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商標登録出願の願書と出願日の認定(5条・5条の2・6条)しょうひょうとうろくしゅつがんのがんしょとしゅつがんびのにんてい

商標 第3章 出願 短答で22枝

商標登録出願の願書と出願日の認定とは、商標登録を受けようとする者が、出願人の氏名又は名称、商標登録を受けようとする商標、指定商品又は指定役務と商品及び役務の区分を記載した願書を特許庁長官に提出し(5条)、特許庁長官がその願書を提出した日を商標登録出願の日として認定する(5条の2)手続です。出願は商標ごとに、政令で定める区分に従って商品又は役務を指定してしなければなりません(6条)。

パン屋を始めた甲が店名を商標登録しようとして、特許庁に願書を出す場面を考えます。願書には、誰が、どの商標を、どの商品又は役務について登録を受けたいのかを書き、これに商標登録を受けようとする旨の表示を加えた四つがそろっていれば、特許庁長官は願書を提出した日をそのまま出願日として認定します。商標は先願主義(8条)で早い者勝ちなので、出願日がいつになるかは権利の帰属そのものに関わります。そこで5条の2は、出願日に必要な最低限の事項と、欠けたときの補完の手続を定めています。

特許庁の出願窓口の場面。先生が特許庁長官役(札「特許庁長官」)でカウンターの内側に座り、「願書」と大きく書かれた紙を受け取って、その上に日付の受付印を押している。願書には「商標登録願/出願人 甲/商標 ○○ベーカリー/指定商品 第30類 パ

願書には出願人、商標登録を受けようとする商標、指定商品又は指定役務と区分を記載し、立体・動き・ホログラム・色彩のみ・音・位置の商標はその旨も記載します

5条1項は、願書の記載事項として、商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、商標登録を受けようとする商標、指定商品又は指定役務並びに6条2項の政令で定める商品及び役務の区分の三つを挙げています。5条2項は、文字や図形が変化する商標(動き商標・ホログラム商標)、立体的形状からなる商標、色彩のみからなる商標、音からなる商標、そのほか経済産業省令で定める商標(位置商標)について、その旨を願書に記載することを求めます。審査官が願書の図や写真を見ただけでは、平面の図形なのか立体なのか、色彩を指定しているのかが分からないからです。5条2項の号は五つですが、1号の中に動き商標とホログラム商標の両方が入り、3号の色彩のみからなる商標も含まれるので、その旨の記載が必要なのは「立体商標、動き商標、ホログラム商標、音商標及び位置商標の5つに限られない」という枝は正しいです。5条2項5号の経済産業省令で定める商標は位置商標ですが、位置商標に物件の添付は求められていないので、位置商標は「その商標の詳細な説明を願書に記載するとともに、経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない」という枝は誤りです。

  • 5条1項の記載事項出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、商標登録を受けようとする商標、指定商品又は指定役務と商品及び役務の区分です
  • 5条2項でその旨を書く商標変化する商標(動き・ホログラム)、立体的形状からなる商標、色彩のみからなる商標、音からなる商標、経済産業省令で定める商標(位置商標)です
  • 5条3項標準文字のみによって登録を受けようとするときはその旨を書きます

標準文字のみで登録を受けようとするときはその旨を願書に必ず記載し、標準文字の商標が書体の特定されない商標とみなされるわけではありません

5条3項は、特許庁長官の指定する文字(標準文字)のみによって商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならないと定めています。標準文字による出願では、出願人が書いた文字そのものではなく、特許庁長官の指定する文字で現したものが願書に記載した商標として扱われ(12条の2第2項3号)、登録商標の範囲もそれに基づいて定まります(27条1項)。どの表示を商標とするかが変わるので、願書の見た目から判断させるわけにはいかず、条文にも例外は置かれていません。したがって、「願書に記載された商標の構成から明らかに標準文字と認められるときは、標準文字のみによって商標登録を受けようとする旨を願書に記載する必要はない」という枝は誤りです。反対に、その旨の記載があっても構成から標準文字のみからなる商標と認められない出願は、標準文字によらない出願として扱われるので、「願書にその旨の記載があっても、願書に記載された商標の構成から、標準文字のみからなる商標とは認められない出願は、標準文字によらない出願として取り扱われる」という枝は正しいです。標準文字は書体を特許庁長官の指定する字体に固定する仕組みであって、どんな書体でも同じ文字なら含むという意味ではないので、標準文字で登録を受けた商標は「文字書体が特定されていない同一の文字のみからなる商標とみなされるものではない」という枝は正しいです。

