罰則と外国国旗・国際機関標章・外国公務員贈賄(21条・16〜18条)ばっそくとがいこくこっきこくさいきかんひょうしょうがいこくこうむいんぞうわい
罰則とは、不正競争防止法21条が定める刑事罰で、営業秘密侵害罪(1項・2項、10年以下の拘禁刑若しくは2000万円以下の罰金又は併科)と、不正の目的などをもって行う周知表示混同惹起・著名表示冒用・形態模倣・技術的制限手段の無効化、虚偽の表示、秘密保持命令違反、16条・17条違反の罪(3項、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科)などから成ります。外国国旗・国際機関標章・外国公務員贈賄とは、外国の国旗等を商標として商業上使用すること(16条)、国際機関の標章を商標として使用すること(17条)、外国公務員等に国際的な商取引に関して不正の利益を供与すること(18条)の禁止で、いずれも21条で処罰されます。
不正競争は原則として民事の問題で、差止めや損害賠償で解決します。しかし、会社の設計図を持ち出して競合他社に売るような行為は、民事の賠償だけでは抑えきれません。そこで21条は、営業秘密の侵害と、不正の目的でする混同惹起・著名表示冒用・形態模倣などに刑事罰を置きました。ただし、すべての不正競争に罰則があるわけではなく、限定提供データ・ドメイン名・信用毀損・代理人等には罰則がありません。罰則は号ごとに目的の要件が違うので、どの行為にどの目的が要るかを条文で押さえることが中心になります。

営業秘密侵害罪は図利加害目的が要件で、10年以下の拘禁刑若しくは2000万円以下の罰金に処し、未遂も罰し、平成27年改正で非親告罪になりました
21条1項は、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で(図利加害目的)、詐欺等行為や管理侵害行為により営業秘密を取得した者、そうして取得した営業秘密を使用・開示した者などを、10年以下の拘禁刑若しくは2000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科します。2項は、営業秘密を保有者から示された者(従業者や元従業者など)が図利加害目的で任務に背いて営業秘密を領得・使用・開示した場合を同じ刑で罰します。いずれも図利加害目的が要件なので、持ち出し禁止の書類を「在宅勤務のために営業秘密保有者に無断で自宅に持ち帰る行為は、営業秘密に係る刑事罰の対象となる」という枝は誤りです(図利加害目的がないからです)。2項1号ハの領得は、消去すべき記録を消去せず、かつ消去したように仮装することが要件なので、「当該データを消去し忘れて、当該パソコンを保管し続けることは、営業秘密に係る刑事罰の対象となる」という枝は誤りです。この罪は平成27年改正で非親告罪になり、親告罪として残っているのは秘密保持命令違反の罪(3項6号・7項)だけです。従業員が複製物を売り渡した場合に「甲社からの告訴がない場合であっても、乙の行為は、不正競争防止法上の刑事罰の対象となる」という枝は正しいです。未遂は1項の罪と2項の罪(1号の領得を除く)などについて罰します(6項)。令和4年改正(令和7年6月施行)で懲役は拘禁刑になったので、令和7年度以前の枝や解説の「懲役」は読み替えてください(令和7年度の短答は施行前の5月に行われています)。また、令和5年改正(令和6年4月施行)で項の番号が動き、以前の2項の罪は3項に、未遂を罰する4項は6項に、親告罪を定める5項は7項になっているので、令和5年度以前の解説の項番号も現行法で読み替えてください。

- 国外への加重(4項・5項)日本国外で使用する目的での取得、国外で使用する目的があることを知っての開示、国内で事業を行う保有者の営業秘密の国外での使用は、10年以下の拘禁刑若しくは3000万円以下の罰金又は併科です
- 国外犯(8項)日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密について、日本国外で1項・2項などの罪を犯した者にも適用します
- 没収・追徴(13項〜15項)営業秘密侵害罪により得た財産やその果実・対価は没収でき、没収できないときは価額を追徴できます
- 両罰規定(22条)法人の従業者等が業務に関して罪を犯したときは、行為者のほか法人にも罰金刑を科します。4項の罪(国外加重と外国公務員贈賄)は10億円以下、1項の営業秘密侵害罪は5億円以下、3項の罪は3億円以下で、2項・5項の罪は両罰の対象に掲げられていません
21条3項の罪は号ごとに目的の要件が違い、混同惹起と誤認惹起は不正の目的、著名表示冒用は信用名声を利用し又は害する目的、形態模倣は不正の利益を得る目的で、未遂は罰しません
