信用毀損行為(2条1項21号)しんようきそんこうい
信用毀損行為とは、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為で、2条1項21号の不正競争です。
ライバル会社の取引先を回って「あの会社の製品はうちの特許を侵害している」「あの会社はもうすぐ倒産する」と根拠のない話を言いふらせば、相手は取引を失います。競争相手の評判をうそで落として客を奪う行為は、品質を競う公正な競争ではありません。2条1項21号は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為を不正競争にしています。競争関係のない相手への中傷は、不正競争ではなく民法の不法行為の問題になります。

競争関係が要件で、需要者又は取引者を共通にする可能性があれば足りますが、目的の要件はありません
21号は「競争関係にある他人」の信用を害する行為に限られます。競争関係は、現に同じ商品で顧客を奪い合っていることまでは要らず、双方の営業について需要者又は取引者を共通にする可能性があれば足りると解されています。「「競争関係」とは、行為者と当該「他人」との双方の営業につき、その需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りる」という枝は正しいです。靴の製造業者と販売業者の間にも競争関係は認められ得るので、「靴の製造業者が靴の販売業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為は、不正競争とならない」という枝は誤りです。反対に、社長の個人的な恨みから競争関係のない会社について虚偽の事実を流布した事例で「甲社の行為は、信用の毀損に係る不正競争となる」という枝は誤りで、引っ越し業者のスタッフによる窃盗があったという虚偽の事実を動画で配信した専業の動画配信者について「乙の当該動画配信行為は、信用毀損に係る不正競争に該当する」という枝も誤りです。どちらも一般不法行為の問題にとどまります。条文に図利加害目的は書かれていないので、「虚偽の事実を告知・流布するに際して、図利加害目的を有することが必要である」という枝は誤りです。
- 競争関係双方の営業につき需要者又は取引者を共通にする可能性があれば足ります。無関係の相手への中傷は民法709条の不法行為です
- 虚偽の事実客観的真実に反する事実です。真実や、証拠による証明になじまない意見・論評は含まれません
- 営業上の信用営業活動に関する経済上の外部的評価で、商品・役務の社会的評価や支払能力・営業能力への社会的信頼を含みます
- 告知・流布他人以外の者に伝える行為です。相手方本人に直接告げるだけでは該当しません
- 目的要件ではありません
虚偽の事実は客観的真実に反する事実で、真実の流布や証拠による証明になじまない意見・論評は当たりません
信用を落とす目的があっても、伝えた内容が真実なら21号には当たりません。「当該他人の法令違反行為について真実を流布する行為は、不正競争には該当しない」という枝は正しいです。客観的な事実に基づく比較広告も、相手の売上げが減ったとしても虚偽の事実の流布ではありません。事実とは証拠などにより虚偽かどうかを判断できる客観的な事項をいうので、価値や優劣についての批評は意見・論評の表明であって事実の摘示ではありません。「証拠等による証明になじまない価値判断に基づく意見表明であれば、信用毀損に係る不正競争には該当しない」という枝は正しいです。訴訟を提起したという事実を自社のホームページに載せた後に敗訴が確定しても、提訴の事実そのものは真実のままなので、「甲の掲載行為は、信用毀損に係る不正競争に該当しない」という枝は正しいです。虚偽の事実を誰が作り出したかは問われないので、第三者が虚構した内容を告知・流布しても該当します。虚偽かどうかは、告知を受けた相手方の普通の注意と読み方・聞き方を基準に、相手方の予備知識や告知の状況も踏まえて判断されます。