商標の詳細な説明の記載と物件の添付は商標の種類ごとに省令が定め、色彩のみは説明、音は説明と光ディスク、立体は特定に必要な場合だけです

5条4項は、経済産業省令で定める商標について、省令の定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならないと定めています。条文は「記載し、又は添付」なので、どの種類の商標に何を求めるかは商標法施行規則4条の8が決めます。色彩のみからなる商標に求められるのは詳細な説明の記載であって光ディスクではないので、色彩のみからなる商標について「経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない」という枝は誤りです。音からなる商標は、音そのものを文章では伝えきれないので、詳細な説明を記載した場合でも音を記録した光ディスクを添付しなければならず、「その商標の詳細な説明を願書に記載した場合であっても、経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない」という枝は正しいです。立体商標と音からなる商標の詳細な説明は、商標を特定するために必要がある場合に限って記載するので、立体的形状からなる商標について「その商標の詳細な説明を願書に記載しなくてもよい場合がある」という枝は正しいです。5条5項は、この記載と物件が商標登録を受けようとする商標を特定するものでなければならないと定め、満たさなければ15条3号の拒絶理由になります。5条6項は、願書の商標を記載する欄の色彩と同一の色彩の部分を商標の一部でないものとみなし、その色彩を商標に含めたいときは範囲を明らかにしてその旨を表示するよう求めています。表示の問題であって詳細な説明の問題ではないので、欄の色彩と同一の色彩の部分があるときは「当該色彩の範囲を明らかにするために、その商標の詳細な説明を願書に記載しなければならない」という枝は誤りです。

特許庁の審査室の場面。先生が審査官役(札「審査官」)で机に座り、机の上に3通の願書が並ぶ。左の願書に「色彩のみからなる商標:商標の詳細な説明」、中の願書に「音からなる商標:商標の詳細な説明+音を記録した光ディスク」、右の願書に「立体商標:特

商標の種類と願書に求められるもの

商標の種類その旨の記載(5条2項)詳細な説明(5条4項)物件の添付(5条4項)
立体商標必要です特定に必要がある場合に限ります不要です
動き商標・ホログラム商標必要です記載します不要です
色彩のみからなる商標必要です記載します不要です
音商標必要です特定に必要がある場合に限ります音を記録した光ディスクを添付します
位置商標必要です記載します不要です

出願日は願書を提出した日ですが、4つの要件のどれかを欠けば補完命令が出て、補完すれば手続補完書を提出した日が出願日になります

5条の2第1項は、商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないとき、出願人の氏名若しくは名称の記載がなく又は出願人を特定できる程度に明確でないとき、願書に商標登録を受けようとする商標の記載がないとき、指定商品又は指定役務の記載がないときの四つの場合を除き、特許庁長官は願書を提出した日を出願日として認定しなければならないと定めています。四つのどれかに当たるときは、不受理にするのではなく、相当の期間を指定して補完を命じなければならず(同条2項)、補完は手続補完書で行います(同条3項)。指定された期間内に補完をしたときは手続補完書を提出した日が出願日になり(同条4項)、補完をしないときは出願を却下することができます(同条5項)。出願人の氏名の記載が特定できる程度に明確でなければ四つの要件を欠くので、その場合でも「当該願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない」という枝は誤りです。出願人の氏名又は名称が記載されていない出願について「その出願人に対し、相当の期間を指定して商標登録出願について補完すべきことを命じなければならない」という枝は正しく、期間内に補完をしたときは「当該商標登録出願に係る手続補完書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない」という枝は正しいです。補完は出願日の認定に関わる5条の2だけの用語で、出願手数料を納めていないときは77条2項で準用する特許法17条3項による補正命令の対象です。したがって、手数料を納付しないときに「特許庁長官により手続の補完をすべきことが命じられる」という枝は誤りです。

横軸の時系列を中心にした図。先生が先生役(札「先生」)で横軸の上に立ち、指し棒で札を示している。横軸の左から順に札「願書を提出した日(出願人の氏名の記載なし)」「補完命令(相当の期間を指定)」「手続補完書を提出した日=商標登録出願の日」の3
  • 出願日の認定を欠く4つの場合(5条の2第1項)商標登録を受けようとする旨の表示が明確でない、出願人の氏名若しくは名称の記載がなく又は特定できる程度に明確でない、商標の記載がない、指定商品又は指定役務の記載がない、の四つです
  • 補完命令(2項・3項)相当の期間を指定して補完を命じなければならず、補完は手続補完書の提出で行います
  • 補完したとき(4項)手続補完書を提出した日が出願日になります
  • 補完しないとき(5項)出願を却下することができます
  • 手数料の不納補完ではなく、77条2項で準用する特許法17条3項の補正命令です