3項は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又は併科する罪を並べています。1号は不正の目的をもって2条1項1号(周知表示混同惹起)又は20号(誤認惹起)の不正競争を行ったときです。民事の不正競争には目的の要件がありませんが、処罰には不正の目的が要るので、周知表示と同一の表示を使った商品を販売して「他人の商品と混同を生じさせる行為は、目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」という枝は誤りです。2号は、他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又はその信用若しくは名声を害する目的で2条1項2号の不正競争を行ったときです。目的が要件で結果は要件でないので、「当該他人の名声の毀損という結果が発生しなければ、刑事罰の対象とはならない」という枝は誤りです。3号は不正の利益を得る目的で2条1項3号(形態模倣)の不正競争を行ったときで、3号の不正競争には譲渡・貸渡し・そのための展示・輸出・輸入が含まれます。模倣品を「譲渡若しくは貸渡しのために展示する行為は、不正の利益を得る目的であっても、刑事罰の対象とはならない」という枝は誤りです。4号は、不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で2条1項17号・18号の不正競争を行ったときなので、効果を妨げる機能を「可能とする機能を有する装置を譲渡する行為は、目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」という枝は誤りです。6項の未遂処罰は1項・2項などの営業秘密侵害罪に限られ、3項の罪には及びません。不正の目的をもってする周知表示の使用は「その未遂も刑事罰の対象である」という枝は誤りです。

商品や役務の原産地・品質・内容等について誤認させるような虚偽の表示をしたときは、不正の目的がなくても処罰されます
3項5号は、商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信に、その商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたときを処罰します。1号と違って不正の目的を要件にしていません。虚偽の表示は消費者を直接だますもので、目的を問わず取り締まる必要があるからです。「その役務の内容について誤認させるような虚偽の表示をする行為は、目的の如何を問わず刑事罰の対象となる」という枝は正しいです。古米に新米と表示して販売する行為は品質についての虚偽の表示なので、「不正の目的をもっていたときに限り、不正競争防止法に規定する刑事罰の対象となる」という枝は誤りです。このほか3項には、秘密保持命令に違反したとき(6号、親告罪)と、16条又は17条の規定に違反したとき(7号)が並びます。
限定提供データ・ドメイン名・信用毀損・代理人等の商標冒用には罰則がなく、民事の救済だけが定められています
21条は処罰する不正競争を2条1項の号で特定しており、限定提供データ(11号〜16号)、ドメイン名(19号)、信用毀損(21号)、代理人等の商標冒用(22号)は掲げられていません。限定提供データは営業秘密より保護の必要が緩く、ドメイン名や信用毀損は民事の救済で足りるとされたからです。図利加害目的で「人を欺いて限定提供データを取得する行為は、刑事罰の対象となる」という枝は誤りです。不正の利益を得る目的で他人の特定商品等表示と同一・類似の「ドメイン名を使用する権利を取得する不正競争は、刑事罰の対象である」という枝は誤りです。不正の目的をもって「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する不正競争は、刑事罰の対象である」という枝も誤りです(刑法の信用毀損罪は別の問題です)。
2条1項の不正競争と21条の罰則の対応
| 不正競争 | 罰則 | 目的の要件 |
|---|---|---|
| 周知表示混同惹起(1号)・誤認惹起(20号) | 3項1号 | 不正の目的 |
| 著名表示冒用(2号) | 3項2号 | 信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的、又は害する目的 |
| 形態模倣(3号) | 3項3号 | 不正の利益を得る目的 |
| 営業秘密(4号〜10号) | 1項・2項(未遂も) | 不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的 |
| 限定提供データ(11号〜16号) | なし | |
| 技術的制限手段(17号・18号) | 3項4号 | 不正の利益を得る目的又は技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的 |
| ドメイン名(19号) | なし | |
| 信用毀損(21号) | なし | |
| 代理人等の商標冒用(22号) | なし |
外国の国旗等や国際機関の標章を商標として商業上使用することは何人も禁じられ、外国官庁や国際機関の許可があれば除かれます