営業上の信用は第三者からの経済的な評価なので、相手方本人への直接の告知は当たらず、他人は名称がなくても特定できれば足ります
営業上の信用は、営業活動に関する経済上の外部的評価です。「その営業によって提供される商品や役務の社会的評価、又は、その者の支払能力や営業能力等に関する社会的信頼が含まれる」という枝は正しいです。外部からの評価を害する行為が対象なので、告知・流布は競争関係にある他人についての虚偽の事実をその他人以外の者に伝えることをいいます。「競争関係にある相手方に関する虚偽の事実を、その相手方に対し直接告知することは、信用毀損に係る不正競争には該当しない」という枝は正しいです。著作権侵害を理由に販売中止を求める警告書を相手本人に送り、後に敗訴が確定した事例でも、送付先が本人なので「乙に対して警告書を送付した甲の行為は、虚偽の事実の告知となり、信用毀損に係る不正競争に該当する」という枝は誤りです。信用を害される他人は特定されている必要がありますが、名称を明示していなくても、告知の内容と業界内で周知の情報から受け手が誰のことか理解できれば足ります。「当該告知を受けた取引先において、当該他人が誰を指すのか理解できるのであれば、それで足りる」という枝は正しいです。
権利侵害の警告が後に非侵害と判明すれば虚偽の事実の告知になり得て、弁理士の鑑定を得ていても過失が否定されるとは限りません
競業者の商品が自己の特許権や実用新案権を侵害すると取引先に告知したり広告したりした後で、裁判所がその商品は権利範囲に属しないと認定すれば、その告知・広告は競争関係にある他人の信用を害する虚偽の事実の流布になり得ます。権利者が本気で侵害と信じていたかどうかは21号の該当性を左右しません。損害賠償(4条)に要る故意・過失は、警告前にどれだけ調査・検討したかで判断され、専門家の意見を得ていたことだけで直ちに否定されるわけではありません。「広告掲載前に弁理士の鑑定を得ていたことにより、過失が否定されるとは限らない」という枝は正しいです。権利者が侵害の疑いを相手の取引先に伝えるときは、確たる根拠を持ち、断定的な表現を避けることが実務上の注意になります。

救済は差止め・損害賠償・信用回復の措置で、使用料相当額と譲渡数量による算定の規定はなく、刑事罰もありません
営業上の利益を侵害された者は、3条の差止請求と4条の損害賠償請求ができ、侵害者の利益の額を損害額と推定する5条2項も使えます。さらに14条により、故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対し、裁判所は損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、信用を回復するのに必要な措置を命ずることができ、新聞などへの謝罪広告が命じられることがあります。一方、5条3項の使用料相当額は1号から9号まで・11号から16号まで・19号・22号に限られ、21号は入っていません。「営業上の信用の利用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額として請求することができるとする規定はない」という枝は正しいです。5条1項の譲渡数量による算定も1号から16号までと22号が対象で、21号には使えません。21条の罰則は21号を掲げていないので、「不正の目的をもって、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する不正競争は、刑事罰の対象である」という枝は誤りです(刑法の信用毀損罪は別の問題です)。平成27年改正と平成30年改正で号が繰り下がったため、令和元年度以前の枝ではこの号が14号(平成27年度以前)や15号(平成28年度から令和元年度まで)として出ています。
不正競争防止法2条1項21号競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
不正競争防止法14条故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。
試験ではこう問われる
- 競争関係は需要者又は取引者を共通にする可能性で足りる。製造業者と販売業者の間でも認められ得る。恨みによる無関係の会社への流布、動画配信者による引っ越し業者への中傷は不正競争でない
- 図利加害目的は要件でない。「図利加害目的を有することが必要である」という枝は誤り
- 虚偽の事実は客観的真実に反する事実。真実の流布、客観的事実に基づく比較広告、提訴の事実の掲載は該当しない。意見・論評の表明も該当しない
- 営業上の信用は商品・役務の社会的評価や支払能力・営業能力への社会的信頼を含む
- 相手方本人に直接告げるだけでは該当しない。警告書を本人に送って後に敗訴しても不正競争でない
- 他人は名称がなくても特定できれば足りる。取引先が誰を指すか理解できればよい
- 権利侵害の警告が後に非侵害と判明すれば該当し得て、弁理士の鑑定を得ていても過失が否定されるとは限らない
- 刑事罰なし、使用料相当額(5条3項)の規定なし、譲渡数量算定(5条1項)も対象外。侵害者利益の推定(5条2項)と信用回復の措置(14条)は使える
この用語が問われた枝
競争関係にある他人の営業上の信用を低下させるために、当該他人の法令違反行為について真実を流布する行為は、不正競争には該当しない。
靴の製造業者が靴の販売業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為は、不正競争とならない。
甲社は、その社長である乙の丙社に対する個人的な恨みから、競争関係の存在しない丙社の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布し、丙社は営業上の利益を侵害された。甲社の行為は、信用の毀損に係る不正競争となる。
「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」において、「競争関係」とは、行為者と当該「他人」との双方の営業につき、その需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りる。
枝ごとの解説と条文は肢別演習で読めます。
この用語で問われた枝を、解説つきでそのまま解けます。