わっていなければならない」という枝は誤り
  2. 登録後に使用を始めても、「当該使用を示す証拠を特許庁長官に提出する必要がある」という枝は誤り。そのような規定はない
  3. 1号は普通名称「のみからなる」商標。普通名称を含む商標が登録を受けることができる場合はないという枝は誤りで、「普通名称の略称が該当する場合がある」という枝は正しい
  4. 普通名称は取引界の認識で判断する。「一般の消費者が特定の名称をその商品の一般的な名称であると意識するに至っていれば足りる」という枝は誤り
  5. 2号の慣用商標には音商標も当たり得る。登録後の普通名称化は46条1項6号の後発的無効理由ではなく、26条1項2号で効力が及ばなくなる
  6. 3号の趣旨は独占適応性の欠如と識別力の欠如(判例)。原材料として「現実に使用されていることを要しない」し、大阪産を「東京」と表示する標章も産地表示に含まれる
  7. 小売等役務の取扱商品を表示する標章のみからなる商標は、役務の提供の用に供する物の表示として3号に当たり拒絶される
  8. 6号は一定の出所から流出したと一般的に認識できないことで足り、特定の者まで認識できないことは不要。6号には3条2項の適用がない
  9. 識別力のない立体的形状と識別力のある文字との結合商標は、立体商標として登録され得る。権利不要求の手続は商標法にない

この用語が問われた枝

令和5年度 問35 枝ハ誤り

自己の業務に係る商品又は役務について「使用をする」とは、現在使用をしているもの及び使用をする意思があり、かつ、近い将来において信用の蓄積があるであろうと推定されるものの両方が含まれるが、この要件は商標登録出願時に備わっていなければならない。

令和8年度 問32 枝ハ誤り

商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」には、使用をする意思があり、かつ、近い将来において信用の蓄積があるであろうと推定される商標が含まれるが、未使用のまま商標登録を受けた場合は、その指定商品又は指定役務について当該商標の使用を開始した時点で、当該使用を示す証拠を特許庁長官に提出する必要がある。

令和7年度 問33 枝イ正しい

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標ではなく、他人に使用をさせるための商標についても商標登録を受けられる場合がある。

令和8年度 問32 枝イ正しい

商標法第3条第1項第1号の「その商品又は役務の普通名称」には、その商品又は役務の普通名称の略称が該当する場合がある。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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