その他の不登録事由(4条1項12号・14号・16号〜18号)そのたのふとうろくじゆう
その他の不登録事由とは、商標法4条1項のうち、他人の登録防護標章と同一の商標(12号)、品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標(14号)、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標(16号)、ぶどう酒・蒸留酒の産地を表示する標章を他の産地のものに使用する商標(17号)、商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標(18号)を商標登録しないとする定めです。周知商標との関係を定める10号・15号・19号や、先願登録商標との関係を定める11号とは別に、それぞれ固有の理由で登録を拒みます。
商標登録の願書が審査に回ると、審査官は3条の識別力のほかに4条1項の各号を一つずつ確かめます。12号・14号・16号・17号・18号は、著名商標を守る防護標章登録、種苗法の品種登録、需要者が品質を取り違えるおそれ、ぶどう酒の産地表示を守る国際的な約束、商品がもともと持つ形や色や音を独占させない配慮、という別々の理由で登録を拒みます。理由が別々なので、同一か類似か、本人の出願も拒むか、出願時にも該当を要するかが号ごとに違います。

12号は、他人の登録防護標章と同一の商標をその防護標章登録に係る指定商品役務に使用するものを登録せず、類似の商標や類似の商品役務には及びません
12号は「他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの」を拒みます。防護標章登録は、著名な登録商標について、他人が同じ標章を非類似の商品役務に使うと出所の混同が起こる範囲まで禁止権を広げる制度なので、12号が止めるのもその範囲に限られます。「他人の登録防護標章と類似の商標であって」その指定商品役務に使うものが「商標登録を受けることができる場合がない」という枝は誤りで、登録防護標章と同一の商標でも防護標章登録の「指定商品又は指定役務に類似する指定商品又は指定役務について使用をするものについては、商標登録を受けることができる場合はない」という枝も誤りです。類似の範囲は15号などで別に見ます。70条2項により、色彩を同一にすれば同一の標章と認められる色違いの標章は登録防護標章に含まれます。11号と違って出願の先後は要件でなく、査定時に他人の登録防護標章があれば足りるので、甲の出願に係る商標が「その出願の日後の出願に係る他人乙の登録防護標章と同一の商標であって」その指定役務に使うものなら、「それを理由として当該商標登録出願は拒絶される」という枝は正しいです。

14号は、品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標をその品種の種苗又は類似の商品役務に使用するものを登録せず、品種登録を受けた本人の出願にも適用されます
14号は「種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」を拒みます。品種の名称は種苗法の下で誰もがその品種を呼ぶのに使う言葉なので、商標として一人に独占させないためです。8号のように本人や承諾を得た者を除く文言はなく、4条2項の例外も6号だけに関するものなので、「種苗法による品種登録を受けた甲であれば、品種Aの種苗又はこれに類似する商品について商標登録を受けることができる」という枝は誤りで、品種登録を受けている名称と同一の商標について「その品種の種苗を指定商品として商標登録を受けることができる場合がある」という枝も誤りです。14号は4条3項に挙がっていないので、出願時に品種登録がなくても査定時にあれば拒絶されます。品種登録の期間が過ぎれば14号には当たらなくなりますが、その名称は品種の普通名称として3条1項1号などで登録されないことがあるので、直ちに登録を受けることができるわけではありません。
16号は、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標を登録せず、登録後に該当するようになったときは除斥期間のない後発的無効理由になります
16号は「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」を拒みます。需要者が商標を見て中身を取り違えることを防ぐ公益的な規定なので、現に誤認が生じている必要はなく、おそれで足ります。商品の産地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、その商品については3条1項3号で識別力がないとされますが、それを他の商品に使えばその産地の商品だと誤認させるおそれがあるので、「当該商品以外の商品については、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標に該当する場合はない」という枝は誤りです。登録の時は問題がなくても、商標登録がされた後に登録商標が16号に当たるものとなっているときは46条1項6号の無効理由になり、46条2項により「利害関係人に限り、そのことを理由として当該商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる」という枝は正しいです。47条1項の除斥期間は3条や4条1項8号・11号から14号などの列挙された理由に限られ、46条1項6号は入っていないので、登録後に品質の誤認のおそれがある商標になった場合に「商標権の設定登録の日から5年を経過した後は、当該商標登録について、商標登録の無効の審判の請求をすることができない」という枝は誤りです。