16条1項は、何人も、外国の国旗若しくは国の紋章その他の記章であって経済産業省令で定めるもの(外国国旗等)と同一若しくは類似のものを商標として使用し、又はこれを商標として使用した商品を譲渡等してはならないと定め、その使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときを除きます。2項は商品の原産地を誤認させるような方法での外国紋章の使用、3項は外国の政府等の監督用・証明用の印章・記号の使用を同じように禁じます。17条は、国際機関と関係があると誤認させるような方法で国際機関を表示する標章と同一・類似のものを商標として使用することを禁じ、その国際機関の許可を受けたときを除きます。違反は21条3項7号で処罰されるので、「外国の国旗と類似のものを商標として使用した商品を販売したとしても、刑事罰の対象にはならない」という枝は誤りです。商標法4条1項1号から3号まで(監督用・証明用の印章・記号は5号)が同じ標章の商標登録を拒絶する側の規定で、不正競争防止法はその商業上の使用そのものを禁じる側の規定です。
外国公務員等に国際的な商取引に関して不正の利益を供与し、その申込み・約束をすることは禁じられ、日本国民の国外犯も処罰されます
18条1項は、何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならないと定めています。実際に渡さなくても、申込みや約束の段階で成立します。外国公務員等は2項に列挙され、外国の政府・地方公共団体の公務に従事する者、外国の特別の法令で設立された団体の事務に従事する者、政府が議決権の過半を所有する事業者の事務に従事する者、政府間の国際機関の公務に従事する者、これらから委任された事務に従事する者です。違反は21条4項4号で10年以下の拘禁刑若しくは3000万円以下の罰金又は併科です。10項でこの罪は刑法3条の例に従うとされ、「日本国民が国外で罪を犯した場合にも、刑事罰の対象となる」という枝は正しいです。11項により、日本国内に主たる事務所を有する法人の従業者等がその法人の業務に関して国外で犯したときは、日本国民でない者にも適用されます。法人には22条で10億円以下の罰金刑が科されます。

不正競争防止法21条3項次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第二十号に掲げる不正競争を行ったとき。
二 他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第二条第一項第二号に掲げる不正競争を行ったとき。
三 不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行ったとき。
四 不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十七号又は第十八号に掲げる不正競争を行ったとき。
五 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をしたとき(第一号に掲げる場合を除く。)。
六 秘密保持命令に違反したとき。
七 第十六条又は第十七条の規定に違反したとき。
不正競争防止法21条6項第一項、第二項(第一号を除く。)、第四項(第四号を除く。)及び前項(第一号を除く。)の罪の未遂は、罰する。
不正競争防止法18条1項何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
試験ではこう問われる
- 営業秘密侵害罪は図利加害目的が要件。在宅勤務のための無断持ち帰りや、消去し忘れて保管し続けるだけでは処罰されない(仮装が要る)
- 営業秘密侵害罪は平成27年改正で非親告罪。「告訴がない場合であっても」刑事罰の対象になる。親告罪は秘密保持命令違反だけ
- 未遂処罰は営業秘密侵害罪の一部だけ。周知表示混同惹起は「その未遂も刑事罰の対象である」という枝は誤り
- 3項1号は不正の目的が要件。混同を生じさせる行為が「目的の如何を問わず」処罰されるという枝は誤り。著名表示冒用は名声を害する目的で足り、結果の発生は不要
- 形態模倣は不正の利益を得る目的があれば展示・輸出も処罰。技術的制限手段は図利加害目的が要件で「目的の如何を問わず」ではない
- 虚偽の表示(3項5号)は目的を問わない。古米に新米と表示する行為が「不正の目的をもっていたときに限り」処罰されるという枝は誤り
- 限定提供データ・ドメイン名・信用毀損・代理人等には罰則がない。「人を欺いて限定提供データを取得する行為は、刑事罰の対象となる」という枝は誤り
- 外国国旗等・国際機関標章の商標としての使用は16条・17条で禁じられ、違反は刑事罰(3項7号)。外国公務員贈賄は申込み・約束でも成立し、日本国民の国外犯も処罰(刑法3条の例)
この用語が問われた枝
甲社の従業員である乙が、金銭を得る目的で、甲社の営業秘密が記載された文書を複製し、その複製物を丙社に売り渡した。甲社からの告訴がない場合であっても、乙の行為は、不正競争防止法上の刑事罰の対象となる。
営業秘密が記載された書類であって、社内からの持ち出しが禁止されているものを、在宅勤務のために営業秘密保有者に無断で自宅に持ち帰る行為は、営業秘密に係る刑事罰の対象となる。
自己の所有するパソコンに営業秘密のデータを上司の承認を得て保存していた従業員が、データ消去義務に反して、当該データを消去し忘れて、当該パソコンを保管し続けることは、営業秘密に係る刑事罰の対象となる。
不正の目的をもって、他人の商品等表示として周知のものと同一又は類似の商品等表示を使用する不正競争は、その未遂も刑事罰の対象である。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。