一商標一出願と区分に従った指定に反する出願は拒絶理由になりますが異議・無効理由にはならず、5条5項違反は拒絶・異議・無効のすべての理由になります

6条1項は、商標登録出願は商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して商標ごとにしなければならないと定め、2項はその指定を政令で定める商品及び役務の区分に従ってすることを求めます。一つの出願に複数の商標を入れると審査も権利の範囲も整理できないからです。3項は、区分が商品又は役務の類似の範囲を定めるものではないと念を押しています。6条1項・2項の要件を満たさない出願は15条3号の拒絶理由になりますが、43条の2と46条1項には6条が挙げられていないので、一商標一出願の原則に違反することは「拒絶理由に該当するが、登録異議申立理由又は無効理由のいずれにも該当しない」という枝は正しく、6条1項に違反して登録されても「その商標登録を無効にすることについて審判を請求することはできない」という枝は正しいです。登録後に区分の整理を蒸し返しても第三者の利益にならないからです。一方、5条5項の商標を特定するという要件は、どの商標に権利が及ぶかを左右するので、15条3号の拒絶理由であるとともに43条の2第1項3号の登録異議の理由にも46条1項3号の無効理由にもなります。

商標掲載公報の発行の日から2月間は出願書類と附属物件が特許庁で公衆の縦覧に供されます

願書と添付した物件は、18条4項により商標掲載公報の発行の日から2月間、特許庁において公衆の縦覧に供されます。登録異議の申立ての期間(43条の2)と同じ2月で、何人も登録の当否を調べられるようにするためです。ただし、個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがある書類又は物件や公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある書類又は物件で、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるものは除かれます。「商標掲載公報の発行の日から2月間、特許庁において出願書類及びその附属物件を公衆の縦覧に供しなければならない」という枝は正しいです。個人の名誉等を害するおそれがある書類のうち秘密保持の必要がないものを縦覧に供するときは、提出した者にその旨と理由を通知します(18条5項)。

商標法5条の2第1項

特許庁長官は、商標登録出願が次の各号の一に該当する場合を除き、商標登録出願に係る願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。
一 商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 商標登録出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が商標登録出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 願書に商標登録を受けようとする商標の記載がないとき。
四 指定商品又は指定役務の記載がないとき。

商標法5条の2第4項

特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしたときは、手続補完書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。

商標法5条4項

経済産業省令で定める商標について商標登録を受けようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、その商標の詳細な説明を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 5条2項でその旨の記載を要する商標は「立体商標、動き商標、ホログラム商標、音商標及び位置商標の5つに限られない」(色彩のみからなる商標も入る)
  2. 標準文字の旨は構成から明らかでも願書に書く。「標準文字のみによって商標登録を受けようとする旨を願書に記載する必要はない」という枝は誤り。標準文字の商標は書体不特定の商標とみなされるものではない
  3. 詳細な説明と物件の添付は「記載し、又は添付」で種類ごとに違う。色彩のみは説明だけで、物件を「添付しなければならない」という枝は誤り。音は説明を書いても光ディスクを添付する。立体と音の説明は特定に必要な場合だけ
  4. 位置商標に物件の添付はない。詳細な説明「とともに、経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない」という枝は誤り
  5. 記載欄の色彩と同一の色彩の部分は商標の一部でないものとみなす(5条6項)。範囲を明らかにして「その旨を表示」すればよく、「詳細な説明を願書に記載しなければならない」という枝は誤り
  6. 出願日は願書提出日。旨の表示・出願人の特定・商標の記載・指定商品役務の記載のどれかを欠けば補完命令で、補完すれば「手続補完書を提出した日」が出願日。出願人が特定できなくても出願日を「認定しなければならない」という枝は誤り
  7. 手数料の不納は補正命令(77条2項・特許法17条3項)。「手続の補完をすべきことが命じられる」という枝は誤り
  8. 6条(一商標一出願・区分)違反は拒絶理由だが異議理由・無効理由ではない。5条5項違反は拒絶・異議・無効のすべての理由になる。商標掲載公報発行の日から2月間は出願書類と附属物件が縦覧に供される(18条4項)

この用語が問われた枝

令和5年度 問32 枝イ正しい

商標登録を受けようとする商標が立体商標である場合、願書にその旨を記載しなければならないが、このような記載が必要となるのは、立体商標、動き商標、ホログラム商標、音商標及び位置商標の5つに限られない。

令和5年度 問32 枝ロ誤り

商標登録出願において、商標登録出願人の氏名の記載が商標登録出願人を特定できる程度には明確でない場合であっても、願書に商標登録を受けようとする旨の明確な表示があり、かつ、商標登録を受けようとする商標の記載及び指定商品又は指定役務の記載があるときは、特許庁長官は、当該願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。

令和6年度 問36 枝ロ誤り

商標登録を受けようとする商標が色彩のみからなる商標である場合、商標登録出願人は、当該商標を特定するために、経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければならない。

令和6年度 問36 枝ニ誤り

商標登録を受けようとする商標について、商標法第5条第3項に規定される標準文字のみによって商標登録を受けようとする場合において、願書に記載された商標の構成から明らかに標準文字と認められるときは、標準文字のみによって商標登録を受けようとする旨を願書に記載する必要はない。

枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。

商標を肢別演習で解く

この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。

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