17号は、ぶどう酒又は蒸留酒の産地を表示する標章をその産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒に使用する商標を登録せず、4条3項で出願時にも該当することが必要です
17号は、日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章、又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうちその加盟国でその産地以外の地域を産地とするものに使用することが禁止されているものを有する商標であって、その産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒に使用するものを拒みます。TRIPS協定がぶどう酒と蒸留酒の地理的表示に強い保護を求めているのを受けた規定なので、16号と違って品質の誤認を生ずるおそれの有無は問いません。17号は4条3項に挙がっているので、出願の時に該当しないものには適用されません。「特許庁長官による指定が、その商標登録出願の出願日の後になされた場合には」17号に該当しないという枝は正しいです。17号違反の無効審判は47条1項により、不正競争の目的で登録を受けた場合を除き、設定登録の日から5年の除斥期間にかかります。
18号は、商品等が当然に備える特徴のうち政令で定める立体的形状・色彩・音のみからなる商標を登録せず、3条2項による救済はありません
18号は「商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標」を拒みます。政令の商標法施行令1条の2が定める特徴は立体的形状、色彩及び音です。商品がもともと持っている形や色や音に商標権を認めると、同じ商品を作る他人が市場から締め出されるので、識別力の有無とは別に登録を拒みます。3条2項が使用による識別力の獲得で適用を外すのは3条1項3号から5号までだけで、4条1項は「前条の規定にかかわらず」登録を受けることができない商標を定めるので、「単一の色彩のみからなる商標は、商標法第3条第2項の規定により」識別力が認められれば18号に該当することはないという枝も、「音の商標が、商標法第3条第2項の規定により」識別力が認められれば18号に該当することはないという枝も誤りです。「指定商品が当然に備える立体的形状のみからなる立体商標であっても、商標登録を受けることができる場合がある」という枝も誤りです。反対に、立体的形状も色彩も含まない位置商標は政令の特徴のみからなる商標になり得ないので、位置商標(「構成要素として立体的形状又は色彩を含むものを除く」)が18号に該当するときはないという枝は正しいです。平成26年改正の前は、18号は商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標を対象にしていましたが、色彩のみ・音の商標の導入に合わせて今の文言になりました。登録後も26条1項5号により商標権の効力は政令の特徴のみからなる商標には及びません。

旧13号は商標権の消滅後1年を経過していない他人の商標と同一又は類似の商標を登録しないとしていましたが、平成23年改正で削除され、現行法にはありません
かつての13号は、他人の商標権が消滅した日から1年を経過していない商標と同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品役務について登録しないとしていました。消滅直後の商標に残る信用との混同を防ぐ規定でしたが、平成23年改正で削除され、現行の4条1項13号は「削除」とだけ書かれています。そのため、商標権が消滅した日「から1年を経過していない他人の商標」又はこれに類似する商標を同一又は類似の商品役務に使用する出願は登録を受けることができないという枝は、現行法では誤りです。消滅後の商標との混同は、周知性があれば10号・15号で見ることになります。
- 12号他人の登録防護標章と同一の商標で、その防護標章登録に係る指定商品役務に使うものです。類似の商標・類似の商品役務には及ばず、出願の先後を問いません
- 14号品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標で、その品種の種苗又は類似の商品役務に使うものです。本人の出願にも適用され、4条3項の対象外です
- 16号商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標です。登録後の該当は46条1項6号の無効理由で、除斥期間はありません
- 17号ぶどう酒・蒸留酒の産地の標章を他の産地のものに使う商標です。誤認のおそれは問わず、4条3項で出願時にも該当を要します
- 18号商品等が当然に備える特徴のうち政令で定める立体的形状・色彩・音のみからなる商標です。3条2項の救済はありません
- 13号平成23年改正で削除されました
商標法4条1項12号他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの
商標法4条1項14号種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
商標法4条1項16号商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標
商標法4条1項17号日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの
商標法4条1項18号商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
商標法46条1項6号商標登録がされた後において、その登録商標が第四条第一項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているとき。
試験ではこう問われる
- 12号は登録防護標章と同一の商標をその指定商品役務に使うものだけ。「他人の登録防護標章と類似の商標」や、指定商品役務に「類似する指定商品又は指定役務について使用をするもの」が登録を受けられる場合はないという枝は誤り
- 12号は出願の先後を問わない。「その出願の日後の出願に係る他人乙の登録防護標章と同一の商標」でも、それを理由に拒絶される
- 14号は品種登録を受けた本人にも適用される。「種苗法による品種登録を受けた甲であれば」登録を受けられるという枝は誤り。4条3項の対象外で査定時に判断する
- 品種登録の期間が経過しても直ちに登録を受けることができるわけではなく、普通名称として3条1項1号で拒絶され得る
- 16号は誤認のおそれで足りる。産地表示のみの商標を「当該商品以外の商品については」品質の誤認を生ずるおそれがある商標に「該当する場合はない」という枝は誤り
- 登録後に16号に該当するようになれば46条1項6号の無効理由。利害関係人に限り請求でき、5年の除斥期間はない
- 17号は4条3項の対象で、特許庁長官の産地の指定が出願日の後なら該当しない。誤認のおそれは問わない
- 18号は3条2項で救われない。色彩のみ・音の商標が識別力を獲得しても18号に該当し得る。立体的形状も色彩も含まない位置商標は該当しない。旧13号は削除済み
この用語が問われた枝
甲の商標登録出願に係る商標が、その出願の日後の出願に係る他人乙の登録防護標章と同一の商標であって、当該防護標章登録に係る指定役務について使用をするものである場合、それを理由として当該商標登録出願は拒絶される。
他人の登録防護標章と同一の商標であって、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務に類似する指定商品又は指定役務について使用をするものについては、商標登録を受けることができる場合はない。
他人の登録防護標章と類似の商標であって、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするものについての商標登録出願は、商標登録を受けることができる場合がない。
甲は、品種Aについて、種苗法(平成 10 年法律第 83 号)第 18 条第1項の規定による品種登録を受けた。この場合、品種Aの名称と同一の商標については、種苗法による品種登録を受けた甲であれば、品種Aの種苗又はこれに類似する商品について商標登録を受けることができる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。